【10/10日本市場の確認ポイント】
日経平均 39,380.89(+0.26%)[39,282~39,616] 
TOPIX   2,712.67(+0.20%)[2,708~2,727] 
マザーズ   639.94(▲1.13%)[639~648] 

値上がりセクターTOP5
1.ゴム(+1.49%)
2.保険(+1.02%)
3.銀行(+0.98%)
4.医薬品(+0.73%)
5.輸送用機器(+0.61%)

値下がりセクターTOP5
1.小売(▲0.95%)
2.サービス(▲0.77%)
3.繊維(▲0.64%)
4.その他製品(▲0.61%)
5.石油・石炭(▲0.44%)

 日本市場は米半導体株高を好感してアドバンテスト(6857)やレーザーテック(6920)が連れ高したほか、決算発表を控えたファーストリテイリング(9983)をはじめリクルートHD(6098)など内需系の主力株が日経平均を押し上げました。一方、為替円安一服で自動車株が嫌気売りに押されておりTOPIXはやや軟調推移。

 衆議院解散による選挙相場の復活も期待も湧き出る中で選挙戦は自民党の苦戦も予想され、主力株を中心に売り買いが交錯。重工3社をはじめ防衛関連や地方創生をテーマとした小型株などに思惑買いが広がる場面もみられましたが、全体の売買代金は低調気味で指数が高値圏の割に上値を追う勢いには力不足と言える状況です。

 隣で先月末から大型連休をはさんで暴騰していた中国株が政府による景気刺激策が市場の期待する規模に届かないとの見方から暴落商状となり投資家の警戒感を誘ったほか、共に連れ高していた日本の中国関連株や景気敏感株にも連想売りが波及しています。直近では中国株の動向にもやや敏感になっている側面があるほか、米利下げ観測の後退に伴う金利上昇の波が日本にも影響し中小型グロース株の敬遠にもつながっているとみられます。

【米国株概況】
米景気ソフトランディングとインフレ再燃懸念で見方割れる市場、米国株は堅調持続ながら米金利上昇との整合性問われる

NYダウ 42,454.12(▲0.14%)[42,308~42,511]
S&P500 5,780.05(▲0.21%)[5,764~5,795]
NASDAQ 18,282.05(▲0.05%)[18,154~18,333] 
ダウ輸送株 15,898.8(▲0.33%)[15,808~15,915]
半導体SOX 5,294.7(▲0.51%)[5,224~5,322]
日経平均先物(CME) 39,370(+0.15%)[38,900~39,730] 
ドル/円 148.37~149.58(高値161.99:7/3、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 0.965%(高値1.104%:7/3、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 4.073%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 75.66(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2645.85(高値2,718:9/27、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 4.446(高値5.199:5/20、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)20.93(高値65.73:2024/8/5)
SKEW指数 154.09(安値110.34:2022/11/3、高値170.52:2/13)
Fear&Greed指数 71(GREED:貪欲)
High Yield Bond (HYG)79.36(安値70.30:2022/10/13)

 米国市場は米雇用統計後の米利下げ期待が剥落した影響から米金利上昇が一段と進み、米長期金利は4%台での推移となっています。債券市場では9月大幅利下げ後のブームから一転して金利上昇懸念が再燃し、ネットロング(買い)から慌てて売りに転じる様子もみられており、足元では最高値圏にあった金価格の下落にもつながっています。

◆米国債ショート台頭、大幅利下げ観測消える-CPI発表も控え(2024/10/9)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-09/SL2834T1UM0W00?srnd=cojp-v2

 前回取り上げたように市場の注目は労働市場の減速から今後のインフレ再燃に移り、足元における原油価格の再上昇もこうした見方を後押しするものとなっています。まずは米CPI(消費者物価指数)の市場予想比で上振れとなった結果を消化するのが先決ながら、市場では新規失業保険申請件数の急増をより重く受け止めた印象です。株式市場では米労働市場の改善および米経済のソフトランディングを重視する一方、債券市場ではインフレ再燃の懸念から米利下げ期待の後退、為替市場では大型ハリケーンなどから米経済への悪影響を織り込み米ドル安反応をみせています。現段階においてもなお米国が主導してきた中東情勢やウクライナ情勢の緊張緩和につなげる取り組みもいっこうに実を結ばないことも相まって、しばらくは金利高止まりとなる観測も出ています。

◆原油先物4%高、中東懸念や米ハリケーン関連需要を反映(2024/10/11)
https://jp.reuters.com/markets/commodities/JNFHOMZVR5PGROU2LLA7QU2BVU-2024-10-10/
◆米CPI、9月前月比+0.2%で変わらず 前年比+2.4%に小幅鈍化(2024/10/10)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/BRU3MXUX2FIR5N2ZHQC6KH2QI4-2024-10-10/
◆米新規失業保険申請、約1年ぶり高水準-ハリケーンの影響も反映(2024/10/10)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-10/SL551XDWRGG000
◆◆迫るイスラエルのイラン攻撃、米は緊張激化防げるか-新制裁提案も(2024/10/10)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-10/SL3W63T0AFB400?srnd=cojp-v2

 米国株において堅調な米経済指標を歓迎しつつも米利下げ期待も相場の下支えに重要な役割を果たしています。米FRBは絶妙な舵取りの中で9月の大幅利下げを決定したとして、当該メンバーからは今後の利下げペースが緩やかなものになるとの言及もみられます。市場にとってみれば米経済のソフトランディングが実現し、かつ、インフレ鈍化傾向が続くとともに、さらに利下げで景気刺激もしてほしいという欲張りな要求を行っているのに対し、これら全てが思い通りに実現できるわけではないでしょう。また、米国のみならず世界の政府・当局がビッグテックやインフレで荒稼ぎして肥大化したエネルギー企業などに厳しい目を向ける現実に照らしてみても今の株価は少なからず過剰な期待の上に成り立っていると言えます。

◆FOMC議事要旨:利下げ幅巡り活発な議論、大幅利下げに異論も(2024/10/10)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-09/SL3OOYDWLU6800?srnd=cojp-v2
◆◆Google分割視野 米当局「国家超え企業」肥大化を抑止(2024/10/9)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN08E7S0Y4A001C2000000/

 著名な投資家らもそうした市場の期待が膨らみ過ぎてしまう点に警鐘を鳴らしているのだろうと思われますが、こうして生まれたひずみはある時突然襲ってくる可能性は否定できません。昨晩は米FRBメンバーの要人発言が相次ぎましたが、市場が最も耳を傾けたのがアトランタ連銀ボスティック総裁の11月利下げ見送り可能性の言及であったこともやや注意を要するところです。一連の米労働指標やインフレ指標をふまえて市場はなお11月0.25%利下げを大方見込んでいる様子から利下げ見送りとなった時の失望売りが警戒されます。

◆FRB利下げを市場は織り込み過ぎ-ブラックロックのフィンク氏(2024/10/1)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-01/SKO4SNT0AFB400?srnd=cojp-v2
◆アポロCEO、積極的な米利下げの必要性を疑問視-過度な刺激警戒(2024/10/2)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-02/SKQD19T0G1KW00?srnd=cojp-v2
◆エラリアン氏が警告、「インフレは死んでいない」-米雇用統計好調で(2024/10/4)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-04/SKU3OIDWLU6800?srnd=cojp-v2
◆米連銀総裁3人、利下げ継続可能と示唆-もう1人は据え置きに含み(2024/10/11)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-10/SL59Z3T0AFB400
◆11月FOMC、利下げ見送りでも問題なし=アトランタ連銀総裁(2024/10/11)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/6UOYP3C745J2DD6PEG54T6PEBQ-2024-10-10/

 日本市場発の「8.5ショック」のような事態はもう目前に迫ってきた米大統領選挙の日程をふまえますと、バイデン米政権および米金融当局にとっては絶対に避けなければならないことで、全力で回避する手立てを講じるはずです。ところが、市場の流動性を岩盤のように支えてきたリバースレポが枯渇し始めてきてもいる現在、焦点となるのは次の11月FOMCで利下げが0.25%か0.50%か、あるいはスキップかよりもQT(量的引き締め)の停止あるいは減額といった点になるかもしれません。米FRBはインフレ再燃の芽を抑え込み、かつ、利下げ見送りで将来の選択肢を確保しながら市場の失望を誘うことにも配慮するというのは難題ですが、その代わりに市場流動性を担保してバランスを取ろうとするかもしれないということです。

◆◆ウォール街、QTの行方に注目-米短期金融市場で流動性圧力上昇(2024/10/2)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-01/SKP134T1UM0W00?srnd=cojp-v2
◆◆FRB流動性調節手段の資金フローに「異変」 QT軌道修正必要か(2024/10/2)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/QJQ4DKN6RVM77MZBA3CANFCKR4-2024-10-02/

 くしくも米大統領選の投開票日が11/5であり、11月米FOMCはその直後という日程の妙もありますし、次の米大統領が誰に決まろうとも米FRBの政策判断に影響は及ぼさないとは言いながら、米市場の安定化を図るために政策総動員の観点から次期米大統領が圧力をかけることは明白です。今回の米大統領選の不透明感は米共和党が訴える選挙不正への抗議も相まって、選挙投票日後も米大統領の確定まで時間がかかる可能性もあり、市場が攪乱させられることにもなりかねない状況となっています。そのような環境下で投資家が積極的にリスクテイクできるはずもなく、市場参加者の減少によってボラティリティが激しくなり投機筋の独壇場となりやすいことを肝に銘じておく必要があろうかと思われます。

【日本株投資戦略】
日経平均は40,000円接近の戻り高値ながら個別株の上値が重い、商い閑散で売りなしながら買いづらさも

 日本市場は引き続き海外の景気動向はじめ金融政策、財政政策に目を配りつつ、国内では石破新政権下での衆議院解散総選挙に伴う選挙戦のゆくえに左右されやすい市場環境となります。選挙戦期間中は株価が上昇しやすいアノマリーも意識される中で、今回は自民党の苦戦も予想され、場合によっては自民党の単独過半数確保はおろか自公連立での過半数割れも意識せざるをえない情勢となっている点にはやや注意が必要です。

◆衆院解散、事実上の選挙戦に突入 27日投開票・補正予算編成へ(2024/10/9)
https://jp.reuters.com/world/japan/E32THAO5UZLMXJ326E3NJOHMTA-2024-10-08/

 足元の日本市場は日経平均が堅調な動きとも言える一方、そこにはファーストリテイリング(9983)が上場来高値を更新するといった日経寄与度の大きい銘柄への依存を無視できず、TOPIXや他の個別株に焦点を当ててみると本当にそこまでの強さがあるかは疑問符がつく相場と言えます。

 これまでも市場が注視してきた為替動向との関係からみて、足元で米ドル円が150円近くに迫る場面ながら自動車株やエレクトロニクス株といった外需株の反応は限定的と言わざるをえない状況で、まもなく日本でも企業の決算シーズンに突入していく中にあって個別株の方向感が見えづらい雰囲気に支配されています。それもそのはずで、相場けん引役の一つであった半導体セクターではアドバンテスト(6857)のみが独歩高を演じている状況であるほか、選挙相場で期待を集めた防衛関連の三菱重工(7011)などにおいても上値の重さが意識される有様であり、また、企業の積極的な賃上げやデフレ脱却への期待で買われてきた内需株とりわけ消費関連株なども決算を機に利益確定売りに押されるなどが目立ちます。

 石破新政権となっても日本経済のファンダメンタルズが急に改善するわけではなく、足元での実質賃金は依然としてマイナス圏入りする不安定さを残している状況であることを鑑みても、政府や日銀が半ば追い立てられるように訴える金融正常化はまだ道半ばであることは明白です。そんな中で改めて日銀による7月サプライズ利上げの是非が問われる状況なわけで、いちおうながら日経平均株価は上述したようにやや歪な上昇によって見せかけ的にも堅調な戻りをみせたと言えばそれまでのことです。ただ、足元で再び為替円安への回帰や原油価格の上昇によるインフレ圧力の再燃、現状はもしかするとの範囲ですが米中景気の改善から世界景気の持ち直しというシナリオに備えての日銀による先読みということであったならば利上げ正当化ということにもつながってくるのかもしれません。

◆8月実質賃金3カ月ぶりマイナス、物価上昇加速とボーナス伸び縮小で=毎月勤労統計(2024/10/8)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/SXMZHDIQKBJ7TEKMKWMHR34QCE-2024-10-07/
◆実質消費支出、8月は前年比マイナス1.9% 予想下回る減少率(2024/10/8)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/XZWJORD3IZLHRBDVHGJ7PB6JGQ-2024-10-07/

 日銀による利上げが適切であったかどうか、あるいは追加の利上げ時期をめぐってもさまざまに議論が交わされているところでありますが、本音としては門間元理事が指摘するような為替円安に伴うインフレ抑制が最優先に置かれ、とくに当時の岸田政権の支持率低迷や自民党総裁選後の衆議院解散総選挙を控えての政局にらみを考えれば国民経済のための全体最適なる一手として政府が日銀に圧力をかけた側面が否めないでしょう。今の日本市場はその後遺症を克服するために闘っている状況であり、日本株がここから突き抜けていくためには目先の企業決算で業績懸念を払拭できるかにかかっていると言えます。

◆緩和調整のタイミング、経済・物価・金融の推移次第-氷見野日銀副総裁(2024/10/10)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-10/SL2V9MDWLU6800?srnd=cojp-v2-markets
◆150円超の円安進行、日銀の利上げ早める要因になり得る-門間元理事(2024/10/10)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-10/SL4TWNT1UM0W00?srnd=cojp-v2

 いわばここで為替相場のトレンドが円安から円高基調へ転換した7-9月期の業績において改めて円高環境への耐性を示し、さらに8月の1Q(4-6月期)決算で上方修正を見送った企業が今後の収益予想を加味しながら満を持して上方修正を発表できる企業がいかほどあるかが問われているのだろうと思われます。足元では7月中旬以降に売り越し基調だった海外勢がようやく買い越しに転じてきたこと自体は朗報ですが、季節性として10月はとりわけ海外勢の買い越すケースが際立つ時期だけに期待したいところです。

◆日本株は年末まで戻り歩調続く、不確実性での急変動を好業績がカバー(2024/10/8)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-07/SKYOTCT0AFB400?srnd=cojp-v2

 正直、選挙アノマリーよりも海外勢の買い攻勢に期待が大きいところながら、まだ勇み足になるのは禁物という場面であり、10月第1週(9/30~10/4)の先物手口では現物以上の売り越しでした。これの見方を変えれば9/30の石破ショック時の影響を加味し、全体の商いが低調でもある現状からは現物で下値を拾う範囲に留め置き、いざ企業決算の上振れや総選挙の不透明感解消に伴って空売りの買戻しが誘発されるのと合わせて日本株買いに本腰が入れられるといった感じかと思います。

 よって、この目先はまず米国株の堅調持続がなにより必須である中、為替円安の追い風を受けても上値の重い外需株が気になるところで、これらが再び地政学リスク炸裂とともに急激な円高に見舞われた際に下値堅持できるかが焦点になってくるとみており、それらを克服した時に海外勢による買戻しが相場浮上の大きな力となってくれるのではないかと期待します。つまり、全体の商いが細っている現状は「閑散に売りなし」といったところで3連休をはさんで様子見相場に変化が生まれるかを見極めてからポジションを取るのが無難かと思われます。

◆神田前財務官、短期の相場急変動や不確実性に警戒必要と強調(2024/10/10)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-10/SL4BE7T0AFB400?srnd=cojp-v2