【6/20日本市場の確認ポイント】
日経平均 33,388.91(+0.06%)[33,089~33,474]
TOPIX   2,283.85(▲0.29%)[2,268~2,286]
マザーズ 858.34(+0.70%)[842~858]

値上がりセクターTOP5
1.卸売(+2.06%)
2.金属製品(+0.47%)
3.海運(+0.30%)
4.空運(+0.22%)
5.小売(+0.15%)

値下がりセクターTOP5
1.保険(▲3.84%)
2.鉄鋼(▲1.40%)
3.電気・ガス(▲1.18%)
4.証券・商品先物(▲1.17%)
5.銀行(▲1.07%)

 日本市場は米国休場に伴い手がかりに欠ける中、前日の反落を引きずる形で売り先行となったものの、著名投資家ウォーレン・バフェット氏が商社株を一段と買い増す材料を好感して三菱商事(8058)や三井物産(8031)などが大幅高。また、株主総会が注目を集めているソフトバンクG(9984)がしっかりだったほか、安く始まった半導体関連株も買われるなどして日経平均はプラス圏に浮上しました。

 前日同様、中国の景気刺激策に対する期待が萎み、中国時間が始まる辺りから大きく売られる場面が目につくと同時に、景気敏感株への売り圧力が強まっています。鉄鋼や非鉄金属、鉱業といった市況関連が連日で売りに押されているほか、金融庁に企業向け保険でカルテル疑いがあるとされた損保大手が一斉に急落しました。全体の上値が重くなってきたところで銀行や証券などの金融株にも売りが出ており、前回指摘したように為替円安でも感応度が鈍ってきた自動車株なども軟調な動きとなっています。

 一方で、上記バフェット氏の商社株買いにみられるように材料のある銘柄には引き続き高い買い意欲がみられ、いわば材料株の宝庫である新興・中小型株は連日高で2022年1月以来の戻り高値を更新。主力株が足踏みする中でAIや半導体、旅行・インバウンドなどテーマ性のある銘柄に食指が伸びています。やや地合いが悪化している状況下で、物色として総花的に買われるわけではないものの、投資家のセンチメントは十分維持できていると言えるでしょう。

【米国株概況】
パウエル米FRB議長の議会証言を控える中で調整売り圧力、中国の景気刺激策に対する期待剥落も重し

NYダウ 34,053.87(▲0.71%)[33,915~34,206]
S&P500 4,388.71(▲0.47%)[4,367~4,400]
NASDAQ 13,667.29(▲0.16%)[13,561~13,711]
ダウ輸送株 14,735.5(▲0.39%)[14,668~14,845]
半導体SOX 3,647.8(▲0.70%)[3,616~3,693]
日経平均先物(CME) 33,105(▲0.71%)[33,015~33,810]
ドル/円 141.21~142.24(高値151.93:10/21、安値127.46:1/3)
日10年債利回り 0.383%(高値0.600%:1/12、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 3.722%(高値4.338%:10/21、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 70.84(高値123.68:2022/6/14、安値63.70:5/3)
金先物 1,948.25(高値2,068:5/4、安値1,622:9/28)
銅先物 3.881(高値5.0395:2022/3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)13.88 (高値37.79:2022/2/24)
SKEW指数 138.75(安値110.34:2022/11/3、高値158.30:6/1)
Fear&Greed指数 79(EXTREME GREED:極度の貪欲)
High Yield Bond (HYG)74.73(安値70.30:10/13)

 3連休明けの米国市場は続落となり、パウエル米FRB議長の上下両院で議会証言が控えていることに加えて、中国の景気刺激策が期待外れで懸念が高まったことが嫌気されました。朝方発表された5月米住宅着工件数が市場予想を大きく上回ったことで金融引き締め強化への警戒感が高まり、前回FOMCで昨年の利上げ開始後で初の利上げ見送りを決定したパウエル米FRB議長の真意を探ろうとポジション調整売りが膨らんだものとみられます。

 米FRBは利上げ見通しを年内あと2回の利上げを見込む水準に引き上げましたが、市場はこれに懐疑的な見方を示して米長期金利は3.7%台で一進一退の動きに留まっています。米FRBメンバーは元々タカ派に属する面々が今後の利上げについて言及するも、市場に驚きを与えることはなく、どちらかと言えばハト派メンバーが追加利上げ支持に傾斜してくるかどうかを市場は探ろうとしています。それでもやはり重要なのはパウエル米FRB議長の真意がどこにあるかですので、今回の議会証言で明確なメッセージが示されるまでは調整ムードでしょう。
パウエルFRB議長の議会証言、金利巡りメッセージ明確化の機会に(2023/6/20)

 足元における米国債需要は根強く、一方で投機筋などの弱気ポジション圧縮も金利上昇を抑える要因となっていることで米10年債利回りは低下しています。対して米2年債利回りは追加利上げ観測が残るために高水準を維持し、米金利が上昇する局面でも低下する局面でも長短金利の逆イールド状態は深まりやすい状況と言えます。これに中国の景気回復鈍化の警戒感が加わって、直近買い直されていたシクリカルバリュー株が売られやすくなっているとみられます。
コラム:米国債で逆イールド進行、ファンドの思惑的中(2023/6/20)

 また、中国の景気不安が重しとなっているのは原油相場や工業用金属などの商品市況にも反映され、金や銀、原油、天然ガスといったところが下落しました。その一方で銅先物は5月末をボトムに戻り歩調を継続、これには各国のEV投資奨励で需給が引き締まるとの見方が支えになっているとみられますが、景気の先行きを示すとされる「ドクター・コッパ―」が堅調であるため、今後の景気に対する見方は強弱感が交錯していると言えるでしょう。

 これによって米国株は足元の米金利低下が続いている間は比較的ハイテク株の値保ちも良く、指数は調整を強いられながらも底堅さも示す一方、金融当局の市場けん制発言などに金利が敏感に反応してしまう場合には売り圧力が強まる可能性をみておく必要があるものと思われます。

【日本株投資戦略】
月末調整ムードを演出するファンド・年金勢の特殊な売り要因、5月末の押し目買い好機演出が再来か

 日本市場は休場明けの米国株下落が重しとなり調整圧力が強まるものとみられる一方、むしろ調整待ちだった押し目買い勢力の触手が伸びやすくなり、ある程度底堅さも感じられる相場となりそうです。中国景気の不安に対する下落影響は欧米株よりも先に織り込んでいるはずで、米国株が下落しても驚きは無いものとみられますが為替がやや円高に押し戻されています。

 前回指摘しましたように、足元では為替円安とともに株高基調が続いてきた経緯がある中で、為替感応度の高い自動車株に代表される外需株にやや息切れ感が目立つようになってきたことが気がかりです。ただし、先週の段階から解説してきましたとおり足元で調整色を強めてくることは想定されていたことでもありますので、ここから先は押し目買いを狙うにあたりどこまで引き付けるのが妥当かが焦点になってくると思われます。

 日本株が好パフォーマンスをみせていることに伴って、ファンドや年金のポートフォリオは日本株式の比重が高まり、一方では日本債券や海外債券などの比重が低下することになるためリバランスする必要が生じています。5月末のリバランスも過去に見たこともないほどの規模感でリバランスが発生していましたが、6月末もかなり膨らんでくることを想定しておくべきでしょう。

 また、野村アセットなどは日本株上昇で運用する投資信託の基準価額が上昇し、早期償還条項に触れたということでファンドを清算することを発表しており、こうした事例も市場には一定の売り圧力となって出てくるとみられるほか、機械的に売ることになるがゆえに株価水準関係なく売りが降ってくることになります。
野村アセット、日本株投信を繰り上げ償還 株急上昇で(2023/6/19)

 裏を返せば、この月末にかけては不自然に売られるものが多く散見されると推測できるため、必要以上に下げているような銘柄はリバウンド狙いでも十分なリターンが期待できそうな仕込み場を演出するでしょう。足元好調な新興市場の銘柄などは人気に乗って順張り参戦するのも良いかと思いますが、主力株でも目先の調整圧力を抜ければ再び海外勢が大きく買い越してくることが期待できるため、逆張り目線でも立ち回るチャンスが広がるはずです。

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