【12/13日本市場の確認ポイント】
日経平均 39,470.44(▲0.95%)[39,247~39,734] 
TOPIX   2,746.56(▲0.95%)[2,732~2,756] 
マザーズ   644.81(+0.49%)[643~648] 

値上がりセクターTOP5
1.紙・パルプ(+3.75%)
2.海運(+1.43%)
3.その他製品(+0.60%)
4.なし
5.なし

値下がりセクターTOP5
1.機械(▲1.78%)
2.医薬品(▲1.75%)
3.その他金融(▲1.75%)
4.精密機器(▲1.58%)
5.電気機器(▲1.51%)

 日本株は日米金融政策にらみの展開の中、まず日銀追加利上げが見送られるとの観測報道があり、これに米CPI(消費者物価指数)結果をうけた米利下げ観測の高まりが加わったことでレンジ上限を突破。日経平均は一時40,000円台を回復しましたがその後の買いが続かず失速。12日は幅広いセクターに買いが広がったものの、けん引役は在で売買代金も4.4兆円にとどまりました。

 買い一巡後は半導体株の主力どころが上値を抑えられ、日経平均4万円回復で一段高に結びつくような展開とはならず。大きな焦点である日銀の12月利上げ見送りの観測が正しければ、為替円安も株高の支援材料となりそうなものですが外需株の見直し買いも限定的でした。日経平均・TOPIX・グロース250の3指数がいずれもそろってほぼ安値引けとなり、改めて戻り売り需要の強さが確認されました。

 日銀利上げ見送り観測を背景にこのまま円安株高で買い進めていくには、ライブで利上げ実施となり梯子を外されることへの警戒や、全体底上げとは言えない実態の薄い指数の高値警戒感がある以上、投資家はかえって売り急ぐ動機を与えられたと言えるのかもしれません。一方、日銀追加利上げの時期が12月・1月いずれの場合でも少なくとも五分五分までは市場の織り込みが進んだことからイベント後の下振れ時における影響が多少なりとも緩和されるでしょう。

【米国株概況】
米利下げ期待を織り込んだ後の相場展開へ、大型ハイテク株偏重に逆戻りし不安定さを孕んだ年末ラリー

NYダウ 43,828.06(▲0.20%)[43,790~44,054]
S&P500 6,051.09(▲0.00%)[6,035~6,078]
NASDAQ 19,926.73(+0.12%)[19,817~20,061]
ダウ輸送株 16,711.4(▲0.78%)[16,706~16,840]
半導体SOX 5,149.7(+3.36%)[5,070~5,184]
日経平均先物(CME) 39,570(+0.25%)[39,240~39,770] 
ドル/円 152.47~153.80(高値161.99:7/3、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 1.042%(高値1.104%:7/3、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 4.342%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 71.29(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2675.80(高値2,801:10/31、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 4.197(高値5.199:5/20、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)13.81(高値65.73:2024/8/5)
SKEW指数 169.91(安値110.34:2022/11/3、高値173.93:12/5)
Fear&Greed指数 50(NEUTRA:中立)
High Yield Bond (HYG)79.41(安値70.30:2022/10/13)

 米国市場は先行して高値更新の動きを続けたNYダウが7日続落と今週は利益確定売りに押される一方、米追加利下げ期待を背景に主力ハイテク株が躍進。ナスダックはついに20,000ptの大台達成し、年初来の上昇率は4割に迫る勢いとなりました。ハイテク株の上昇立役者はトランプ次期政権下での期待が高まるテスラを筆頭に、マイクロソフト、アップル、グーグル、メタ、アマゾンなどお馴染みのマグにフィセント7と称されるメガテック株が総じて高値圏に浮上。

◆◆米国株マネー総取り ダウ最高値、時価総額は世界過半に(2024/12/5)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB26BZT0W4A121C2000000/
◆ナスダック総合、初の2万突破 ITバブルと異なる稼ぐ力(2024/12/12)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN110DJ0R11C24A2000000/

 2024年を総括するように地政学の話題でボーイングやハネウェルなど軍需銘柄が脚光を浴び、米金融政策が利下げサイクルに転換する中でハイテク株の見直し買いも強まり、NYダウ・ナスダックどちらも史上最高値を更新するに至りました。米主導の戦争経済によって世界中にインフレの波が押し寄せましたが、基軸通貨米ドルを有する米国にとっては借金を膨らませて自国経済を回すことが正当化できることとなり、文字通りの米国株一強の状況を作り出したとも言えます。

 一時は米国経済のリセッション懸念も台頭し米金利市場のブームも巻き起こりましたが、その過程で資本市場では大規模なリスク資産移転が起こり、いまや株式市場外では待機資金の積み上がりやプライベート市場での代替投資なども進んでいます。米金融当局が提供した過剰流動性の大部分はいまだ吸収されず市場内にとどまっていることから、今後はこのリアルマネーの行き先が株式市場を選好するに足る理由づけができるのかが焦点となりそうです。すでに高値警戒感や米国市場への過度な集中をリスクとして指摘される中、待機資金の受け皿になるのは株か債券か、はたまたプライベート市場や仮想通貨などオルタナ投資に向かうのか、2025年のトランプ政権の再出発に際して金融市場がこれまでの延長線上にあるかは十分な見極めが必要です。

◆米金融幹部、25年は利下げで現金が資本市場にシフトと予想(2024/12/13)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/N3BV2EB5NZIMDCPKXRNUUJY5QA-2024-12-13/

 今後、米ドルの地位が揺らいで金や仮想通貨などの代替通貨を求める流れが加速することになるとしても米株市場はリスクマネーにとっての一丁目一番地です。米金融当局は米ドルの支配的地位の存続とともに金融緩和度合いの調節を図りながら、米国経済の底堅さを強調してグローバルマネーを呼び込んできました。一方ではインフレ圧力の緩和を背景に予防的に利下げ政策を再開し、米景気を刺激して市場期待をつなぎ止めることに尽力した結果、米国株はファンダメンタルズが悪化した欧州や中国、さらにトランプ関税での悪影響が懸念されるアジアや新興国からのマネーを吸い寄せたのでした。

◆米CPI、伸びが市場予想と一致-12月の利下げ観測強まる(2024/12/11)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-11/SOC0B7T0G1KX00
◆米PPIは予想に反して加速、卵急騰-PCE価格項目は伸び抑制(2024/12/12)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-12/SODUXJT1UM0W00
◆FOMCは来週追加利下げ、来年はペースを減速-エコノミスト予想(2024/12/14)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-13/SOFNVNT1UM0W00?srnd=cojp-v2

 こうした米国株一強の構図が続くためには相対的に米国株が選ばれ続けなくてはなりませんが、その米国株内においても一時期トランプラリーでみられた物色の変化、多様化が落ち着いて、足元では再びビッグテックをはじめクオリティグロース株への集中が見て取れます。要するに高値警戒感や不確実性が強まると収益力に優れたマグニフィセント7を依り代とする心理が働くのかもしれませんが、世界ではこうした市場独占的なビッグテックへの制裁や競争力を削ぎ落す規制の網が敷かれようとしており、グローバル課税強化の枠組みも実際に始まってくるところです。

 トランプ政策はビッグテックに規制圧力をかけて米国の国力を低下させるようなことはしないとみられますが、国際的な外交におけるディールの手札として活用を試みるでしょうし、必ずしも強力な支援者というわけではないことを肝に銘じておく必要があります。彼に協力的な企業には優遇されるかもしれませんが、そもそも米大統領選をめぐるテクノロジーの妨害が指摘された検索大手グーグルやSNS大手メタなどの影響力の高さを危険視され、事業分割やスピンオフ解体などに積極的に口出ししてくる懸念も拭えません。つまり、米国株もビッグテック偏重のままではいずれ頭打ちから規制当局によって翻弄されてしまうことにもなりかねないでしょう。

◆S&P500種の記録的上昇に亀裂、大型株躍進の陰で大半の銘柄出遅れ(2024/12/13)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-13/SOEIM0T0G1KW00?srnd=cojp-v2
◆アングル:ナスダックが初の2万ポイント台 大手ハイテク株が主導(2024/12/12)
https://jp.reuters.com/markets/japan/ISZ7WPG46NMYTIQBUI37W7L574-2024-12-12/
◆◆情報BOX:トランプ次期政権のFTC委員長、AIとテック大手への姿勢(2024/12/13)
https://jp.reuters.com/economy/industry/RI2EJXP27FJKDGCJWPC4J2HTHQ-2024-12-13/

 米国株は米FOMCを控えて米利下げ期待を背景に上値を伸ばしてきましたが、上記のCPI・PPIのインフレ指標をふまえると12月追加利下げはほぼ確実視されながらも来年の利下げ回数をめぐる見方に市場の関心が移っているように思われます。ひとまずトランプ政権に移行する前段階ではインフレ再燃に頭を悩ませる懸念は後退した一方、市場は利下げ余地の低下を先回りして米金利が低下しづらくなっている面も窺えます。米国の中立金利が市場予想以上に上昇し米金利高止まりが正当化されるようであれば、米国株の来年一段と上昇していくとの見立ては難しくなってしまうでしょう。

 他方、トランプ政策における対中貿易を中心に高関税政策を採ることによってインフレ再燃が意図的に促されるものであったとしたら米国株はインフレ下における実質金利の低下を背景に株高となる可能性が出てきます。とくに米金利がある程度高止まりする状況であっても実質金利が低下すれば自然と米ドル安に進むこととなり、米製造業の事業環境は改善に向かうと同時に米景気が強含みとなるでしょう。そうなると、米景気の好調から米株高、米金利高で米FRBはそもそも利下げする必要がない状況に置かれるようになるのではないかと思われます。

 そのような好循環経済が実現するかはまず米国以外の貿易相手国の経済がそもそも強靭でなければなり立たないと思われますが、最大取引先の中国が経済立て直しに成功するかはまだ半信半疑のところがあります。香港や上海、深圳といった金融・テクノロジーの中心地といった部分的な経済環境だけ切り取れば、来年前半にも中国経済の回復が世界経済にとっても重要な意味を持ち、世界的な株高を強力に後押しすることとなるでしょう。中国政府の政策効果の発現やトランプ関税の打撃が実体経済に与えていく影響の波及効果は時間とともに変化していく以上、ちょうどこのトランプ政権移行の今こそ潮目が変わる時であるとみられます。ゆえに、この年末年始はまさしく今後の不確実性が喧伝されるタイミングになるかと思われ、そういう時にこそ恐れず投資すべき時なのだと思います。

◆◆中国が25年に財政支出拡大の方針、消費喚起に軸足-米追加関税の恐れ(2024/12/13)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-13/SOENO1T0AFB400?srnd=cojp-v2
◆◆中国当局、不動産・株式市場の安定化策強化-金利と準備率も適時下げ(2024/12/15)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-15/SOJEA3T0AFB400

【日本株投資戦略】
日銀追加利上げに根強い警戒感、そもそもデフレ完全脱却から利上げできる経済環境が整ったのか?

日本市場は日銀利上げ観測の後退とともに長期金利の上昇が一服、為替が円安方向に進んできたことを手がかりに日経平均が先週一時40,000円台回復の場面もみられました。日本でも米国に続いて年末ラリーへの期待も高まりそうな場面ですが、売買代金は膨らみきれず上値の重さを意識せざるを得ない状況が続いています。チャート上には不穏なアイランドリバーサルが出現したことで、今年7月や10月のSQ日近くでも確認されてその後の相場下落を暗示したシグナルだけに、高値警戒感と相まってなかなか無視できないものとなっているようです。

◆日経平均378円安 「離れ小島」出現で年末株高に黄信号(2024/12/13)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB135IS0T11C24A2000000/

 日銀が今年3月にマイナス金利解除、そして7月に最初の利上げに踏み切った結果、日経平均が40,000円超えを推移した時間は非常に短く、いかに日銀が実質金利の低さを強調しようとも投資家のリスク選好度がなかなか高まっていない現状があります。政府からも日本のデフレ脱却宣言がなされていない現状、日銀がさらに追加利上げに踏み込まなくてはならない理由は無さそうなものですが、それでもなお市場では日銀警戒を続けざるをえない事情があるものと思われます。世界では利下げサイクルが一段と進み、日銀との政策乖離がより強まろうとしている中、日本が他国と比べて景気過熱している状況にでもあれば利上げして当然と思えるのですが、「8.5ショック」以降の日本市場の脆弱性を考えると無理に市場を動揺させるだけのような気がしてなりません。

◆スイス・ECB利下げ、広がる消去法のドル買い(2024/12/13)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFL130B80T11C24A2000000/
◆日本株、年明けは相対優位 海外マネーが米国株から分散(2024/12/13)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFL131VDTT11C24A2000000/

 日銀のリーク報道か定かではありませんが、先週の大幅上昇は日銀の12月利上げ見送りの公算が高まったことが主因であったと考えます。その一方、市場内ではたしかに12月利上げ確率が低下したものの代わりに来年1月利上げは確実視されるような状況となっており、いずれにしても近いうちに追加利上げに踏み切るとの見方には変わりありません。これが結局のところは来年の利上げターミナルレートを1%台半ば~後半との見方が変化するものでなく市場の重しになってしまっています。

◆◆日銀は利上げ急がず、今月見送りでも物価加速リスク小さい-関係者(2024/12/11)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-11/SO24P9T0AFB400
◆◆日銀会合前のコミュニケーションでトレーダー混乱-利上げ時期巡り(2024/12/11)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-11/SOB59BT0G1KW00?srnd=cojp-v2
◆来年1月の日銀利上げを5割超が予想、12月とほぼ二分-サーベイ(2024/12/12)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-12/SO860XT0AFB400?srnd=cojp-v2
◆◆日銀が政策維持でも根強い早期利上げ観測、植田総裁の記者会見を注視(2024/12/16)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-15/SOIGXVT0AFB400?srnd=cojp-v2

 他方、日銀12月利上げ警戒が後退したとはいえども実際には7月サプライズ利上げのようなこともあったために市場の警戒は根強く、また、今回も政府がデフレ脱却を宣言するに至らない状況であったとしても将来的には物価上昇と賃上げの好循環が見込めそうなら、できるときに利上げしておこうとの考え方も捨てきれません。日本経済の回復及び利上げ政策がコロナ禍以降の世界経済よりも周回遅れであるところに、景気後退の波が押し寄せてきた時は金利低下の余地が全くない状況では日銀も打つ手なしの状況に追い込まれてしまうからです。おそらくはウクライナ戦争などに片足を突っ込むことなく国内経済の回復や日本への資金還流を最優先にしておけば金融正常化も早められたかもしれませんが、岸田政権下における外交戦略のミスが後々大きなツケを払わされることになるかもしれません。

◆◆10月実質賃金は横ばい、3カ月ぶりマイナス圏抜け出す=毎月勤労統計(2024/12/6)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/YGOWHJLEIRPGHDKXG3I7R25OHQ-2024-12-05/
◆大企業製造業の景況感が2期ぶり改善、日銀利上げの支えに-12月短観(2024/12/13)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-12/SKLR03T0G1KW00?srnd=cojp-v2
◆日銀は早期利上げ必要、対応が遅れている可能性も-吉川東大名誉教授(2024/12/10)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-10/SO7K0IT1UM0W00?srnd=cojp-v2
◆インタビュー:野田立民代表「金融政策は早く正常化を」、円安は消費者にマイナス(2024/12/6)
https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/PIJEY7FHBJKSDHQAUWDME7D4M4-2024-12-06/

 最終的にはウクライナ戦争終結後の復興利権分配で大企業や政治勢力の一部などは多大な恩恵が得られるようになるかもしれませんが、まず何より先に日本経済の国力を最大化するためにエネルギー政策の見直しが急務です。すべての経済活動に伴うエネルギーコストが低下すれば家計、企業における事業活動、国家の貿易収支といった多くの分野でインフレ耐性を備えることができ、さらにそこを起点に家計は貯蓄から投資へ、企業は人的コストや新たな設備投資を積極化させることができ、政府は資源国との貿易において交渉カードを充実させることにつながります。金融立国にしても科学技術立国にしても先ず初めはエネルギー政策が土台であり、逆にこのような歴史的インフレ下でエネルギー問題を先送りにして国富の流出を招いているのは政治責任が大きいですが、日本国民一人ひとりが豊かさを取り戻すためにエネルギー問題と向き合うべき時が訪れているのだと思います。その次はデジタル赤字で、電力インフラを備えた先には将来のAI競争で勝ち抜くことが求められ、いまや経済安保だけでなく軍事安保の分野でもAIやドローンといった軍事品の開発といったものまでが科学技術力に直結する未来に向かっているように思われます。

◆◆原発の「依存度低減」文言削除へ 次期エネ計画案(2024/12/12)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA11CS80R11C24A2000000/
◆◆石破首相、原発活用「安全性が大前提」 参院予算委(2024/12/13)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA130TV0T11C24A2000000/
◆◆「1年で26兆円消滅」 エネルギー戦略なき日本 ーエネルギーの新秩序・国富を考える まとめ読みー(2024/12/15)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB13D350T11C24A2000000/