【2/27日本市場の確認ポイント】
日経平均 39,239.52(+0.01%)[39,113~39,426] 【高値更新】
TOPIX   2,678.46(+0.18%)[2,672~2,692]
マザーズ   775.46(+1.53%)[761~775]

値上がりセクターTOP5
1.鉄鋼(+3.16%)
2.銀行(+1.69%)
3.機械(+1.38%)
4.証券・商品先物(+1.08%)
5.倉庫・運輸(+0.66%)

値下がりセクターTOP5
1.海運(▲1.76%)
2.陸運(▲1.23%)
3.小売(▲0.89%)
4.食料品(▲0.81%)
5.建設(▲0.70%)

 日本市場は史上最高値更新を続けた米株連騰に歯止めがかかったことに加え、日本のCPI(消費者物価指数)予想上振れで日銀政策修正観測を後押ししたことから短期金利が上昇し、利益確定売りを誘発する場面がありました。欧米の長期金利上昇からグロース株には逆風の状況でしたが、売り物をこなしながら持ち直し日経平均、TOPIX、グロース250指数いずれも続伸して好地合いを継続しました。

 これまでの上昇牽引役であった半導体株の一角や海運株が利益確定売りに押されたものの、金利上昇が追い風となる銀行セクターや値上げ観測が強まった鉄鋼株、中国関連株などの見直し買いにより全体では堅調。東証プライムの騰落銘柄数は値上がり946/値下がり668と値上がり銘柄数が上回り、バリュー系セクターの押し上げによりTOPIXが上昇。主力値がさ株の一極集中相場からやや物色の広がりに期待を持たせる相場づきになりました。

 とりわけ新興市場の復調がめざましく、出遅れ感の強かったグロース250指数は前日の+2.9%高に続いて+1.5%高と躍進。半導体やAI関連のもはや馴染み深いテーマに加えて、サイバーセキュリティ、量子コンピュータ、さらにはバイオテクノロジーといった新興市場らしいテーマ物色が活発化しました。これまで主力株に資金集中してきた分、新興市場では値ごろ感のある銘柄が多数を占めており、小資金でも値動きが大きくなりやすい新興株にも注目が集まってきたようです。

【米国株概況】
インフレ指標待ちで様子見、米債市場は順調に国債入札・起債を消化

NYダウ 38,972.41(▲0.25%)[38,881~39,087] 
S&P500 5,078.18(+0.17%)[5,057~5,080] 
NASDAQ 16,035.30(+0.37%)[15,940~16,046] 
ダウ輸送株 15,796.9(▲0.29%)[15,772~15,886]
半導体SOX 4,654.9(▲0.18%)[4,651~4,697]
日経平均先物(CME) 39,290(+0.05%)[39,095~39,410]
ドル/円 150.08~150.71(高値151.93:10/21、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 0.685%(高値0.975%:11/1、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 4.303%(高値5.000%:10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 78.52(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:5/4)
金先物 2039.50(高値2,098:12/28、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 3.853(高値5.039:2022/3/7、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)13.43(高値37.79:2022/2/24)
SKEW指数 147.29(安値110.34:2022/11/3、高値170.52:2/13)
Fear&Greed指数 78(EXTREME GREED:極端な貪欲)
High Yield Bond (HYG)77.20(安値70.30:2022/10/13)

 米国市場は前週の米半導体大手エヌビディア決算後の盛り上がりが落ち着きをみせる中、米債市場における米国債入札ならびに米企業の起債ラッシュをこなしており、月末の米PCE価格指数を控えて様子見となっています。前回述べたように、米FRBも重視するインフレ指標は直近の米CPI、米PPIで強含みとなっている現状を確認したことからインフレ鈍化基調が底入れ反転し、インフレ懸念の再燃につながる可能性を見極めようとしています。
米PCEコア価格指数、1年ぶり大幅上昇か-金融当局が重視の指標(2024/2/25)

 米国におけるインフレ動向は米FRBの金融政策決定においても最重要であるほか、米大統領選挙を控えるバイデン米政権にとっても支持率回復の上で重要なものとなります。米経済はソフトランディング可能との楽観姿勢とともに、米株好調がそれを象徴しているかのように喧伝するバイデン米政権ですが、足元の選挙情勢においてはトランプ前大統領ひいては米共和党の支持が拡大しており、米国民の経済に対する不満が背景にあると言えます。

 昨晩の米株市場では主要3指数が高安まちまちでしたが、様子見ムードとなる中でも出来高はそれなりにあって値上がり銘柄数も優勢でした。これを見る限り市場はさほど警戒を強めてはいないようですが、米PCE価格指数が概ね市場予想と一致するかが重要で、ディスインフレとともに米早期利下げを期待している現状では上振れは起きてほしくないのが市場の本音でしょう。

 米債市場では1月に続いて企業による大型の起債ラッシュが続いており、それに加えて昨年から騒がれている米政府の債務上限問題のつなぎ予算期限も迫ってきています。足元における米国債入札は順調に消化して米議会トップらも政府機関閉鎖回避に向けた話し合いに臨んでいる模様ですが、米共和党強硬派は米国のウクライナ支援反対の声を強めてフリーダム・コーカスの影響力も無視できなくなってきています。
米社債発行、2月として過去最高に-少なくとも23兆円相当(2024/2/27)
米政府閉鎖5日後に迫る、議会は歳出法案前進の兆し見せず(2024/2/27)
米下院議長、バイデン大統領と個別会談-「政府機関の閉鎖は防げる」(2024/2/28)

 市場に影響を及ぼす米経済と米政治の不確実性は緩やかながらにも着実に高まってきているとみられ、今後のインフレ動向やウクライナ戦争をはじめとする地政学リスクの二次的影響などを注視する3月となりそうです。とくに米債市場によって市場の流動性が吸い上げられた以上、これらのリスクが落ち着いたままでいれば米株も他市場も高値圏での推移を続けられそうですが、どれかボタンの掛け違い一つで市場の前提が崩れる可能性もあります。投資家の中には押し目待ちで3月相場の調整を期待する面もあるかと思いますが、3月中旬から下旬にかけての展開を見極めていきたいところです。

【日本株投資戦略】
月末リバランスをこなして全体底上げ機運が高まるか、出遅れ銘柄にも強気物色が波及継続がカギ

 日本市場は主力値がさ株を中心とした一極集中の買い上がり後の相場で、大型株の利食い資金が中小型株にも降りてきたような好循環を実現しつつあります。AIブームに沸く半導体セクターのほか、中東混乱で騰勢を強めてきた海運セクターの上昇が一服となり、同じ半導体でも中小型の周辺銘柄、景気敏感業種の中でも鉄鋼株や機械株など資金の分散がみて取れるようになっています。

 日経平均が史上最高値圏で推移を続けていくにあたり、やはり為替円安の継続に加えて出遅れ銘柄の見直し買いがカギを握っています。日経平均はこの月末のリバランス需要から年金勢やファンド勢の株売り・債券買いのフロー影響を受けつつ不安定交じりの動きとなる面は仕方ないですが、たとえ主力値がさ株の一部が足踏みしても指数影響の少ないその他大勢の銘柄群が全体底上げしてくれればTOPIX優位の強気相場が期待されます。

 実質的に日経平均を押し上げてきた半導体株にしても台湾勢の動向からAI関連の引き合いの強さを窺い知ることができ、汎用品にしても中国向けの復調によって市況改善期待で先端半導体以外のところでも電子部品セクターは見直し買いが入りやすくなります。中国における在庫調整が一巡したことを確認できるだけでも中国関連株の見直し買いに自信を深めるきっかけを掴めるというものでしょう。
台湾輸出受注、1月は予想上回る前年比+1.9% AI好調(2024/2/27)

 他方、足元では欧米金利の上昇にみられますように、株高の原動力となってきた欧米中銀の早期利下げ期待の後退に加えて、日本においては日銀による政策修正観測が根強いことを示す短期金利の上昇がみられています。とくに植田日銀総裁のインフレと認識する発言に加え、1月CPI上振れなどもあり、このCPIに関しては今回より算出方法に外国パック旅行価格を加味に変更というテクニカルな面があったにせよ、2月は電気・ガス代の負担軽減策による物価抑制恩恵が無くなるとあって、日本の2年債利回りは2月中旬以降の上昇基調を継続しています。3月以降の物価は為替円安の持続性次第でインフレ見通しとして再び鈍化に向かう可能性もありますが、それによって日銀の政策修正時期を左右されそうです。念のため一段の金利上昇や為替円安の前提が崩れる要因が発現してくることがないか、マクロ環境の変化を注視して慎重を期したい場面です。それが日銀や米FRB発あるいは地政学リスク発でも為替円高やインフレ再燃の芽に市場の意識が向いた場合には一転して株売りとなるリスクも孕んでいるという認識は必要でしょう。
債券は下落、CPI上振れで日銀政策修正観測-5年移行債入札は強め(2024/2/27)
消費者物価は22カ月連続で日銀目標2%水準を維持、正常化後押し(2024/2/27)

 日本市場においては日経平均の推移からもわかるように、2/8内田日銀副総裁の発言から日銀が仮に政策修正に踏み込むにしても金融環境は緩和状態を維持させるとの安心感が株高の推進力となっています。市場では企業が春闘での賃上げを実現するのを確認してから政策転換との観測に基づきながらも、仮にそれより前に日銀が動いても驚かない、つまり、3月・4月の政策修正もあり得るとの織り込みを進めつつ、足元では裁定買い残が高く積み上げられています。これらはマイナス金利解除はできるだけ遅い方が当然好ましくも、もし予想以上に早期実現となった場合には先物売りでリスクヘッジしながら現物を買い進めているというわけで、いわば両建ての状態です。個人投資家にとっては資金量的にも難しい芸当ですから、自らのリスク量を測りながら3月イベントに備えていく必要があります。
◆内田日銀副総裁、出口で具体論 「マイナス金利解除でも緩和維持」(2024/2/8)

 またこれは裏を返せば、上述したように出遅れ銘柄群が躍進して目を見張るような上昇をみせれば、積み上げられた先物売りが3月SQに向けてショートスクイーズされる可能性もあるわけです。日本株の一段高にはさしずめ出遅れTOPIXの上昇、それによるNT倍率の低下とともに騰落レシオが過熱感を帯びる状態にまで達するかが焦点となりそうです。

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