【10/23日本市場の確認ポイント】
日経平均 31,259.36(▲0.54%)[31,093~31,428]
TOPIX   2,255.65(▲0.38%)[2,242~2,267]
マザーズ   657.30(▲0.34%)[643~662]

値上がりセクターTOP5
1.医薬品(+2.40%)
2.鉱業(+2.03%)
3.ゴム(+0.78%)
4.石油・石炭(+0.69%)
5.海運(+0.69%)

値下がりセクターTOP5
1.保険(▲1.17%)
2.輸送用機器(▲1.01%)
3.証券・商品先物(▲0.97%)
4.小売(▲0.95%)
5.化学(▲0.90%)

 日本市場は引き続き米金利上昇や中東情勢の地政学リスクといった外部環境の悪化を受けながら弱含みの展開を強いられましたが、主力の半導体株はじめグロース株が切り返したことで徐々に下げ幅を縮小。しかしショートカバーが一巡した後は週末を控えた地政学リスクへの警戒感が重しとなり、引けにかけてポジション調整売りに押されました。

 東証プライムの騰落銘柄数は値上がり659/値下がり944と値下がり優勢、半導体株も主力どころ以外は大きく売られるなど株価が下落しても買い手控えムードが広がっています。セクター別には第一三共(4568)が大商いを伴って急伸したことで医薬品がトップ、原油高を追い風にINPEX(1605)や三井物産(8031)、出光興産(5019)などは逆行高しました。バリュー株の筆頭格である海運株なども切り返し後の反発が光りました。

 地合い悪化が続いている中で主力株においても押し目買いが入る銘柄とそうでない銘柄で明暗がくっきりと分かれる展開、すなわち間もなく決算シーズン本格化を前に選別色が強まっている印象があります。米金利上昇でも保険株が値下がりワーストとなり、為替円安が一段と進む中でも自動車株の売り圧力はなおも強く、TOPIXの重しとなりました。新興市場はさらに厳しい状況で、マザーズ指数は年初来安値を更新中。全体に売買代金が膨らみづらくアク抜け感には程遠い現状ながら、レーザーテック(6920)は連日の大商いが続いて週間の売買代金は2兆円超えと市場注目度が突出しています。

【米国株概況】
ビッグテック株の不調で悲観のピーク目前に迫るF&G指数、ハイテク決算を機に土俵際の下値サポートを維持できるか

NYダウ 33,127.28(▲0.86%)[33,118~33,425]
S&P500 4,224.16(▲1.26%)[4,223~4,276]
NASDAQ 12,983.81(▲1.53%)[12,977~13,177]
ダウ輸送株 14,450.4(+0.10%)[14,378~14,632]
半導体SOX 3,316.1(▲1.53%)[3,312~3,391]
日経平均先物(CME) 31,060(▲0.51%)[31,000~31,425]
ドル/円 149.64~150.03(高値151.93:10/21、安値127.46:1/3)
日10年債利回り 0.836%(高値0.870%:10/19、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 4.914%(高値5.000%:10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 88.30(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:5/4)
金先物 1993.10(高値2,068:5/4、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 3.553(高値5.039:2022/3/7、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)21.71(高値37.79:2022/2/24)
SKEW指数 136.74(安値110.34:2022/11/3、高値158.30:6/1)
Fear&Greed指数 26(FEAR:恐怖)
High Yield Bond (HYG)71.93(安値70.30:10/13)

 米国市場は米10年債利回りがついに5%台をマークしたことで金利上昇警戒が一段と深まる中、決算発表したテスラが大幅続落したほかハイテクグロース株の主力どころが冴えず、主要株式3指数はそろって続落となりました。米金利上昇のほかに中東情勢の悪化に伴うリスク回避姿勢が一段と強まり、安全資産需要から米国債買いを促して米10年債利回りが低下したものの引けにかけて下げ幅を拡大しました。

 米国株にとって頼みの綱であるビッグテックがそれぞれ保ち合いレンジの下限に迫っており、S&P500やナスダックは月初からの戻し分を帳消しにして下値模索への警戒感が台頭してきています。これらの指数への影響が大きいテスラが週間で▲15%超も下落しているためやむを得ないところもありますが、それ以前に中小型株指数のラッセル2000はじめ地銀株や住宅建設、ソーラー株など逆風にさらされてきた銘柄、セクターは昨秋以来の安値を更新して下落が加速しています。

 また、6月の生成AIブームの火付け役となった半導体のエヌビディアもチャート上での三尊天井形成に対する警戒感を誘う動きで、ナスダックや他の半導体株にとっても重要なポイントに差し掛かってきています。これらハイテクグロースを代表するビッグテックの面々がそろって軟調であるがゆえに米国株の地盤沈下が現実味を帯び始めている中、まずはかつてのGAFAMと称されたマイクロソフトやグーグル、アマゾンなどが決算発表を迎えてきます。
アングル:米株「マグニフィセント・セブン」が正念場、好業績で市場評価維持できるか(2023/10/20)

 マクロ環境の変化で地合いの悪化が続く中、個別の企業決算で市場の暗雲を払いのけるきっかけを掴めるかが注目されるところです。また、リスク資産全般に影響を及ぼす米金利動向にしても地政学リスク意識で金利低下圧力がかかっただけではリスクオンには至らず、やはり米国債の需給が肝心となります。米FRBの米国債買い入れが金利低下につながるかどうか、さらには11月初めの米国債入札金額が公表される時期についても注目ポイントになってくるでしょう。

 直近のパウエル米FRB議長講演をふまえても10月末から11月1日にかけてのFOMC利上げはほぼ確実に見送りとなる公算ですので、米金利が低下してきてからの株価反応はとても重要と言えます。中東情勢にしても戦争相場ではいざ地上戦開始となれば買い戻し相場がスタートしてくると思われますので、まさにセリングクライマックスの瞬間が近づいてきていると思われます。 

【日本株投資戦略】
下落相場の出口を示す日銀政策修正の観測報道、セリングクライマックス級の出来高が積み上がるか要注目の今週

 週末の日本市場は時間外の米長期金利5%到達を受けながらグロース株売りが強まりましたが、そこから大型グロース株中心に切り返しを見せたことは非常に大きな意味を持っていると思われます。その後の米株安によって日経先物は31,000円付近に引っ張られて下落していますので朝方は弱含みで推移するにしても、そこでしっかりと押し目買いが入ってくることも十分想定できます。

 10月初めから大きな値幅を伴った下落に見舞われ10/4は売買代金が4兆円を超えました。10/12の上昇局面でも4兆円超えの日がありましたが、それ以外は概ね3兆円台前半で商いが低調傾向が続いています。リスク回避姿勢が強まって買い手不在の状況では株価が下落する際に値幅が大きくなりがちですが、リスクの所在が主に米金利と地政学の2つを市場は警戒していますので一連の売り方主導の下落相場も大詰めに入ってきています。

 ただ、市場ニュースの観点から言えばまさにその通りなのだとは思いますが、日本株にとって重要なのは9月中旬につけた天井を起点に空売りが強まるターニングポイントは何であったのかという点です。それは間違いなく植田日銀総裁によるインタビューで政策修正観測の高まりとともに日本の長期金利が0.7%台をつけたのが9/11以降で、その後の日銀物価見通しの上方修正などから憶測は確信度合いを強めるとともに市場は金利上昇を織り込んできました。

 それが足元では0.8%を超えてきており、月末の日銀金融政策決定会合におけるYCC(イールドカーブ・コントロール)の上限金利1%設定を再度修正する必要性に迫られていることこそに本質があるとみられます。いわば日本株の金利上昇耐性が問われているわけで、高いバリュエーションを許容できる土壌が十分に育まれているかが日本経済、日本企業に突きつけられる試練です。
日銀、金利操作の再修正論 長期金利「上限」1%接近で(2023/10/21)

 今回の日銀金融政策決定会合を前に日経新聞がこうした観測記事を出してきたことにはそれなりの理由があって、観測気球を打ち上げることによって市場アナウンスメントを事前に浸透させた上で、いざ政策修正に踏み切った際のサプライズ・ショックを回避する狙いがあるとみられます。しかし、私見ではおそらく今回の日銀会合では修正する可能性がまだ低いとみており、あくまでも議論の中に含まれるという程度で収められるのではないかと思われます。

 足元で再び原油高となりインフレ再燃の芽が育ってきている中、たいていの国は利上げで輸入物価圧力の軽減を図りますが日銀はこれまでも緩和スタンスの旗を下すことなく、政府の補助金で取り繕ってきました。為替問題だけなら財務省が為替介入の目を光らせているところで、日銀はそれよりも米国債を買い支えるために市中銀行に適度な資金を供給し続ける役割を担っています。いわば日本の金利、そして米国の金利をコントロールしているのが日銀とも言えるわけで、もしここで日本の金利が急上昇しようものなら日本の銀行勢は米国債ではなく日本国債の買い入れに資金を充てるようになるからです。すなわち、観測報道に示されたとおりに政策修正に至る場合でも小幅でかつ今後においても小刻みに柔軟性をもたせたニュアンスを含ませたものとなるのではないかと思われます。

 したがって、とくに週明けの為替動向が注目されますとともに、米金利上昇や中東での地政学リスク激化、そして日銀の政策修正といった市場が今織り込みにいっている思惑の一つ一つが行き過ぎだったかもしれないと判明した時、複合的危機に対応したポジションの巻き戻しが起こる可能性があります。それと同時に、セリングクライマックス並みの売買代金4兆円超えが再び見られるかもしれません。市場の悲観が極みに達する時、反転の芽も同時に育っていることも念頭に置きながらその時を待ち、いつでも動けるようにしておくことが大事です。

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