【10/19日本市場の確認ポイント】
日経平均 31,430.62(▲1.91%)[31,399~31,669]
TOPIX 2,264.16(▲1.36%)[2,257~2,278]
マザーズ 659.51(▲2.01%)[656~666]
値上がりセクターTOP5
1.紙・パルプ(+0.76%)
2.陸運(+0.68%)
3.なし
4.なし
5.なし
値下がりセクターTOP5
1.精密機器(▲2.72%)
2.医薬品(▲2.55%)
3.機械(▲2.14%)
4.空運(▲2.11%)
5.鉄鋼(▲2.08%)
日本市場は節目の日経平均32,000円付近から押し戻され▲2%近い大幅安となりました。米長期金利上昇が嫌気されるとともに債券ボラティリティが上昇しており各資産クラスに影響を及ぼしているとみられます。金利警戒が強まっている中、主力のグロース株が総じて売られやすく、16日に続いて半導体株の大幅安が日経下落に拍車をかけました。
また、決算通過後に高値圏で推移してきたファーストリテイリング(9983)もやや大きめの反落で、東京エレクトロン(8035)とあわせて2社で日経平均を▲200円近く押し下げています。またしても全面安商状に近い下げとなり、値上がりセクターは紙・パ、陸運のわずか2つのみ。東証プライムの騰落銘柄数は値上がり401/値下がり1394で、主力株の中ではキヤノン(7751)が直近材料で逆行高をみせました。
あとはディフェンシブ株のニトリ(9843)やNTT(9432)、訪日インバウンド好調の発表で鉄道各社がしっかりだったというくらいの物色に限られており、あとは買い手控えの様子見姿勢が強まっているとみられます。投資家心理の悪化に歯止めがかからない新興マザーズ指数では再び年初来安値を更新しています。
【米国株概況】
パウエル発言後も市場反応は米債売り・株売りが続く、米長期金利5%到達によって各資産クラスにもたらされる影響
NYダウ 33,414.17(▲0.74%)[33,368~33,852]
S&P500 4,278.00(▲0.84%)[4,269~4,339]
NASDAQ 13,186.18(▲0.96%)[13,157~13,404]
ダウ輸送株 14,435.8(▲3.44%)[14,401~14,752]
半導体SOX 3,367.8(▲1.34%)[3,356~3,449]
日経平均先物(CME) 31,315(▲0.27%)[31,245~31,730]
ドル/円 149.66~149.97(高値151.93:10/21、安値127.46:1/3)
日10年債利回り 0.844%(高値0.870%:10/19、安値0.131%:2022/3/6)【高値更新】
米10年債利回り 4.995%(高値5.000%:10/19、安値1.668%:2022/3/7)【高値更新】
WTI原油 89.16(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:5/4)
金先物 1986.70(高値2,068:5/4、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 3.586(高値5.039:2022/3/7、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)19.22(高値37.79:2022/2/24)
SKEW指数 137.73(安値110.34:2022/11/3、高値158.30:6/1)
Fear&Greed指数 32(FEAR:恐怖)
High Yield Bond (HYG)71.78(安値70.30:10/13)
米国市場は事前の注目度が高かったパウエル米FRB議長が講演し株価は乱高下、主要株式3指数ともにプラス圏に浮上する場面もありましたが、終盤はそろって売られ続落となりました。大きく動いたのは米長期金利で米10年債利回りはとうとう5.0%に到達、米30年債利回りも5.1%台に上昇しており、短期金利との利回り格差はぐっと縮小しました。
パウエル米FRB議長の講演では妨害行為なども起こりスムーズに進行できない場面もあった模様ですが、金融環境の引き締まりや直近の地政学リスクの高まりなどにも言及。追加利上げには慎重な見方を示しつつ、最後はやはりデータ次第としながら利上げ選択肢は排除しないことも付け加えました。直近のデーリー総裁、ローガン総裁などと並んで足元の金利上昇が追加利上げに相当するとも言及し、直近のトーンとそれほど変わっていないとみられ配慮も感じましたが、市場反応は株売り・債券売りとなりました。
◆パウエル議長、FOMCは「慎重に進んでいる」-利上げの選択肢残す(2023/10/20)
最後の利上げ選択肢を残した点が、市場が欲する事実上の利上げ打ち止め宣言とはならなかったことでの売り反応につながったと言える一方、もう一つ中東における地政学リスクの悪化も無視できないものとみられます。米金利上昇の背景には米財政悪化に対する懸念があり、これを増幅させるウクライナ支援、イスラエル支援などが米国債の信用リスクに悪影響をもたらしています。中国も米国債の買い手から売り手へと変化しており、金利が高くとも買い手となるプレーヤー減少が米金利上昇に拍車をかける事態となっています。
◆中国の米証券売却が4年で最大-人民元買い支え資金確保との観測も(2023/10/19)
米国債の需給の緩みは先日のイスラエル紛争が伝えられた直後は安全資産逃避として米国債買いにつながり、米金利の急低下をもたらしましたが、今はそれよりも地政学リスクが高まっているにもかかわらず米金利は一段と上昇。これにはヘッジファンドなどの米国債ショート(売り)ポジションが異常な程に積み上がっている投機的な賭けの要素も含まれているとみられ、ある時にこれが巻き戻されると今度は米金利の極端な急低下をもたらす可能性があると言えるでしょう。他方、原油や金などの価格高騰から地政学リスクに際し安全資産需要として米国債が選好されなくなっている事実も突き付けられたということも一面としてはあるのかもしれません。
米10年債は大きな節目の5%に達して各資産クラスからの逃避マネーはMMFになだれ込みやすくなっているほかに、銀行預金などからも流入を促し、3月の米銀行危機の懸念を蒸し返すリスクも高まってきています。ただ、その一方で米FRBも来週には市場の米国債を買い入れて需給環境の改善および引き締まった流動性の供給に動くとみられ、市場の底入れを促すものと考えられます。
【日本株投資戦略】
日米金利上昇に連動したグロース株主導の下落、大きなボラティリティに委縮せず強気ホールドで再度反転待ち
日本市場は主力の半導体株を中心にグロース株売りが強まり、日経・TOPIXともに10/16の安値割れとなりました。マザーズ指数も年初来安値を更新し、投資家のリスク回避姿勢がみてとれます。米金利だけでなく日本でも長期金利の上昇が一段と強まっており、10年債利回りは0.8%台へと高値更新の動きとなっています。
足元で上昇に歯止めのかからない金利上昇は国債運用者、つまり金融機関にとって大きな打撃をもたらし、かつてのVaRショックのような状況が引き起こされないとも限りませんが、ひとまず株式市場では高金利環境に即した調整の範囲とも言える動きとなっています。いずれにしてもこの激しい金利動向が落ち着いてこないとリスク資産である株式は話にならないわけですが、残念なことにパウエル米FRB議長発言では極力市場に動揺を与えないようにとの配慮はあったと言えるものの、肝心の利上げ打ち止めは明言せず先行き不透明感の解消にはつながらなかったと言えます。
とはいえ、半導体株の大幅安も先週の急反発による貯金をまだ残しており、先高期待が失われたわけではなさそうです。週末を控えることから特に中東の地政学リスク悪化が懸念されている中では、ポジション調整の売り圧力が強まっても不思議ではありませんが、足元では政府による総合経済対策の日程も固まってきています。来週にも米FRB対応で米金利上昇が一服してくれば再び大きな反転のきっかけを掴めるものと思われます。加えて、台湾TSMC決算からも半導体株への期待が高まるとみられますので、金利警戒の売り一巡後は再び切り返しが見込めるでしょう。
10月第2週(10/10~10/13)の投資主体別売買動向では現物・先物合わせて大幅買い越しで、これは10月第1週に続き2週連続です。市場の水準低下でも売り手は個人、買い手は海外勢という構図で、ひとまず9月配当取りポジションの解消売りも一巡してくるところで、やはり海外勢は先物を動かしながら個人の信用需給も整理させながら下値もしっかりと買い込んできているとみられます。連日、株価の変動幅が大きいために振り回されてしまいますが、リスク管理を徹底しながら強気な姿勢も忘れずに臨みましょう。
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