【11/1日本市場の確認ポイント】
日経平均 38,053.67(▲2.63%)[37,946~39,512] 
TOPIX   2,644.26(▲1.90%)[2,638~2,671] 
マザーズ   619.96(▲1.64%)[619~624] 

値上がりセクターTOP5
1.ガラス・土石(+0.57%)
2.なし
3.なし
4.なし
5.なし

値下がりセクターTOP5
1.非鉄金属(▲2.84%)
2.輸送用機器(▲2.83%)
3.電気機器(▲2.78%)
4.化学(▲2.70%)
5.機械(▲2.40%)

 日本市場は衆院選通過後の買戻しが一巡とともに日銀金融政策決定会合後の植田総裁会見におけるタカ派トーンを意識して円高・株安の警戒感が強まりました。半導体のレーザーテック(6920)やソシオネクスト(6526)のほか、富士通(6702)、日立(6501)など決算ミス銘柄の大幅安が目立ち、米大統領選はじめ米雇用統計や米FOMCなど重要イベントを控えながらの3連休前ということもあって警戒売りが加速したとみられます。

 日経平均寄与度の大きいファーストリテイリング(9983)、アドバンテスト(6857)、東京エレクトロン(8035)、ソフトバンクG(9984)など主要銘柄が大幅な下落を演じたことで日経平均の下げ幅は▲1,000円超となり、TOPIXやグロース250指数をアンダーパフォーム。東証プライムの騰落銘柄数は値上がり219/値下がり1404、セクター別にはガラス・土石以外が値下がりと全体に売りが波及した一方、三菱電機(6503)やパナソニック(6752)など電機株の一角や銀行株など決算好感や日銀年内利上げ観測などを手がかりとした銘柄には逆行高するものもみられました。

 日銀による追加利上げの年内となる可能性も再燃したことは、日本株にとって為替の円高警戒や新興・グロース株への逆風も意識されやすい環境下に置かれたわけですが、もとより衆院選や今後の政局混乱をふまえて様子見姿勢が強かったこともあり市場反応は比較的冷静に受け止めたといってもよいかもしれません。その一方、目先の焦点となっている米国情勢や個別の決算に関しては市場参加者の手控えムードで反応が大きくなりやすい点には留意しておくべきでしょう。

【米国株概況】
米大統領選目前でトランプラリーの一部巻き戻し、米金利上昇警戒と米FOMCでのQT停止議論に注目

NYダウ 41,794.60(▲0.61%)[41,647~42,035]
S&P500 5,712.69(▲0.28%)[5,696~5,741]
NASDAQ 18,179.98(▲0.33%)[18,112~18,308] 
ダウ輸送株 16,287.9(▲0.39%)[16,276~16,460]
半導体SOX 4,975.0(▲0.53%)[4.960~5,051]
日経平均先物(CME) 38,375(+0.67%)[38,250~38,655] 
ドル/円 151.54~152.50(高値161.99:7/3、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 0.946%(高値1.104%:7/3、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 4.287%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 71.69(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2745.90(高値2,801:10/31、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 4.430(高値5.199:5/20、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)21.98(高値65.73:2024/8/5)
SKEW指数 148.95(安値110.34:2022/11/3、高値170.52:2/13)
Fear&Greed指数 43(FEAR:恐怖)
High Yield Bond (HYG)78.97(安値70.30:2022/10/13)

 米国市場は米大統領選投開票や米FOMCなど重要イベントを前にした様子見姿勢が一段と強まりやすい中、前週末に発表された10月米雇用統計では大規模なハリケーン災害やストライキの影響で事前予想を大きく下振れしたことがかえって目先の米FOMCでの追加利下げを後押しするものと受け止められ、1日の米株は3指数そろって反発。ハイテク株のアマゾンやインテルの決算後の大幅高も光った一方、週明けは米大統領選直前の混戦模様から先週までのトランプラリー巻き戻しも誘い、株安のほか米金利、米ドル、ビットコインなどが下落しました。

米10月雇用1.2万人増、予想大きく下回る ストや自然災害響く(2024/11/2)
「トランプトレード」見直し進む、ドル・米金利が下落-原油は上昇(2024/11/4)

 世界中が注目する米大統領選をめぐっては上院での米共和党優勢が拡がりをみせる一方、米大統領や下院の情勢にいたっては大接戦や選挙不正懸念も取り沙汰される中で不透明と言わざるをえない部分が多く、直近の世論調査ではトランプ氏勝利と上下両院を米共和党が制するレッドスウィープとなる可能性も十分あるのですがマスコミの報道含め真偽が見えづらいのが実態というほかありません。

 そうである以上、米大統領選の結果判別における混乱含めてノイズとみなすのも一つの手と言え、基本的には様子見としつつ米追加利下げに関しては今回の米雇用統計でほぼ確実視できるようになりました。あとは金利上昇の一服を見極めながら押し目買いのタイミングを窺いたい場面でもありましょう。米大統領選をめぐっての不安定な展開は瞬間的に下振れを演出すると同時に米大統領選出後にはいずれの候補に決まっても株高政策を強調するであろうことは明らかです。

 のこる障害は米金利市場の動向および米FRBの利下げ見通しになるわけでして、足元の米2年債利回りが4.2%近辺まで上昇してきたことは米利下げサイクルの方向性として今年はともかく来年の追加利下げ余地を著しく縮減されることを織り込んでいる状況といえ、下手すると来年早々にも利下げ打ち止めとなる可能性を示唆していることです。

 これに加えて、前回、前々回での解説の中で取り上げた米国債をとりまく状況からリスク点検しておく際に、タームプレミアム上昇だけでなく市場の流動性といった観点において米財務省の米国債発行計画やQT(量的引き締め)の終了時期をめぐる議論、さらにこれらにまつわるリスクを補完してきたリバースレポ残高もいよいよ枯渇する事態に直面しているとあって、どこかでボタンの掛け違いが起こると米金利はどんどん上昇して歯止めがきかなくなる恐れがあります。

◆◆米国債市場に警告サイン-「タームプレミアム」急上昇がリスク示唆(2024/10/24)
◆◆SOFRが再び月末に急上昇か、記録的な米国債入札決済額で-GS(2024/10/29)
◆◆NY連銀、SOFR算出方法を11月から変更-スペシャル取引も調整(2024/10/25)
米財務省、四半期入札規模を1250億ドルで据え置き-ガイダンスも維持(2024/10/31)
◆◆ウォール街、QTの行方に注目-米短期金融市場で流動性圧力上昇(2024/10/2)
◆◆FRB流動性調節手段の資金フローに「異変」 QT軌道修正必要か(2024/10/2)
◆◆米金融当局のリバースレポ利用額、21年5月以来の2000億ドル割れ(2024/11/2)

 米国債の受け皿として期待されているSRF(常設レポ)制度の利用という手もありますが、依然として米金融機関の利用状況はそれほど浸透していない実態を鑑みても、米FRBは今後の政策予見性を高めるためにも金利調節とは別にQT終了に向けた議論を開始することが次回米FOMCでの焦点となるかもしれません。逆にそうでなかった場合、米金利だけでなく英国や日本といった金利上昇の波全体をとらえた場合、世界的な財政拡張への警戒感が市場の懸念を今以上に煽る展開もあり得るため債券ムラの混乱が株式市場に飛び火してきても不思議ではないということになってしまいます。

 ただ、おそらくは足元の重大イベントリスクを通じた株価調整や金利上昇といった動向の多くはヘッジファンドや短期筋による投機的な取引による影響が強めに出ている面があり、その多くにおいてイベント後に一定の巻き戻しが起きることを想定しておくことが大事かと思います。トランプトレードが行き過ぎたものであれば結果としてトランプ氏勝利であっても事後の材料出尽くしといった反応をみせたり、米金利上昇の反転といった必ずしも教科書どおりの市場相関関係は機能しなくなる可能性までも考慮の上、結果として様子見という選択が大勢を占めることになっているとみられます。そしておそらく、11月後半にもなれば一連のイベント通過後、すなわち米大統領選の結果が判明にしたがってリスク選好したい投資家の衝動を抑圧してきた反動も強く出てくるとみられ、歴史的な水準に積み上がった待機資金も動き出すきっかけになるかもしれません。

米MMF総資産また過去最高、6兆5100億ドルに-高利回り追求の動き(2024/10/25)

【日本株投資戦略】
日銀タカ派姿勢を受けて株安も為替円高進行は限定的、米大統領選に伴うリスクイベントは様子見対応

 日本市場は10月末の日銀金融政策決定会合での植田総裁会見をふまえて年内の追加利上げ観測が再浮上、日経平均は39,000円の節目を突破したのも束の間、再び38,000円付近まで押し戻されることとなりました。これには日本株への影響が大きい半導体株における決算後の動向に左右されている面が否めませんが、それをさておくとしても米国をとりまく重要イベントが目白押しであることや国内の政局にらみで積極的にリスクを取る向きが極めて限定的であることに起因しているものとみてよいかと思います。

植田日銀総裁、利上げ判断に「時間的余裕」は使わず-金融政策維持(2024/10/31)
日経平均は大幅続落、連休前に手じまい 日銀利上げの警戒くすぶる(2024/11/1)

 日本株も決算シーズンが本格化して個別銘柄の決算反応に一喜一憂する場面が多くみられており、3連休前の警戒ムードと相まって普段以上にポジション縮小してリスクイベントに備えたい投資家の意向を反映しているものとみられます。とくに投資家の短期志向が強まっている現在、中間決算に対する投資家の握力は弱まっている傾向が窺え、為替見通しの複雑化によって通期に対する利益進捗率や業績の上方修正の有無で投資家の目線は一層シビアになっている様子がみてとれます。

 半導体株ひとつとってみても生成AI需要を取り込めるかどうかでディスコ(6146)、アドバンテスト(6857)など好業績銘柄とルネサスエレクトロニクス(6723)、ソシオネクスト(6526)など減収減益の銘柄とでは強弱感の対立が鮮明に出てしまっており、電機や機械、自動車といった外需銘柄の間でも単なる為替前提の比較影響にとどまらず明暗がくっきり分かれる株価反応となっています。これには短期筋による決算プレイが幅を利かせるのが常とはいいながら、セクター内での銘柄選別の目が厳しくなっていることも事実で、総選挙を経て日本株全体でのリスク許容度が低下していることもまた一因ではないかと思われます。加えて、本日より東証の取引時間延長にかかる措置により短期筋が主導する市場影響は一層強まることにも注意を要します。

東証、5分間の注文受付導入 終値間際の取引集中一段と(2024/10/26)
東証の取引延長、恩恵は短期アルゴ勢に集中か-機械的な株価変動警戒(2024/11/1)

 ただし、日本国内の政局混乱は11/11以降、国会召集に伴う首班指名選挙を経てある程度は不透明感解消につながるとみられ、今回の日銀タカ派トーンが日本株の上値抑制作用があるにしても為替が急激に円高に傾くといったことがない限りは反対に売り込まれるといった理由も見出しにくい状況です。結局のところ次期首相、あるいは石破政権の存続に対する懐疑的な見方があるにせよ良くも悪くも国内要因というより海外要因に各市場とも左右されます。

首相指名の特別国会、11月11日以降で調整=関係筋(2024/10/28)

 とりわけ注目の大きい為替に関していえば米利下げ見通しにおいて現行の4.75~5.0%から11月、12
月でそれぞれ0.25%ずつ利下げを行う前提の下、来年は3%付近までの低下が見込まれていた9月とは状況が打って変わり、足元ではせいぜい4%割れを織り込むのがやっとの情勢です。すなわち、将来の米利下げ幅が縮小するとの観測にしたがい為替ドル円は9月の140円割れから直近の152円付近まで円安が進んできたのと整合し、ここから再び極端な円高を見込む公算では米景気悪化に伴う大幅利下げの方針が必要になるということになります。

 となると、目先のリスクイベントで仮に米大統領選の混乱などを引き金に為替が円高とともに株安を誘引されようとも、日米ファンダメンタルおよびそれに準ずる金融政策運営においてシナリオの番狂わせを生じさせるようなことが無ければ米大統領選後の展開は再び戻りを試すことが期待されます。

米大統領選、為替は東京で反応か-結果遅延リスク誇張とゴールドマン(2024/10/30)
世界的なボラティリティー急拡大を警戒、円が筆頭-為替トレーダー(2024/11/1)

 今年は前半の半導体・AIラリーが一巡した後、機関投資家は株売り・債券買いに走ってきた経緯から足元では米景気ソフトランディングへの期待感の中で株買い・債券売りに転じたところで、国際情勢の不透明感などから膨大に積み上がっている待機資金や日本株を見直す余地は依然として大きいことなども考慮しておきたい場面。現状はまだ売買代金の低調さなどをみても長期投資家は静観を貫いているとみられますが、企業の自社株買いで支えられている日本株は米国以外の諸外国よりも下値安定的で、国内の政治混乱といったノイズが取り払われれば全体底上げの機運も高まってくるのではないかと思われます。そのためにも明日のトヨタ(7203)はじめ好調な主力企業の決算が相次ぐことに期待しておきたいところです。

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