【9/3日本市場の確認ポイント】
日経平均 38,686.31(▲0.04%)[38,581~38,967] 
TOPIX   2,733.27(+0.64%)[2,717~2,740] 
マザーズ   680.57(+1.94%)[667~681] 

値上がりセクターTOP5
1.銀行(+3.02%)
2.保険(+2.48%)
3.陸運(+1.67%)
4.繊維(+1.39%)
5.小売(+1.35%)

値下がりセクターTOP5
1.海運(▲1.93%)
2.非鉄金属(▲0.75%)
3.機械(▲0.58%)
4.ゴム(▲0.41%)
5.精密機器(▲0.37%)

 日本株は為替円高の一服感から日経平均は39,000円を窺いましたが、8月末のリバランス要因を除いては売買代金4兆円割れの日が続き、さらに上値を追う動きは乏しく打ち返されました。ファーストリテイリング(9983)を中心に日経平均は押し上げられてきた一方、東京エレクトロン(8035)など半導体関連株の戻りが鈍く、全体の足を引っ張る展開が続いています。

 東証プライムの騰落銘柄数は値上がり1230/値下がり364と値上がり優勢、騰落レシオも暴落前ピークに迫る高水準に達する中、米国の対中半導体規制に対する報復を中国側が検討しているとの報道から半導体関連株には警戒売りの圧力が強まりました。また、週末の中国経済指標が下振れし成長鈍化懸念が改めて意識され、景気敏感株を利益確定する動きもみられます。

 米ジャクソンホール会合や足元のPCE価格指数の発表をふまえて9月FOMCにおける米利下げ期待の確信度が深まる中、利下げ恩恵の大きいとみられる小型グロース株の物色意欲は高く、新興グロース250指数は暴落前の650pt付近の奪回から一段高。7月高値の700pt手前の水準に迫る動きをみせています。ただし、新興市場の中でも強弱はまちまちで、とくに時価総額の大きい銘柄の戻りの強さが指数押し上げに寄与している面があります。

【米国株概況】
米利下げ前の米製造業データの悪化で景気後退懸念が再び、株安・原油安・債券買いで質への逃避が鮮明に

NYダウ 40,936.93(▲1.51%)[40,778~41,489] 
S&P500 5,528.93(▲2.12%)[5,504~5,623] 
NASDAQ 17,136.30(▲3.26%)[17,057~17,585] 
ダウ輸送株 15,859.3(▲1.15%)[15,789~15,992]
半導体SOX 4759.9(▲7.73%)[4,735~5,058]
日経平均先物(CME) 37,595(▲3.08%)[37,440~39,180] 
ドル/円 145.09~147.20(高値161.99:7/3、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 0.925%(高値1.104%:7/3、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 3.928%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 70.39(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2523.75(高値2,570:8/20、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 4.089(高値5.199:5/20、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)20.72(高値65.73:2024/8/5)
SKEW指数 163.60(安値110.34:2022/11/3、高値170.52:2/13)
Fear&Greed指数 65(GREED:貪欲)
High Yield Bond (HYG)78.68(安値70.30:2022/10/13)

 米国市場はレイバーデー明けで投資家が夏休みから戻ってくる中、米ISM製造業景況指数の悪化から米国株の利益確定売りおよび米国債買いと質への逃避が鮮明な動きとなりました。8月初めと同様、米景気減速への懸念が再燃したことでリスク回避の動きが強まったことに加え、先日の決算通過で売られた米エヌビディアに米司法省が反トラスト法調査を本格化させたとの報道から半導体株への浴びせ売りとなり、半導体SOX指数は▲7.7%と大幅安を記録しました。

◆エヌビディア株急落、2789億ドル吹き飛ぶ-米1銘柄として過去最大
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-03/SJ98BFT1UM0W00?srnd=cojp-v2
◆エヌビディアに米司法省が文書提出命令状、反トラスト法調査を本格化(2024/9/4)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-03/SJ97OBT1UM0W00?srnd=cojp-v2

 市場は9月FOMCにて米利下げが行われることをすでに織り込んでいるものの、その利下げ幅およびその後の利下げペースに関心が移っており、今週末の米雇8月米雇用統計に注目しています。米FRBの利下げ姿勢をめぐっては積極的か慎重かのアプローチの違いによって金融市場への影響は全く異なってくるものとみられており、利下げそれ自体はリスク資産にとって追い風となる反面、それがリセッションを防ぐための大胆かつ性急さを要する利下げに当局が踏み切る場合、その受け取られ方は大きく異なってしまいます。

 7月米雇用統計と同じように8月分も市場予想を大きく下回る結果となれば再び9月利下げ幅を0.25%ではなく0.50%が必要だと市場は要求するようになるとみられ、昨晩の米国市場ではいち早くそれを催促する相場の如く株売り・債券買いが進みました。米10年債利回りの大幅低下をはじめ再び米2年債利回りとの利回り差が縮小し、逆イールド解消の芽が意識されたことにより市場は動揺したと言えます。過去の暴落時において長らく続いた逆イールド現象がリセッション・シグナルと言われるのは、これが順イールドに立ち戻った際に市場暴落が起きるだけでなく、底抜けした後に時間差があった上でその後の実体経済が悪化の一途を辿った経験則に基づいています。

 とはいえ、昨晩も米国株安の主因はハイテク株とりわけ米エヌビディアをはじめとする半導体株によるところで、他の景気敏感株も大幅安となっている銘柄は見受けられるも全面安とはなっておりません。指数の値幅が大きくなっていることに目を奪われがちですが、あくまでも米製造業の指標悪化を受けての景気敏感株売り・ディフェンシブ株買いという構図です。リスク回避の動きを示しつつも債券市場を見るとむしろ利下げ開始前の駆け込み需要と言わんばかりに高利回りの債券買いに走り、米金利低下を好機とばかりに米企業がこぞって大型起債に踏み切っている様子が見られます。つまり、本当のリスク回避で株も債券も全て売って現金化する動きではなく、米国債を買い込むために株売りを急いだ動きと言えるかと思います。

◆レーバーデー後の起債ラッシュ、今年は過去最多-利回り低下機会捉え(2024/9/4)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-03/SJ96JST0G1KW00?srnd=cojp-v2
◆米社債発行ラッシュ、FOMCと大統領選控え発行企業が殺到(2024/9/4)
https://jp.reuters.com/markets/bonds/2RRGV37D6ZJ7LCFZQUCSW3R2NA-2024-09-04/

 元々9月相場のパフォーマンスが乱調となりやすい季節的アノマリーと相まって、今回は8月暴落時のボラティリティ上昇が尾を引いている場面でもあることから空売り筋が投機的に売り崩しを狙っている側面も浮かび上がってきます。金融市場全体に総じて言えることですが、足元では流動性の低下とボラティリティの上昇、さらに夏休みで取引参加者が減少して薄商いとなりやすい時期であることも少なからぬ影響があるでしょう。おそらく今後もそうした状況は変わらず、米利下げ後もまだ市場乱高下の芽は残されたままかと思います。

◆トレーダーの足をすくう9月、火種は尽きず-慎重さがかじ取りの鍵(2024/9/2)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-02/SJ6I0ST0G1KW00 
◆AI「負け組」をショート筋が狙い撃ち、ブーム「消化」で選別強まる(2024/9/4)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-03/SJ8L80T1UM0W00?srnd=cojp-v2-markets

 かと言って株式市場がピークアウトして値上がりが見込めなくなるわけではありませんし、要するにリスク管理がこれまでより数段厳しくなるというところかと思われます。とくに米国市場においてはこれまでの金融緩和環境および例外主義により他市場と比べてあまりにイージーな資産バブルの舞台が用意されてきた経緯から、今後はそのハイテク大手によるビジネス寡占状態にいよいよメスが入れられることとなり、株価も一本調子に上昇していく状況が許されなくなってきたとみるべきかもしれません。その上で、冷静に現状認識すると暴落後の反騰がこれまた期待先行し過ぎた反動安とも言え、暴落後に取り残された投資家目線では利下げ開始後の株高を見越して押し目買い需要はなお健在のはずです。

 今後の展開において、まだ実際に利下げが行われたわけでない上に実施されたとしても市場が満足するに足る利下げ幅が確保できるとは限りませんので、暴落に伴う2番底警戒は必要でしょう。ただ、その結論を出すにはこの9月よりも10月の方でこそより要求度が増してくるとみられ、あくまで現状は暴落後の中間反騰における調整波で、再度の戻りを試す過程において最も不確実性の高い地政学リスクでSell All(リスク資産全売り)を警戒しておくべきかと思われます。だからこそ各国の金融当局者および外交筋は次なる市場動揺への備えを用意しているのであって、市場内の悲観論者も一連の混乱が収束には道半ばであることを喧伝しているとみられます。

◆米中、「金融ストレス」対応で意思疎通強化-上海で作業部会会合(2024/8/19)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-08-19/SIGCX4T1UM0W00?srnd=cojp-v2

【日本株投資戦略】
米景気懸念とハイテク株安で再び動揺する日本市場、半導体株の2番底警戒とともに押し目待ちの投資家に好機到来

 日本市場はレイバーデー明けの米株大幅安をうけて日経平均は▲4%超の暴落、TOPIXも▲3%超の大幅安となり急速にリスク心理が悪化しています。とくに米国市場における半導体株安の影響が大きいとみられ、主力の東京エレクトロン(8035)、ディスコ(6146)、アドバンテスト(6857)などが日経平均を大きく押し下げることとなっています。

 もっとも半導体株をめぐっては、すでに8月お盆過ぎ以降における全体出直り相場の中でも戻りの鈍さが際立っていたところ、東京エレクトロンやディスコなどは2番底を窺う動きの中で9/2のブルームバーグが報じた米国の対中半導体規制に対する中国側の報復が検討されているとの報道が引き金となり株価反転のチャンスを遮られました。

◆◆中国、新たな半導体規制巡り日本に報復を警告-関係者(2024/9/2)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-02/SJ63LTT0AFB400?srnd=cojp-v2
◆日経平均は一時1500円超安、9割超が値下がり:識者はこうみる(2024/9/4)
https://jp.reuters.com/economy/JSOWG354J5LXPBNKUK6CQHQDU4-2024-09-04/

 半導体株が精彩を欠いている中、日本株も為替円高の反転に伴って上値を試し日経平均も39,000円を回復する場面がみられましたが、指数寄与度の大きいファーストリテイリング(9983)の影響が色濃く、8月暴落時における景気敏感株売り、ディフェンシブ株買いへの資金シフトから言わば消去法的な買いが中心であったとみられます。

 とはいえ、日本市場でも8/5の暴落以降の戻り相場では値上がり銘柄が1,000を超える日が多くみられ、市場売買代金が低迷する中でも「閑散に売り無し」の如く多くの銘柄で暴落前の水準を取り戻す動きが確認できています。その間、騰落レシオは7月高値以来の120pt越えを記録し、一部で過熱感もみられ始めたところ米国レイバーデー明けで戻った投資家においては利益確定売りから入るトレードが本日の下げ幅を増幅させた一因とみられます。

 一方、暴落後の戻り相場において市場の売買代金が4兆円割れとなる日々が続いたことから、市場参加者の多くが慎重姿勢であったことが窺え、戻り売り・押し目待ちのスタンスを続けてきたともみられます。また、戻り足の早かった新興市場においては売買代金が暴落前の水準とほぼ変わらない推移がみられることから短期資金を中心に回転を効かせた上昇相場となり、米利下げ期待や円高耐性を背景に大型株よりも優位性があったとみられます。

 前述したとおり日経平均はファーストリテイリング(9983)の上昇により市場全体の実勢よりも強くみられがちで、ここから為替円高が再び深耕してくるようだと市場内では2番底警戒が急激に意識されやすくなることでしょう。しかし、米利下げ観測の一方で日銀は7月サプライズ利上げの混乱の大きさをふまえて当面の追加利上げを見送る考えを重ねて表明していることから9月日銀会合での追加利上げに踏み切る可能性は低いほか、円キャリートレードの巻き戻し影響も以前より縮小していることでドル円140円を突破するような円高圧力は生じにくいのが目先の前提です。

◆ユニクロ、8月国内既存店売上高は前年比25.3%増 客数18.4%増(2024/9/4)
https://jp.reuters.com/business/UESQM4BFCBNGXAQFM4JFA5C5JI-2024-09-03/

 再び試練に直面した日本株、為替の動向において引き続き波乱の要因となるのは米国の経済指標や中国も含めた世界景気の動向であるとみられます。問題はこの大幅反落をうけて8月歴史的暴落と同様に値幅を伴った下落が今後も続くかどうかです。今週より本格的に動き出してきたはずの機関投資家が売り目線から入ってきているとすれば空売り比率も相応に高まっているはずです。その反面、単なる意欲的なヘッジ売りが主因であるとすれば下落は一過性なもので済むことになります。とりわけ半導体株の暴落と景気敏感株売りのトレードは米FOMC前の利下げ催促相場の一環である可能性も高く、これらを横目に下げ渋る内需・ディフェンシブ株および連れ安しただけの中小型株などには押し目買いの妙味が隠れているとみられます。