【8/28日本市場の確認ポイント】
日経平均 38,371.76(+0.22%)[38,141~38,399] 
TOPIX   2,692.12(+0.42%)[2,671~2,692] 
マザーズ   664.64(▲2.30%)[661~677] 

値上がりセクターTOP5
1.輸送用機器(+2.19%)
2.電気機器(+0.98%)
3.保険(+0.98%)
4.医薬品(+0.95%)
5.精密機器気(+0.90%)

値下がりセクターTOP5
1.紙・パルプ(▲4.71%)
2.石油・石炭(▲1.51%)
3.鉱業(▲1.43%)
4.金属製品(▲1.10%)
5.水産・農林(▲1.09%)

日本株は8月初めの暴落分をほぼ埋め戻し日経平均は38,000円台を値固め、TOPIXもほぼ同様に2700pt付近までの戻りで7月末の水準を回復しようとする動きとなっています。足元では日米金融政策をにらみながら為替がドル円145円、ユーロ円160円付近に落ち着きをみせる中、ドル建て日経平均では3月以来の高値に接近してきました。

 日銀の金融政策修正にちなんだ8月初めの暴落については様々な複合的要因が重なるも、米国をはじめとする急激な為替円高の一服や信用需給の整理、地政学リスク警戒の緩和などに伴って必要以上に売られ過ぎた面があるとも言えます。諸所のリスク要因が払拭されたわけではないものの、ひとまずは8月暴落分を埋めて8/16以降はもみ合う動きが続いています。この間、米国におけるジャクソンホール会合、植田日銀総裁による国会閉会中審査における振り返り、米エヌビディア決算などをふまえながら売買代金は連日の4兆円割れが続き、様子見相場となっています。

 主力株は暴落後の戻りからセクターローテーションしながら概ね足踏み商状となる中、凄惨な売り浴びせとなった新興市場ではグロース250指数が全戻しの動きをみせ3指数で唯一の25日移動平均線を回復。世界景気や為替円高に左右されにくい内需株という特色もあり、物色はディフェンシブ色の強いバイオ株を中心に情報・通信や宇宙開発、小売、防災など多岐にわたって見直し買いが入りました。

【米国株概況】
急落からV字回復を遂げた米国株と米景気減速懸念の後退、米利下げ転換を探る経済データと株高政策

NYダウ 41,091.42(▲0.39%)[40,842~41,351] 
S&P500 5,592.18(▲0.60%)[5,560~5,627] 
NASDAQ 17,556.03(▲1.12%)[17,439~17,759] 
ダウ輸送株 15,867.4(+0.22%)[15,777~15,929]
半導体SOX 5,059.0(▲1.84%)[5,005~5,163]
日経平均先物(CME) 38,140(▲0.60%)[37,900~38,580] 
ドル/円 143.68~145.04(高値161.99:7/3、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 0.895%(高値1.104%:7/3、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 3.836%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 74.45(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2540.85(高値2,570:8/20、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 4.210(高値5.199:5/20、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)17.11(高値65.73:2024/8/5)
SKEW指数 151.68(安値110.34:2022/11/3、高値170.52:2/13)
Fear&Greed指数 52(NEUTRAL:中立)
High Yield Bond (HYG)79.25(安値70.30:2022/10/13)

 米国市場はジャクソンホール会合にてパウエル米FRB議長による利下げ転換を示唆する言及をふまえつつ、足元の経済データを確認しながら戻り相場を演じています。7月米雇用統計の悪化をうけた米景気に対する警戒感と早期の利下げ転換期待が入り交じる中、相対的に下落が小さかったNYダウは足元で4/26に史上最高値を更新してみせたほか、S&P500にしても最高値圏へのV字回復を果たしました。

◆米国株V字回復 FRBは9月利下げ予告、年末高意識(2024/8/26)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFL2604A0W4A820C2000000/

 米FRBは7月FOMCでの早期利下げを見送ったことで株価暴落時には緊急利下げの可能性も取り沙汰されましたが、市場のボラティリティが落ち着きをみせたことで平常運転に戻りました。足元で各リスク指標は一時リーマン・ショック以来の高水準をつけたVIX指数が20pt割れの推移であるほか、Fear&Greed指数もNEUTRALで落ち着きを取り戻しました。

 これには一時期の米景気リセッション懸念の増大および最悪の地政学リスクシナリオを意識した警戒が後退したことによるものとみられます。とくに中東におけるイラン・イスラエル戦争への突入やウクライナ戦争の激化・長期化に伴うウクライナのデフォルトなど経済活動とは別次元のリスク炸裂を一旦は回避できた影響というのも大きいと言えます。足元まで続く地政学的緊張の高まりをふまえればむしろ核保有国イランを交えた全面戦争の回避こそが最も金融市場ならびに世界経済にとっての壊滅的事態を回避できたと言っても過言ではないことかもしれません。しかし依然としてガザ停戦協議は終結を見ておらず、再び深刻な事態に陥るか予断を許さない状況が続いていることも肝に銘じておかなくてはならないでしょう。

◆◆イラン、イスラエル報復「急がず」 ガザ停戦交渉注視か(2024/8/21)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2108D0R20C24A8000000/
◆◆イラン、独自報復に転換…カタールは自制要求(2024/8/28)
https://www.yomiuri.co.jp/world/20240828-OYT1T50015/
◆◆イスラエルへの報復攻撃、ヒズボラが幕引き図る可能性…「満足のいく結果であれば作戦完了」(2024/8/27)
https://www.yomiuri.co.jp/world/20240826-OYT1T50210/

 他方で、市場の注目度が高い米半導体大手エヌビディアが朝方に決算発表を行いました。売上・利益実績は市場予想を上回る着地となったものの売上高見通しはあまりに高い市場の期待ハードルに届かず時間外で大幅下落となっています。これには事前予想の段階から決算後の株価反応では上下10%程の変動があり得るとの見方があったことから、決算内容とともに市場想定内の範疇で通過したものとみてもよいかと思います。昨年のちょうどこの5-7月期決算からサプライズ連発してきたエヌビディア株にとっては前年比でのハードルが上がっている現実に即して考えれば十分に評価できる内容であるともいえるほか、8/5暴落時からはすでに株価が45%も上昇した経緯からみてもすでに高い期待を織り込んで迎えた決算発表だったとも言えます。ここでは前のめり気味のAI投資ブームを自制しつつ冷静な見方が必要ということかもしれません。

◆エヌビディアの売上高見通し、高い市場予想には届かず-株価下落(2024/8/29)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-08-28/SIY3EXDWRGG000
◆米エヌビディア、株価最高値が再び視野に-AI投資ブーム続く(2024/8/22)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-08-21/SIKHC6T0AFB400?srnd=cojp-v2
◆エヌビディア決算に張り詰める米株市場、45兆円創出か消失かの分岐点(2024/8/28)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-08-27/SIVZR0DWLU6800

 米国株にとって重要視されるべきは不確実性を極める地政学リスクを除けばあくまでも米景気動向であり、目先はインフレ指標のPCE価格指数と来週の米雇用統計に焦点が移っていきます。9月米FOMCにて重要な利下げ転換の初手を占う上で大きな意味を持つことになるだけでなく、米大統領選の混戦がより極まってくるタイミングでの経済データとあって市場の注目度は否が応でも高まることになります。

◆FRB重視のインフレ指標、迫る利下げを裏付けへ-消費支出も堅調か(2024/8/25)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-08-25/SIQRVZT0G1KW00?srnd=cojp-v2
◆焦点:FRB、大統領選前でも利下げ辞さない構え 雇用支援に重点(2024/8/26)
https://jp.reuters.com/economy/federal-reserve-board/N7MZBEZPGZKI5CBDOVI4KB6ZO4-2024-08-26/

 そんな状況下で米政府の雇用データにおいては、先の年次改定でも大幅な下方修正が加えられるなど市場の信頼が薄れている面は否めません。再選を目指す米民主党政権にとってみれば株高政策は命綱である以上、ある程度の手心が加えられることを現実として分かっていても市場が動揺を隠しきれずボラティリティが再び上昇するリスクも孕んでいます。しかし、米大統領選も正念場を迎える9月は仮に米国株が下落しやすい局面でも、いわば表裏問わず政策総動員で米国株の高値誘導を目論む米金融当局が後ろ盾となっていることをふまえれば堅調を持続する可能性が高いでしょう。つまり、いざ金融市場の混乱に直面してもPKOの一環で流動性供給に踏み切る用意があり、有無を言わさず米国株の買い支えが図られることでしょう。

◆米雇用改定発表の不手際にウォール街で怒り噴出、「悪質」との声も(2024/8/23)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-08-23/SIN85XT1UM0W00
◆30分も発表が遅れた注目雇用データ、米労働統計局が不手際認める(2024/8/29)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-08-28/SIXMHYDWLU6800

【日本株投資戦略】
お盆明けの日本株は為替円高を横目に一進一退、自民総裁選をめぐる思惑と円高・半導体株調整一服後の上昇余地

 日本市場は月初の株価急落から回復する一方、7月の日銀サプライズ利上げの余波に伴う為替円高が重しとなり他の海外市場との対比では出遅れ感が鮮明となっています。8/2~8/5にかけてのわずか3日間で日経平均がおよそ▲8,000円幅での暴落となった傷跡は深く、ここまでの戻りを試す過程においても市場全体の出来高は低水準かつ減少傾向にあります。

 日銀によるサプライズ利上げの影響では国内の短期金利上昇および為替の急激な円高、さらに異次元金融緩和で膨らんだ低金利の円キャリートレードの巻き戻しが株価暴落の背景にあったと解釈されており、足元では一時的なフラッシュ・ショックの類であるとも言われていますが真偽の程はまだ分かっておりません。ただのテクニカルな要因と片付けるにはあまりに影響が大きく、足元の売買代金低迷から市場が株価の戻りだけで混乱が収束したとは言い難い状況と言えます。

 ちょうど企業決算シーズンや夏枯れ時期とも相まって投資家の動きが鈍いことは季節的要因でもありますが、とくに8/16以降で日経平均やTOPIXの戻りが鈍っていることは多少注意深くみておく必要があるかもしれません。日経平均においては寄与度トップのファーストリテイリング(9983)が40,000円台から直近47,000円手前まで2割弱の上昇と健闘をみせる中で指数が足踏みしているのは他が足を引っ張り、いわば下駄を履いている状態と言えます。

 その要因の一つと考えられるのは、日経寄与度における次点の東京エレクトロン(8035)をはじめ指数影響度の大きい半導体関連株の面々が暴落反騰後の戻りから調整に転じてしまっている現状が挙げられるかと思います。また、為替の円高傾向から外需株敬遠の動きとして自動車、エレクトロニクス、機械といった景気敏感業種の低迷が目立っており、一方でディフェンシブ業種の医薬品や小売など内需株のセクターが選好されています。

 もう一つはお盆明けの市場で話題を呼んでいるのは9月の自民党総裁選のゆくえとあわせて選挙相場が始動していることです。日経平均は暴落前の高値から8/5安値の半値戻しにあたる36,000円を回復した後、岸田現首相の総裁選不出馬を表明したことにより次期総裁候補をめぐる思惑が物色の手がかりとして浮上しました。過去に例をみない混沌を孕みながらも8/15以降は為替が円高基調に推移してもなお日経平均は38,000円付近まで水準を切り上げてきたのです。

◆◆岸田首相が総裁選への不出馬を表明、政治不信招く事態にけじめ(2024/8/14)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-08-14/SFKRAZT0G1KW00?srnd=cojp-v2
◆◆9月の自民総裁選、まれに見る混沌としたレースに-市場乱高下で拍車(2024/8/14)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-08-14/SI7D9YT0AFB400

 ただし、この度の株価暴落の引き金となった米景気悪化懸念や為替円高警戒がなかなか払拭されづらい状況が続く以上、日本株の上値は当面重い状況が続くと考えるのが妥当と言うべきでしょう。しかし、別の見方ではドル建て日経平均が3月以来の高値圏に舞い戻り、9月レイバーデー以降で海外勢による売買が復活してくることを考えますと、出遅れが鮮明な日本株に一定の見直し買い需要が発生してくるとの期待も持てる余地があるということでもあります。

 あくまでも暴落を引き起こした複合的リスク要因のうちの一つである地政学リスクが当面の間は激化しないという条件下ではありますが、足元では市場の注目度が高い米エヌビディア決算を通過し、これが良くも悪くも市場予想範囲内で無難に乗り越えたと解釈すれば日本の半導体株にも一定の見直し余地があるはずです。また、米景気リスクにおいても一時期の緊急利下げが必要になるとの極端な見方が薄らいで、9月から10月にかけて多少の金融政策調整の必要性が出てきたとしても年内の利下げ幅が100bp以下の少なくて済む程度なのであれば過度な景気後退懸念は不要との認識で落ち着くはずです。

 最も不確実な地政学リスクが小康状態のままで進む可能性は低いものの、以前の4月急落時を思い起こせば過度な警戒感が薄れるだけで一定の買戻し需要だけでも株価がもう一伸びする余地はあるということです。それには国内勢だけでなく海外勢が再び日本株への投資に踏み込む必要があるわけですが、以前述べたように9月に控える自民党総裁選をにらみ新リーダー登場の期待が欠かせないでしょう。くしくも足元では新総裁候補に名乗りを挙げるだろうとみられていた候補者の面々が次々に立候補を表明し、政治資金問題を発端に派閥解消の影響から乱立する有様となりつつありますが、日本政治への期待というより新政権誕生への思惑が株価を一時的にも浮揚させる効果を生み出します。

 実際に新政権誕生は少なくとも11月まで待つ必要があるわけですが、日本株が戻りを試す上では上述した諸所のリスクが落ち着いている間に実現しておかなくてはなりません。そうでなければ再び地政学リスク炸裂や大規模自然災害など想定しえないリスク要因が顕在化した際に売り込まれやすい日本株は2番底を探る過程で底抜けしてしまう可能性が無いとも言い切れません。今回の暴落で岸田政権や日銀が採ってきた金融政策は脆弱さを露呈しただけでなく、海外へのバラマキや日銀による国債買入の流動性供給も結局は日本国内のマネーストック増加に結びついていないことが現実として浮彫になった形です。新生日本のリーダーシップには日本国内にこそカネを使える、あるいは日本への資金還流を促す人材、さらに健全な内需を創出して潤沢な内部留保を保持する日本企業が積極投資、イノベーション促進したいと思える環境づくりに尽力してくれる人材が選出されることが望ましいでしょう。

◆自民党総裁選、9月27日投開票の方針 石破茂氏出馬へ(2024/8/18)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA180910Y4A810C2000000/
◆◆麻生氏、河野氏を「同志として応援」 他候補の支援も容認(2024/8/27)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA261N30W4A820C2000000/

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