【10/23日本市場の確認ポイント】
日経平均 38,104.86(▲0.80%)[37,987~38,514] 
TOPIX   2,636.96(▲0.55%)[2,631~2,662] 
マザーズ   604.09(▲1.76%)[603~614] 

値上がりセクターTOP5
1.輸送用機器(+2.13%)
2.食料品(+0.37%)
3.不動産(+0.10%)
4.石油・石炭(+0.01%)
5.なし

値下がりセクターTOP5
1.サービス(▲2.31%)
2.海運(▲1.74%)
3.銀行(▲1.41%)
4.機械(▲1.40%)
5.小売(▲1.35%)

 日本市場は為替ドル円が7月以来の152円台を回復する一方、株価は円安株高の連動性が薄れ日経平均は一時38,000円割れとなったほか、TOPIXは200日線割れとなり衆院選や企業決算シーズンを控えて様子見ムードが広がっています。日経平均をけん引したファーストリテイリング(9983)やソフトバンクG(9984)、アドバンテスト(6857)などが上昇一服から上値の重さが意識されるのに加え、TOPIXも為替円安を背景に自動車株が見直されましたが全体のリスク回避姿勢を下支えするまでには至りませんでした。

 東証プライムの騰落銘柄数は値上がり260/値下がり1351と値下がり銘柄が圧倒し、10/7のTOPIX戻り高値をつけた後は連日での陰線形成が続くほか騰落レシオも短期中心に売られ過ぎを示唆。日経平均はファーストリテイリング(9983)が決算後の快進撃により10/15に戻り高値をつけピークアウト時期が後ずれしているものの、全体で売り圧力に押される日が目立ちます。

 日本、米国の選挙に対する不確実性に警戒感が強まる中、金融市場では日米の金利上昇に先高感も加わり投資家のリスク回避姿勢が鮮明となっています。「石破トレード」で上昇した防衛関連や銀行株なども利益確定売りに押されるなどテーマ株の物色も一巡し、とりわけ新興市場のグロース250指数にいたっては8/16以来の600pt付近に押し戻されるなど下値警戒が強まりやすくなっています。

【米国株概況】
米利下げ期待の後退と米金利上昇への警戒が米株の上値を抑制、選挙後の混乱を見据えながらのハイテク株決算ラリー

NYダウ 42,514.95(▲0.96%)[42,293~42,834]
S&P500 5,797.42(▲0.92%)[5,762~5,834]
NASDAQ 18,276.65(▲1.60%)[18,146~18,509] 
ダウ輸送株 16,087.5(▲1.00%)[15,995~16,215]
半導体SOX 5,131.6(▲1.14%)[5,061~5,190]
日経平均先物(CME) 37,850(▲0.58%)[37,645~38,535] 
ドル/円 151.02~153.18(高値161.99:7/3、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 0.979%(高値1.104%:7/3、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 4.258%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 71.13(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2732.20(高値2,763:10/22、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 4.333(高値5.199:5/20、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)19.24(高値65.73:2024/8/5)
SKEW指数 146.97(安値110.34:2022/11/3、高値170.52:2/13)
Fear&Greed指数 63(GREED:貪欲)
High Yield Bond (HYG)79.13(安値70.30:2022/10/13)

 米国市場は米景気ソフトランディングと金融政策の利下げ期待を背景にNYダウ、S&P500が史上最高値を更新する日が続きましたが、足元での米金利上昇や企業決算を機に利益確定売りが出やすくなっています。世界中が注目する米大統領線も迫りくる中、情勢は激戦州を中心に接戦が続きながらもトランプ前米大統領陣営の巻き返しが市場でも話題を集め「トランプトレード」が優勢となっています。

 ただ、多くの市場参加者にとって米大統領線をめぐる不透明感は実際に開いてみなければわからないのが実情であり、積極的にリスクを取りたい向きは少ないとみられ様子見姿勢が強まりやすい状況です。米景気の底堅さを理由に米金利上昇が再開し直近では米10年債利回りが4.2%台まで上昇してきましたが、これには追加利下げ観測の後退や米大統領線後にどちらの候補が勝っても積極財政を採ることが予想され米国財政の信用悪化リスクの織り込みも多少含まれているとみられます。
債券が至る所で売られる-トレーダーが米利下げへの賭けを縮小(2024/10/22)

 米国株においては目下、米企業の決算発表が相次ぎマクロよりミクロを材料視されやすいとみられます。要するに米経済指標はひとまず横に置き、ハイテク企業の決算で一喜一憂する展開が続くと考えられます。米企業決算では先陣を切った金融株が軒並み高金利環境や投資銀行の収益改善を背景に好調な出足をみせNYダウの最高値更新に一役買いました。この先は米国株の命運を握るハイテク決算や苦戦が目立つ米製造業の決算が予定されており、最高値更新にあと一歩まで迫ったナスダックの動向が注目されます。前回解説で注目したテスラ決算は市場予想を上回り、時間外での大幅上昇で米株高を支援しています。
テスラの利益、市場予想上回る-通期の納車台数は若干増加へ(2024/10/24)

 他方、足元で米経済指標におけるディスインフレ基調の鈍化や米労働市場の改善も手伝い、FRBメンバーによる米利下げ方針の発言にはやや変化がみられています。米利下げペースは市場が想定するよりも緩慢なものになるとの見方から、以前の市場が期待した積極利下げ織り込みはやはり行き過ぎであったということが示された形と言えます。この金融当局と市場の認識におけるギャップが先月の米10年債利回り3.6%まで低下した債券買いポジションの反転をもたらし、かえって足元での米金利上昇に拍車をかけているものとみられます。
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米ダラス連銀総裁、利下げは慎重なペースで実施を-リスク管理に寄与(2024/10/22)
今後も追加利下げ継続、QT終了は急がず=ダラス連銀総裁(2024/10/22)

 今度は逆に米金利上昇に伴う行き過ぎを注目しておく必要があるとみられ、米10年債利回りが4.5%に迫る動きとなるのかが焦点となる一方で米金利上昇を嫌気して米国株の上値が抑えられることも念頭に置かなくてはならないでしょう。米国株が最高値水準で推移する中、米企業決算における市場の期待ハードルは相応に高くなることは避けられず、ハイテク株の業績自体は好調でも決算反応にはやや注意を要する場面と言えます。やや希望的観測的な見方をすれば米大統領戦におけるトランプ前大統領陣営の優勢が伝えられている以上、選挙投開票前に大きく崩れるような事態は回避されるものと思われる反面、今回も2020年米大統領選と同様に選挙後まで混乱が長引く可能性を鑑みますと、選挙後に波乱となる展開も想定しておく必要があるのではないかと思われます。

【日本株投資戦略】
選挙相場への期待剥落で日経平均38,000円水準に往って来い、為替円安の加速でも株高につながらない日本株を攻略するカギは?

 日本市場は前回解説で指摘したとおりファーストリテイリング(9983)の独壇場とも言える相場が上昇一服となり、日経平均はファーストリテイリングの調整とともに38,000円水準へと押し戻されてきました。これと合わせて衆議院解散総選挙にちなんだ選挙相場への期待を反映した「石破トレード」も足元で剥落していることは上述したとおりで、前回すでに指摘した総選挙における自民党の過半数割れによる惨敗シナリオを市場が警戒し始めたことも日本株の調整を後押ししているとみられます。
日経平均「陰線」が12年ぶり連続記録-「選挙は買い」の目論見外れる(2024/10/22)
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電力・防衛関連株売り「与党過半数割れ」警戒 東京市場(2024/10/21)

 また、ファーストリテイリング(9983)の決算買いが一巡した後であっても日経平均の動向に影響の大きい半導体株が復調してくれば下押し圧力を緩和することにつながりますが、そもそもの深い調整を強いられる一因にもなっている米国による対中半導体規制強化の流れが半導体株の反転を妨げていることもあり、日本株の低迷をもたらしています。実際には半導体輸出規制の強化前で中国勢はむしろ駆け込み需要で在庫積み増しに動いている段階で、半導体市況にはむしろ追い風となっている面を無視できないと思われるのですが、おそらくは日本の半導体企業においては7-9月の業績を確認しないと積極投資に踏み切れないというのが本音でしょう。先日の蘭ASMLショックの記憶などが頭をよぎり、見切り発車で梯子を外されるのを警戒する向きが多いのだと思われます。
日本に米議員が圧力、半導体製造装置の対中輸出規制強化求める(2024/10/19)

 しかし、全体を冷静にみますと日経平均を市場実勢以上に押し上げることに一役買ったファーストリテイリングにちなんだユニクロ相場が一段落し、以前の38,000円を基準としたレンジ内で往って来いになっただけとも言えます。その間にTOPIXの下値模索や新興グロース250指数などの下値警戒は以前よりも強まっている面がありますが、これらに関しては選挙相場が期待外れとなった点や日米金利上昇への警戒、そして今後の日米選挙のゆくえなどの不透明感からリスク低減の動きを反映したものと捉えると納得がいくかもしれません。

 足元で気になる市場動向としてはやはり為替動向であり、それまでの円安株高の市場認識が崩れかけている点の方に気をかけておくべきかもしれません。為替円高で企業業績への懸念が広がっていたのとは裏腹に、足元での為替円安が必ずしも株高につながっていない現状では日本株低迷の理由は円高ではなかったということを裏付けることにもなります。つまり、今後の焦点である衆院選後においてはこれまでのアベノミクスでみられたような金融緩和=円安=株高という方程式は通用しない環境となることも念頭に置く必要があるということかもしれません。
円が対ドルで153円台、米金利高や200日線突破で下げ加速(2024/10/23)
アングル:衆院選後の円急騰リスク台頭、自公過半数割れで混乱警戒(2024/10/22)

 となれば為替要因以外のところに株高の理由を見出すことが求められるのは必定、とりわけ足元で決算シーズンを迎える日本株においては為替差損益を切り離しての本業利益と営業キャッシュフローの優劣を注意深くみていく必要があるかと思われます。また、政府が長年のデフレ脱却のための賃上げ推進もこの人件費上昇を吸収できる企業と収益を圧迫される企業とで分かれることになるとみられ、とくに今回の7-9月期業績においては前期比との比較で大きな影響がでやすくなることにも留意しておかなければなりません。おそらく財務体力のある大企業では難なく業績アップを実現できる企業も多いかと思われますが、こと中小型株では売上が増収でも利益が減益を余儀なくされる企業も少なくないと思われ、銘柄選別の際にも慎重さが求められることでしょう。