【7/20日本市場の確認ポイント】
日経平均 32,490.52(▲1.23%)[32,462~32,861]
TOPIX   2,260.90(▲0.79%)[2,259~2,282]
マザーズ 776.98(▲1.58%)[776~785]

値上がりセクターTOP5
1.鉱業(+1.26%)
2.鉄鋼(+1.19%)
3.不動産(+0.59%)
4.海運(+0.46%)
5.紙・パルプ(+0.36%)

値下がりセクターTOP5
1.精密機器(▲2.73%)
2.電気機器(▲1.70%)
3.機械(▲1.53%)
4.保険(▲1.33%)
5.サービス(▲1.05%)

 日本市場は前日の大幅上昇分をそっくりそのまま打ち消す形となり往って来い、半導体株が上昇分以上に下落して日経平均を押し下げたほか、グロース株全般が弱くエレクトロニクスなど外需株の軟調が目立ちました。一方で海運、鉄鋼、鉱業など市況関連は強く、不動産や建設など内需株が相対的に堅調な動きとなっています。

 東証プライムの騰落銘柄数は値上がり497/値下がり1264と値下がり銘柄数が多く、商いも3兆円割れと低調で市場参加者は様子見を決め込んでいる模様。日銀の政策修正思惑が燻る中において積極的な売買は手控えられ、半導体株のように元々のボラティリティが高い銘柄は値幅が大きくなりがちなことは仕方ないものの、押し目買い意欲に乏しいことは気がかりな点。

 というよりもこれまでの押し目買いで信用買いが積み上がっており、とくにグロース株は値幅が大きく出た時に売りが売りを呼びやすい構図となっている可能性があります。大型株でも小型株でもバリュー株指数の優位性が目立っており、外需株から内需株への資金シフトする流れもより強まってきた感があります。内需系、バリュー株が上昇しても指数へのインパクトは限られるため、わかりやすく日本株反転を期待する上では半導体株を中心にグロース株の持ち直しが必要になるでしょう。

【米国株概況】
テスラや半導体株の決算売りでナスダック大幅安、ハイテクグロース株警戒の中でバリュー株選好強まりNYダウ9連騰

NYダウ 35,225.18(+0.47%)[35,091~35,372]
S&P500 4,534.87(▲0.68%)[4,527~4,564]
NASDAQ 14,063.31(▲2.05%)[14,030~14,309]
ダウ輸送株 16,265.2(▲0.03%)[16,171~16,348]
半導体SOX 3,663.8(▲3.62%)[3,648~3,742]
日経平均先物(CME) 32,330(+▲0.25%)[32,235~32,875]
ドル/円 139.09~140.50(高値151.93:10/21、安値127.46:1/3)
日10年債利回り 0.458%(高値0.600%:1/12、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 3.856%(高値4.338%:10/21、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 75.78(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:5/4)
金先物 1,972.95(高値2,068:5/4、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 3.830(高値5.039:2022/3/7、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)13.99(高値37.79:2022/2/24)
SKEW指数 142.82(安値110.34:2022/11/3、高値158.30:6/1)
Fear&Greed指数 80(EXTREME GREED:極度の貪欲)
High Yield Bond (HYG)75.18(安値70.30:10/13)

 米国市場はNYダウが9連騰と記録的な上昇を続けた一方、S&P500とナスダックが反落。主力のビッグテック銘柄が総じて軟調となる中、決算発表したテスラとネットフリックスがそれぞれ▲9.7%、▲8.4%の暴落となり、ハイテクグロース株決算に対する警戒が高まりナスダックは▲2%超の大幅安となりました。

 また、半導体株をめぐっても台湾TSMCや蘭ASMLなど世界的大手が決算を発表し、市場予想を上回る結果であっても株価はネガティブな反応が強く出て投資家心理を悪化させました。しかしその一方で、決算通過した金融株のゴールドマン・サックスをはじめ航空・防衛のボーイングや石油のシェブロンなどバリュー系の銘柄は強く買われ、J&Jやメルクなどヘルスケアの一角も大幅高するなどNYダウが出遅れ修正の動きを見せています。

 米企業の決算反応はJ&Jのように大幅高の一方で、テスラやネットフリックスのような暴落もあり悲喜こもごもといった様相になりながらも、米株全体ではうまくグロース株からバリュー株への循環物色になっています。米FRBの利上げ観測から米金利上昇の環境をふまえますと至極妥当な資金の流れとみられます。

 前回解説した米金利における今後の推移で、もし米財務省のトレジャリー・ビル大量発行が市場で消化しきれないような懸念が取り沙汰された場合、否が応でも米金利上昇を招く可能性があるため、今のうちにハイテクグロース株は決算に理由をかこつけて売り捌いておきたいという向きもあるように思います。ただ現状としてはまだ長期金利も4.0%を下回っていますし、単にテスラなどの暴落は個別の決算ミスで片付けられてしまう話かもしれませんが、引き続き米金利水準と米ハイテク株決算の動向は慎重にみていく必要がありそうです。

【日本株投資戦略】
バリュー株上昇が映すリスクマネーの安全志向、債券市場からの退避マネーが日本の内需株選好を一層強める可能性

 日本市場は19日の上昇分を翌20日に早速吐き出してしまい、反転上昇への期待が削がれる形となりました。といっても日経平均は指数寄与度の大きい銘柄に振り回される面がありますので、少し割り引いて考える必要はあるかと思います。少なくとも日銀の金融政策修正をめぐる思惑が尾を引いている以上、サプライズ警戒でグロース株を敬遠したい気持ちはお察しいたしますという感じでしょうか。

 ただ、6月後半以来の相場では為替円高から外需株より内需株シフト、さらに金利上昇警戒からグロース株よりバリュー株シフトといった大きな流れに沿ってポジションを調整してきた投資家にとってはようやくそれらしい動きになってきたという場面かと思います。ここから全体の雰囲気が悪くなってくる場合には注意が必要ですが、むしろ日銀警戒が緩和した後は決算ラリーが期待できると思っています。

 昨日のニデック(6594)や先日の安川電機(6506)などにしても今年前半の景気悪化懸念が意識された米中経済において懸念されたよりも好転している現状が読み取れ、景気敏感株にとっては期待感を醸成される内容と言えます。上記の市場物色の傾向に照らし合わせて考えますと、シクリカル(景気敏感)バリュー株を見直す動きが強まっていくとの見方ができ、あとは債券市場における景気悪化、ディスインフレを前提としたトレードから資金が株式市場の方へシフトするかどうかが焦点になってくるとみられます。

 とくに足元の企業決算シーズンにおいて、業績の数値面による評価に加えて東証やアクティビストなどから株価対策として増配や自社株買いなどの株主還元策を奨励する流れが強まっていることからしても、バリュエーションで修正余地の大きい低PBR銘柄や好業績内需株、そして配当利回りの大きい高配当株などはそうした債券寄りとも言える安定運用ニーズ資金の受け皿として資金流入が期待されるようになるでしょう。

 少なからず足元では日本の期待インフレ率が上昇し、政府試算や日銀試算などでもインフレ率は上昇基調にあることは明白です。しかし日銀はその持続性、安定性といった観点ではまだインフレ環境の定着に至っていないと判断しているとみられます。それが前回指摘した植田総裁発言の真意なのだとすれば、日銀は今回の金融政策決定会合でも異次元金融緩和策を維持するでしょう。つまり、それが日本株高を支援する形で海外マネーを呼び込む上でも重要なわけですが、上述した米国市場の特殊な財政事情から海外市場が揺らぐことになれば、その傾向はより一層強まることになるものと思われます。

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