【1/21日本市場の確認ポイント】
日経平均 39,027.98(+0.32%)[38,643~39,238] 
TOPIX   2,713.50(+0.08%)[2,694~2,731] 
グロース250 627.92(▲0.53%)[624~631] 

値上がりセクターTOP5
1.その他製品(+1.42%)
2.繊維(+0.83%)
3.ゴム(+0.72%)
4.空運(+0.71%)
5.海運(+0.68%)

値下がりセクターTOP5
1.石油・石炭(▲2.22%)
2.鉱業(▲2.18%)
3.保険(▲1.11%)
4.電気・ガス(▲0.63%)
5.証券・商品先物(▲0.46%)

 日本株は前週半ばで長期金利上昇が1.25%で一服したほか、為替も日銀の追加利上げ観測を織り込みつつもドル円155円割れのところで踏みとどまる動きをみせていることで買戻し優勢となってきました。米国ではトランプ米大統領の就任式が行われ、早速ながらに多くの大統領令が発令されています。日本株への影響としては初日のトランプ関税政策の対象から外されたことでひとまず波乱は回避され買い安心感につながった一方、日銀による追加利上げ観測も後押しすることとなり目先の焦点が移ることとなりました。

 市場では今週末の日銀金融政策決定会合にて追加利上げが実施されるとの織り込みがほぼ確定的と言われるまで進んだ模様ですが、株式市場のみならず為替市場でもその割にはしっかりと言える状況が続いています。日経平均は元の38,000円レンジ下限では下げ渋り、為替もトランプ米大統領就任に伴う警戒感においても多少なり円高が進んでも日本株への下押し圧力は限定的なものにとどまったと言えます。

 トランプ政策によって各セクター間での追い風や逆風といった影響の濃淡はあれど、経済面では金融、エネルギー、新テクノロジー分野などにおける規制緩和による恩恵が多方面に及んでくるはずです。目先の日銀イベント警戒もあるためグロース株にとって重しですが、昨年の8.5ショックのような極端な流動性枯渇に見舞われることが無ければ投資家心理は改善へと向かうことでしょう。

【米国株概況】
いよいよトランプ政権2.0始動で投資家の先高観を刺激、トランプ政策における規制緩和期待でハイテク株高に

NYダウ 44,025.81(+1.23%)[43,528~44,050]
S&P500 6,049.24(+0.87%)[6,006~6,051]
NASDAQ 19,756.78(+0.65%)[19,551~19,789]
ダウ輸送株 16,662.5(+1.41%)[16,482~16,672]
半導体SOX 5,378.5(+1.29%)[5,307~5,425]
日経平均先物(CME) 39,275(+0.81%)[38,630~39,345] 
ドル/円 154.79~156.25(高値161.99:7/3、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 1.186%(高値1.26%:1/15、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 4.574%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 75.08(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2758.55(高値2,801:10/31、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 4.338(高値5.199:5/20、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)15.06(高値65.73:2024/8/5)
SKEW指数 173.00(安値110.34:2022/11/3、高値180.09:12/24)
Fear&Greed指数 41(FEAR:恐怖)
High Yield Bond (HYG)79.67(安値70.30:2022/10/13)

 米国市場は20日トランプ米大統領の就任式を迎え、初動は株式が主要3指数そろって上昇したほかトランプラリーで期待される小型株指数ラッセル2000や半導体SOX指数なども上昇。事前の報道どおり就任初日から膨大な数の大統領令に署名し、ヘッドラインも多く飛び交いましたが市場の関心を集めていたトランプ関税の一斉賦課や仮想通貨の国家備蓄化構想などは先送りされ、波乱回避で投資家の買い安心感を誘いました。

◆トランプ米大統領の優先事項は貿易やエネルギー、国境問題(2025/1/21)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-20/SQEONPDWRGG000?srnd=cojp-v2
◆トランプ米大統領就任、不法移民対策やパリ協定再離脱 前政権から大転換(2025/1/21)
https://jp.reuters.com/world/us/SLT4EJBYHNNHZHVTBYBY2SUOAM-2025-01-20/

 トランプ政権2.0への移行に伴い警戒されてきた関税政策およびインフレ再燃については、まず国境を接し不法移民対策の重点対応先でもあるカナダ・メキシコへは2/1から25%関税が発動されることとなりましたが、事前に最も強硬対応が予想された中国に対しては10%関税だけにとどまり対話の余地を残しました。これを受けて米長期金利の上昇は限定的なものにとどまり、為替も米ドル高予想から一旦売りでドルインデックスも110ptを高値に108ptへと低下しました。米ドル安を受けた商品市況は相対的に上昇圧力がかかるはずですが米エネルギー政策の転換から原油は下落、金(ゴールド)は上昇、仮想通貨は材料不発で関連株ともども一時売られるも押し目買いが入り急速に下げ渋る動きとなりました。

◆◆トランプ大統領、2月1日までにメキシコとカナダに25%関税を計画(2025/1/21)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-21/SQEYOLT1UM0W00?srnd=cojp-v2
◆◆トランプ氏、中国に2月から10%関税検討 貿易不均衡でEUにも(2025/1/22)
https://jp.reuters.com/world/us/MXOAJBO5R5MD3C4ROQAZ5B54VM-2025-01-21/
◆◆トランプ氏、エネルギー非常事態宣言へ 化石燃料・発電事業促進(2025/1/21)
https://jp.reuters.com/markets/commodities/B6YQPGFC5ZJ35MTFFW426V2V2I-2025-01-20/
◆◆SECが暗号資産規制整備に向け専門チーム、業界締め付け方針転換へ(2025/1/22)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/4WN7KAOB7ZN75KYZQWTWTQLJJM-2025-01-21/

 総合的に金利上昇やインフレ再燃への警戒が後退したことを受けて休場明けの相場は堅調スタート、トランプ政権2.0のハネムーン初日を上昇で飾ることができました。今後もトランプ政策にちなんだ大統領令や関連法の発表が相次ぐものとみられますが、しばらく米経済指標の発表はなく企業決算がメインかと思います。来週には米FOMCが予定されますが、インフレ再燃の方向性が定かでないうちは利下げサイクルの軌道修正はなく、一部で指摘されるような利上げ転換の示唆も当面はないものと考えます。少なくともトランプ関税が欧州や日本を含め広範に及ばないうちは為替の米ドル高がインフレ圧力を抑制するため米金融政策を変更するまでには至らないと思われます。

◆FRBの次の一手は利上げか、追加利下げ観測に逆行する見方浮上(2025/1/20)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-19/SQCQH3DWX2PS00?srnd=cojp-v2

 したがって、当面にわたりトランプ・トレードによる乱高下を交えた強気相場が展開されると予想される一方、米利下げ期待はしばらく封印されるものと考えられ、内政面・外交面におけるトランプ政策の影響を消化するにあたっては高値圏での保ち合いに移行していくのが妥当とみられます。足元では米大統領就任式と並行して世界経済フォーラム主催のダボス会議も開かれる中、米国のグローバルリーダーシップの多くがトランプ米大統領の就任式に出席し改めて忠誠を示した形で、ハイテク規制緩和につながる法案整備が早期実現できるようであれば米国株らしいハイテク株主導での高値トライがみられるようになるでしょう。

◆◆トランプ氏、AIリスクに対応するバイデン氏の23年大統領令撤回(2025/1/21)
https://jp.reuters.com/world/security/U3WXJCLIJ5LJZDPUMKYNOKARUE-2025-01-21/
◆◆トランプ氏、ソフトバンクGなど3社による巨額AI投資を発表へ(2025/1/22)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-21/SQGAPGDWX2PS00?srnd=cojp-v2

【日本株投資戦略】
日銀利上げ確実視の一方で金利上昇ピークアウト、昨夏の悪夢回避で株高の機運後押しなるか

 日本市場は米大統領就任式に際しグローバル金融市場の中で最初にトランプ政権2.0始動の影響を受けることとなりましたが、トランプ関税の対象として日本見送りや国内の金利上昇一服、日経平均のレンジ下限38,000円付近で強力にテクニカルサポートされたことなどから初日をなんとか乗り切ることができました。

◆◆トランプ関税が市場直撃、トリプル高も一転 株価高値から600円弱下落
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/ZINVNAXULBLQ7KGINDGAGPZ2ZY-2025-01-21/

 トランプ米大統領による大統領令が発出されヘッドラインが流れる度に為替市場が反応するため神経質な展開となりながらも、その根底には日銀の追加利上げ観測が強まっていることに伴うリスク回避姿勢があるものと思われます。いわばトランプ警戒というよりも日銀警戒で、市場関係者の伝えるところでは1月会合での追加利上げ観測がほぼ確定的とされ、これが為替円高や日本の長期金利上昇とともに日本株の上値を抑えてきた要因となってきたわけですが、その織り込み具合が本当に100%近いというのであれば今週末の日銀会合後は巻き戻しによって為替が円安方向に回帰し、日本株も買戻し圧力からレンジ上限を突破する可能性が出てきます。

◆◆日銀が来週会合で利上げの公算大、米新政権の影響限定的なら-関係者(2025/1/16)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-16/SQ4SDOT0AFB400?srnd=cojp-v2

 ひとまず昨晩の米国市場でトランプ・トレードが堅調に進んだことにより日経平均は再び25日移動平均線を上抜けてきました。その一方、日銀利上げ警戒を織り込むとともに新興市場などはやや軟調な推移か、とはいえ前回の昨年7月の利上げ時には先物主導の下で新興グロース株が凄惨な売り浴びせとなったほか為替も急激な円高に見舞われて令和版ブラックマンデーが引き起こされた程でしたから、日銀の追加利上げを織り込んだ上でこの程度で済んでいると考えると日本株は格段に底堅さを増したというようにも考えられます。

 実際、昨晩の米国時間で共同通信から日銀追加利上げを決定とリーク報道がなされても日経先物はあまり動じることなく、米株高に連れ高して本日は朝からギャップアップしてのスタートにつなげましたので日銀会合はほぼ消化試合に決まったようなものです。一方で、あまり考えたくはありませんが昨年7月の利上げ時も日銀会合の直後は株高通過して、実際には翌営業日から8/1、8/2、8/5の3日間で日経平均は39,101円⇒31,458円と歴史的な大暴落を演じたわけですから日銀は再び市場の流動性を見誤ることがないように配慮して決定を下してほしいと思います。

◆日銀が利上げの見通し、トランプ次期大統領就任後に波乱なければ(2025/1/19)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-19/SQB7R8T0AFB400?srnd=cojp-v2
◆日銀は今週利上げへ、さらなる引き締めに慎重-野村ウィルコックス氏(2025/1/21)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-21/SQFFZXT1UM0W00
◆◆◆投資家が震えた8月5日、日本株急落の背景に流動性の急低下-金融庁(2025/1/8)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-08/SPR9Z4T0AFB400?srnd=cojp-v2

 また、投資家サイドとしてできることは短期的なフラッシュ・ショックの類にも冷静に対処できるようにリスク許容度を高めておくことが肝要です。これは今後のトランプ・トレードにおいて日頃から高ボラティリティの波を乗り切れるようにしておく心構えが欠かせません。対応策としてトレードのスタンスを短期化するのは究極的にはアルゴリズムとの闘いになるため難しいですが、メリハリを意識してトレードするのが現実的な選択肢かと思います。

 今回で日銀の利上げ確実となれば次はしばらく追加利上げが想定されないため株価の重しとなる大きな要因が排除されることになります。世界全体でみれば未だ利下げサイクルの真っ只中であることや米利下げがやがて打ち止めになると考えられても利上げ転換する前に市場金利の上昇が景気抑制的となり、残り利下げ回数の担保やもう一手としてのQT(量的引き締め)終了という選択肢も控えます。つまり、マネーフローが潤沢なままを維持できる手立てがあるため、あとは政策手段として採用するタイミングを間違えないことだけがカギとなります。これは日銀にも言えますが、利上げそのものよりも市場流動性への配慮が何より重要で投資主体の動きはまだ本格化していない中で勝機を見出せているのか、あるいは投資家に多少の犠牲を強いながらでも強行手段に打って出ようと事前リークしてきたのか見極めどころかと思います。

◆アングル:FRB悩ますトランプ氏の政策と債券利回り上昇、軟着陸の不安要素に(2025/1/22)
https://jp.reuters.com/economy/federal-reserve-board/HF7PXKJPAFLEFM52OOFJHOBR3A-2025-01-22/
◆◆FRBのバランスシート圧縮終了6月か、米銀予想が後ずれ(2025/1/9)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/R65CZZBFWVNXXIH5RH2MEBOI5A-2025-01-08/

 日本株は上記のトランプ・トレードにおいて米国での巨額AI投資への期待からソフトバンクG(9984)を筆頭に、半導体関連やAIインフラとして電線株も急反発し日経平均の大幅高に寄与しました。ここから日本株も企業決算を迎えるにあたり決算前のリスク調整は欠かせない中での急回復は渡りに船といったところでしょう。昨年7月末も日銀利上げと同時に対中半導体規制の日本を対象除外としたことが半導体株にとってのポジティブ材料として伝わり東京エレクトロン(8035)が1日の間に7,000円台から32,000円台へと急伸し日経平均を押し上げたところから、翌日以降の急転直下で8.5ショックへと誘われたのでした。

 足元のトランプご祝儀トレードは偶然の産物というわけではありませんが、日銀リスクもまた必然的な対応として回避すべきものです。日銀イベントを通過後に日本企業も決算本格化してくることを念頭に置いて、業績懸念を払拭できたところから物色が活発化してくるものと思います。それを前提にしながら2月の日米首脳会談後のトランプ関税が日本も対象になりうるのか、中国関連の関税影響なども鑑みれば先行して業績不安を取り除いたディスコ(6146)が東京エレクトロンなどよりも底値圏を脱してきたのも納得の結果かもしれません。

 他方でトランプ・トレードの肝は金融(仮想通貨含む)・エネルギー、そしてハイテク規制緩和からインフラ、さらには宇宙開発といった分野まで多岐にわたります。中には業績がまだついてこない分野も多く含まれるため、目先の決算は厳しい反応となる場合も多く見受けられるかもしれませんが、それらの中に2025年の大きなテーマ株として飛躍を遂げる銘柄が潜んでいるはずです。