【5/18日本市場の確認ポイント】
日経平均 30573.93(+1.60%)[30,381~30,667]
TOPIX   2157.85(+1.14%)[2,146~2,161]
マザーズ 739.00(▲1.11%)[738~752]

値上がりセクターTOP5
1.電気機器(+3.14%)
2.精密機器(+2.49%)
3.機械(+2.27%)
4.海運(+2.27%)
5.卸売(+1.91%)

値下がりセクターTOP5
1.電気・ガス(▲2.75%)
2.紙・パルプ(▲1.61%)
3.陸運(▲0.87%)
4.水産・農林(▲0.69%)
5.食料品(▲0.67%)

 日本市場はTOPIXが平成バブル後最高値更新に象徴されますように、主力株が主導する形で上値追いが続いています。日経平均も2021年の高値30,795円に迫り、時間外の日経先物は30,935円まで上値を伸ばして新高値更新の動きを見せています。先物主導ですので日経平均採用の大型値がさ株が中心の物色ではあるものの、外需株では半導体やエレクトロニクス関連、内需株では建設株や鉄道株などの躍進で新高値銘柄数は高水準をつけています。

 企業決算も一巡したところで海外勢による日本株買いが増勢を強める中、決算ミスで新安値を更新する銘柄もそれなりにあり、物色の二極化が鮮明となっています。とくに日経平均やTOPIXが上値追いとなる中、新興市場のマザーズはこの上昇に追随できておらず物色の蚊帳の外に置かれる状況となっています。

 小型株市場では材料急騰する銘柄も一部で目立っていますが、地合い良好で物色が全体に広がりやすい状況とは言い難い現状です。指数が引っ張る相場では、まず先物が走ってその後に個別株の物色に資金が降りてくるかが焦点となりますが、まだその段階にはないと言えるでしょう。個別ではひとまず決算材料を織り込む動きがしばらく続くとみられますので、市場全体に好影響が広がってくるまでには今しばし時間が必要でしょう。

【米国株概況】米債務上限問題の警戒緩和で株高、米金融不安の安全資産逃避で買われた債券や金は下落

NYダウ 33535.91(+0.34%)[33,212~33,570]
S&P500 4198.05(+0.94%)[4,153~4,202]
NASDAQ 12688.84(+1.51%)[12,512~12,698]
ダウ輸送株 14003.3(+0.46%)[13,815~14,077]
半導体SOX 3223.5(+3.16%)[3,136~3,229]
日経平均先物(CME) 30,905(+1.03%)[30,380~30,935]
ドル/円 137.27~138.75(高値151.93:10/21、安値127.46:1/3)
日10年債利回り 0.384%(高値0.600%:1/12、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 3.649%(高値4.338%:10/21、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 72.08(高値123.68:2022/6/14、安値63.70:5/3)
金先物 1960.75(高値2,068:5/4、安値1,622:9/28)
銅先物 3.700(高値5.0395:2022/3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)16.05(高値37.79:2022/2/24)
SKEW指数 138.06(安値110.34:11/3、高値145.51:2022/4/1)
Fear&Greed指数 66(GREED:貪欲)
High Yield Bond (HYG)74.12(安値70.30:10/13)

 米国市場は債務上限問題をめぐり与野党協議担当者から合意を楽観視する発言が相次ぎ、過度な警戒感が後退したことから売り方の買い戻し主導で株高となっています。足元の米経済指標が製造業や住宅市場で明るい兆しが確認されるほか、米FRBは6月の経済予測を上方修正するとの観測も飛び出すなど、米経済に対する景気悪化懸念も徐々に緩和されてきています。

 市場の重しとなってきた米金融不安騒動も完全には払拭できていないものの、当局対応が奏功して混乱は収束に向かっており金価格が下落しています。危機対応のリスク警戒モードが和らいだことで債券市場では再び金利が上昇し始めており、安全志向の債券逃避の動きが解消、これが株高を支援する構図となっています。

 株式市場はハイテク株主体での上昇傾向が強まっており、やや歪な形ではありますが米金利上昇でも株価が堅調な動きを見せています。これは米金融不安や米債務上限問題などの一歩間違えれば金融危機を誘発しかねない、非常に神経質にならざるをえない材料に対して市場がポジションを極端な売りに傾斜させてきたことによる揺り戻しの一環と言えます。こうした売り方によるショートスクイーズ(買い戻し)におけるペイントレードは、市場の実態とはかけ離れて株価が上昇する需給要因の一つで健全とは言えませんが、一方では米景気悪化の度合いが想定してたよりも軟着陸が可能との見方も含んだものとなっています。

 米国市場においてはコロナ特需からの反動から業績悪化が懸念されたビッグテックや景気悪化懸念による需要減が警戒される製造業の先行き見通し悪化が危ぶまれましたが、底堅い個人消費や労働市場の頑強さが改めて見直されるところとなっています。米FRBが6月FOMCにおける利上げ継続を訴えていることを鑑みれば、十分に対応可能な範囲での景気悪化よりも根強いインフレ環境や景気の再加熱といった方に目が向けられていると言えます。

 その中での懸念点はやはり米債務上限問題が早期解決に至らず、与野党の政治的駆け引きが無用なリスクをもたらすことや米FRBによる追加利上げが引き金となって再び政府や企業、家計における過剰債務の問題に焦点が当てられることです。そうした意味では、米国の政治的な混乱が鍵を握っていると言えますし、神経質な相場は6月も続くことが濃厚です。しかし、市場では現金同等物の待機資金が積み上がっていますので、株価が大きく調整するような局面ではそれが押し目買い意欲を刺激して相場を下支えするものと考えます。

【日本株投資戦略】
メディアも大々的に取り上げる日本株の独歩高、指数主導の相場で反落警戒も月末にかけての調整局面こそ次の買い場に

 日本市場は主要なメディアの紙面でも日経平均の3万円台回復や平成バブル後最高値更新などがこぞって取り上げられ、高値警戒感も意識されるところですが、海外勢主体による日本株買いは衰えるどころか一層強まっています。上述しましたように先物主導である面は否めませんが、現物買いも膨らんでいるのが昨年などとは大きく異なる特徴と言えます。
日本株に海外マネー4兆円超、12日まで6週累計-TOPIX高値更新(2023/5/18)

 海外市場では米国や中国など景気先行きへの警戒から以前のような力強さはなく、高値をどんどん更新していく相場は世界でも類をみない日本株の独歩高に近い状況となっています。それもそのはずで、足元の株高は世界景気の好調や中央銀行の金融緩和による世界同時株高といったものでなく、国際情勢の不透明感が増す中での消去法的な日本株買いである面が強いのが特徴です。
日経平均3万円、海外勢の逃避先に 世界不安で安定評価(2023/5/17)

 しかし、これが一過性の現象かと言えばそうでもなく、いわば日本株の見直し買いはまだまだ序盤の段階とも言えます。分かりやすい例が著名投資家のウォーレン・バフェット氏が日本株投資への意欲を鮮明にしていることに代表されますように、これまでとは日本株に対する見方が大きく様変わりしてきたという事実を見過ごしてはなりません。いわば平成バブル後の30年超に及ぶ経済停滞、超デフレ環境から抜け出して、金融環境はインフレ前提における株高環境に変わりつつあるということに目を向ける必要があるのです。
バブル後高値のTOPIX、インフレ定着や株主還元が日本株押し上げ(2023/5/17)

 今後は窮地に追い込まれている売り方の買い戻しによるショートスクイーズが一巡し、日経平均やTOPIXの上昇が一服した後に出遅れ気味の個別株が追随して買われてくるかどうかが焦点になります。指数主導の相場では値がさ株などを積極的に手がけられない個人投資家は置いてけぼり感が強まってしまいがちですが、指数が下げ始めて売り物が出やすくなってきた押し目買いを狙うのがチャンスとなります。この米国市場のSQに合わせる形で高値形成してきたことを考えますと、5月末にかけてはファンド勢のリバランス需要に応じて軟化してくるとみられますので、利食い売りしておくなどして次の買い場を見定めておくのがよいでしょう。

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