【11/10日本市場の確認ポイント】
日経平均 32,568.11(▲0.24%)[32,248~32,598]
TOPIX 2,336.72(+0.07%)[2,313~2,338]
マザーズ 679.16(▲1.86%)[673~682]
値上がりセクターTOP5
1.海運(+2.45%)
2.石油・石炭(+1.99%)
3.水産・農林(+1.78%)
4.銀行(+1.58%)
5.建設(+1.43%)
値下がりセクターTOP5
1.その他製品(▲2.52%)
2.精密機器(▲1.79%)
3.ゴム(▲1.57%)
4.輸送用機器(▲0.94%)
5.医薬品(▲0.88%)
日本市場はオプションSQ絡みの先物乱高下で高値波乱を演じながらも32,454円でSQ清算後、戻り売りをこなしながら徐々に下げ幅を縮小。バリュー株がしっかりでTOPIXはプラス圏へと浮上しました。一方、米金利上昇に敏感なグロース株では決算が嫌気されたソフトバンクG(9984)やリクルート(6098)、INCJの売却報道のあったルネサスエレクトロニクス(6723)など悪材料に大きく下げ反応する銘柄も少なくありませんでした。
個別株は決算材料で一喜一憂、ソフトバンクG(9984)やソニー(6758)、ホンダ(7267)などが大きく売られた一方、上昇銘柄では米金利上昇を受けた銀行株の見直し買いに加えて市況関連の海運、商社、エネルギー関連などの強さが際立ちました。また、米金利上昇を押し退けて東京エレクトロン(8035)やSCREEN(7735)など半導体株の健闘も光り、単純に金利動向だけでバリュー/グロースを買い分けることはできない選別物色の難しさは健在です。
波乱含みとなりやすいSQ週である以上に個別材料を受けた上下反応が大きくなっており、全体的には週間パフォーマンスとしてグロース系優位の展開であったとみられます。週末こそバリュー系業種が盛り返してマザーズ指数に代わるグロース250指数が反落となりましたが、金利警戒も落ち着いて投資家心理の改善が中小型株の見直し買いにつながってきているとみてよいでしょう。
【米国株概況】
米国債入札スケジュールを通過して株、債券ともに買戻し、米覇権の揺らぎと米政治リスクが頭痛の種ながら短期ラリーには期待
NYダウ 34,283.10(+1.15%)[33,905~34,310]
S&P500 4,415.24(+1.56%)[4,353~4,418]
NASDAQ 13,798.11(+2.05%)[13,556~13,802]
ダウ輸送株 14,426.5(+1.12%)[14,218~14,446]
半導体SOX 3,591.7(+4.04%)[3,487~3,600]
日経平均先物(CME) 32,885(+0.94%)[32,250~32,925]
ドル/円 151.22~151.62(高値151.93:10/21、安値127.46:1/3)
日10年債利回り 0.842%(高値0.975%:11/1、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 4.646%(高値5.000%:10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 77.35(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:5/4)
金先物 1942.70(高値2,068:5/4、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 3.596(高値5.039:2022/3/7、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)14.17(高値37.79:2022/2/24)
SKEW指数 139.81(安値110.34:2022/11/3、高値158.30:6/1)
Fear&Greed指数 42(FEAR:恐怖)
High Yield Bond (HYG)74.06(安値70.30:10/13)
米国市場は先週の注目度が高まっていた米国債入札状況やパウエル米FRB議長発言を消化しつつ、米金利およびVIX指数、債券MOVE指数などが低位安定を示して米国株は買戻し優勢となりました。商品市場では原油価格が75ドル台前半まで売られたほか、米国だけでなく中国の経済指標もふまえて世界の景気先行き懸念を示す場面もありつつ、結果的に米金利警戒の緩和によるリスク選好の動きの方が勝ってきています。
先週はやはり米国債入札がカギとなり、中国銀のサイバーセキュリティ問題を差し引いても米国債需要の低迷が垣間見られた一方、大きな波乱につながらなかった意味合いは大きく、これは米国債市場だけでなく株式市場でもショート(売り)ポジションの巻き戻しにつながっています。強い米経済指標の発表が少なかったことも幸いでしたが、今週予定の米10月CPI(消費者物価指数)や米10小売売上高にしてもそれほど米金利上昇の警戒を誘うものとはなりづらいとみられ、米株市場は買いモメンタムが強まりやすい状況と言えます。
◆米長期金利上昇 米30年債入札、需要集まらず(2023/11/10)
◆中国工商銀へのランサムウエア攻撃で米国債市場が一時混乱(2023/11/10)
ただ、注意すべき点としては、この週末に格付会社ムーディーズが米国債の格付け見通しをネガティブ方向に引き下げたことや、米小売企業のホームデポやターゲット、ウォルマートなどの企業決算が予定されています。米金利動向に神経質になっている金融市場にとって、これらの結果次第で米国の信用リスク、米景気を左右する米個人消費の動向が米金利上昇を再燃させるリスクを孕むものであることは無視できないものと思われます。
◆米国の格付け見通し「ネガティブ」に引き下げ-ムーディーズ(2023/11/11)
個人的にはこれらを一種のノイズとして捉えながら短期動向を気にし過ぎないことも大事だと考えますが、米国においてはこの他に政治要因として米民主党、米共和党の二大政党制の弊害とも言えるような連邦政府予算をめぐる政治プロレスも頭痛の種となっています。10月相場において大きなリスク要因となった米政府機関閉鎖騒動も含んだ米議会の混沌は、米国そのものの信用を傷つけ金融市場にも不毛なボラティリティを持ち込む火種となって燻り続けています。
繰り返しますが、目先はこれらが米金利上昇に拍車をかけるようなものとならない限りは無視し年末ラリー期待に先回りする方が得策と言えるかもしれません。しかしながら、いずれは米国政府および米金融機関も含めた過剰債務に起因した米国の信用リスクそのものに焦点が当てられ金利上昇に拍車がかかる展開も想定しておくのがよいとみられ、年末に向けての相場でも楽観に傾斜し過ぎるのは禁物でしょう。
【日本株投資戦略】
金利市場の落ち着きで11月株高アノマリーを実現、波乱の決算シーズンを通過したバリュー株に再注目
日本市場では先週半ばの植田日銀総裁の国会答弁における将来の金融政策修正や物価見通しの誤ちを認める発言から売り物が嵩む場面もみられましたが、概ね高値圏を維持する動きでした。前回10月のオプションSQ清算の値をやや上回ったほか、日経平均は32,500円台を回復して上値を試す準備が整っています。
足元では個別株の決算材料によって悲喜こもごもの状況が続いていますが、主に世界的な在庫調整の影響における7-9月、あるいは上期業績の下振れはすでに市場織り込みも進んでいるとみられ、下期回復の期待感について探っているところです。業種によってバラつきはある程度仕方ないものの、日本の産業構造で大きな割合を占める自動車やエレクトロニクスの分野で改善が進むとみられることから相場でも業績期待から買われる銘柄も少なくないものと思われます。
日本市場は必要以上に外部環境の影響を受けやすいという側面は否めませんが、今年のパフォーマンスでは圧倒的に日本株優位の展開が続くでしょう。ヘッジファンドによる換金売りもこなしてあとは手放しで楽観という風にはいきませんが、短期的なラリーは期待できるものと思われます。日本はマクロ経済でも企業業績でも改善見込み、悪くとも横ばい程度で済むとみられるために、リスクマネーを引きつけやすいと言えるでしょう。また、米国はじめ各国の財政状態が悪化して積極的な景気浮揚策を打ち出しづらい反面、日本においては総合経済対策を決議したところですから、各々の予算に沿った実効性はまちまちとしても相場にとっては追い風として受け止められることでしょう。
◆デフレ完全脱却へ13.2兆円の補正予算閣議決定-財政健全化課題に(2023/11/10)
少なくとも日本経済がデフレ脱却を完遂し、過去に苦しんだ需給ギャップを解消しつつインフレ期待率を高めることが実現されるのであれば、日本株は実質金利の低下を反映した高次元の株高がみられることと思います。期待に働きかけることは口で言うほど簡単ではないことは植田日銀総裁の発言からも明らかですが、現状の政策や外圧によって否が応でも日本経済へのインフレ圧力は不可逆的に進んでいくとみられ、日本国民はこれから逃れる術はないと言えるでしょう。
国民経済にとって重要性が増す金融所得倍増につなげる呼び水として、日本市場へのアクセス向上を図りつつ射幸心を煽るような日本株の吊り上げが演出されるのは明らかである以上、日本株へ投資する魅力はこの年末にかけてますます高まっていくと考えられます。各セクターにおける一番手の銘柄を中心に循環物色が広がっていく中で、今月前半はグロース株が主導しながら後半はバリュー株を中心として市場全体の底上げが示現すると思われます。すでに半導体やテクノロジー株の含み益を確保できた方は、次なる一手として年末の節税売りを見越して益出し売りや見切り売りがでやすい銘柄を探りながら、すでに来週に向けて狙いを絞り込む準備を進めるのでもよいでしょう。
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