【5/28日本市場の確認ポイント】
日経平均 38,855.37(▲0.11%)[38,756~38,981] 
TOPIX   2,768.50(+0.08%)[2,761~2,772] 
マザーズ   619.06(+0.90%)[616~625] 

値上がりセクターTOP5
1.電気・ガス(+3.74%)
2.非鉄金属(+2.94%)
3.海運(+2.10%)
4.銀行(+1.47%)
5.鉱業(+1.11%)

値下がりセクターTOP5
1.金属製品(▲1.15%)
2.その他製品(▲0.98%)
3.医薬品(▲0.78%)
4.食料品(▲0.77%)
5.水産・農林(▲0.75%)

 日本市場は米国休場に加え、引き続き日本の長期金利上昇が重しとなり上値の重い展開でした。東証プライムの売買代金は連日での4兆円割れが続くほか、騰落銘柄数は値上がり631/値下がり955と戻り売り圧力が強い状況。強弱感が交錯する中で長期金利上昇を警戒して半導体株、不動産株が売られ、一方で海運株や銀行・保険株などが堅調でした。

 半導体・AI関連の物色は製造装置から生成AI普及での需要急増を見込んだ電力株や電線株に矛先が向かっています。電力各社に加えて電線御三家(古河・住友・フジクラ)が一斉高、また関連工事を手がける電設株なども連れ高する展開となりました。売買代金低迷で指数の上値が重く、材料難からテーマ性や思惑を含んだ銘柄への物色が集まりやすく、半導体・AI以外のところで水素・アンモニアなど脱炭素、原発などエネルギー関連や防衛・宇宙、さらに銀行・保険など持合株売却に伴う特別益発生が見込める銘柄などが注目されています。

 テーマ物色が活発となる中で中小型株にも値を飛ばす銘柄が続出していますが、新興市場のグロース250指数は5/27に年初来安値を更新するなど日本の金利警戒と信用買い残の整理で苦戦しています。株価下落に伴う需給悪化と売買代金の低迷により一層アク抜けしづらい状況で、朝方に買いが入っても戻り売り圧力から上げ幅を縮小する展開となりました。

【米国株概況】
半導体エヌビディアの決算買い続きナスダックが最高値更新、インフレ指標待ちで薄商いの一方で米金利が再び上昇

NYダウ 38,852.86(▲0.55%)[38,706~39,028] 
S&P500 5,306.04(+0.02%)[5,280~5,315] 
NASDAQ 17,019(+0.59%)[16,917~17,032] 【高値更新】
ダウ輸送株 14,995.1(▲0.58%)[14,944~15,090]
半導体SOX 5,317.9(+1.86%)[5,235~5,343]【高値更新】
日経平均先物(CME) 38,960(+0.28%)[38,670~39,000] 
ドル/円 156.59~157.23(高値160.03:4/29、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 1.023%(高値1.035%:5/28、安値0.131%:2022/3/6)【高値更新】
米10年債利回り 4.545%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 80.20(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2360.30(高値2,454:5/20、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 4.860(高値5.199:5/20、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)12.92(高値37.79:2022/2/24)
SKEW指数 152.23(安値110.34:2022/11/3、高値170.52:2/13)
Fear&Greed指数 53(NEUTRAL:中立)
High Yield Bond (HYG)76.78(安値70.30:2022/10/13)

 3連休明けの米国市場では月末のPCE価格指数発表で米FRBの金融政策を見極める必要から様子見ムードとなる中、引き続き半導体大手エヌビディアが好決算材料を背景に大幅続伸。米国債入札が低調で債券金利が上昇する中でもエヌビディア人気化に拍車がかかり、ハイテク株主体のナスダック、半導体SOX指数は高値更新と強さを見せつけました。

◆エヌビディア株が3日続伸、決算発表後に時価総額は4600億ドル拡大(2024/5/29)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-05-28/SE7IYKT0AFB400

 米国債の2年・5年入札が不調により米金利が再び上昇したことに加え、ミネアポリス連銀総裁が追加利上げの可能性について言及したことでやや警戒感が浮上するも、肝心の経済データでは米FRBが重視するインフレ指標は鈍化が予想されているためVIX指数は12pt台にとどまりました。

 地政学的緊張の高まりから原油価格が再び80ドル台に乗せるなど不穏な動きも見せていますが、インフレ指標の鈍化を確認できれば6月米FOMCに向けての警戒感も和らぎ、米金利環境も落ち着きをみせるものと思われます。今後6月に入ると米財務省の米国債バイバックとQT減速が市場の流動性を支援するようになり、地政学リスクの波乱に対しても一定の耐性を示すセーフティネットが設けられると言えます。裏を返せば、6月の地政学リスク激化を金融当局も備えを万端にしようとしているということでもあり、米国経済のソフトランディング実現とインフレ再燃の抑止に向けた取り組みを両立していけるかも焦点になることでしょう。

◆◆米利下げ待ちあぐねる米国債投資家に朗報-買い戻しとQT減速の開始(2024/5/27)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-05-26/SE422LT0AFB400?srnd=cojp-v2

 米国株は半導体エヌビディア一強があまりにも鮮明で半導体・AIブームを中心にハイテク株の動向が全てと言っても過言ではない状況です。大手ハイテク企業がこぞって競争し合う生成AI普及に向けた投資額はかつてないほど絶大なことからブームはまだ続く可能性があるも、歪な市場形成とインサイダーらの保有株高値売却の動きも相次いでいることから、AIバブルはクライマックスに向けてまさに鉄火場の様相となってくることも念頭に置いておく必要がありそうです。

【日本株投資戦略】
上昇に歯止めがかからない日本金利と為替の円安環境、株・債券・日本円のトリプル安から抜け出すきっかけを探る場面

 日本市場は日米の金利上昇警戒から上値の重たさが意識されやすいものの、米ナスダックが堅調となったことで半導体関連などは連想買いが入りやすくなると思われます。ただ、日本の金利上昇警戒に加えて米金利上昇も懸念材料に加わることで上値追いは手控えられる地合いとなりそうです。

 日本では金利上昇が最大の注目点となっていますから、金利敏感セクターの銀行・保険などの金融株が上昇しています。これらは時価総額が大きくTOPIXへの影響力が大きく反映されやすいため、全体相場を下支えしているとみてよいでしょう。ただ、日本企業は今回の決算シーズンで例の如く保守的な業績予想から予想EPS(1株当たり利益)を低下させており、ここにきての金利上昇が重なっていることでバリュエーションを切り下げざるをえない状況に直面しています。

 まだ業績が伴わず、かつ金利上昇が逆風となりやすい新興市場の銘柄にこそその影響が色濃く、グロース250指数は足元で年初来安値更新といった苦難を強いられる状況となっています。とくに決算ミスで売られた銘柄には決算前に積み上がった信用買い残を整理する必要に迫られる中、足元における売買高の低迷がよけいに需給整理に時間を取られてしまうこととなっています。
日本の新興市場指数が4年ぶり安値、金利上昇が成長企業の株価を直撃(2024/5/27)

 日本市場は金融政策における利上げ観測が市場の逆風となる現状である中、期待されるのは財政政策になるわけですが政府・日銀はデフレ脱却を企業の賃上げに頼る状況で、景気刺激するための打ち手に乏しい状況が浮き彫りとなっています。半導体分野には大きく国費を割きながら支援策を講じており、今後の業績回復も見込まれることから日経平均を引き上げる上では半導体株の躍進が欠かせません。

 足元では日銀の内田副総裁がデフレ脱却および日本の金融政策正常化に言及したことにより、この発言をタカ派ととらえた市場は日銀の国債買入オペ減額観測とあわせて債券市場における金利先高警戒から日本の長期金利上昇が鮮明となっています。こうした現状からしますと、6月の次回日銀金融政策決定会合(6/13~6/14)で実際に国債買入オペ減額の決定をみるまでは思惑主導での金利上昇を招く展開が続き株式市場は逆風にされされる環境と言えるかもしれません。
デフレとゼロ金利制約との闘い「終焉は視野に」-内田日銀副総裁(2024/5/27)
景気「足踏みも緩やかに回復」で据え置き、生産など上方修正=5月月例経済報告(2024/5/27)
企業向けサービス価格が32年半ぶり高水準、賃金転嫁に広がり-日銀(2024/5/28)
日銀6月減額と7月利上げ読む市場、残るは年2回ペース織り込み(2024/5/15)
長期金利が2011年以来の高水準、政策修正警戒ー安達氏発言の反応限定(2024/5/29)

 直近でG7財務相・中央銀行総裁会議に出席した政府・日銀にとってみれば、目下、GW中の為替介入でも円安に歯止めがかからなかった現状を日本の金利上昇で打開できることを期待し、株式市場がある程度軟調でも致し方ないと考えている面もあるでしょう。となりますと、積極的な財政政策は期待できず、日米デカップリングといいますか世界株高に後れを取る日本株が局面転回するのは6月中旬まで時間がかかる可能性があるということです。ただ、それまでの間に日本でも明日の2年国債入札や来週の10年国債入札があり、これらを機に金利上昇に一服感がみられるかが焦点で、金利が反転すれば日本株にも見直し買い機運が高まりやすくなるものと考えられます。

スタンダード会員へご登録いただくと、1.今後のマーケットについても展望する【先読みの近未来】、2.日々の≪重要ニューストピック≫を厳選して深堀りする【揺れ動く世界情勢の解説】などを加えた内容充実のメールマガジンをお届けします。