【3/14日本市場の確認ポイント】
日経平均 27222.04(▲2.19%)[27,104~27,455]
TOPIX   1947.54(▲2.67%)[1,935~1,974]
マザーズ 738.35(▲2.31%)[736~750]

値上がりセクターTOP5
1.陸運(+0.17%)
2.なし
3.なし
4.なし
5.なし

値下がりセクターTOP5
1.銀行(▲7.41%)
2.保険(▲5.98%)
3.鉱業(▲5.49%)
4.鉄鋼(▲4.19%)
5.証券・商品先物(▲4.10%)

 日本株は米金利の急低下を背景に為替円高が進展、日経平均・TOPIXともに▲2%超の大幅続落となりました。前日に続き米銀破綻の連鎖から生じた金融不安から銀行・保険・証券など金融株が軒並み大幅続落、さらに米金利の長短イールドカーブが急スティープ化したことにより景気悪化懸念が浮上し景気敏感株にも大きな売り圧力がかかりました。

 日経平均は一時▲700円超の大幅安となったほか、TOPIXも上記要因に加えて為替円高が逆風となる自動車関連はじめ外需製造業を直撃した形で▲3%超まで下げ幅を拡大する場面がみられました。金融株はもちろん景気敏感株のバリュー株が軒並み売られ、高い配当利回りを求めて買われてきた面々がより厳しい下げを見る格好となっています。

 一方、米金利や国内金利の低下で下げ渋るとの期待もあるグロース株ですが、相対的には下げ渋ったと言えなくもないものの、ソフトバンクG(9984)は米シリコンバレーバンク破綻に伴うベンチャー投資への逆風が引き続き嫌気されて▲4%超の大幅安でした。グロース株ではディフェンシブ系の医薬品セクターが比較的底堅く推移、しかしこの日は小型株、新興のマザーズも地合い悪化の影響は避けられず大幅安となりました。日経VIは昨年末以来3カ月ぶりに22ptに跳ね上がり、投資家心理の悪化を反映しました。

【米国株概況】
金融不安と3月FOMCの不透明感が緩和して株買い・債券売りのリスク選好ムード回復、ただ本調子には程遠く景気悪化懸念が重しか

NYダウ 32155.40(+1.06%)[31,805~32,306]
S&P500 3920.56(+1.68%)[3,873~3,937]
NASDAQ 11428.15(+2.14%)[11,284~11,467]
ダウ輸送株 13921.0(▲0.38%)[13,708~14,289]
半導体SOX 3010.1(+3.03%)[2,960~3,026]
日経平均先物(CME) 27,210(+1.15%)[26,840~27,280]
ドル/円 133.03~134.89(高値151.93:10/21、安値127.46:1/3)
日10年債利回り 0.274%(高値0.600%:1/12、安値0.131%:3/6)
米10年債利回り 3.685%(高値4.338%:10/21、安値1.668%:3/7)
WTI原油 71.86(高値123.68:6/14、安値70.25:12/12)
金先物 1907.85(高値2,085:3/8、安値1,622:9/28)
銅先物 4.0060(高値5.0395:3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)23.73(高値37.79:2/24)
SKEW指数 132.72(安値110.34:11/3)
Fear&Greed指数 26(FEAR:恐怖)
High Yield Bond (HYG)73.57(安値70.30:10/13)

 米国市場では米銀破綻の回避に米金融当局は迅速な対応を見せた一方、金融株への警戒感は燻ったままで市場の動揺が続いています。株式市場では米銀破綻を引き起こした高金利水準が槍玉に挙げられ次回FOMCでの利上げが見送られるとの観測が浮上、これに伴い金利が急低下を見せたことから金融株以外は比較的下げ渋る動きもみられます。

 一方、債券市場では質への逃避から資金が大量流入、とくに2年債利回りが類を見ない程の急低下を見せたことにより長短逆イールドは劇的に縮小。単に安全資産需要というよりショートカバーがこのような激しい動きをもたらしているとみられますが、長期金利も低下するも短期金利のペースがそれを遥かに上回りイールドカーブは急激にスティープ化しました。これによって今度は景気後退懸念が急浮上することとなりました。

◆米2年債利回りがボルカー時代以来の大幅低下、一連の銀行破綻で(2023/3/14)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-03-14/RRHD1ST0AFB401
◆ガンドラック氏:米利回り曲線は差し迫った景気後退を強く示唆(2023/3/13)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-03-13/RRG22UDWLU6801?srnd=cojp-v2
◆焦点:米銀破綻で市場の見通し一変、FRB大幅利上げ観測は消滅(2023/3/14)
https://jp.reuters.com/article/analysis-banks-market-idJPKBN2VG023

 また、つい先日まで3月FOMCでは0.50%の大幅利上げ観測も持ち上がっていた矢先、今回の米銀破綻騒動により今度は手の平返しで利上げ停止の観測まで浮上してきています。昨晩はNYダウが6日ぶりの反発、一時はロシアの戦闘機が米国のドローンを撃墜したという地政学リスクが意識されてマイナス圏に沈む場面もみられましたが、金融株の下げ止まりを好感。まだ自律反発の域を出ないもののナスダックは+2%超の上昇で2日続伸とショートカバー(売り方の買戻し)が一部始まった様子も窺えます。

 市場が注目する2月CPI(消費者物価指数)が市場予想並みで前年比鈍化傾向が継続、その中でコアCPIが前月比プラスとなったことで3月FOMCの利上げ確率は0.25%利上げが濃厚な結果となりました。これら不透明感の一部解消を受けて債券市場では中長期債を中心に売られ、安全資産需要が後退。リスクマネーが一部戻る形での株高という構図になっています。

 同様に前日まで超警戒モードだったリスク指標は改善を示し、VIX指数は13日に30ptをつけていたところから23pt台に低下。Fear&Greed指数も26に若干回復し、前日のEXTREME FEAR:極端な恐怖からFEAR:恐怖へと多少ですが警戒感は後退をみせました。

◆信用リスク指標が軒並み悪化、米銀破綻で投資家の不安広がる(2023/3/14)
https://jp.reuters.com/article/global-banks-credit-idJPKBN2VF1U5?il=0

 上述したような金融不安の混乱と次回FOMCの利上げ不透明感が緩和したことにより株買い・債券売りのリスク選好パターンがみられていますが、その中で一部ダウ輸送株の続落は景気悪化懸念がまだ解消していないことを表しています。この場合、次回FOMCでもし利上げ停止となった際には景気後退懸念がかえって強まりかねないため、0.25%利上げで決定した方が金融市場は早く落ち着きを取り戻すこととなるでしょう。

【日本株投資戦略】
金融株の下げ止まりは朗報、テクニカル重視派は三空出現で買い向かうトレーダーも多そうな場面

 昨晩の米国株反発までの一連の流れは上述のとおりですが、日本株も同様で前回解説したようにまずは金融株の下げ止まりを確認する必要があります。一つの目安としては1月の日銀金融政策決定会合で上昇の起点となったところからの上げ幅を消失して往って来いとなる水準が注目されるでしょう。

 テクニカルでは連日の続落から日経平均は「三空叩き込み」というチャートパターンで3回連続で窓を空けた形が出現すれば投げ売りの最終局面にきたという見方ができます。ただし、騰落レシオはまだ100pt台で、年初からの上昇相場における過熱感が剥げ落ちたところと言え、投げ売りというほどの惨憺たる状況は金融株を除いては調整の範囲内とも言えます。よって、セリングクライマックスには程遠い状況とも言えますので、注意すべきは戻り売り圧力がどれだけあるかという点でしょう。

 本日は米国株高の流れを受けて自律反発がみられるかと思いますが、ここで戻り売りに上値を抑えられた場合には売り方が一旦利益確定した余力を再び売り乗せに畳みかけてくる可能性があります。日経平均やTOPIXは先物主導で水準的には来週に向けて売りの回転が効き始める頃合いとなっても不思議ではありません。

 日本株のファンダメンタルでは1月からの上昇起点となった時の日経平均PERはちょうど15倍程でしたので、つい最近までの割高感を解消する意味でもバリュー投資家にとっては26,000円近辺が下値目途になるかと思われますが、ただこの頃よりも2月の決算シーズンを経過してEPS(1株当たり利益)は1,720円⇒1,670円まで切り下がっています。

 したがって、場合によってはPER:15倍×EPS:1670円=日経平均25,050円までもあり得るとの想定が必要になります。ただ、場合によってとした理由にはここに為替要因が大きく関係してくるとみており、1月中旬の為替レートはドル円で130円近辺で推移していました。現在は134円付近で日銀は金融緩和策の現状維持を表明しながら指値オペ継続、これに加えて、例の米銀破綻騒動から世界の金利低下とともに日本の10年債利回りも0.2%を瞬間的に割り込む場面もみられています。

 為替相場が日米金利差を反映するのであれば米金利よりも日本金利の低下が著しいために円安圧力がかかりやすいということが言えます。ドル円が130円と134円では3%程度の開きですが、これは海外勢から見える景色としてドル建て日経平均に大きく関わってきます。国内投資家と比べて3%の為替要因によるアドバンテージは日経平均でいうところの26,000円付近の攻防に際して800円弱に相当し、海外勢は同じバリュー投資家であっても国内勢よりもリスク許容度が広いことを意味します。

 よって、ここから金融不安以外の複合的リスクの顕在化があるか次第ですが、仮に別のリスク炸裂が重なった場合でも海外勢は25,800円付近を下値メドに早い段階から買い下がり前提で現物買いに動いてくる可能性もあります。国内投資家の場合は軽はずみなリスクの取り方はまだ控える必要があります。

 ただし、金融株の下げ止まりを確認できたことは朗報と言えます。買い出動する場合は前回もお伝えしたように細かく買うタイミングや価格を分散して、途中での弾切れにならないことを心がけることが大事で、来週の米FOMC通過までをふまえて分散しながら押し目買いを狙っておきたいところです。

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