【1/10日本市場の確認ポイント】
日経平均 39,190.40(▲1.05%)[39,166~39,591]
TOPIX 2,714.12(▲0.80%)[2,714~2,736]
グロース250 644.72(+0.20%)[639~645]
値上がりセクターTOP5
1.その他製品(+0.67%)
2.金属製品(+0.59%)
3.精密機器(+0.55%)
4.水産・農林(+0.06%)
5.なし
値下がりセクターTOP5
1.海運(▲1.91%)
2.輸送用機器(▲1.70%)
3.医薬品(▲1.69%)
4.保険(▲1.45%)
5.銀行(▲1.44%)
日本株は大発会の大幅安から始まり、値幅を伴った激しい上下動を交えつつ日経平均40,000円を巡る攻防が繰り広げられています。米国では堅調な経済指標から米利下げ期待が後退、インフレ再燃や金利上昇警戒も強まる中、為替では米ドルが強含みの推移により日本株は「円安=株高」に下支えされています。
日本の金利も日銀利上げ観測と相まって上昇基調となり長期金利は1.2%が視野に、その一方で半導体株が好材料で一斉高したことや為替円安を背景に先物買いが主導して値がさ株が上昇を牽引し、日経平均が一時40,000円を上回る場面もありました。しかし、値上がり銘柄数が上回ったのは大幅高した7日のみで騰落レシオは低下、指数高値警戒感や戻り売り圧力が依然として強い様子が窺えます。
半導体関連の好悪材料が入り交じり、関連銘柄の指数影響の大きさから新年相場も上下に振らされる展開ですが、米利下げ観測の後退や日銀利上げ観測に伴う日米金利上昇が警戒される局面を考慮すれば十分健闘していると評価できるかと思います。とくにグロース市場ではテーマ株や直近IPO株を中心に短期資金の物色が活発化、指数も意外な程の底堅さをみせていると言ってもよいかもしれません。
【米国株概況】
米雇用統計で米利下げ期待が大きく後退、株・債券の同時安に拍車をかけるもまだ調整の範囲内
NYダウ 42,635.20(+0.25%)[42,327~42,656]
S&P500 5,918.25(+0.16%)[5,874~5,927]
NASDAQ 19,478.88(▲0.06%)[19,308~19,544]
ダウ輸送株 16,107.1(+0.21%)[15,914~16,123]
半導体SOX 5,162.9(▲0.95%)[5,104~5,207]
日経平均先物(CME) 39,545(▲0.04%)[39,390~39,930]
ドル/円 157.59~158.26(高値161.99:7/3、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 1.183%(高値1.18%:1/9、安値0.131%:2022/3/6)【高値更新】
米10年債利回り 4.689%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 73.92(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2692.60(高値2,801:10/31、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 4.314(高値5.199:5/20、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)18.07(高値65.73:2024/8/5)
SKEW指数 154.34(安値110.34:2022/11/3、高値180.09:12/24)
Fear&Greed指数 32(FEAR:恐怖)
High Yield Bond (HYG)78.94(安値70.30:2022/10/13)
米国市場は第39代米大統領のジミー・カーター氏の国葬・追悼により9日は臨時休場、年明けのISMやJOLTS、ADP雇用統計など米経済指標を難なくこなし堅調持続が示されたことから米利下げ観測は後退しています。米金利が一段と上昇を強める中で米株は一進一退の保ち合い状態、CESで話題を振りまいたハイテク株などに物色が集中する場面もありました。
◆米首都でカーター氏の国葬、政敵同士一堂に会し元大統領に最後の別れ(2025/1/10)
CESで注目を集めたAI、EV関連ではエヌビディア、テスラが筆頭格で大きく株価を押し上げる場面があったものの、物色は一時的なものにとどまり、反対に退任が近づいているバイデン米政権から対中敵視政策における輸出規制やブラックリスト追加発表などがあり投資家の警戒を誘うものとなりました。
◆エヌビディア、トヨタに自動運転向けAI製品を提供と発表(2025/1/7)
◆エヌビディア株のコールオプションで大量売り、株価最高値から反落(2025/1/8)
◆◆バイデン米政権、エヌビディア製などのAIチップ輸出規制強化へ(2025/1/9)
◆米国防総省、テンセントとCATLを「軍事企業」に指定(2025/1/7)
◆◆中国軍との協力疑われる企業リストにCATL、テスラが窮地も(2025/1/8)
さらに、市場の関心はトランプ新政権への移行を前にトランプ政策の見極めるにあたり慎重な姿勢も強まっており、一時期のトランプラリーで良い面にだけ目を向けるのでなく、現実的に市場への悪影響などにも注意を払いながらポジション調整も進んでいます。足元ではトランプ米大統領の再任にあたり早々に発出されるであろう新関税政策や政府機関、FRBの人員刷新などに加えて緊急事態宣言の発令なども取り沙汰されました。これらが直ちに米市場への悪影響につながるとは限らないものの、トランプ政策の及ぼす不確実性の高まりが投資家のリスク回避を促してしまうこととなります。
◆FRB副議長「辞任」で株高 トランプ2.0は米銀の味方か(2025/1/7)
◆FRBのバー氏、銀行監督担当副議長を退任へ-任期全う方針一転(2025/1/7)
◆◆◆トランプ氏、新関税へ経済緊急事態宣言を検討 米報道(2025/1/9)
トランプ政権一期目を経験している投資家であれば多少なりニュースやヘッドラインで伝えられる内容と現実に実行される政策とが異なる面やノイズとして割り切った方がよい区別みたいなものがあることを認識済みかと思いますが、左派メディアと対立するトランプ政権のクセみたいなものを理解しないとこの先ずっとニュースや株価の不可解な乱高下に振り回されてしまうことになるかと思います。トランプ相場の下では要人発言で市場が必要以上に動揺してしまうこともあるので注意しなければなりません。
足元ではなにより米金利上昇になかなか歯止めがかからない状況が喫緊の課題でしょう。トランプ関税に対するインフレ再燃懸念や債券プレーヤーたちの動揺が反映され米10年債利回りは2023年秋以来の5%が視野に入るまで上昇してきました。さらに米国の金利上昇の波は世界にも波及、株価への逆風といったどころか資本市場全体を揺るがしてしまう勢いです。加えて、週末の12月米雇用統計が金利上昇にさらなる拍車をかける強い内容となり、米FRBの利下げ期待後退というより利下げ停止もしくは将来的な利上げの可能性も含むような展開も前倒し想定もしなければならなくなりました。また、金利調節とは別に市場流動性のストレス状況も気をつけておきたい点で、QT(量的引き締め)終了時期の後ずれも要注意です。良く言えば今年前半は強い米経済が続くと米FRBが認識しているとの解釈ができる一方、景況感と市場環境は必ずしも一致するわけでなく需給のアヤが生じると急に不安定となりやすいことも6月までの注意点と言えるかもしれません。
◆米長期金利5%に備える債券市場、トランプ氏の就任間近-6%予想も(2025/1/8)
◆世界的な債券利回り急上昇、22年や23年の株価急落時に酷似-不安募る(2025/1/9)
◆米雇用者数は予想上回る、失業率低下-利下げ休止の論拠裏付け(2025/1/10)
◆◆FRBのバランスシート圧縮終了6月か、米銀予想が後ずれ(2025/1/9)
一方、市場の警戒とは裏腹にトランプ関税あるいはトランプ政策が及ぼす影響は世界経済にとってリスクには違いないながらも警戒が行き過ぎている可能性も否定できません。というのも、トランプ政策が選挙中の発言をすべて完全に実現できるとは限りませんし、また、デメリットだけでなくバイデン政権下においても進められてきたサプライチェーンの再構築やトランプ関税対策を名目に各国が財政刺激の枠を取り払って成長を追求するようになるメリット面も浮かび上がってくることでしょう。米株は高値調整の真っ最中ながら米企業の決算シーズンにも突入してまいりましたので、トランプ政策をめぐる不透明感といった曖昧な理由でなく地に足のついた決算で割高感を払拭することができるかが焦点と言えるでしょうし、トランプ米大統領就任後の反発を強く印象づけることと思います。
◆アングル:トランプ氏の関税公約で注目集める5つの市場、当面動揺継続か(2025/1/10)
◆◆トランプ氏の優先政策、5月までに法案可決させる-米下院議長(2025/1/6)
◆◆マスク氏、連邦支出2兆ドル削減の目標後退-選挙公約の修正相次ぐ(2025/1/10)
◆変わる世界経済、米国一強から「3極化」へ(2025/1/13)
【日本株投資戦略】
日本株の上値を抑える日銀警戒の金利上昇と米の対中政策、本格的なレンジ突破は企業業績懸念の払拭が肝心
日本市場は新年のご祝儀相場も7日の単発に終わり、米国と同様に金利上昇に歯止めがかからない状況で下値模索の展開を強いられています。為替が円安で推移しているものの日経平均の40,000円台はまだ定着が難しい様子で、昨年来あるいは長期スパンでの戻り売りによって打ち返しに遭ってしまいました。7日の大幅上昇に寄与した半導体株の切り返しが期待される一方、上昇を継続してトレンドを形成するには金利高の壁が立ち塞がり、日銀の追加利上げ時期を巡っても警戒感がなかなか解消されずにいます。
◆日経平均一時900円高 鴻海・NVIDIAがAI相場期待に点火(2025/1/7)
◆日経平均、再び4万円 信用期日明けの需給改善に期待(2025/1/7)
◆個人投資家、最高値で株売り越し 高齢層が「塩漬け」解消(2025/1/10)
足元では日本、米国のみならず金利上昇の波が広がっており、米利下げ期待の後退もこれに拍車をかける形となりました。金利上昇で恩恵を受けるのは金融株のみで銀行株などが高止まりしてきたことには一役買ったと言えますが、債券価格の下落でトレーディングに影響が出たり、債券の損失分を株式で埋めたりする運用機関なども出てくるため株式市場にとっては大きな逆風となります。今週中にある程度日銀の1月金融政策決定会合への警戒や重要な米経済指標発表および米FRB判断に影響を及ぼすマクロデータ、そして欧州主要国の政治混乱を嫌気した国債、通貨への売り浴びせなどが一巡してくるかが焦点となります。
◆日欧の金利上昇、でもドルは買い 米「例外主義」で加速も(2025/1/8)
まずは金利上昇に歯止めがかかることが第一で、次に為替の動向もポイントになってくるかと思います。しかし、株価上昇を期待できるようになるためにそれらは最低条件であり、全体でも個別でも上昇を刺激する材料がなければ日経平均40,000円トライしてもレンジを抜け出すのは難しいでしょう。今後過熱が見込まれるAI覇権競争で米中対立が色濃くなる状況下で日本の半導体企業はビジネスチャンスを取り込むはずですが、半導体株の戻りが限定的なうちは投資家も積極的にリスクをとりたいとは思わないでしょう。
◆◆中国7兆円半導体ファンド始動 トランプ次期政権に備え(2025/1/6)
◆◆米ハイテク業界団体、AI向け半導体の輸出制限規制の差し止め要求(2025/1/8)
◆◆バイデン米政権、AI半導体輸出で新規制発表-大半の国に数量規制(2025/1/13)
◆午前の日経平均は続落、米関税や半導体規制の強化を警戒(2025/1/9)
◆海運株軒並み安、米「一律関税」に警戒 自動車株にも波及(2025/1/9)
その一方、投資家が波乱の展開に萎縮して売買を手控えてしまうのもわかる状況ですが、日本株は昨夏からの調整局面から半年が経過することで需給面では信用取引の高値期日、安値期日がそれぞれ到来してきます。これら期日売りで上値が抑えられる一方、まもなく企業決算シーズンも近づいてきますので否応なく業績の良し悪しで現実と向き合うこととなります。ここでは投資家もずっと様子見に徹するというわけにもいかず売買も膨らむことになるかと思いますので、半ば強制的に需給整理が進むことが期待されます。もちろんトランプ政権移行まで戦略的に様子見に徹してきた投資家も1月下旬にかけては自発的に動き出しも考えられ、日本企業の業績懸念が払拭されると上昇もいよいよ本格化を期待できるようになってまいるかと思います。
◆信用買い残、2カ月半ぶり低水準 株価上昇で利益確定(2025/1/6)
◆海外勢の株買い越し、半年ぶり大きさ 12月4週(2025/1/9)
こうした中期的な観点でみれば日本株の波乱警戒は今週を乗り切ることが大きな関門であり、日米ともども金利上昇ピークを見極め時と言えます。為替円安で日銀の追加利上げ警戒も高まりやすい状況となってきましたが、昨年7月のお手つきという反省点をふまえれば1月利上げは見送るのではないかと考えられます。金利上昇さえクリアできれば企業決算にむけて押し目買いの好機でもあることから、あとは銘柄選別がカギになってくるかと思います。前回の昨年11月決算シーズンは7-9月期の為替がやや円高に振れて業績下振れも悪目立ちして海外勢の日本株投資見送りにつながった面も否めず、今回は年末の為替水準は明らかに円安で言い訳はききません。むしろ期末に向けては業績上方修正を出し渋ってきた企業や自社株買いなどの好材料を発表する企業も多く、実際に発表を確認してからでも上値余地は十分です。よって、新年相場は1月下旬からがいよいよ幕開けと言ってもよいでしょう。
◆長期金利、1.2%視野に 米金利先高観と円安圧力が共鳴(2025/1/8)
◆長期金利 国債利回り1.240%まで上昇 13年9か月ぶり高水準(2025/1/14)