【9/13日本市場の確認ポイント】
日経平均 36,581.76(▲0.68%)[36,441~36,887] 
TOPIX   2,571.14(▲0.82%)[2,563~2,588] 
マザーズ   644.48(▲1.35%)[644~653] 

値上がりセクターTOP5
1.海運(+1.04%)
2.鉱業(+0.27%)
3.鉄鋼(+0.27%)
4.空運(+0.26%)
5.機械(+0.17%)

値下がりセクターTOP5
1.ゴム(▲1.54%)
2.輸送用機器(▲1.52%)
3.医薬品(▲1.44%)
4.保険(▲1.31%)
5.電気・ガス(▲1.26%)

日米金融政策決定会合を控えた為替相場に神経質となる中、日本株は米半導体株の上昇をうけて戻りを試す展開となりました。日経平均は9月メジャーSQ算出にあたり37,000円を窺う展開も、為替が一段と円高に振れたことや3連休およびシルバーウィーク前に伴うポジション調整の動きと相まって上値の重さも意識されました。

 米国でインフレ指標のCPI・PPIでインフレ鈍化を確認し米利下げの観測が高まる一方、米利下げ幅をめぐり金融市場は0.25%利下げの見方に対し金融当局者らは0.50%大幅利下げの可能性を主要メディアが報じ、市場織り込みが不足していたとしてドル円は一時140円台半ばまで円高が進行。円高が嫌気される自動車株はじめ金融株が売られたほか下げ渋ってきた内需・ディフェンシブ株にも持ち高調整売りが波及、それに対して大きく売り込まれてきた半導体株の主力が持ち直す動きをみせ日経平均を押し上げる構図となりました。

 日米金融政策待ちで買い手控えとなる中、東証の売買代金は基準の4兆円を上回りつつも連日で高い空売り比率を記録する日が続いています。為替や値幅の大きい半導体株の動向に振り回される展開を強いられる一方、内需株やディフェンシブ株を選好したセクターローテーションも一巡し利益確定に押される動きも出ており、イベント通過後に改めて方向感を探る必要がありそうです。

【米国株概況】
米FOMCでの大幅利下げ観測が急上昇、利下げ期待の市場織り込みは妥当か行き過ぎか

NYダウ 41,622.08(+0.55%)[41,435~41,733] 
S&P500 5,633.09(+0.13%)[5,604~5,636] 
NASDAQ 17,592.13(▲0.52%)[17,480~17,618] 
ダウ輸送株 15,842.3(+0.72%)[15,739~15,926]
半導体SOX 4,910.8(▲1.40%)[4,850~4,935]
日経平均先物(CME) 36,435(+0.40%)[35,980~36,490] 
ドル/円 139.57~140.90(高値161.99:7/3、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 0.836%(高値1.104%:7/3、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 3.622%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 69.32(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2610.25(高値2,617:9/16、安値1,618:2022/11/3)【高値更新】
銅先物 4.268(高値5.199:5/20、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)17.14(高値65.73:2024/8/5)
SKEW指数 152.17(安値110.34:2022/11/3、高値170.52:2/13)
Fear&Greed指数 51(NEUTRAL:中立)
High Yield Bond (HYG)79.83(安値70.30:2022/10/13)

 米国市場は米FOMCを目前に控えながら初手の利下げ幅および今後の利下げペースをめぐり思惑が交錯し合う中、米金利の低下とともに株式市場には底堅さも窺える展開となりました。足元で米政策金利の大幅利下げ観測が急速に高まる中、米2年債利回りと米10年債利回りとの逆イールドが解消へと向かい、為替の米ドルインデックスは8月末につけた100pt台に突入し米ドル安に拍車がかかる動きとなっています。

 株式市場では大幅利下げ観測の下でNYダウが4日続伸となり史上最高値を更新した一方、ハイテク株は半導体大手エヌビディアの失速に加えてマイクロンに対するアナリスト投資判断引き下げの影響などが響くなどしてブロードコムやラムリサーチなどにも売りが波及。また、ビッグテックへの競争寡占を懸念した法廷闘争や先進国におけるAI活用をめぐる規制強化などの大きな流れの影響も無視できず、ハイテク株が利下げ期待の恩恵を十分に受けきれない構図も浮かび上がっています。

◆◆アップルとグーグルが敗訴、追徴税と制裁金巡るEUとの法廷闘争(2024/9/10)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-10/SJL73MDWRGG000?srnd=cojp-v2
◆◆G7、AI悪用リスクを監視 健全な活用へ世界共通基準(2024/9/15)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA068C00W4A900C2000000/

 米FOMCでは0.50%利上げ確率が高まったことで0.25%利上げとの見方は五分五分となっただけでなく、年内の利下げ幅においても75bp~125bpまで大きなばらつきがみられており、これらの上限と下限どちらのシナリオに進むかによって金融環境の景色が大きく異なってきます。足元での市場の急速な大幅利下げ催促の相場をうけながらGSやブラックロックなど国際金融資本の雄は市場の勇み足を牽制するような見方を示す一方、彼らの見解と金融当局の下す決定は必ずしも一致しないことは先の日銀サプライズ利上げの折にも証明されたことから、実際に決定を待たないと大きくポジションを動かしづらいのが実状かと思われます。

◆FRB、利下げ幅決めかねている公算-NY連銀前総裁も50bpに言及(2024/9/13)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-12/SJPZT8T0AFB400?srnd=cojp-v2
◆米利下げ、焦点は幅よりシナリオ 市場との溝に波乱の芽(2024/9/16)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK129J30S4A910C2000000/
◆結果が見えない今週のFOMC、市場は2007年以来の視界不良(2024/9/16)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-16/SJWCRHT0G1KW00
◆米FOMC、ゴールドマンは利下げ幅0.25%と予想(2024/9/16)
https://jp.reuters.com/markets/bonds/MDPUPCYRJRPOZKXOXQ2BCFQCZQ-2024-09-16/
◆◆FRB利下げ、市場予想ほど大幅なものにならず=ブラックロック(2024/9/17)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/MVGBDYCUJBPIJP5MOYQQMJFUCI-2024-09-16/

 他方、米FRBのQT(金融引き締め)政策の進展においてバランスシート縮小の影響とともにリバースレポ残高の減少もいよいよ枯渇する時機が近づいてもいることから、市場の流動性に対する懸念も再び高まってきていることも現実的な課題です。米財務省は国債発行のペースダウンとバイバック(買戻し)で流動性維持に努めているおかげで米株市場は景気悪化を懸念する声を押し退けて比較的底堅さを維持していると言えるかと思います。米FOMC通過後の市場の関心は米大統領選のゆくえに移っていくことは明白ながら、直近の市場における米2年債利回り急低下にみられる利下げペース織り込みの度合いは行き過ぎとも言え、バイデン・ハリス陣営が選挙戦を制しようと財政拠出を訴える必要が強まれば強まるほど米財政懸念を映した金利環境は反転を余儀なくされます。

 米国市場における流動性を維持したまま10月を迎え11月の米大統領選挙まで持続させられるかが重要です。足元の市場金利の低下が妥当なものであるならば、ここから再び金利上昇した場合でも株式市場がパニックに陥ることは回避できるかと思われますが、もし実態とかけ離れた投機性を帯びたものであった場合にはポジション巻き戻しの影響が増幅され金利急上昇という落とし穴が生まれてしまうことになります。市場ではすでに米利下げイベント通過から米大統領選、そして年末の株高シナリオに向けた楽観が広がり始めている面もある一方、米国の主たる産業であるハイテク株の足取りが不安定な状況をみますと短期的な波乱の種を見落とさないように取り組んでいくべきでしょう。

◆◆米つなぎ予算案、共和内でまたも調整難航 月末に期限(2024/9/12)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN11DDF0R10C24A9000000/
◆◆◆米政府債務は持続不可能-100万通りのシミュレーションで結論は一つ(2024/4/3)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-04-03/SBB0NQDWRGG000?srnd=cojp-v2
◆◆◆米財政赤字見通し、今年度は過去最悪の1.9兆ドルに上振れ=議会予算局(2024/6/19)
https://jp.reuters.com/markets/treasury/SKHAEJVIXFIDLLJSXVHJJMUGAU-2024-06-18/

【日本株投資戦略】
中銀イベント前に為替140円割れで更なるポジション調整迫られる日本株、日銀会合よりも自民党総裁選にからむ株高要因に注目

3連休明けの日本市場は休場中に為替円高が深耕したことによりドル円一時140円割れの衝撃を織り込む必要が生じました。朝方は前日の米国株高をうけて高めに寄り付いたものの、ザラ場中の為替が141円台から再び140円台前半へと円高に振れる動きが株価の重しとなり日経平均は▲700円超の下げ幅となりました。

 今週は日米金融政策の決定を控える中銀ウィークとあって元々様子見姿勢の強まるところに米国での半導体企業に対する投資判断引き下げの影響などを懸念した半導体株が日経下落を主導、東京エレクトロン(8035)はじめアドバンテスト(6857)など指数影響の大きい銘柄が軒並み大幅安となったことで実勢以上に下げ幅を拡大しました。

 その一方、単に半導体株安というだけでなく冒頭の為替円高の深耕懸念から自動車株や米中景気懸念から資源株など景気敏感株、さらに日米金利低下をうけた金融株など半導体セクター以外の業種にも相応に売られる要因が重なったことも日経平均・TOPIXともに下げ幅を拡大させた一因と言え、買い手不在のところで中銀イベント前のポジション調整を後押しされたものとみるのが妥当でしょう。

 ただし、ザラ場中に為替相場がドル円140円を試しにいく場面はありましたが米金利低下とともに日本の金利低下も意欲的な動きをみせ、一方的に円高へと進んだわけでなく日本株も円高一服とともに押し目買いへと転じる動きもみられました。日経平均は再び36,000円台を回復して下げ幅を半減して引けたほか、為替相場も中銀イベントにからむ投機的ポジションが含まれている部分もあるとすればイベント通過後の巻き戻しもそれなりに見込めそうな展開と言えるでしょう。

◆来週の円相場は下落か、米大幅利下げ観測の反動-日銀総裁会見警戒(2024/9/13)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-13/SJOR8VT0AFB400?srnd=cojp-v2

 いずれにしても日銀が今回の金融政策決定会合で追加利上げを見送ることになっても潜在的な利上げ観測が今後も燻り続ける以上は円高圧力にさらされることに変わりないと思われますが、一方で日銀利上げ前や政府の為替介入前の構造的な円安要因もまた根本的に是正されたわけでもありません。ゆえに為替にらみの株価動向はしばらく続くものとみられ、自民党総裁選を控えた日本であっても政権移行で直ちに通貨当局の方針が変わるわけでもないため日本株が不安定な時期を過ごすことになるでしょう。

 次の事実上のリーダーを占う自民党総裁選においては多数候補者の中でもすでに石破氏、小泉氏、高市氏に絞られてきている模様で、最終的に決選投票にもつれ込む可能性が高いと言われている以上、新政権発足後の経済対策なども多少出足が鈍くなることも懸念されます。しかしながら、米国追従で内政がおざなりになった分を立て直しエネルギー政策はじめ安全保障体制の見直し、そして各方面の規制緩和にこぎつけることができるだけでも日本経済は円高を味方につけて内需を振興させる道も開けてくるものと思われます。今秋にかけて大きく局面転換しそうな雰囲気を感じ取りながら、四季報新刊の≪秋号≫にもざっと目を通して内需成長株を発掘してみてほしいと思います。