【3/24日本市場の確認ポイント】
日経平均 27385.25(▲0.13%)[27,257~27,397]
TOPIX   1955.32(▲0.10%)[1,946~1,958]
マザーズ 754.75(+0.03%)[744~755]

値上がりセクターTOP5
1.海運(+0.90%)
2.電気・ガス(+0.63%)
3.医薬品(+0.33%)
4.石油・石炭(+0.31%)
5.紙・パルプ(+0.28%)

値下がりセクターTOP5
1.鉱業(▲1.27%)
2.その他金融(▲1.09%)
3.保険(▲0.93%)
4.銀行(▲0.77%)
5.証券・商品先物(▲0.68%)

 日本株は週後半にかけて上下動の値幅も出来高も落ち着き模様となり、東証プライムの騰落銘柄数は値上がり850/値下がり881と売り買いが拮抗しました。米半導体SOXの大幅高を手がかりに、関連の東京エレクトロン(8035)などが堅調だった一方、ファーストリテイリング(9983)やファナック(6954)などが軟調でした。

 セクター別には海運が続伸となりましたが、シクリカルバリュー株への売り圧力は健在で、一連の金融不安から銀行・保険・証券いずれも余震が続いています。これらは期末にかけて配当落ち調整も控えるため上値の重さが意識されやすいとみられ、むしろ配当落ち影響の少ない銘柄の方が直近の値動きが良いとも言えます。

 日経平均やTOPIXがマイナス圏に沈んだ中でマザーズは小幅ながらもプラス、ANYCOLOR(5032)が大商いを伴って続伸したことをはじめ、前回に続いてハルメク(7119)、アイビス(9343)、日本ナレッジ(5252)の直近IPO組の物色も活況と言えます。今週も大型案件の住信SBI(7163)をはじめ11社が新規上場予定で、IPO市場の盛り上がりが期待されるところです。

【米国株概況】
相次ぐ金融不安ネタに振り回されつつも当局対応で持ち直す米国株、裏では景気後退懸念が着実に進行中

NYダウ 32237.53(+0.41%)[31,805~32,257]
S&P500 3970.99(+0.56%)[3,909~3,972]
NASDAQ 11823.96(+0.31%)[11,670~11,826]
ダウ輸送株 13706.6(+0.14%)[13,486~13,733]
半導体SOX 3121.3(▲1.67%)[3,090~3,154]
日経平均先物(CME) 27,115(▲0.24%)[26,850~27,230]
ドル/円 129.64~130.92(高値151.93:10/21、安値127.46:1/3)
日10年債利回り 0.259%(高値0.600%:1/12、安値0.131%:3/6)
米10年債利回り 3.372%(高値4.338%:10/21、安値1.668%:3/7)
WTI原油 69.20(高値123.68:6/14、安値70.25:12/12)
金先物 1981.00(高値2,085:3/8、安値1,622:9/28)
銅先物 4.0740(高値5.0395:3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)21.74(高値37.79:2/24)
SKEW指数 126.88(安値110.34:11/3)
Fear&Greed指数 33(FEAR:恐怖)
High Yield Bond (HYG)73.60(安値70.30:10/13)

 米国市場は欧州で今度はドイツ銀行の株価が大幅安となったことで金融不安が再び持ち上がったものの、欧州ECBがすかさず流動性供給を発表したことで騒ぎが沈静化、米国株は下落してスタートしましたが終日かけて持ち直す動きを続けて主要3指数はそろってプラスでした。

 米銀破綻の余波が続く中、金融当局は金融システムへのストレス緩和とインフレ退治の難題に対応するべく、資金の流動性供給を行うと同時に利上げを継続する方針を示しています。いわばアクセルとブレーキを同時に踏んでいる状態なわけですが、政策効果としては直接的な資金供給の方がやはり即効性があるため、相場は底堅く推移しています。

 今後も米金利のさらなる上昇がみられれば、同じように銀行ストレスも増大して景気への悪影響が懸念されるようになるわけですが、当面の間は金融当局がその都度対症療法で資金を供給するために下がりそうで下がらない状況が続くものとみられます。株価は下げずとも金融システム全体に対する亀裂が入ったというのは事実で、一旦懸念後退で売られた金(ゴールド)が再び2000ドルを奪回してきています。

 金融不安が燻り続けるうちはこの金価格の動向が注目されますが、この金融不安がいわば利上げに相当する効果をもたらして将来のピーク金利水準が低くなるとの観測も出ています。ある意味、金自体は金利のつかない商品ですので金利が上昇する局面では敬遠されやすい側面も有していますが、金利の上昇期待が剥落したことも金価格を押し上げることにつながっているとみることができるでしょう。

 前週末の米金利は一時3.2%台まで低下して年初来安値を更新する場面までありましたので、これがハイテク株にとっては支援材料となっています。ただ、金融不安が長引けば長引くほど景気抑制効果が働き、上述した将来のピーク金利予想の低下すなわち期待インフレ率の低下がもたらされることによって今度は米実質金利が上昇してくることとなります。

 すでに市場の関心が金融不安の個別事案よりも米景気全体の懸念へと移ってきていることは以前も述べたとおりですが、今後は米金利の低下が必ずしも米国株にとっての追い風となるわけではありません。長短金利の逆イールド現象において急速にスプレッド(利回り差)が縮小してきていることも含め、米国株は実際の景気動向にも目配せが必要になると同時に200日移動平均線(別名:景気循環線)との攻防に注目でしょう。

【日本株投資戦略】
金融不安が投資家にとってのチャンスとなる理由、危機時のリスクこそ積極的に受容した者だけにリターンがもたらされるこの世のカラクリ

 日本市場も欧米の金融不安騒動によって調整を強いられていますが、日経平均もTOPIXも上記の米国株同様に200日移動平均線(別名:景気循環線)との攻防になってきています。個別では景気敏感株への売り圧力が強まっていますので、今後一段と欧米の金融不安が景気後退につながるとの懸念が広がるか次第ですが、それだけであればこの水準に踏み留まることは十分可能でしょう。

 むしろ警戒すべきは欧米以外の、例えば中国の景気に対する懸念がこれに加わってくることや、この週末にかけてニュースになっている米中間、あるいは米国と中東のイランとの間でのシリア情勢など新たな地政学リスクが持ち上がってきていることでしょう。今この瞬間はまさに危機と戦争の時期が到来していると言え、リスクは一つではなくそれぞれが有機的に結びついた複合的リスクとなりやすいことに注意しておく必要があります。

 ただし、リスクの正体が分かりさえすれば今回の金融不安のようにお金で解決可能なものが多いと言えます。これには当然コストがかかり、危機が生じる度に市場が不安を解消するのに必要十分な資金を供給してあげれば、相場はいくらでも上昇させることは可能です。その代わり、インフレもさらに酷くなっていく状況を覚悟しなければなりませんので、実際には社会全体でそのコストを支払っているということになります。

 これが分かっていると、危機が起こって株価が下がっている局面というのは投資家にとってみればチャンスで、リスクを自分一人で請け負っている感じに思えるかもしれませんが、実際には社会全体で間接的にリスクを負ってくれていることになります。そして危機解決のための資金が供給されて株価は持ち直し、そのリターンは危機時に直接リスクを取った資本家にのみもたらされることになるのです。

すなわち、普段はリスクとリターンの責任は個人に帰属して投資は自己責任と言われますが、危機時には結果的にみんなでリスクを費用負担し合うことになりますので、他人の資本でリスクを取って普段以上のリターンが期待できるということになります。理不尽なようですが、それが金融資本主義の本質だからです。ですから、社会が危機だと騒がれている時にこそリスクを慎重に見極めた上で積極的にリスクを取る姿勢こそが大事と言えます。そうしなければ、結局は多大な社会コストを支払わされることは変わらず、リターンは資本家の手にのみ渡ることになります。これが格差をより大きくさせるのです。

 今週は配当権利付き最終売買が29日ですので、30日が配当落ち日です。さらに期末、年度末ということでファンドなんかのリバランスも発生してくるため不可解な動きになりやすいかもしれませんが、大局でみれば景気の動向次第ということになります。株価では指数も個別も200日移動平均線を意識しておくべきなのは冒頭で述べたとおりで、とくにこれを上回って需給が良好なものに絞っていくとよいかと思います。

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