【6/8日本市場の確認ポイント】
日経平均 31,641.27(▲0.85%)[31,420~32,035]
TOPIX   2,191.50(▲0.67%)[2,179~2,215]
マザーズ   769.17(▲2.18%)[763~782]

値上がりセクターTOP5
1.海運(+2.28%)
2.電気・ガス(+1.48%)
3.石油・石炭(+0.94%)
4.陸運(+0.65%)
5.鉱業(+0.46%)

値下がりセクターTOP5
1.精密機器(▲2.59%)
2.情報・通信(▲1.48%)
3.その他製品(▲1.36%)
4.不動産(▲1.28%)
5.電気機器(▲1.18%)

 日本市場は本日清算される6月限先物・オプションのメジャーSQに絡めた指数売買の影響から続落、「魔の水曜日」であった6/7の大幅安に続いて一段安となりました。日経平均は32,000円のコール・オプションを踏み上げて32,700円をつけたところから、昨日は31,400円近くまで下落し▲1,300円幅での急落をみせました。

 前回注目したファーストリテイリング(9983)や東京エレクトロン(8035)、ダイキン(6367)などの値がさ株が中心となって売りが嵩み、それまでの上昇ピッチが速かった半導体関連株なども利益確定売りが強まっています。移動平均線からの乖離率が高かったものほど値幅・出来高を伴った売りが加速し、新興市場でもテーマ物色されてきたAI関連銘柄などは一斉に売りが広がりました。

 東証プライムの騰落銘柄数は値上がり503/値下がり1270となり、2日連続で同水準の商いを記録するなど過熱感が後退。その一方で、バリュー株は景気敏感の海運株や建機株などが相対的に買われているほか、LNGプラント株なども強含んだ動きとなっています。同じく出遅れ組の新興株も6/7は逆行高しましたが、昨日は一転反落となりマザーズ指数も例外なくスピード調整を強いられました。

【米国株概況】
◎来週のCPI、FOMC待ちもメジャーSQ前波乱に要警戒、6/7のダウ輸送株大幅高は米景気再び過熱を示唆か?FRBの対応は?

NYダウ 33,833.61(+0.50%)[33,630~33,873]
S&P500 4,293.93(+0.62%)[4,261~4,298]
NASDAQ 13,238.52(+1.02%)[13,101~13,248]
ダウ輸送株 14,401.2(▲0.04%)[14,271~14,454]
半導体SOX 3,514.3(+1.07%)[3,469~3,521]
日経平均先物(CME) 31,835(+0.74%)[31,380~31,990]
ドル/円 138.81~140.21(高値151.93:10/21、安値127.46:1/3)
日10年債利回り 0.433%(高値0.600%:1/12、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 3.721%(高値4.338%:10/21、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 71.01(高値123.68:2022/6/14、安値63.70:5/3)
金先物 1,980.80(高値2,068:5/4、安値1,622:9/28)
銅先物 3.786(高値5.0395:2022/3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)13.65(高値37.79:2022/2/24)
SKEW指数 155.53(安値110.34:2022/11/3、高値158.30:6/1)
Fear&Greed指数 76(EXTREME GREED:極度の貪欲)
High Yield Bond (HYG)74.70(安値70.30:10/13)

 米国市場は米国デフォルト回避にちなんだ米国債買いから長期金利が低下、前日売られたハイテク株が買い直されたほか、「787」の納入遅れと報じられていたボーイングも切り返して高値をつけるなどNYダウ、ナスダックともに反発となりました。米国版メジャーSQであるクアドラプル・ウィッチングが来週末に予定され、米国株の波乱警戒は来週半ばというところを見ておく必要があります。

 来週に焦点を当てますと、7日の米国市場においても米FOMCに対する注目が集まる中、直近でRBA(豪中銀)、BOC(加中銀)が立て続けに市場予想外の利上げを発表したことで、米国でも金融引き締め強化が意識されました。金利上昇からハイテク株売りが誘発されたと同時に、6月FOMCでの利上げ確率も上昇しました。

 米経済指標で足元の製造業・非製造業ともに悪化がみられるものの、労働市場は依然としてすこぶる堅調という中で米FRBが金融政策決定の拠り所とする最終確認がインフレ率、すなわち来週13日のCPI(消費者物価指数)になるとみられます。したがって来週は米国インフレ指標、米FOMC、クアドラプル・ウィッチングと重要な市場イベントが相次ぎ、今年前半の大きなヤマ場となってくることが予想されます。

 3月の米銀行不安や5月の米国デフォルト騒動など米国固有のリスクイベントをくぐり抜けながら米FRBは利上げを継続してきましたので、今回の米FOMCで市場観測どおりに6月利上げ見送り、7月利上げ再開を示唆するものとなるのか、はたまた豪・加に続いて市場予想を覆して利上げに踏み切るのか、投資環境はかなりナーバスになってくることを想定しておく必要があるでしょう。とくにIMFが世界の中銀に対してインフレ抑制のための金融引き締めを訴えていることから、市場の油断は足元を掬われてしまう恐れもあることに注意しておきたいところです。

 足元では日米株のデカップリングが鮮明となり、NYダウと日経平均は対照的な動きで明暗が分かれてきました。その一方、米国株ではビッグテックに代表されるハイテク・グロース株が集中的に買われてきたことでS&P、ナスダックは上昇し、リスク指標のVIX指数は14pt台まで低下しています。また、前回も注目したFear&Greed指数もとうとうEXTREME GREEDレベルに達してきたことでかなり過熱を示唆するものとなっています。

 これは株価のボラティリティが低下している一方、オプション取引におけるプット・コールレシオでは昨年8月時よりも強気に傾斜していることからもオプション売買が市場を主導していると言っても過言ではありません。実は最近の日本株でも同じような現象があり、5月SQ以降では本来株価と逆相関になる日経VIが株価上昇に連れ高していき、足元のメジャーSQにちなんで高値波乱を演出することとなりました。したがって、今後米国株においてもボラティリティ上昇と指数を吊り上げているハイテクグロース株の動向には注意を払っておいた方がよいかと思われます。
米株の予想変動率、3年4カ月ぶりの低水準 下値不安後退(2023/6/8)
日本株の予想変動率、8カ月ぶり高水準 高値波乱を警戒(2023/6/8)
オプション主導で株空中戦、強気相場はいったん終了か(2023/6/7)

 しかしながら今後、ハイテク株調整とともにNYダウの出遅れ修正があるとすれば、米国市場内でもセクターローテーションが起き、エネルギーや素材、資本財などの景気敏感株が見直されてくるでしょう。それを先取りした動きが直近のダウ輸送株の上昇に見出すことができるかもしれません。なにやら金融界の大物たちが再び米国景気はハードランディングもあり得ると発言し始めましたが、それらとは裏腹に市場では今秋以降の回復まで織り込み始めているとしても不思議ではないでしょう。

【日本株投資戦略】
SQ週〝魔の水曜日”で波乱展開も日経調整は押し目買い好機、金利上昇環境でバリュー株優位の展開へ

 前回、メジャーSQに絡めた波乱展開も事前警戒よりだいぶ穏やかなものになることも想定しておりましたが、実際は日経平均の高安値幅で▲1,300円動きましたのでやはりそれなりのインパクトがもたらされたと言えます。あらかじめ値がさ株を使って吊り上げられた分の調整ですから深刻にとらえる必要は全くありませんが、市場物色の変化は敏感に察知する必要があります。

 これまでも5月末のリバランスを機にハイテク・グロース株からシクリカル・バリュー株への資金シフトが進んでいく可能性について解説してきましたが、足元ではそうした傾向がより顕在化し、とくに今週に入ってからは低バリュー株の浮上が目立つようになっています。このような物色傾向は市場の主役が入れ代わるとともに全体底上げの動きにつながりますが、これらバリュー株は指数インパクトが小さいため日経平均には反映されづらいといった特性があります。よって、日経平均だけで強弱感を見ているだけですと一部の大型グロース株が調整するだけで押し下げられてきますので、過度に悲観して下値で売らされることのないように心掛ける必要があります。

 足元ではメジャーSQに向けての思惑交錯から値幅が出やすくなっており、日経VI(ボラティリティ・インデックス)も23pt台まで上昇してきています。これによってパッシブ系ファンドや年金などはポジション縮小を迫られることとなり、利益確定売りを出してきやすくなることに留意しておかなくてはなりません。

 ただし以前から投資戦略として見据えてきましたように、5月末リバランス時とこのメジャーSQ前の市場調整は押し目買い好機を演出するとの分析通りの展開となっており、とくに日経平均の調整によって指数主導の相場から個別株選別の循環物色が始まることを指摘してきました。目先、バリュー株見直しに加えて前回取り上げた政府の新たな成長戦略に基づいたテーマ株物色が賑わうことと思われます。

 外部環境では欧米はじめ世界で金利上昇が再開し、来週は中銀イベントが重なってきます。13日~14日にかけて米FOMC、15日には欧州ECB、そして15日~16日にかけて日銀金融政策決定会合が開かれます。直近では市場サプライズでオーストラリア、カナダが予想に反して追加利上げに踏み切りましたので、インフレ対応としての金利上昇は当然視しておくべきものであると同時に、株式市場ではグロース株への逆風からバリュー株優位の展開が強まっていくことを念頭に置いて取り組むべきかと思われます。

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