【3/16日本市場の確認ポイント】
日経平均 27010.61(▲0.80%)[26,632~27,057]
TOPIX   1937.10(▲1.17%)[1,910~1,939]
マザーズ 736.65(▲0.77%)[725~737]

値上がりセクターTOP5
1.情報・通信(+0.23%)
2.なし
3.なし
4.なし
5.なし

値下がりセクターTOP5
1.鉄鋼(▲4.79%)
2.保険(▲4.32%)
3.鉱業(▲4.18%)
4.非鉄金属(▲3.44%)
5.銀行(▲3.26%)

 日本株は連日の金融不安をめぐるニュースで動揺が広がる中、今度は欧州でスイスの大手行であるクレディスイスの経営不安が再燃し欧米株が軒並み安となったことを受けて軟調な展開。ただしスイス中銀が異例の緊急対応でクレディスイスの救済に乗り出したことから市場は落ち着きを取り戻して売り方の買戻しを誘発しました。

 日経平均は一時▲600円超の大幅安をみましたが、朝方の売り一巡後は反発に転じ、27,000円台を回復。全体はほぼ全面安商状に近かったものの、指数寄与度の大きいファーストリテイリング(9983)やソフトバンクG(9984)が下げ幅を縮小したほか、グロース株が米国ナスダックの底堅い動きと連動して堅調さを見せました。

 一方、銀行・保険などの金融株や鉄鋼、商社などバリュー株が軟調で一段安の展開を余儀なくされて下落を主導。米国のシリコンバレーバンク問題から嫌気されている金融株は三井トラストHD(8309)が▲6.3%の大幅安、鉄鋼株では大手3社が軒並み▲5%近い下げとなり、非鉄金属なども同様に売られました。新興市場も地合い悪化から直近に賑わっていた銘柄に大幅安となるものが目立ち、リスクマネーの縮小がみられています。日経VIは14日に続き再び20pt台をマークして投資家心理は悪化しています。

【米国株概況】
欧州ECBの予定通りの利上げ決行で米FOMCの利上げ予測固まる、米銀の金融不安も緩和で米国株は反発

NYダウ 32246.55(+1.17%)[31,571~32,281]
S&P500 3960.28(+1.76%)[3,864~3,964]
NASDAQ 11717.28(+2.48%)[11,365~11,773]
ダウ輸送株 13964.5(+1.28%)[13,603~13,822]
半導体SOX 3098.1(+4.05%)[2,915~2,985]
日経平均先物(CME) 27,015(+1.03%)[26,365~27,050]
ドル/円 131.71~133.85(高値151.93:10/21、安値127.46:1/3)
日10年債利回り 0.280%(高値0.600%:1/12、安値0.131%:3/6)
米10年債利回り 3.579%(高値4.338%:10/21、安値1.668%:3/7)
WTI原油 68.37(高値123.68:6/14、安値70.25:12/12)
金先物 1924.25(高値2,085:3/8、安値1,622:9/28)
銅先物 3.8877(高値5.0395:3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)22.99(高値37.79:2/24)
SKEW指数 134.53(安値110.34:11/3)
Fear&Greed指数 29(EXTREME FEAR:極端な恐怖)
High Yield Bond (HYG)73.81(安値70.30:10/13)

 米国市場は欧州でECB会合が開かれ当初の計画通り0.5%利上げを決定したことで、NYダウ先物などが売られて軟調なスタートでしたが、米地銀株への金融不安が燻る中で米大手行が米地銀ファースト・リパブリック・バンクの支援について協議しているとの報道を好感して反発。前日に底堅い動きを見せたナスダックを中心に売り方の買戻しが強まり、ビッグテックのマイクロソフトやアマゾン、アルファベット(Googl親会社)などが軒並み大幅高となりました。

 欧州ECBがクレディスイス問題が浮上する最中でも0.5%の大幅利上げを決定し、米国でも来週のFOMCでは0.25%利上げが濃厚との見方が強まり、事前には0.5%利上げ観測も出ていたことから0.25%利上げにとどまるようなら金利上昇警戒も薄いということでグロース株買いを支援しました。

 米国市場では一連の金融不安の懸念が払拭されたわけではないものの、金融当局による救済ファシリティ創設の迅速な対応に加えてリバースレポでの大量資金供給が市場を下支えし、米FRBのバランスシートも再び拡大しています。すなわち、事実上のQT(量的引き締め)影響を緩和することで利上げの選択肢を確保した点が大きいとみられ、市場が催促する利上げ停止や利下げ、またはインフレ退治のための大幅利上げなどの声を封じ込めたことで景気後退懸念などの市場動揺を抑えにかかったと言えます。

 来週のFOMCに向けては、市場でまだ催促相場を仕掛ける向きが無いとも限らず、週末で次は何がニュースとして出てくるか分からないという面はあります。しかし次回利上げ予測もだいぶ固まってきていることに加えて、米FRBのバランスシート拡大は仮にまた新たなリスクが炸裂しても市場を下支えするという金融当局の固い意志の表れでもあると言えます。米国もしくは中国における景気懸念につながるようなニュースが出てくることがなければ、直近で積み上げられた売り方のショートポジションが徐々に買い戻されて底堅く推移するものとみてよいかと思われます。

【日本株投資戦略】
欧米株高でも日本株は売り方の買戻しが迫力不足、期末にかけて戻り売り圧力は健在も下押し局面は押し目買い好機に

 日本株はクレディスイス問題の救済が図られて昨日は戻りを試す動きとなりましたが、本日は米国株高に反して戻りの鈍さが鮮明となっています。米銀発の金融不安後は日経27,200~27,300円が戻りの上値メドとなっており、売り方にとってはここは越えられては困るカベとなっているとみられ、その一方で年末年始の抵抗ラインだった26,600~26,700円近辺が買い方にとってのサポートとして機能しています。

 テクニカルではこのいずれかをブレイクした方に値幅が大きく出やすいとみられ、日本株が欧米株に劣後するのは為替要因が上値を抑えると考えられます。とくに昨日は日経平均が大きく下げた場面でも海外勢はドル建て日経平均でプラスを確保できている状況で、期末に向けて買い需要は強いとみられるものの景気敏感株はグローバルな売り圧力にさらされており、これに抗えない実態が浮かび上がっています。

 とくに来週は米FOMC前後の動きも懸念材料であるのに加えて、ゆうちょ銀行の大規模売出しで需給が悪化している状態ですので、この週末に新たな複合的リスクの売り材料が持ち込まれた場合には上記のサポートラインを下回ることも警戒しておく必要があります。ただし、こうした懸念が晴れてくる月末に向かっては相場下落がかえって高配当利回りの銘柄やグロース株の押し目買いを狙う好機ともなります。とりわけソフトバンクG(9984)やファーストリテイリング(9983)などを売り仕掛けした指数主導での下落はむしろ歓迎されることと言ってもよいでしょう。

 上述した景気敏感系のバリュー株は金融、鉄鋼、商社などの人気どころが軒並み大幅な調整をみておりますので、月初よりも配当利回りも高くなって魅力が増してきています。また、一連の金融不安材料が過去の金融危機の再来につながるのでは?とのニュース記事も見かけますが、昨年10月にも同じような事象で株式市場は底値を形成したことを思い返していただければ、一連の事態収拾後は再び大きく反発することがお解りいただけることと思います。

 目先の市場動向で懸念されるのは一連の騒動が景気後退を引き起こすかどうかという点に絞られてくるかと思いますが、上述した米国のバランスシート拡大から見て取れるように金融経済は力業で市場を下支えする当局の剛腕によって難局を乗り越えるはずです。これが1年後とかは話が別になりますが、あくまでこの局面での金融危機は食い止められるというのが米金融当局の銀行救済ファシリティの意味するところになります。

 ただし、日本株は期末特有の企業レパトリやリスクオフ時の円キャリートレードの巻き戻しなどが円高圧力となってくるために、欧米株に劣後するのは致し方ないという面があります。前回解説のように今は売り方が回転を効かせて攻勢に出てくる場面ですから、下値攻めがいつまた仕掛けられるか分からない不安が残ります。しかしその分、4月に入ればそうしたマネーフローが変化してきます。海外情勢の悪化などを受けて退避した資金は円高要因につながる一方で、投資家がリスク選好する局面に転じた時に欧米では利上げ政策が重荷となってくる以上、投資先として欧米株よりも日本株に投資する魅力は一段と高くなってくると考えてよいでしょう。

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