【8/1日本市場の確認ポイント】
日経平均 38,126.33(▲2.49%)[37,737~39,188]
TOPIX 2,703.69(▲3.24%)[2,684~2,768]
マザーズ 623.25(▲3.85%)[620~642]
値上がりセクターTOP5
1.なし
2.なし
3.なし
4.なし
5.なし
値下がりセクターTOP5
1.不動産(▲7.27%)
2.輸送用機器(▲6.63%)
3.保険(▲5.16%)
4.その他金融(▲4.35%)
5.建設(▲4.26%)
日本株は7/31の日銀金融政策決定会合でサプライズ利上げおよび米FOMCでの利下げ見送りをうけて為替市場での円高が急伸。会合直後は米国の対中半導体規制で日本の対象除外から半導体株の一角が買い戻されたことから急反発をみせたものの、8/1には為替ドル円が節目の152円付近を下方ブレイクしたことにより日経平均は再び急落し、38,000円を一時割り込みました。
為替の円高深耕でドル円は148円台まで突っ込む場面があると同時に、この日決算発表を迎えるトヨタ(7203)が国交省による認証不正の是正勧告を受けて大幅安となっており、決算で増収増益を発表後も下値を探る動きが継続。また、日銀の利上げ決定により不動産株はじめグロース株および新興株が大崩れとなりました。
トヨタの大幅安に象徴されるようにTOPIXが▲3%超の大幅安となり全業種が値下がりする全面安商状。東証プライムの騰落銘柄数は値上がり97/値下がり1541と決算好感のアドバンテスト(6758)や日立(6501)など一部には急騰を演じた銘柄も存在するも為替動向に神経質な動きとなりました。米FRBの利下げ見送りは想定内ながらもリスク回避姿勢が強く、業績懸念の銘柄には一層の売り圧力がかかりました。
【米国株概況】
米経済データ悪化でも米FRB利下げ見送り、米企業決算への失望と米景気ソフトランディングへの疑念から株売り・債券買い
NYダウ 40,347.97(▲1.21%)[40,098~41,096]
S&P500 5,446.68(▲1.37%)[5,410~5,566]
NASDAQ 17,194.15(▲2.30%)[17,051~17,791]
ダウ輸送株 15,812.1(▲1.69%)[15,749~16,335]
半導体SOX 4863.0(▲7.07%)[4,801~5,201]
日経平均先物(CME) 36,845(▲2.91%)[36,420~38,875]
ドル/円 148.48~150.88(高値161.99:7/3、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 1.032%(高値1.104%:7/3、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 3.982%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 76.84(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2490.25(高値2,506:8/1、安値1,618:2022/11/3)【高値更新】
銅先物 4.071(高値5.199:5/20、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)18.59(高値37.79:2022/2/24)
SKEW指数 132.23(安値110.34:2022/11/3、高値170.52:2/13)
Fear&Greed指数 40(FEAR:恐怖)
High Yield Bond (HYG)77.96 (安値70.30:2022/10/13)
米国市場は7/31の米FOMCで利下げ見送りとなった一方、足元の米経済指標悪化が相次ぎ9月利下げ見通しを強める形となりました。これまで米利下げ期待とともに株高を演じてきた流れとは逆に、軟化した労働市場やかねてよりの米ドル高に苦しむ製造業への懸念が強まり米景気のソフトランディング期待が剥落して株安となりました。
◆FRB、金利据え置き決定と9月利下げ示唆か-31日のFOMC会合(2024/7/31)
◆FRB、9月利下げの方向-労働市場リスクの高まり背景(2024/8/1)
また、バイデン米政権が推し進める対中強硬策の一環で半導体企業への逆風が懸念される中、決算発表を迎えた半導体企業が軒並み期待を裏切る結果となったことで半導体株売りが加速。前日にはめざましく急騰したエヌビディアの急落をはじめインテルの赤字決算やAMD、マイクロン、クアルコム、アプライド・マテリアルズなど主要な半導体大手が軒並み急落となったことで半導体SOX指数は▲7%超の暴落となっています。
米景気をめぐって注目される労働市場は今晩に米雇用統計を控える中、民間指標のADP雇用統計が急悪化していることもふまえて下振れ懸念が強まったほか、直近の米FOMCにおいて利下げを前倒しすべきだったとの見方が優勢となり債券市場では米金利がそろって急低下しました。米10年債利回りが2月以来の4.00%割れとなったほか、米財務省が米国債買戻しの増額を発表したことも米国債買いを後押ししたとみられます。
◆米ADP民間雇用、7月は12.2万人増で予想下回る 6月は上方改定(2024/8/1)
◆米新規失業保険申請、ほぼ1年ぶりの高水準-労働市場減速を示唆(2024/8/1)
◆◆米ISM製造業景況指数、8カ月ぶりの大幅な活動縮小-生産低調(2024/8/1)
米景気懸念に加えて無視できないのは中東地政学リスクの激化で、懸案であるイスラエルによるガザ侵攻の停戦協議がまたしても暗礁に乗り上げる懸念が強まっているほか、ハマス指導者や幹部らの殺害で背後に控えるイランとの戦争懸念が急速に高まっています。これら地政学材料も米国債買いに拍車をかけ、株売り債券買いの構図をより深刻化させているものとみられます。
◆◆◆ハマス指導者ハニヤ氏殺害、訪問先イランで ガザ停戦協議に影響か(2024/7/31)
◆◆ハマス最高指導者、イランで暗殺 ハメネイ師「報復」宣言(2024/8/1)
◆◆ハマス幹部殺害でガザ停戦とん挫の恐れ、カタールとエジプトが警告(2024/8/1)
他方で、米FOMCでは利下げ見送りとなった一方、英中銀は9月利下げ予想を前倒して利下げを先行し、先行き懸念に対応する構えをみせました。米国においては米財務省が米国債買戻しを加速させることにより米FRBの利下げと同様の効果を期待しながら、政府と中央銀行の連携によるポリシーミックス政策で市場への配慮を覗かせた形かと思われます。
市場としては米利下げ催促の相場で癇癪を起こした面もありつつ、本質的には米企業の業績下振れで米景気ソフトランディングに疑念が生じてリスク回避姿勢を表したとも言えるでしょう。ただ、事前の株高と企業決算に対する市場の期待が高すぎた分の調整という側面もあり、市場影響の大きかった半導体・AIブームの巻き戻しが本筋とも言えます。地政学材料がまだ混沌として市場ボラティリティを増幅させる状況が続く一方、一連の債券買い・株売りのフローが一巡してくると市場混乱も落ち着きを取り戻すものと考えられます。
【日本株投資戦略】
日銀サプライズ利上げの余波から短期金利急騰と円高株安、秋の総裁選に向けての選挙相場が日本株再浮上のきっかけに
日本市場は日銀のサプライズ利上げの結果、市場では日本10年債利回りは多少織り込み済みで利上げ幅も0.15%の小幅だったことから落ち着いていましたが、一方で2年以下の短期金利が急騰してパニック的な様相となり、日本株の売りに拍車がかかりました。前日に日銀金融政策の発表と同時に米国の対中半導体規制における日本の対象除外から半導体株が軒並み急伸していたこともあり、金利上昇および為替円高の懸念から主力の半導体、そして為替影響が大きい自動車株などが軒並み大幅安となったことで日本株は全面安商状となりました。
◆政策金利0.5%「壁ではない」、経済・物価次第で追加利上げ=日銀総裁(2024/7/31)
◆焦点:日銀利上げ、来年度にかけ1%も視野か 0.5%超えは難路(2024/8/1)
政府筋から事前に日銀利上げ催促や為替円安への懸念があったものの、足元の経済指標でまだ景気回復が鈍く実質賃金もマイナスな状況下でハト派を続けてきた植田日銀総裁が利上げを決断したのはサプライズでした。実際の利上げ幅が0.25%ではなく0.15%としたのには最大限の市場に配慮した姿勢がにじむものの、為替円安やインフレへの対応を優先させた真意は不明な点が多いと言えます。かねてよりの歴史的インフレの対策に一定のメドがでてきた段階で米国が利下げを見送ったことと合わせて考えますと、今後のインフレ再燃に対応が必要ということなのかもしれません。
また、日本の利上げは長年にわたる超金融緩和政策の転換という歴史的イベントであり、これまで国際金融市場において円キャリートレードとしての大前提を覆す一大事でもあるわけですから、おそらく直前の国際会議の場におけるG20財務相・中央銀行総裁会議では日銀の7月利上げ計画を共有した可能性もあるのかもしれません。日本が周回遅れの利上げに踏み切ったことは円キャリートレードの巻き戻しを通じて様々なリスク資産に大きな影響をもたらすと考えられる一方、このタイミングがなぜ今である必要があったのか一度立ち止まって考えるべき時かもしれません。
そんな中、昨日公表された投資主体別売買状況では7月第4週(7/22-7/26)に海外勢が日本株を大きく売り越していたことが判明、現物・先物合計で1兆5000億円規模という記録的な売り越し規模となっており、とくに先物主導での売りがみてとれます。その前には7月第2週(7/8-7/12)の日経平均が42,000円超えを展開していたところでは1兆円規模で買い越しだった手口をみますと、やはり河野デジタル相発言あたりから売りスタンスに転じ、足元では空売り狙いに可能性もあるでしょう。直近の空売り比率が40%超えをつけたのは7/17以降で河野発言と同期し、茂木発言以降は今年4月以来の44%超えを連日で記録しています。
◆海外勢の日本株買い、半年ぶり高水準 7月2週9762億円(2024/7/19)
◆海外勢、日本株10カ月ぶり規模売り越し-TOPIX4年超ぶり下落率(2024/8/1)
◆日銀は円安是正のため利上げを-河野デジタル相単独インタビュー(2024/7/17)
◆自民・茂木氏、日銀の利上げ言及 「金融正常化を明確に」(2024/7/22)
いわば足元の円高株安は政府・日銀が海外勢にお墨付きを与えての演出でもあり、為替円安の是正と日本の金利上昇サイクルで新たなトレンドを生むきっかけとなるものでしょう。日米ともにそれぞれ自民党総裁選、米大統領選を今秋に控えている中で無理やりにでも調整をはさむ理由があったかは疑問ながら、この時点での株価が今年1月のSQ値36,000円近辺まで押し下げられたことをふまえますと、ここから9月の自民党総裁選に向けて再び選挙相場の思惑を走らせるための準備と言えるかもしれません。すなわち次期自民党総裁候補が8月お盆時期あたりから動き出してくるとみられる中、各候補の政策論争が始まるあたりから日本株は再浮上のきっかけを掴むものと思われます。
したがって、足元では日米ともに企業決算が佳境を迎える中で決算期待に応えられない失望売りによる株価急落とみられる一方、日本の金融政策転換を通じた金融リセットが生じている最中でもあります。前回述べたように為替動向や地政学情勢に配慮しつつ、決算シーズン明けの日本株出直りに期待しておきたいところでしょう。
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