【5/23日本市場の確認ポイント】
日経平均 30957.77(▲0.42%)[30,828~31,352]
TOPIX 2161.49(▲0.66%)[2,155~2,188]
マザーズ 748.60(▲0.57%)[744~764]
値上がりセクターTOP5
1.紙・パルプ(+2.70%)
2.証券・商品先物(+0.86%)
3.海運(+0.59%)
4.医薬品(+0.47%)
5.鉱業(+0.40%)
値下がりセクターTOP5
1.輸送用機器(▲2.18%)
2.鉄鋼(▲1.52%)
3.空運(▲1.43%)
4.陸運(▲1.39%)
5.その他製品(▲1.09%)
日本市場は米債務上限問題で揺れる米国市場でなおハイテク株が堅調な動きを続けたことを好感し、続伸商状で始まり平成バブル後高値を更新。日経平均は31,352円、TOPIXは2,188ptまで上値を伸ばしましたが、後場になって日本政府が対中国で半導体規制を発表したことをきっかけに景色が一変。外需株中心に売りが広がり、連騰は7でストップし上昇一服となりました。
渦中の半導体株を中心として鉄鋼・電機・機械など景気敏感株が幅広く値下がりに転じたほか、鉄道株や空運株、百貨店株など脱コロナのインバウンド復活で買われてきた内需株なども利益確定売りが広がりました。中でもトヨタ自動車(7203)が▲4.77と大引け取引で急落し、誤発注と見間違えるかのような急落で売買代金が膨らみました。
政府の対中半導体規制が理由に挙げられていますが、主力の東京エレクトロン(8035)、アドバンテスト(6857)など日経採用銘柄はともかくとしてレーザーテック(6920)に関しては逆行高しており、市場急落の理由としては不可解です。足元では先物主導での上昇が際立っていたため海外勢の買い上げ一服と同時に利益確定売りに転じたとも考えられます。地合い急変とともに新興市場にも売りが波及、マザーズ指数も下落に転じてもみ合いのレンジ上抜けに失敗しました。
【米国株概況】
米債務交渉の不調で市場にも疑心が拡がる、楽観ムード後退で停滞していたVIX指数が不気味に上昇
NYダウ 33055.51(▲0.69%)[33,013~33,310]
S&P500 4145.58(▲1.12%)[4,142~4,185]
NASDAQ 12560.25(▲1.26%)[12,554~12,709]
ダウ輸送株 13907.0(▲0.24%)[13,877~14,025]
半導体SOX 3177.4(▲1.17%)[3,171~3,217]
日経平均先物(CME) 30,680(▲0.55%)[30,550~31,355]
ドル/円 138.23~138.89(高値151.93:10/21、安値127.46:1/3)
日10年債利回り 0.401%(高値0.600%:1/12、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 3.696%(高値4.338%:10/21、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 73.77(高値123.68:2022/6/14、安値63.70:5/3)
金先物 1977.45(高値2,068:5/4、安値1,622:9/28)
銅先物 3.640(高値5.0395:2022/3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)18.53(高値37.79:2022/2/24)
SKEW指数 136.42(安値110.34:11/3、高値145.51:2022/4/1)
Fear&Greed指数 66(GREED:貪欲)
High Yield Bond (HYG)74.14(安値70.30:10/13)
米国市場ではG7広島サミットから帰国したバイデン米大統領とマッカーシー下院議長をはじめとする与野党指導部の米債務上限問題協議が再開、互いに米国デフォルト回避の姿勢を見せるも交渉は一向にまとまる気配なく、市場も早期合意期待の楽観モードから不安モードへと転じています。
米国株は米FRBメンバーの金融政策見通しに関する発言などで米金利が上昇する中でもハイテク株中心の物色が続き、NYダウとナスダックでまちまちの動きでしたが、昨晩はハイテク株も売られて主要株式3指数はそろって下落しました。イエレン米財務長官が警鐘を鳴らす米債務交渉の6/1期限が近づく中、合意には程遠い状況と伝わり市場でも疑念が広がっています。
米国デフォルトという信じ難い話が徐々に現実味を帯び始める中、与野党の間ではそもそもイエレン米財務長官が米財務省の現金が枯渇する6/1というXデーについても下院共和党の間で不信感が広がっており、米メディアもXデーを後ずれさせるために米財務省が支払いを遅らせることができるかを確認中との報道も流れています。
一見かなり深刻そうな米国デフォルトも与野党による政局争いの政治ショーという側面が多分にあり、市場関係者も「最後には」解決すると楽観視する向きがほとんどとみられます。一方で、この「最後には」といった過程の中で解決を図るために複数の手段があり、万が一の事態では『憲法修正第14条』の使用も選択肢に入ってくるものとみられますが、この「最後には」が具体的にいつになるのかは不明瞭です。実際のところ、6/1までに決着する可能性が薄れてきている中で、仮にも米国のテクニカルなデフォルト騒動が市場を動揺させることもあり得るかと思われます。
米国債市場では米10年債利回りが3.7%付近で留まっており、大きな混乱はみられていないものの、米金融政策見通しでは6月FOMCの利上げ確率がやや低下しています。米金融不安や景気後退リスクも燻る中で6月利上げ期待は低下しているとみられる中、米国のデフォルト懸念が重しになってくる場合には瞬間的にも米国売り(株式・債券・為替のトリプル安)といった場面にもつながってくる可能性があると言えるでしょう。
【日本株投資戦略】
昨日の後場急変の余波を見極め、月末リバランスと米債務交渉の行方に注目して買い場に備える
日本市場は足元で米国株や中国株をアウトパフォームして力強い上昇がみられてきましたが、昨日後場からの市場急変により一転して独歩安の売られ方をみせました。先物主導でかなり前のめり気味だったポジションの巻き戻しと言えばそれまでですが、東証プライムの騰落銘柄数は値上がり356/値下がり1420と値下がり銘柄が圧倒しました。
とくに不可解だったのは大引け取引でのトヨタ・ショックとも言える異様な急落劇でしたが、TOPIXというより日本のトップ企業に突如異変が生じたことが目先の投資家心理に影響を及ぼさないかが心配です。ただ、市場ではこうしたサプライズが付き物でもありますので、これが日本市場そのもののファンダメンタルズに関わる話でもありませんから、ひとまずは市場が冷静に受け止めることが大事な局面と言えるでしょう。
◆トヨタ株が取引終了時に急落、1年ぶり下落率-1.5兆円吹き飛ぶ(2023/5/23)
ただ、足元では日経、TOPIXともに驚異的な7連騰で急ピッチな上昇を続けてきましたので、実際に高値警戒感が生まれるのも無理はない話です。昨日の後場から外需株・内需株問わず幅広く売りが波及したことをふまえますと、上昇一服感から利益確定売りが出やすくなる場面でもあるでしょう。
足元でオプション市場ではコール・オプションの売買が膨らみ強気モード全開でしたが、他方では日経平均が上昇する中でも日経VI(日本版恐怖指数)も上昇してきており、5/18に続いて20ptに接近する動きをみせてきました。海外勢による日本株の買い上げにはプット・オプションの損失に対して先物を使ったヘッジ買いという側面もありつつ、日経平均は3万円という大きな節目突破から一気に踏み上げ相場の様相となりました。
G7広島サミットが終了して海外市場では米債務上限問題に再び目を向けていることを鑑みますと、もし米債務交渉でリスクが炸裂した際、当然売られるであろう米国債をバーゲンハンティングするために手元の保有株を利益確定売りさせておくといったことは、グローバル・マクロのヘッジファンドが考えそうな戦略です。日本株においても先日述べたとおり月末にかけて、あるいは米債務交渉が6/1期限で区切られていることも合わせて考えますと、その前後でグローバル投資家が大きなポジションのリバランスを行うことも念頭に置きながら、買いそびれた株の押し目好機を狙っておくことが有効な投資戦略だと思います。
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