【3/17日本市場の確認ポイント】
日経平均 27333.79(+1.20%)[27,071~27,356]
TOPIX   1959.42(+1.15%)[1,947~1,961]
マザーズ 762.59(+3.52%)[743~764]

値上がりセクターTOP5
1.空運(+2.88%)
2.精密機器(+2.70%)
3.陸運(+2.28%)
4.電気機器(+2.15%)
5.医薬品(+2.04%)

値下がりセクターTOP5
1.石油・石炭(▲0.82%)
2.建設(▲0.39%)
3.海運(▲0.38%)
4.非鉄金属(▲0.27%)
5.保険(▲0.26%)

 日本株は米金利低下を受けて相対的に底堅い動きをみせるグロース株へ資金が流入し、半導体関連株が選好されたほかマザーズ指数が+3.5%高と大幅高しました。窮地に陥っている欧米金融機関をめぐり当局主導での救済措置が混乱回避につながるとの期待もあり、売り買いが交錯。東証プライムの騰落銘柄数は値上がり1350/値下がり423と見直し買いが強まりました。

 金融株の下値波乱はまだ継続中で銀行株には下げ渋りの動きがみられる一方、保険株は売りに押されて軟調。また、金融不安から景気後退懸念も再燃し始める中で海運株や原油安をうけたエネルギー関連、鉄鋼や非鉄などの金属資源など景気敏感株への売り圧力が強まっているとみられます。

 金利動向からグロース株選好が大きな流れを作る中で、景気後退懸念に耐性のあるディフェンシブ系の医薬品や情報・通信などが堅調、また原油安で恩恵を受ける空運株や陸運株などに資金が向かっています。為替動向は気がかりであるものの半導体関連を中心に電気セクターも強めに反発を見せていることから、ひとまず一番底を確認しての反発という見方ができます。ただし、完全な懸念払拭にはまだ時間がかかることから二番底警戒も残っていると言えるでしょう。

【米国株概況】
やはり台頭してきた市場急落の本質である景気後退懸念、一方で当局支援で米市場の底入れは先送りされる

NYダウ 31861.98(▲1.19%)[31,728~32,217]
S&P500 3916.64(▲1.10%)[3,901~3,958]
NASDAQ 11630.51(▲0.74%)[11,562~11,773]
ダウ輸送株 13773.5(▲1.37%)[13,745~14,094]
半導体SOX 3083.5(▲0.47%)[3,064~3,127]
日経平均先物(CME) 26,710(▲1.18%)[26,645~27,145]
ドル/円 131.54~133.67(高値151.93:10/21、安値127.46:1/3)
日10年債利回り 0.293%(高値0.600%:1/12、安値0.131%:3/6)
米10年債利回り 3.438%(高値4.338%:10/21、安値1.668%:3/7)
WTI原油 66.34(高値123.68:6/14、安値70.25:12/12)
金先物 1993.70(高値2,085:3/8、安値1,622:9/28)
銅先物 3.8950(高値5.0395:3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)25.51(高値37.79:2/24)
SKEW指数 131.34(安値110.34:11/3)
Fear&Greed指数 25(EXTREME FEAR:極端な恐怖)
High Yield Bond (HYG)73.37(安値70.30:10/13)

 米国市場は破綻騒動の渦中にある米地銀株が再び急反落したことで金融株を中心に売り直されることとなり、S&P500の全11セクターが下落する全面安商状。ただし、質への逃避から米国債が買われて米金利は低下、ハイテク株やIT株は比較的小幅な下落にとどまりグロース株が相対的に下げ渋る動きを見せました。

 欧州ではクレディ・スイス問題が依然重しとなっており、スイス中銀の支援策が講じられてもクレディ・スイスの経営不安は解消されないとの疑念から同株が大幅に下落。同じスイスの銀行であるUBSによる買収が最有力との観測が浮上していましたが、この週末中の協議もすったもんだがあった末になんとか合意にこぎつけた模様です。
UBS、クレディ・スイスを約4300億円で買収へ-歴史的銀行統合(2023/3/20)

 欧米を揺るがしている金融不安をめぐっては、金融当局が半ば強引な形で業界救済と同時に再編の動きを促しているとみられ、一連の騒動の事後処理に取りかかっている段階に入っていると言えます。ただ、今回の金融機関の救済劇が繰り広げられた中で台頭してきたのは金融システムのリスク以上に世界景気への影響を懸念する見方であり、シクリカルバリュー株が売り圧力にさらされています。

 以前ふれましたように、今週開かれる米FOMCの大幅利上げを阻止したい市場の催促相場である面は否めませんが、それによって利上げ幅以上に米FRBのバランスシートが拡大する金融緩和が事実上行われました。すなわち株式市場を下支えするという意味では効果絶大ですが、長期化するインフレへの対応や経済正常化へ向けた動きはかえって遠ざかったことになります。

 今後は実際に米FOMCでの利上げを予定どおり行われることと同時に、市場が織り込もうとしている景気後退懸念がリスクに取って代わることとなるために、米国株は3月の金融不安よりもむしろ4月の米企業決算での業績悪化懸念が重しになるとみられます。最近のニュースでは金融機関破綻がいかにも衝撃的な話と伝えられますが、米国株は当局介入の下での銀行破綻処理および業界救済劇によって市場の自浄作用を妨げた側面があります。

 したがって、米FOMC通過後の市場推移はひとまず一番底形成につながったとの見方から浮上期待が持ち上がる反面、二番底は金融当局が介入した分遅れてやってくるとの想定が必要であり、完全に底入れするのは4月以降にズレ込むと思っておいた方がよいかもしれません。この間に4月の米企業決算シーズンを迎えることとなりますので収益性の低い企業や財務資本の弱い企業は敬遠される一方、いち早く大量レイオフ(従業員解雇)でコスト削減に邁進している大手ハイテク株などが選好されやすくなる構図です。ただ、米国市場の本当の姿は金融当局の手が及びにくい中小企業、ラッセル2000の推移が示しているとおりと思っておくべきでしょう。

【日本株投資戦略】
米国株よりも下落先行で二番底を探る展開の日本株、予定どおりに『彼岸底』形成となるか要注視

 日本株は前回解説しましたように期末にかけての売り圧力含め、本日予定のゆうちょ銀行株大量売出しによる需給悪化要因が重しとなっています。欧米の金融機関事情よりもこちらの案件の方がよほど日本株にとって重大な影響が及ぶわけでして、同株自体は証券会社が安定操作して言わば威信をかけて需給をコントロールしますので影響が見えづらいかもしれませんが、他の株にはこれまで以上に圧がかかることとなります。

 また、連日のように欧米金融機関の経営不安とそれに相対する金融当局の救済劇が報道されていますので、どうしてもそちらに目が向きがちですが、足元の下落の本質は景気後退懸念の方にあるというのが債券市場の動きが示しています。よって、金融株の下げ止まりを確認した後はシクリカルバリュー株の調整的な動きがいつまで続くのかを重点的に監視していく必要があると言えます。

 今日から明日にかけて開かれる米FOMCで観測どおり0.25%利上げが決定すれば大きな混乱には至らないものとみられますが、上述したとおり市場の一番底を形成した後すぐに反発するというものではなく、二番底を確認してようやく買い方が攻勢を本格化させるといった市場特性を理解しておかなくてはなりません。

 おそらく今週は米FOMC通過後にブラックアウト期間で発言を封じられていた米金融当局メンバーがこぞって米景気について発言してくるようになるかと思いますが、おそらく米銀行救済の話は横に置かれたまま今後の米経済動向を不安視するからこその0.25%利上げだったと振り返ることが大半でしょう。

 そうなると景気敏感株の代表とも言える日本株は一段と売り圧力にさらされることとなり、二番底を探る展開になるかと思われます。ただし、米国株概況のところでも申し上げましたとおり、米国市場の現状は金融当局の介入によって債券市場、株式市場に大量の資金が流れ込むよう誘導されていますので、いわば底入れを先送りしている状況です。その一方、日本株は自律的な調整を経るために米国株と比べていち早く底入れしてくる可能性が高いと言えます。それが今週後半から来週にかけての二番底に当たるかと思われます。

 欧米金融機関発のリスク炸裂とは言いながらまねまね塾では今回の下落は複合的リスクの想定をすべきだと繰り返し述べてきました。本当に重要なのは欧米の金融市場が揺らいだことによって他市場、例えば新興国や中国、インドなどの経済強国にもその間接的影響がどのくらい波及するかです。

 重要な視点としては米金融当局の麻薬的な大量資金供給の手が届かない脆弱性のある国、企業があることや、米国だけでなく例えば中国などが別の問題から景気悪化のリスクにさらされ、それが世界全体の景気後退懸念を引き起こす可能性の方に目を向けておくべきです。
中国恒大集団、債務再編計画を債権者グループが支持-関係者(2023/3/20)

 世界あるいは金融市場がまだ解決を先送りしたまま見過ごしてきた問題が沢山ありますので、リスク炸裂の火種はあちらこちらに転がっている状況ではあるものの、こうしてリスクの所在が明確になることで一つ一つ難題がクリアされていきます。市場が底入れするのはそうした疑心暗鬼の中で大量の売り買いが交錯し、過去と比べても【最大レベルの出来高が膨らんだ時】です。それがセリングクライマックス(売り最終局面)の市場底入れの合図となりますので、二番底の確認作業としては指数でも個別株でも価格の値ごろ感というより出来高中心に市場の動向を監視していくのがよいかと思います。

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