【5/21日本市場の確認ポイント】
日経平均 38,946.93(▲0.31%)[38,942~39,346] 
TOPIX   2,759.72(▲0.30%)[2,758~2,785] 
マザーズ   633.41(▲1.41%)[633~646] 

値上がりセクターTOP5
1.保険(+2.29%)
2.電気・ガス(+1.22%)
3.石油・石炭(+1.09%)
4.卸売(+0.57%)
5.海運(+0.42%)

値下がりセクターTOP5
1.不動産(▲1.69%)
2.証券・商品先物(▲1.21%)
3.精密機器(▲1.08%)
4.その他金融(▲1.05%)
5.機械(▲0.92%)

 日本市場は欧米株高の外部環境を追い風に日経平均は39,000円台を一時回復した一方、日銀政策修正観測に伴う金利上昇圧力が重しとなり失速する状況が続いています。注目度の高い米エヌビディア決算を控えて昨日は売買代金も低調で、戻り売りをこなせるほどのエネルギーが不足しています。

 指数けん引役の半導体株がまちまちの動きで全体足踏み感が強まる中、決算材料で保険株の大幅反発や電力株の出直り、中東情勢の緊迫化懸念などから資源株の上昇が目立っています。決算シーズン通過後も個別株物色への意欲は高い一方、金利上昇警戒が燻り買いの勢いが継続しづらい地合いとなっています。

 日銀の国債買入減額で日本の長期金利が昨秋以来の高値更新をみせる中、新興市場のグロース250指数は底値圏で推移。5/15に25日移動平均線で打ち返されたことで4/19に続いて5/17にも年初来安値を更新。主力株と比べて金利上昇下での警戒感が重しとなり底入れ判定が長引いています。

【米国株概況】
半導体エヌビディア決算を目前に様子見、カナダCPIで金利低下が株高を支える

NYダウ 39,872.99(+0.17%)[39,778~39,905] 
S&P500 5,321.41(+0.25%)[5,297~5,324] 
NASDAQ 16,832.62(+0.23%)[16,719~16,839] 【高値更新】
ダウ輸送株 15,170.9(▲1.67%)[15,164~15,404]
半導体SOX 5,074.4(▲0.31%)[5,020~5,080]
日経平均先物(CME) 39,295(+0.58%)[38,695~39,475] 
ドル/円 155.47~156.29(高値160.03:4/29、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 0.968%(高値0.985%:5/20、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 4.415%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 79.22(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2425.20(高値2,454:5/20、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 5.102(高値5.199:5/20、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)11.86(高値37.79:2022/2/24)
SKEW指数 144.54(安値110.34:2022/11/3、高値170.52:2/13)
Fear&Greed指数 63(GREED:貪欲)
High Yield Bond (HYG)77.26(安値70.30:2022/10/13)

 米国市場は足元のインフレ指標が落ち着きをみせたことから米FRBの年内利下げ期待が復活し、主要株式指数は軒並み最高値圏で推移しています。市場が注目する米半導体大手エヌビディアの決算発表を前に様子見姿勢が強まりつつも、米金利上昇に対する警戒感が緩和して株高を支援しています。

 20日にはイラン大統領のヘリ墜落事故死の報道で中東情勢緊迫化懸念から金価格や銅先物価格が急伸、資源価格の高騰が再びインフレ圧力を刺激しかねないとも言えない状況ながら、米国経済における足元の米経済指標を鑑みて米FRBがタカ派転向する可能性は低いとの見方が優勢となっています。ほか世界的な欧州はじめそれ以外の主要国でもディスインフレの確認が金利低下、世界株高を後押ししているのです。
世界的に債券高、インフレに歯止めの兆候-カナダCPI鈍化が後押し(2024/5/22)

 ひとまず次回6月の米FOMCでは政策金利が据え置かれるにしてもQT(量的引き締め)ペース減額が予定され、他方で欧州ECBなどが米国に先行して利下げ開始となる見込みであることから金融市場は楽観的な姿勢を強めています。米金利は4月のピークアウトから低下傾向を辿っており、金融政策の乖離から連動性が薄れる対ユーロとの関係から為替は米ドル高基調が続きます。

 地政学的緊張の高まりから資源価格が高騰し再びインフレ圧力を強める中でも、バイデン米政権は米ドル高政策でこれを緩和しようと考えているはずで、金融市場においてはQT減額とやや緩和的な政策転換することで流動性を維持する見込みです。市場のリスク指標はVIX指数が12pt割れと下値警戒感は完全に払拭され、Fear&Greed指数も再び貪欲レベルまで回復し楽観姿勢が広がりをみせています。

 まさに米半導体エヌビディアが好決算を発表すれば一段高への期待感も高まりやすい状況と言えますが、決算反応が素直に上昇するかは未知数で、事前の証券会社によるレーティング引き上げなどで期待を煽っている部分も少なからずあることから材料出尽くしでの売り反応もないとは言い切れません。しかし上述のとおり金融環境が良好であるために6月上旬にかけての米株上昇トレンドが崩れることはないと考えられ、米大統領選の接戦から政策的な株高支援も支えとなるでしょう。

【日本株投資戦略】
日本株の底入れ反転はすでに開始、米エヌビディア決算通過で様子見解除から売買代金増加につながるか

 日本市場は欧米株に対する出遅れからそれなりに戻りを試す動きをみせるも失速してしまう場面が目立ち、相対的に弱い動きが続いています。明らかに日本株の難易度だけ高いのは日本と欧米の金融政策のちがいが背景にあるとみられ、日銀警戒から日本の金利上昇圧力が日本株にとっての重しとなっています。

 今週に入りサウジアラビア皇太子の来日で中東オイルマネーの流入観測が広がり、日経平均は急反騰で39,437円までの戻りをみせましたが来日延期報道で急失速したのが非常に印象的でした。足元では売買代金が低迷しているように、一時の買いが膨らんでもトレンドを形成するまでに至らないのが実状です。

 ただ、その一方で外部環境は良好で為替はGW時のサプライズ介入でもドル高円安トレンドには変化を加えられませんでした。日銀の政策修正警戒もある程度織り込みが進むとともに影響は緩和していくとみられ、利上げの地ならしとしてみればすでに日本株も底打ちしたとみてよいかと思います。あとはくどいようですが売買代金の復活が重要なカギを握っていると言えます。

 また、市場が警戒材料としている日銀の国債買入減額にしても6月で大きな方向性が決定されるとみられる以上、そのタイミングで初回利上げに踏み切る可能性は低いとすれば緩和的な金融環境が劇的に変化するわけではありません。欧米とはインフレ事情が異なり急ピッチな利上げ軌道を必要としない日本では、金利上昇に対して市場も徐々に慣れさせるモラトリアムが与えられます。

 よって、目先は底打ち反転から欧米株最高値更新にみられる出遅れ修正で日経平均も再び最高値を目指しにいくものと考えます。ただ、いずれは今夏のエネルギー補助金撤廃から諸々の物価上昇を引き起こし、やがては現状の金利上昇見通しでは対応しきれないインフレ圧力との闘いが待っているでしょう。しかしそれが日本株にとって実質金利の低下を反映した株高につながるのであって、中長期的視点から上昇の起点となる可能性は高いと言えるでしょう。

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