【12/6日本市場の確認ポイント】
日経平均 39,091.17(▲0.77%)[38,940~39,468]
TOPIX 2,727.22(▲0.55%)[2,719~2,745]
マザーズ 634.03(▲0.73%)[631~636]
値上がりセクターTOP5
1.空運(+0.73%)
2.電気・ガス(+0.27%)
3.精密機器(+0.17%)
4.紙・パルプ(+0.15%)
5.鉱業(+0.09%)
値下がりセクターTOP5
1.非鉄金属(▲2.67%)
2.その他製品(▲1.90%)
3.保険(▲1.38%)
4.電気機器(▲1.08%)
5.卸売(▲0.96%)
日本市場は米株高とともに年末ラリーへの期待感で日経平均は39,000円台で売買が交錯する一方、日銀追加利上げや為替の円高警戒も根強く上値が抑えられる展開となっています。米国による対中半導体規制強化発表に伴い事前警戒で売られてきた東京エレクトロン(8035)が対象外となったことが好感され買戻しの動き、さらに中国の新疆ウイグル産綿花をめぐるネガティブ報道で一時大幅反落のファーストリテイリング(9983)も力強く反騰し、日経平均押し上げに貢献しています。
日経平均寄与度上位の主力株が上昇して年末高に向けた期待感を醸成する一方、指数の高値警戒や年末が近づくにつれて節税売りが意識される銘柄の弱含みも目立ちます。現環境で年初来安値を更新する銘柄においては需給悪化を意識した見切り売りも出やすく、その多くが今年前半に大きく上昇した過程で信用買い残を積み上げた銘柄にその傾向がとくに強く表れているとみられます。
同じセクター内でも明暗が分かれていたり、同じテーマ株に分類される中でも強弱感が二分されるなど、個別株ごとに需給面の良し悪しがパフォーマンスに直結し、こうした傾向は大型・小型株問わず物色の二極化が鮮明です。年末相場の風物詩とも言えますが、市場参加者が徐々に減って商いが細るにしたがい見切り売りが嵩みやすく、下値模索の銘柄はとくに注意が必要な場面になってきます。
【米国株概況】
年末ラリーで主要株式指数の最高値更新相次ぐ、大型ハイテク株偏重に懸念も海外の政治混乱で米株一択の相場後押し
NYダウ 44,642.52(▲0.28%)[44,596~44,923]
S&P500 6,090.27(+0.25%)[6,079~6,099] 【高値更新】
NASDAQ 19,859.77(+0.81%)[19,734~19,863] 【高値更新】
ダウ輸送株 16,879.4(▲0.57%)[16,845~17,127]
半導体SOX 5,060.4(+0.68%)[5,019~5,073]
日経平均先物(CME) 39,335(+0.78%)[38,945~39,470]
ドル/円 149.37~150.70(高値161.99:7/3、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 1.050%(高値1.104%:7/3、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 4.153%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 67.17(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2654.90(高値2,801:10/31、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 4.196(高値5.199:5/20、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)12.77(高値65.73:2024/8/5)
SKEW指数 168.05(安値110.34:2022/11/3、高値173.93:12/5)
Fear&Greed指数 53(NEUTRA:中立)
High Yield Bond (HYG)79.86(安値70.30:2022/10/13)
米国市場は感謝祭明けで事実上の年末相場突入となり、一連の米経済指標の発表などを意識しながらもトランプラリーから年末ラリーへ移行する流れで概ね堅調な展開が続きます。米PCE価格指数や米雇用統計といった米FRBの金融政策を占う重要指標の発表が相次いだ中でも12月FOMCでの0.25%利下げ見通しを補強する結果となり、米株相場はゴルディロックス(適温相場)継続への期待感とともにハイテク株主体のナスダックも最高値更新に至りました。
◆米PCEコア価格、前年比の伸び加速-FRBの慎重姿勢を裏打ち(2024/11/28)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-27/SNM761T0G1KW00?srnd=cojp-v2
◆米11月雇用22.7万人増に急回復、失業率は4.2%に悪化(2024/12/7)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/GCAGW2WL2BKN5DJDH6CPNKYMAY-2024-12-06/
NYダウ、S&P500、ナスダックに加えて小型株指数のラッセル2000も含め主要株式指数がこぞって最高値更新の動きとなる中で資金循環がうまく機能していると言えるほか、11月のトランプ相場で上昇警戒が高まった米金利動向においても米財務省によるバイバック(買戻し)で流動性資金が供給され米国市場を強力に下支えしているとみられます。
◆債券トレーダー、米国債相場の回復続くと予想-先週までの想定を転換(2024/12/4)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-04/SNXTUEDWLU6800?srnd=cojp-v2
米国経済はインフレ再燃のリスクが拭いきれない中でも米FRBの利下げサイクルを継続、先日の米雇用統計でも概ね市場予想どおりで一時懸念で覆われた米労働市場のゆくえについてもさほど心配には及ばない状況としてソフトランディング実現を米株高という形で体現しています。この年末ラリーの強気ムードが続くかどうかは、歴史的インフレの中でも賃金上昇に支えられ堅調な米個人消費を背景に年末商戦の盛り上がりや米企業の景況感などがカギとなりそうなものの、とくに米製造業の指標改善などに注目する限りでは死角がないように見受けられます。
◆米ISM製造業景況指数、予想を上回る-新規受注が拡大圏に浮上(2024/12/3)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-02/SNVGE0DWLU6800?srnd=cojp-v2
◆12月の米利下げ観測強まる、確率約80%に-雇用統計で失業率が上昇(2024/12/6)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-06/SO2RYHDWLU6800?srnd=cojp-v2
他方で気にしておくべきは米国以外、とくに米国追従の西側諸国、同盟国とされる国々の政治混乱が次々と表面化してきていることかと思います。欧州では主要国のドイツに続きフランスでも政権崩壊に追い込まれ、また、韓国でも前代未聞の戒厳令が敷かれて騒然となるなど次々に米国とともに戦争経済に加担した国の政権基盤が崩壊しています。いずれも金融市場に与える影響としては一時的にフランス国債や韓国株、韓国ウォンの急落などがあったものの市場混乱には至らず、金融システムは部分的なノイズとして消化しただけですが、これらの混乱はまだ尾を引く可能性があることには留意しておくべきかもしれません。米国の世界戦略において対中、対ロおよび対北朝鮮といった反米国への敵視政策を続けている以上、安全保障面での結束に綻びが生じた際には地政学リスクを強烈に意識させられる展開可能性、その火種がばら撒かれていることに他ならないからです。
◆◆独首相、早期総選挙に意欲 12月に信任投票実施の用意(2024/11/11)
https://jp.reuters.com/world/europe/55WR2RGE5ZLOBB5UIRU2X75AWM-2024-11-10/
◆◆フランス内閣への不信任可決、58年以降最短で総辞職-混迷深まる恐れ(2024/12/5)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-04/SNZ9M1DWRGG000?srnd=cojp-v2
◆◆韓国戒厳令巡り国際的な反発、「グローバル中枢国家」が看板倒れ(2024/12/4)
https://jp.reuters.com/world/security/V3UY4GDRZZIY3OTVYLT3UJWTRY-2024-12-04/
◆◆韓国の政治混乱長引く恐れ 権力空白、アジア安保に影響(2024/12/5)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM056KF0V01C24A2000000/
率直に申せば、米国主導の戦争経済で覇権国、基軸通貨国である米国は政治および財政懸念といった内政の混乱を覆い隠し強い米国経済、米国株高に結びつけることを可能としたわけですが、それを支援した各国には多大なシワ寄せが及ぶこととなり、かえって世界の安全保障や経済・貿易システムの混乱を招いたのが現状と言えます。しかし、長年にわたり見て見ぬフリをしてきた世界の矛盾や課題が浮き彫りになった結果であり、これを解決に導くリーダーシップこそが米国に求められてきた役割でもある中で、米国が次期トランプ政権下において主導的にウクライナ問題の解決を図ることができるならば同盟国やパートナー国も報われ、リスクマネーの躍動がさらに高みをめざすことにつながることと思います。
◆◆◆平和サミット、「近い将来」第2回開催の用意=ウクライナ高官(2024/11/29)
https://jp.reuters.com/world/ukraine/TF5PRBBJJ5OAHI73QAKFKU62SY-2024-11-28/
◆◆ウクライナ終戦へ領土割譲やNATO加盟断念、トランプ氏側近が提案=関係筋(2024/12/4)
https://jp.reuters.com/world/us/ZLKUGEOS5RO5HFSE7KL24G3TPE-2024-12-04/
【日本株投資戦略】
年末ラリー期待で日経上値トライも勢い不足、日銀利上げ警戒と年末節税売りが想定以上で上値抑制か
日本市場では米株高をうけて朝方の買いが先行した後に失速するという展開が続き、日経平均が39,000円を回復した後も40,000円の壁をなかなか突破できずにいます。今夏の「8.5ショック」以降で下値を徐々に切り上げつつ三角保ち合いを形成するも、40,000円接近の場面で上値が重くなってしまいます。足元で米国による対中半導体規制の発表に際して日本企業の対象除外が明らかとなったことを好感した半導体株高で4度目のトライに挑むも上昇の勢い不足が鮮明となりました。
◆日本株、「三角もちあい」上放れならずか 根強いレンジ相場(2024/12/6)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFL062CL0W4A201C2000000/
◆◆米が対中半導体規制を強化-AIメモリーや製造装置へのアクセス制限(2024/12/2)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-02/SNUORUT1UM0W00?srnd=cojp-v2
この背景には、東京エレクトロン(8035)やアドバンテスト(6857)など半導体の主力株が反発して日経平均押し上げに一役買った一方、全体で上値を試すほどの影響は及ばず、売買代金は再び4兆円割れと年末株高への期待感よりも手控えムードが強い相場が継続することとなりました。日本株の上値が抑えられている要因は一つに日銀の追加利上げ警戒があり、二つ目はそれに伴う為替円高で企業業績を圧迫するとの懸念、そして需給面の重しとして各金融機関の外債パフォーマンス悪化による日本株益出し売りでの相殺や個人投資家における年末の節税対策の売りなどが挙げられるかと思います。
◆◆「円安は日本株買い」の方程式崩れる、正反対の日米金融政策が影響か(2024/12/6)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-05/SNUYZ5T1UM0W00?srnd=cojp-v2
市場は12月日銀金融政策決定会合に焦点を当てるとともに日本国内のインフレの現状を確認、植田日銀総裁も具体的な言及を避けながら12月追加利上げ可能性を否定せずでしたが、かと言って、その後の日銀内でハト派と目される中村日銀委員の発言により追加利上げを急いでいるわけでないことも確認できました。これによって市場は良くも悪くも中立、身動きがとりづらい状況となったことで現在の膠着相場に落ち着いているとの見方が妥当なところかと思います。
◆東京消費者物価3カ月ぶり伸び拡大、エネルギー補助縮小-利上げ後押し(2024/11/29)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-28/SNHFQUT1UM0W00?srnd=cojp-v2
◆◆日銀利上げが射程圏、経済・物価は想定通り-今月なら35年ぶり年3回(2024/12/3)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-02/SNRKG7DWRGG000?srnd=cojp-v2
◆◆賃上げ持続性に自信持てず、緩和度合い慎重に調節-中村日銀委員(2024/12/5)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-05/SNY30VDWX2PT00?srnd=cojp-v2
◆円は対ドル150円台半ば、利上げ観測後退一服-中村委員発言で下落も(2024/12/5)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-04/SNYIG7DWX2PS00?srnd=cojp-v2
日銀利上げが必ずしも日本株の売り材料になるとは言えませんが、前回7月のサプライズ利上げ後に「8.5ショック」で奈落の底に突き落とされたトラウマがあるおかげで投資家も必要以上に慎重にならざるを得ない事情があるとともに、上記の上値抑制要因が複数横たわっている現状を鑑みますと積極的に上値を買う投資主体がいないことが浮き彫りとなっています。
◆◆日銀利上げ、市場で高まる「1月」論 円安なら前倒しも(2024/12/7)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB061N50W4A201C2000000/
そんな中、年末を控えたこの時期には以前取り上げた企業の中間決算に伴う配当金が順次支払われ、再投資資金の流入が期待されるところですが、東証の集計による投資主体別売買状況によると個人投資家の手口でも大きな買い越しにはつながっていない模様です。おそらく再投資はしているはずですが、それ以上の売り物を抱えて売り買いが交錯しているものとみられ、他方でファンドや金融機関のファンドマネージャーは売り姿勢継続、海外勢も米国株高に伴い積極的なリスクテイクが期待されながらも売り越しと買い手不在の状況が明らかとなりました。単に日本株の需給好転が遅れているだけの可能性も考えられますが、証券会社のアナリスト陣が喧伝するような年末株高シナリオは今のところ不発といわざるを得ない状況で、根強い日銀警戒がまだ続くとすれば12月中旬のイベント通過まで待つ必要があるでしょう。
◆海外勢、日本株売り越し 11月4週「トランプ関税」警戒(2024/12/5)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB05AVB0V01C24A2000000/
◆配当再投資7兆円の行方、受け皿はバリュー株か-物言う株主も後押し(2024/12/4)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-04/SNW2WYDWLU6800?srnd=cojp-v2
引き続き米国株一強やトランプラリーの産物たる仮想通貨の別次元相場に目を奪われている間は日本株の冴えない展開に嫌気した投資家の見切り売りが強まりやすい状況かもしれません。一方で、日本株を特段売り込むには材料不足で、大きな地政学リスクなど急激に為替円高が進むような状況にでもならなければレンジや三角保ち合いの下放れといった動きにもつながりにくいと言えます。いわば膠着感の強い相場ですが、その後には保ち合いを放れた方向に急発進するエネルギーを溜めている状況で、来週には日銀イベントや半導体キオクシアの大型IPO
などを控えているとあって、とにもかくにも指数影響の大きい半導体株の動向を注視しておく必要があるかと思われます。