【10/28日本市場の確認ポイント】
日経平均 38,605.53(+1.82%)[37,757~38,740]
TOPIX 2,657.78(+1.51%)[2,605~2,664]
マザーズ 609.88(+3.49%)[587~610]
値上がりセクターTOP5
1.輸送用機器(+3.46%)
2.医薬品(+2.79%)
3.海運(+2.49%)
4.証券・商品先物(+2.02%)
5.電気機器(+1.82%)
値下がりセクターTOP5
1.鉱業(▲0.38%)
2.化学(▲0.15%)
3.石油・石炭(▲0.11%)
4.精密機器(▲0.05%)
5.なし
日本市場は衆院選で与党過半数割れとなった結果を受けて政局混乱も意識された中、市場反応は事前警戒の織り込みによる反動から為替円安ならびに株高となりました。日経平均は38,000割れでスタートも主力の半導体株や為替円安を好感した自動車株の買い戻しを中心に一時800円超のプラスとなったほか、新興グロース250指数も3.5%高と反発しました。
東証プライムの騰落銘柄数は値上がり1504/値下がり123と値上がり銘柄が大半を占め、アドバンテスト(6854)はじめ主要な半導体株が軒並み大幅高。決算シーズンも本格化して業績上方修正が好感された中外製薬(4519)やファナック(6954)なども大幅高に、一方で期待外れの信越化学(4063)や週末のイスラエルによるイランへの報復攻撃が限定的なものにとどまったことを受けて原油安となった影響から石油関連株が逆行安に、さらには「石破トレード」で存在感を放った防衛関連株などが売りに押されました。
中小型株では足元の金利上昇や選挙前のリスク回避姿勢の煽りを受けていた新興株が急反発、グロース250指数は8.5ショック以来の安値圏に沈んでいたところから600ptを回復し下落基調に歯止めをかけました。直近のIPOは東証プライム上場の大型案件が相次ぎ新興市場からの個人マネー流出が鮮明でしたが、選挙後の日銀追加利上げ観測の後退や底打ち感から見直し買いを誘ったとみられます。
【米国株概況】
中東地政学リスク後退で株高・原油安、インフレ低下で利下げ観測後退から米金利が一段と上昇
NYダウ 42,387.57(+0.64%)[42,264~42,476]
S&P500 5,823.52(+0.26%)[5,823~5,842]
NASDAQ 18,567.19(+0.26%)[18,563~18,671]
ダウ輸送株 16,104.2(+0.17%)[15,959~16,216]
半導体SOX 5,212.8(+1.07%)[5,210~5,287]
日経平均先物(CME) 38,605(▲0.17%)[37,220~38,765]
ドル/円 152.40~153.87(高値161.99:7/3、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 0.974%(高値1.104%:7/3、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 4.284%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 68.01(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2754.80(高値2,772:10/23、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 4.366(高値5.199:5/20、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)19.80(高値65.73:2024/8/5)
SKEW指数 148.46(安値110.34:2022/11/3、高値170.52:2/13)
Fear&Greed指数 62(GREED:貪欲)
High Yield Bond (HYG)79.48(安値70.30:2022/10/13)
米国市場は米経済の底堅さを背景に米金利の上昇基調や米追加利下げ観測の後退を受けながら米株は高値警戒感から利益確定売りに押されるNYダウの動きが意識されました。ハイテク株主体のナスダックは米金利上昇に抗いつつ約3ヶ月ぶりに年初来高値を更新。週末にイランへの報復攻撃をほのめかしてきたイスラエルが空爆を実行したと伝えられましたが、懸念された石油関連施設や核施設への大規模な攻撃には至らなかったとされ、中東の地政学リスク後退を受けて株高・原油安の動きにつながりました。
今週はビッグテックの企業決算に注目が集まる中、先週はテスラ決算が好感されて大幅高となったほか半導体大手エヌビディアが最高値更新でアップルの時価総額を上回るなど何かと話題を振りまきました。この先、アルファベットやマイクロソフトをはじめメタ、アップル、アマゾン、そして半導体のアドバンスト・マイクロ・デバイシズ、インテルといった市場注目度の高い企業決算が相次ぎます。
このほかマクロ材料として重要イベントが控え、月末のPCE価格指数にはじまり10月米雇用統計、ISM製造業景況指数といった米経済指標に加えて11/5の米大統領選挙、その翌日には米FOMCが予定されています。また、11/4~8の日程で中国は全人代開催が予定され矢継ぎ早に繰り出される景気刺激策に追加で大規模な財政出動が表明されるか注目です。中国が輸出依存を減らして内需振興を推進するようになるのか、米中の貿易戦争のゆくえにも目を配らせておくことも大事になっていきそうです。
市場の関心は米株が目先の米企業決算に一喜一憂しやすい一方、米大統領選がいよいよ目前に迫ってきたことで米国債相場には不透明感が満載といった情勢です。とくにトランプ前米大統領の勝利可能性が強まるにしたがい将来の対外関税強化や減税政策からインフレ圧力を警戒する向きが多く、米金利上昇への警戒だけでなく米財政リスクを危ぶむ声も以前からさらに大きくなっています。
◆◆米国債市場に警告サイン-「タームプレミアム」急上昇がリスク示唆(2024/10/24)
◆◆米CDSスプレッドが1年ぶり高水準、大統領選と債務上限巡る不安で(2024/10/25)
◆◆米財政赤字拡大に懸念、債務上限巡る政治対立再燃リスクも=欧州格付け会社(2024/10/25)
その一方で、中東の地政学リスク後退は全面戦争回避だけでなく原油高をはじめとする資源インフレの抑制にもつながり、各国中銀の利下げ姿勢を後押しすることにもなりそうです。ひとまず国際社会から非難を浴びているイスラエルの暴走に歯止めがかかる意味合いは非常に大きく、ガザ停戦協議の再開やサウジアラビアとの関係改善のゆくえにも大きな進展をもたらす可能性が期待できるようになりました。
◆◆イスラエルの報復抑制、ガザやレバノンの戦闘収拾で外交努力後押しも(2024/10/27)
◆サウジ、イラン標的の軍事行動「主権侵害」と非難 緊張緩和訴え(2024/10/26)
◆イスラエルとサウジの関係正常化、年内にも実現可能=米上院議員(2024/10/24)
◆◆ガザ停戦交渉2カ月ぶり再開 エジプトが2日間の休戦案(2024/10/28)
◆◆米CIA長官、ガザ和平協議で28日間停戦を提案=アクシオス(2024/10/29)
中東における地政学リスクの後退は市場のセンチメント改善につながる以上の意味合いを持ち、ペトロダラーひいては金融とエネルギーの枠組みを改めて見直すとともに変革に至らしめるきっかけともなり得るものでしょう。米大統領選を経て米国の安保戦略に変更が生じるとの懸念も叫ばれていますが、戦争経済で米財政が逼迫し米国自身の信用力低下を招くことはもはや米国だけの問題にとどまらなくなっています。世界を巻き込んでの地政学リスク激化の安保戦略は見直し急務であり、米国よりも脆弱な国々の債務過多がやがて金融市場を大きく揺るがす火種となりかねない状況です。米国例外主義は米国の強さを際立たせた一方で同盟国やパートナー国へは負担を強いるものとなっており、米国だけみておけばよいというわけにもいかなくなりそうです。
◆◆米金融大手トップら、大統領選や地政学的リスクで投資家は慎重と指摘(2024/10/25)
◆◆◆ウォール街とテック界の大物、砂漠のダボス参加へ-中東戦争のさなか(2024/10/28)
◆◆◆世界で「大きな政府」加速 欧州や新興国など格下げ懸念(2024/10/23)
【日本株投資戦略】
衆院選をめぐる不透明感解消で円安・株高、日銀利上げ観測後退とともに次の米大統領選に焦点が移る
日本市場は衆院選後の円安・株高に弾みがつく形で、日経平均は38,000円をはさんだ攻防から一歩抜け出してきたようで、選挙前の売買代金が低調な環境下での裁定取引にかかるレンジを上抜けた可能性もありそうです。衆院選における与党過半数割れの結果を受けて円高・株安となるリスクを意識した空売りが相当に積み上がっていたとみられ、足元ではまさにリスクヘッジ・ポジションの巻き戻しが週明けの大幅高につながっているとみてよいでしょう。
◆裁定売り残が1カ月半ぶり高水準 買い残は2週ぶり減(2024/10/23)
◆剣が峰の衆院選、与党過半割れで円安・株安リスク-政局は日銀も縛る(2024/10/25)
衆院選の与党過半数割れ結果をめぐっては各種報道にもある通り、今後の政権運営において少数与党もしくは他野党との連立を模索するといった選択肢があるものの、いずれにしても自民党の求心力低下ひいては政治勢力そのものの弱体化という側面も否めず、政局の混乱が続くとの懸念が持ち上がっています。しかし金融市場にとっては金融引き締めを後押しするとみられてきた石破政権のトーンが弱まるとの見方から必ずしも悪いこととは受け止められていない模様です。
◆衆院選結果に市場は株買い円売り、最悪のシナリオは回避との声も(2024/10/28)
◆◆石破首相は政権維持へ多数派工作が必要に、勝敗ライン「過半数」届かず(2024/10/28)
今後の政局が市場に影響を及ぼす可能性が無いとも言い切れませんが、海外勢にとってみれば日本の選挙は二の次とみられ何よりも米大統領選の方に関心が向いているとみられます。今や日本市場は8.5ショック以降、新興国以上の高ボラティリティが常態化していることから手を出しにくい対象と受け止められており、積極的に売買するのはヘッジファンドなどの短期筋が中心と思われます。長期のプレーヤーは日本経済のファンダメンタルやガバナンス改善、長年のデフレ脱却の時期がいつかに焦点を当て、日銀の次の利上げ時期を探っているのが実情でしょう。
冒頭で述べた選挙後の円安・株高にみられる動きに加えて、直近でIMF(国際通貨基金)高官から為替円安への見解が寄せられたことは今の市場にとっては大変重要であり、日銀の追加利上げ観測にも影響を与えるものと考えられます。上述のとおり、市場では選挙後に石破首相の金融引き締め色が薄れるとの見方とともに日銀の追加利上げ観測後退につながった一方、以前のように為替円安がどんどん進めば日銀は7月会合のように一定の条件がそろう前でも年内の追加利上げに動く可能性も十分あり得ました。しかし、今回IMFのお墨付きをもって円安を容認するということであれば、日銀の追加利上げ警戒はしばらくの間気にせずともよく、リスク選好ムードが広がりやすくなります。
◆円安は日本経済に有益、来年は大幅賃上げが実現=IMF高官(2024/10/26)
もっとも為替円安が投機筋による極端なものとなればそうも言ってられなくなりそうですが、足元の日本におけるインフレ環境を確認してみても追加利上げを急ぐ理由は見当たらないと考えられます。くしくも30日、31日と月末の2日間は日銀金融政策決定会合が開かれることとなっており、いずれにしても利上げ見送りでわざわざタカ派トーンで市場を動揺させることはないと考えられます。
◆ヘッジファンド、衆院選直前に円売り越し-リスク増大で円一段安も(2024/10/28)
◆東京コアCPI、10月は+1.8%に鈍化 人件費転嫁の広がり限定的か(2024/10/25)
多少なりとも日本の政局混乱のゆくえは気になるところながら、世界情勢では米大統領選をはじめ重要な国際会議が相次ぐ以上、ムダな政治空白を作る余裕は当然無いものと考えられることから、自民党も新政権の発足から年末の補正予算編成までやらなければならない事を優先させるでしょう。市場では一部で石破首相責任論から自民党総裁選で争った高市氏が次期首相に推されるとの思惑も浮上して株高期待を後押ししていますが、そこは冷静にとらえておかないと9月末の「高市トレード」巻き戻しのようなことになってしまいます。各イベントが慌ただしい時だからこそ一つ一つ丁寧に材料消化して、一喜一憂することなく冷静に利益確定や見直し買いを入れながら11月の米大統領選前後を乗り切り、無事に年末の株高につなげていきたいものです。