【8/5日本市場の確認ポイント】
日経平均 31,458.42(▲12.40%)[31,156~35,301] 
TOPIX   2,227.15(▲12.23%)[2,206~2,489] 
マザーズ   485.02(▲15.84%)[482~563] 【安値更新】

値上がりセクターTOP5
1.なし
2.なし
3.なし
4.なし
5.なし

値下がりセクターTOP5
1.保険(▲17.62%)
2.銀行(▲17.30%)
3.証券・商品先物(▲16.52%)
4.非鉄金属(▲15.82%)
5.海運(▲15.27%)

 日本株は8月立会の3日間で日経平均が▲8,000円幅での暴落。昨日は米雇用統計後の米景気減速懸念をうけて急落して始まった後も断続的な売りが続いたほか、後場に為替が一段と円高に振れたことで下げ幅を急拡大。海外でも半導体供給国の韓国、台湾はじめ世界同時株安の様相で、日経平均は東京エレクトロン(8035)がストップ安まで売り込まれるなどして一時▲4,700円超の急落。大引けの▲4,451円安は1987年ブラックマンデー時の歴史的記録を更新。

 東証プライムの騰落銘柄数は値上がり14/値下がり1625の全面安、東証33業種のうち最も下落率が小さかった空運でも▲6.7%安で、ストップ安銘柄は全市場で800銘柄超にのぼりました(一時S安含む、ETF含む)。同時に、新安値銘柄も1,000銘柄超と突出し、日本版VIX(恐怖指数)の日経VIはコロナショック、リーマン・ショックなどを上回る一時85ptまで跳ね上がり、機械的な売り誘発に加えて売りが売りを呼ぶ展開でパニック売りが広がりました。

 米景気減速懸念に加えて中東情勢の激化など円高ドル安の深耕に歯止めがかからない中、日本でも金利低下の波が押し寄せ10年債利回りは一時0.75%まで急低下。日銀利上げ後の円キャリートレード巻き戻しからリスク回避の株売り債券買いに拍車がかかっているとみられます。金融市場の大混乱を招いた政府・日銀には非難が続出し、野党はこの機に国会での説明を要求する事態となりました。

【米国株概況】
米景気減速懸念は市場都合の過剰反応か、高まる米利下げ期待とジャクソンホール会合の注目度

NYダウ 38,703.27(▲2.60%)[38,499~39,056] 
S&P500 5,186.33(▲2.99%)[5,119~5,250] 
NASDAQ 16,200.08(▲3.43%)[15,708~16,453] 
ダウ輸送株 15,112.1(▲1.75%)[14,812~15,325]
半導体SOX 4,523.0(▲1.84%)[4,290~4,635]
日経平均先物(CME) 33,190(+5.77%)[30,370~34,835] 
ドル/円 141.66~146.55(高値161.99:7/3、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 0.790%(高値1.104%:7/3、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 3.792%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 73.92(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2452.10(高値2,506:8/2、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 4.004(高値5.199:5/20、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)38.57(高値65.73:2024/8/5)【高値更新】
SKEW指数 145.30(安値110.34:2022/11/3、高値170.52:2/13)
Fear&Greed指数 19(EXTREME FEAR:極度の恐怖)
High Yield Bond (HYG)77.22 (安値70.30:2022/10/13)

 米国市場は前週末の米雇用統計の大幅悪化をうけて米景気減速懸念が増幅、米10年債利回りが3.7%台に急低下したほか米2年債利回りとの逆イールドが一時解消する場面がありました。米景気後退のシグナルを意識して市場では7月米FOMCでの利下げが必要だったとのではと利下げ催促相場となり株売り債券買いに拍車がかかりました。

米失業率またも上昇、雇用者数は予想以上に減速-9月利下げ固まる(2024/8/2)
アングル:解消に向かう米国債逆イールド、今回は景気後退指標として有効か(2024/7/30)
◆◆「逆イールド解消」で浮き彫り、米景気不安とFRB大幅利下げの期待(2024/8/5)

 米FRBの9月利下げ確率を確実視することに加えて初回利下げ幅をめぐり0.50%の大幅利下げが必要になるとの向きが広がるほか、年内残り3回のFOMCを通じて累計1.25%の利下げとなる可能性も指摘され始めました。極端には直ちに緊急利下げが必要との声から8月中にも0.25%利下げに踏み切るとのスピード感で米金利低下とともに急速に市場織り込みが進んでいます。

情報BOX:FRB利下げ、米雇用統計踏まえた大手金融機関の最新予想(2024/8/5)
FRB、1週間以内の25bp緊急利下げの確率60%-短期金融市場(2024/8/5)

 米長短金利の逆イールド解消や米失業率のサーム・ルールといった米景気リセッションのシグナルに神経質になっている金融市場ですが、まずそれ以前のところで日銀によるサプライズ利上げの余波として円キャリートレードの巻き戻しに伴うリスク資産売りが広がっています。それに加えて、前回指摘した中東の地政学リスク激化も同時に市場に織り込まれているため、米景気減速懸念の割合が見えづらくなっている部分があるでしょう。

◆◆焦点:世界株安、米経済見通しよりキャリートレード巻き戻しの影響大(2024/8/6)

 米債市場の金利低下と米景気減速懸念は必ずしも実態を反映したものと言い切れず、金融市場は極端に反応している面があるかと思います。とくに中東における地政学リスクで4月時と同様にイランとイスラエルの全面戦争が危惧される現在において、リスク資産売りは最悪の事態を織り込む動きをみせることから、ギリギリのところで戦争回避となった場合には一転して買戻しの動きが広がりやすいと言えます。

米債券ラリーは行き過ぎ、7月利下げ必要だった=ブラックロック(2024/8/6)
◆◆◆イランのイスラエル攻撃、5日にも開始か-米がG7に伝達との報道(2024/8/5)
◆◆◆レバノン全土に退避勧告を拡大 外務省(2024/8/5)

 むしろ市場が利下げ催促する中で米景気に対するハードランディング懸念から米FRBが緊急利下げを行うなど、コロナショック時と同じ対応をする場合には市場は一層疑心暗鬼となってリスク資産売りを本格化させる可能性が大きくなるでしょう。昨日発表されたISM非製造業景況指数の改善から米小売売上高など米景気にまつわる一部の経済データが底堅さをみせることで米景気ソフトランディング期待が確認されれば市場の動揺も徐々に収まり、リスク指標のVIX指数やF&G指数も低下を示すようになると思われます。8月はこの先、米FOMCが開催されないかわりにジャクソンホール会合が控えており、米株下落の起点ともなった半導体エヌビディア決算なども8/22頃が予定されており、そこに向かう過程で市場混乱も落ち着きをみせるものと思われます。

【コラム】米緊急利下げなら逆効果、株安は遅れた調整-アシュワース(2024/8/6)
米ISM非製造業総合指数7月は51.4、4年ぶり低水準から改善(2024/8/6)

【日本株投資戦略】
◎歴史的大暴落の影に円キャリー巻き戻し影響と地政学リスク警戒、政局にまで波及した市場混乱は日本変革の好機に

 日本市場は1987年ブラックマンデー以来の歴史的暴落に見舞われ、日経平均・TOPIX・グロース250指数いずれも2ケタ下落となるなど凄惨な暴落相場となりました。日経平均の下落幅が一時▲4,753円を記録したことは史上最大であるほか、先物市場ではサーキットブレーカーが発動、さらに時間外では日経30,500円台まで突っ込み昨年10月以来の水準に往って来いとなりました。

株価 一時2500円以上値下がり TOPIX サーキットブレーカー措置(2024/8/5)

 昨晩の米国市場では米ISM非製造業景況指数のグッドニュースが素直に米ドル高に反応し、為替はドル円で昨日後場入りの145円付近を回復しており、円高深耕にも一服感がみられます。米景気減速懸念を過度に織り込み過ぎた反動からもドル高円安に振れてくるはずですが、残るは地政学リスクでイランの報復予告が伝えられている中ではこれが実行に移された場合に円高が再来してくることになろうかと思われます。

 昨日の東証売買代金は8兆円に膨らみ、文字通りのセリング・クライマックスとなった可能性があります。一方、底入れには日本版VIX指数の日経VIが急騰して落ち着きを取り戻す過程で、早ければ当日、コロナショックやリーマン・ショック時にはだいたい3営業日前後での大底入れとなりました。ここまでの先物主導の展開を考えれば、日経やTOPIXの先物に連動する銘柄などは先物買戻しとあわせて反騰が強くなる面が強調されるでしょう。

◆◆【日本市況】日経平均下げ幅史上最大、米景気懸念で質逃避-債券上昇(2024/8/5)

 足元の急落が日銀サプライズ利上げによる円キャリートレードの巻き戻しが主因とすると積み上がったレバレッジ解消の動きが下落幅を必要以上に大きくしたものと考えられます。そこで、レバレッジ逆流の観点から信用買い残の多い銘柄の需給面を考えますと一連の暴落相場で追証売りが相当数出て、それ相応の需給整理が進んだ一方、追証に追い込まれてしまった投資家の処分売りが証券会社によって異なりますが1、2営業日でだいたい執行されて売り一巡となってくるかと思われます。

 昨日の後場は米景気減速懸念や地政学リスク警戒を差し置いてもやはり異常値と言わざるをえないものだったと思われますが、日米ともにVIX指数が急騰したことに伴うパッシブ運用の機械的な売りだったと考えますと、VIX指数の低下とともに落ち着きを取り戻してくるようになるでしょう。また、昨日の空売り比率は久しぶりに40%割れとなったことをふまえますと機関投資家のヘッジ売りも一旦大きく解消された証拠と考えられ、前回も指摘した8月の円高要因、地政学リスク等を乗り越えた先には予定どおり日本株の出直りが期待できるようになってまいるかと思われます。

 それまでの間はまだ不安定な地合いが続くことも想定し、市場の米利下げ催促相場や地政学の複合的リスクへの警戒は怠るべきではないでしょう。ひとまず日経平均は中東地政学リスクを強く意識する以前の36,000円台の戻りを目安に、ヘッジファンドなどは再びヘッジポジションを構築し直す可能性があるでしょう。イスラエル周辺の情勢激化によって織り込んだ昨日の水準はしばらく乱高下で値幅がでやすいことを認識しておくのが賢明かと思われます。今回の株安をうけて政府・日銀への批判が高まる中、8月下旬以降の政局が株式市場にとっての追い風となってくることには期待を継続しておきたいところです。

◆◆財務省・金融庁・日銀、午後3時から3者会合 市場変動で認識共有(2024/8/6)
◆◆株価暴落、岸田首相に逆風 総裁再選戦略に影響も(2024/8/6)
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