【6/24日本市場の確認ポイント】
日経平均 38,804.65(+0.54%)[38,416~38,905] 
TOPIX   2,740.19(+0.57%)[2,724~2,749] 
マザーズ   638.77(+0.12%)[637~642] 

値上がりセクターTOP5
1.輸送用機器(+1.58%)
2.医薬品(+1.48%)
3.倉庫・運輸(+1.14%)
4.銀行(+1.01%)
5.情報・通信(+0.98%)

値下がりセクターTOP5
1.非鉄金属(▲0.45%)
2.ゴム(▲0.45%)
3.サービス(▲0.23%)
4.鉱業(▲0.14%)
5.電気・ガス(▲0.12%)

日本株は6月初めにTOPIX2800ptをつけた後、日銀政策修正警戒から上値の重さが意識されるとともに、商いも低調となる展開が続いています。日本市場では日銀6月会合と前後して長期金利が低下し、債券市場では追加利上げ前の大型起債が相次ぐ中、日本株においては米国株高に追随することなくレンジ内取引が中心となっています。

 日本株における膠着感の高まりは、AIブームを象徴する米エヌビディアはじめ韓国、台湾などの半導体株が高値更新の動きとなる中でもレーザーテック(6920)や東京エレクトロン(8035)などが冴えない展開となっていることが一因とみられる他、バリューセクターにおいても海運、自動車、商社など時価総額の大きい主力どころが軟調な点が挙げられます。足元では3月期末企業の株主総会が相次ぎ、認証不正問題で業界を騒然とさせたトヨタ自動車(7203)やAI領域を中心に巨額投資を狙うソフトバンクG(9984)などが話題を集めました。

 一方、中小型株では春先より調整の深まったグロース250指数が5月末で底打ちの動きを確認し、6月中旬に25日移動平均線をおよそ3カ月ぶりに上回りました。新興市場の水準は大きく低下しましたが、足元ではTOPIX算出の対象市場拡大が発表されるなど中小型株にとって明るい材料もあり徐々に見直す動きも感じられます。

【米国株概況】
エヌビディア一極集中の相場に息切れ感、夏休み入りで調整局面に入る米国市場

NYダウ 39,411.21(+0.67%)[39,184~39,571] 
S&P500 5,447.87(▲0.31%)[5,447~5,490] 
NASDAQ 17,496.82(▲1.09%)[17,494~17,730] 
ダウ輸送株 15,234.6(+0.80%)[15,158~15,376]
半導体SOX 5,372.3(▲3.00%)[5,369~5,519]
日経平均先物(CME) 38,710(▲0.08%)[38,375~38,965] 
ドル/円 158.78~159.91(高値160.03:4/29、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 0.990%(高値1.100%:5/30、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 4.235%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 81.71(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2345.85(高値2,454:5/20、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 4.420(高値5.199:5/20、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)13.33(高値37.79:2022/2/24)
SKEW指数 147.13(安値110.34:2022/11/3、高値170.52:2/13)
Fear&Greed指数 40(FEAR:恐怖)
High Yield Bond (HYG)77.31(安値70.30:2022/10/13)

 米国市場は主要な米経済指標の下振れにより米FRBの利下げ観測をめぐる期待が継続、米金利低下とともにハイテク株買いが中心となってナスダック、S&P500は6/20にそれぞれ史上最高値を更新しました。上昇の立役者は間違いなく米半導体エヌビディアの時価総額トップに上り詰める快進撃にあったとみられますが、その背景にはAIブームへの期待と米FRBによるQT(量的引き締め)減額による流動性向上があります。

 6月相場はまさしくエヌビディア相場で連日話題に事欠きませんでしたが、足元では決算材料および株式分割後の個人買い一巡といった中で大規模な内部者売りが報告されており、凄まじい出来高を集めながらも足元では利益確定売りによって大幅続落となりました。これでエヌビディアに一極集中する極端なマネー偏重が落ち着きをみせるかが今後の焦点となりそうです。

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 過度にエヌビディアに一極集中したことによってその他銘柄が指数をアンダーパフォームすることも少なくなかった一方、その利益確定後の資金が循環して株式市場内で回るのか、あるいは他市場に流れるかは大きな焦点です。とくに米国内では債券市場における資金需要が高まることが見込まれることから米国債に向かうのが第一義と考えるのが妥当と言える反面、今週には米大統領選に向けてバイデン氏・トランプ氏のTV討論会を27日に控え、いずれにしても米財政の拡大懸念を呼び起こしかねない政策論争となる可能性があります。すなわち、米国政治の混迷を機に米国債の信用低下を市場が懸念する場合、マネーの流れがこれまでと変化するといったことも考えられそうです。

 米国市場では米FRBのQTペース減額が実質的に利下げを実施したのに相当し、流動性が潤沢に担保される市場環境であることを考えますと、仮にエヌビディアなどブーム的に買われた半導体株やハイテク株が調整する局面を迎えたとしても、それら以外のオールドエコノミー株が見直されることによって案外NYダウなど指数は底堅く推移するかもしれません。その一方、ハードシナリオでは米ハイテク株調整とともにその他銘柄にも資金が循環せず、米国債・米ドルもろとも総じて米国売り(株・債券・通貨)となるリスクはいつ生じてもおかしくない状況にあります。それは極論としても、2024年前半はほぼ最高に近い形で相場を作った米国株は後半に米大統領選というビッグイベントを控えているため、できるだけ貯金を作っておきたかったところなのだと思います。

 それだけ米国がこれまで覇権国における例外主義として世界のマネーを一手に呼び込み、米国バブル(米株、米国債、米ドル)を形成してきた以上、その反動がいずれ生じることは米国自身が一番わかっていることでしょう。しかしおそらく米国ハードランディングは経済よりも政治が先に直面するはずで、金融市場の混乱もただちに引き起こされるというものではないと言えます。仮にそのような兆しがあればとっくに米FRBは何かと理由をつけて利下げサイクルに転換し、QTも即刻停止しているはずだからです。つまり、米国市場もまた6月の山が大きくなった分、7月の決算シーズンを過ぎて夏休みの間の調整は季節的に生じるとして、しばらくは市場予想から前倒しで利下げ開始するといったことがない限り調整局面と割り切って臨んでいく方がよいかもしれません。

【日本株投資戦略】
世界の株高に追従できない日本でさらなる円安が進行、日本売り(株安・国債安・通貨安)を克服する政治の変革

日本市場は政策修正警戒が高まった6月の日銀金融政策決定会合を通過して、ひとまず日銀の国債買入減額の具体化が7月会合に先送りされたことで緊張がやや緩和しました。日銀の金融政策正常化は金融市場全体に影響を及ぼすものであると同時に、大きな変更がなされなかったいう点は日本株にとっても下値警戒が緩和されたと言えるものでした。

 もっともこれに大きく反応したのは為替市場であったと言え、日本の円安基調に対して日銀が積極的にこれを押さえつけにいかなったということは事実上の円安容認と受け止められても仕方ありませんでした。日本は輸入物価高によるインフレ圧力をふまえながらデフレ脱却を優先させたいというのが政府・日銀の意図するところと言えます。あるいは、その後のイエレン米財務長官による日本の為替操作監視リスト入りを決定したことからみても日本と一緒になって協調為替介入を実施するつもりはないという意思の表れであり、これは先のG7会合を通じても国際的な合意形成の下で円安環境の継続を促しているものと認められます。

「動けぬ日銀」160円試す市場 円安圧力なお、視線は7月(2024/6/17)
円安進行、対ドル160円が再び視野に-市場で高まる介入警戒感(2024/6/21)
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 日本においては従来のアベノミクス以来の成長モデルに照らし合わせれば為替円安で大企業、主に輸出産業を中心に業績を向上させた上でそこから徐々に中小企業にも恩恵を享受させていくトップダウン型のアプローチで経済成長を促してきた一方、直近ではトヨタ自動車(7203)をはじめ自動車業界における認証不正の慣習を厳しく追及する流れが演出され、日本株に対しても上値を抑えることとなりました。その問題自体よりも日本の主力であるトヨタ(7203)、三菱UFJ(8306)、NTT(9432)といった時価総額上位の株価下落がTOPIXの重しになったことは事実です。

 そのような中、東証はTOPIXの算出にともなうルールを大きく変更することを発表し注目を集めています。従来は東証プライム上場の全銘柄を対象に、足元ではウェイト見直しで対象株の多くに低減措置をしいてきましたが、これを2026年をメドに中小型株の東証スタンダードやグロースの銘柄にも対象を拡大した上で、採用銘柄数を大きく縮減する方針を打ち出しました。
 
JPXがTOPIXの定期入れ替え実施へ 銘柄1200程度に 初回26年10月(2024/6/19)

 金融当局による一連の方針変更が意味するところは成長によって価値創出できない企業の削ぎ落しから成長力の高い企業の選別を行うと同時に、政府も中堅企業の成長支援やスタートアップ支援に取り組む政策を打ち出していることを合わせて鑑みれば、日本企業も競争力を優先に自然淘汰を含めた自浄作用を促していく狙いがあるものと考えられます。これは2022年の東証新上場基準でプライム・スタンダード・グロースの新区分とあわせて上場維持基準も厳しく見直されることとなった動きとも整合的と言えるでしょう。

 足元で政府は本年度の骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針 2024)を閣議決定し、改めて価値創出の投資拡大及び革新技術の社会実装といった観点からDX(デジタルトランスフォーメーション)、GX(グリーントランスフォーメーション)を軸として宇宙、海洋といったフロンティア開拓、AI・バイオ・マテリアル・グローバルヘルスにおけるイノベーション促進、さらに資産運用立国といった成長テーマを設定するに至りました。あとは実現性を高めていく上での適切な資源配分を行うことができるかが政治の課題で、今国会においても政治資金規制法改正をめぐる政局論争に焦点が当てられたことは残念なことです。

政府、骨太の方針を決定 所得や生産性向上に力点(2024/6/21)

 ただ、国会閉幕を機に日本の政治改革が進むのであれば、そのために改めて岸田政権の解散機運も高まって新たなリーダー創出、対外的な外交関係の改善といった流れも期待できるようになるかもしれません。日本にとって長らく続いた成長の限界を突破して真のデフレ脱却を果たせるのであれば、日本株も同様にインフレを原動力とした欧米に見劣りしない株高が実現でき、再び日経平均、TOPIXが最高値を更新する日がやってくるものと思われます。日本株高には海外勢による日本株買い再開が必要不可欠であり、当の海外勢は欧米でしこたま稼いで夏休み入りするところです。しかし、7月、8月とそして9月に向かっていくところで日本も政治が大きく変わる兆しが確認されれば、まずは日本株の上値を押さえ込んだ大量の空売りが巻き戻されることから始まり、純投資の日本株買いが7月の決算シーズンと前後して再開してくる可能性は十分に考えられるでしょう。

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