【7/22日本市場の確認ポイント】
日経平均 39,599.00(▲1.16%)[39,519~39,973] 
TOPIX   2,827.53(▲1.16%)[2,824~2,859] 
マザーズ   657.25(▲2.73%)[656~675] 

値上がりセクターTOP5
1.陸運(+1.22%)
2.水産・農林(+0.41%)
3.食料品(+0.08%)
4.紙・パルプ(+0.04%)
5.なし

値下がりセクターTOP5
1.精密機器(▲3.23%)
2.海運(▲2.54%)
3.電気機器(▲2.37%)
4.機械(▲2.21%)
5.鉱業(▲2.01%)

 日本株は7月オプションSQ算出に伴う先物・オプション主導での最高値更新から急転直下の下落により地合いが悪化。トランプ前大統領再選の思惑を孕んだトランプ・トレードや河野デジタル相による為替円安けん制発言などを受けて外需・ハイテク株売りとなり日経平均は39,000円台に往って来いとなりました。

 米ハイテク株安に加えて政府筋による為替円安の是正対応に日銀の利上げ観測が強まるとの見方から半導体株を中心に売りが加速。東京エレクトロンはじめ決算後急落のディスコ、さらに日経平均を押し上げていたアドバンテストや電子部品のTDKなどが全般軟調となり、日経平均は7/11の42,000円超えからおよそ一週間のうちに▲3,000円幅での崩落を演じることとなりました。

 この間に東証プライムの売買代金は再び4兆円割れとなり、海外勢が慎重姿勢に転じたことが浮き彫りとなっているほか、日銀利上げ警戒の強まりとともに新興グロース250指数も7/18戻り高値697.5ptから650pt台へと急落下しています。米利下げ観測の期待とともに買われた中小型株も一斉に巻き戻される動きで仕切り直しを余儀なくされます。

【米国株概況】
米大統領選をめぐる混乱とともに調整が進む米国株、米FRB利下げ転換が現実味を帯び金利の逆イールドが解消へ

NYダウ 40,415.44(+0.32%)[40,222~40,472] 
S&P500 5,564.41(+1.08%)[5,529~5,570] 
NASDAQ 18,007.57(+1.58%)[17,839~18,040] 
ダウ輸送株 15,900.2(+0.74%)[15,680~15,906]
半導体SOX 5,479.3(+4.03%)[5,344~5,482]
日経平均先物(CME) 39,950(+1.19%)[39,455~39,970] 
ドル/円 156.28~157.60(高値161.99:7/3、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 1.052%(高値1.104%:7/3、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 4.255%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 78.24(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2396.55(高値2,454:5/20、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 4.193(高値5.199:5/20、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)14.91(高値37.79:2022/2/24)
SKEW指数 141.38(安値110.34:2022/11/3、高値170.52:2/13)
Fear&Greed指数 56(GREED:貪欲)
High Yield Bond (HYG)78.27 (安値70.30:2022/10/13)

 米国市場は米経済指標悪化を論拠に米FRB利下げ観測が強まりつつある中、米大統領選をめぐる米共和党と米民主党の駆け引きが激化しバイデン米大統領が再選断念をうけて米民主党はカマラ・ハリス副大統領を擁立する構えをみせました。6月末の米大統領選TV討論会で失態を演じたバイデン米大統領への募る不安感とともに7/15のトランプ氏演説中における銃撃事件で支持率を急上昇させたトランプ前大統領の再選確率上昇に伴い、米株市場ではトランプ・トレードが賑わいをみせるなど政局混乱にからめた物色が活発化しました。

トランプ氏を共和党の大統領候補に正式指名、副大統領候補にバンス氏(2024/7/16)
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 しかし、米民主党陣営のカマラ・ハリス副大統領を有力候補とする戦略転換においてはトランプ前大統領再選を見越したトランプ・トレードも確定材料に乏しく、急速に膨らんだポジションの巻き戻しと相まってトランプ政策関連の銘柄が売られ、足元で売り込まれたハイテク株の買戻しが起きています。

焦点:「トランプ・トレード」活発化、減税・規制緩和・物価高織り込む(2024/7/18)
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 現状としては直近のハイテク株安による反動および自律反発の範囲にとどまる形で、ひとまず下げ止まりを確認した段階と言えます。米政治のノイズを一旦横に置きますと、足元のハイテク株安および米半導体株安は世界の半導体大手である蘭ASMLや台湾TSMCなどの決算売りをきっかけに引き起こされたほか、先週末の世界的システム障害による混乱を招いたクラウドストライクの影響が深刻化している実体経済が大きく関連し地合い悪化の要因となっているとみられます。

ASML11%安、20年3月以来の大幅下落-米規制リスクで不透明感(2024/7/17)
TSMC、4~6月の純利益は予想上回る-AI投資拡大(2024/7/18)
TSMC株が2%超下落、トランプ氏「台湾は防衛費払うべき」(2024/7/17)

 ただ、こうした混乱も米企業の決算シーズン入り前に史上最高値を更新していた米国株において調整材料に使われたといってよく、世界的システム障害なども単に大量空売りを含めた需給のアヤ的側面も否めません。大局的には米FRBの利下げ転換をふまえてのリバランス的な意味合いと合わせて考える必要があるでしょう。最終的に米FRBの利下げ時期が明確になるまでにはまだ紆余曲折を辿る可能性があるものの、米企業の決算通過を機に見直し買い機運も高まってくるものと思われます。

クラウドストライク空売り筋に9.78億ドル評価益-システム障害で(2024/7/23)

 とくに米利下げ転換に確信を深める過程においては、まず米利下げを正当化するための米経済指標悪化を連続で確認する必要があり、それに伴い米短期金利の上昇がピークアウトしてくることになります。また、それと同時に、米長期金利との逆イールド状態が徐々に解消に向かう流れが生まれ、主に米短期金利の高止まりで運用され滞留しているMMFの待機資金が少しずつでもリスク資産に移転していく動きが出始めることでしょう。

米「待機資金」1000兆円に膨張 高まる株式市場流入期待(2024/7/12)

 先日の米利下げ観測の高まりをうけて長らく低迷していた中小型株の物色が強まり、これらを中心に構成されるラッセル2000指数が急上昇する場面がみられましたが、今後より米利下げ転換に確信が持てるようになっていくにしたがい、米株市場内でも超大型株のマグニフィセントセブン以外の銘柄にも物色の広がりがみられるようになっていくことと思われます。問題はその時期であり、米大統領選を控える以上、当面はクオリティ・グロース株がやはり中心になる傾向が続くと思われ、まずは目先7月末の米FOMCで米利下げの実現時期を探っていく必要があるものと考えます。

中小型株に主役交代へ、米株市場に訪れた転換期-利下げ視野入りで(2024/7/17)

【日本株投資戦略】
急騰・急落のジェットコースターとなった7月相場、日銀政策修正の警戒を促す政府筋と会合後の株高再開のゆくえ

 日本市場は7月SQ週(第二週)における日経・TOPIXの同時史上最高値更新のところから急落、日経平均は6月の38,000~39,500円のレンジ上抜けを含め4000円幅で上昇した分をわずか1週間ほどで吐き出した形となっています。もっとも6月最終週からの上昇も急ピッチで42,000円台まで駆け上がった要因として、空売りの買戻しを中心としたショートスクイーズがあったとみられ、買戻しが一巡した後の反動安は致し方ない面もあります。

 しかし、その中で日本株には中東勢のオイルマネー流入観測や海外の政府系ファンドや年金ファンドなどの資金流入観測があったことも報じられており、実際に統計上の投資主体別売買動向でも海外勢の買い越しが確認されています。これらの背景には世界最大とも言われる日本の年金GPIFが日本株への投資割合を引き上げるとの見方もあり、先高期待が後押しされた側面もあるものと思われます。その一方、3連休をはさんだ日本市場では売買代金がそれまでの4兆円超えから急減し、7月第二週までの海外勢による日本株買い越し額は先物を中心としたものであったことや足元での株価下落が続いていることからの推測では、海外勢のスタンスには変化が生じている可能性も考慮する必要があるでしょう。

日経平均最高値、4万1580円 オイルマネー流入観測(2024/7/9)
日本とアラブ諸国、気候変動・新興技術で協力へ 閣僚会合(2024/7/11)
日本株市場で高まるGPIF期待、物価上昇で10年ぶり比率引き上げか(2024/7/17)

 この背景にはまず日本の政府筋による日銀への利上げ誘導ともとれる発言が相次いでいることや、3連休前の7/12に日銀・財務省による為替介入が実施されたことによる為替円高が日本株にとっての重しとなったことが大きいとみられます。とくに7/17の河野デジタル相発言はタイミング的にも日銀による国債買いオペ実施日と重なり、為替市場には必要以上に円高圧力が強まりやすくなった要因とみられます。政府・日銀は建前としては独立した機関であるものの、市場内ではもはや一体のものとみなされており、単なる要人発言による思惑では済まされない影響力があると言えるでしょう。

政府・日銀が為替介入 円相場、一時157円台半ばに(2024/7/12)
日銀は円安是正のため利上げを-河野デジタル相単独インタビュー(2024/7/17)

 もちろん政府筋が一連の為替介入や日銀利上げ誘導発言で日本株安を促す意図があったわけではないにせよ、折しも日銀の金融政策決定会合を月末に控え、関係者が政策決定に関する発言を控えるブラックアウト期間にあえてこのような発言が飛び出すこと自体おかしいと言わざるを得ません。つまり、政府・日銀が日本株にとって必ずしもマーケットフレンドリーではない現状において、海外勢によるスタンスの変更、あるいは海外勢においては為替円高で日本株安の影響はある程度緩和されることをふまえると、先物買い主導後の現物株買いにあたり押し目好機を演出する意図が背景にあるとみてもよいかもしれません。

 いずれにせよ足元では、指数影響の大きい半導体株に関する強弱感の対立が日本株のボラティリティを高める引き金となっており、追加の政府関係者から日銀政策に関する言及もみられる以上、日銀金融政策決定会合までは警戒感の高い相場となることを覚悟しておかなくてはならないでしょう。

自民・茂木氏、日銀の利上げ言及 「金融正常化を明確に」(2024/7/22)

 これらは必ずしも日銀が7月会合での利上げ決定を裏付けるものではないと思われますが、中央銀行の政策転換が行われる際には決まって相場が乱高下する事実から逃れることはできません。そんな中、日銀が現状維持を決定すれば金融緩和継続から警戒感が後退して再び日本株も上昇に転じるものと考えられます。ただし、日銀による利上げ警戒が払拭されるわけでなく、かねてより囁かれてきた9月・10月の公算が高まる中での期限付き上昇と言えるものかもしれません。このあたりは米利下げ期待と同様、そのXデーに向けて上昇していき、実際の利上げ実施で事実売りとなる可能性があるからです。

 日本株においては米国株ほどではないにせよ一部の大型株が集中して買われ、日経平均やTOPIXを押し上げている側面も目立つようになっているのが現状です。足元では割安な中小型株を物色する流れも垣間見える反面、日銀の利上げ実施に伴い影響が大きく出やすい新興グロース株にいたってはもう少し時間が必要かもしれません。

東証スタンダードの逆襲 「隠れた優良株」最高値相次ぐ(2024/7/17)
日本の中小型株高は短命に、トランプ相場に沸く米国と異なる金利事情(2024/7/19)

 しかしながら、足元の株価急落は今後の相場観を必ずしも方向づけるわけでなく、あくまでも米国株同様に高値調整の一場面と考えています。政府や日銀が本質的に金融正常化できる環境が整ってくるのであれば、日本はようやく悲願のデフレ脱却を果たすとともに、緩やかな利上げ環境の中での株高という流れが見えてくるようになるでしょう。そうした前提に立てば、日銀の7月会合に向かって警戒されている今週から来週にかけては4月中旬以来となる押し目買い好機と言えるかもしれません。

来週の日銀会合、弱めの個人消費で追加利上げ判断が複雑化-関係者(2024/7/22)

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