【3/10日本市場の確認ポイント】
日経平均 28143.97(▲1.67%)[28,118~28,424]
TOPIX   2031.58(▲1.91%)[2,030~2,053]
マザーズ 762.19(▲1.82%)[761~774]

値上がりセクターTOP5
1.ゴム(+0.17%)
2.紙・パルプ(+0.16%)
3.なし
4.なし
5.なし

値下がりセクターTOP5
1.銀行(▲5.38%)
2.海運(▲4.54%)
3.保険(▲3.36%)
4.証券・商品先物(▲3.32%)
5.小売(▲2.42%)

 日本株は朝方に3月メジャーSQを28377.34円で清算した後、前日の米株大幅安や日銀会合を通過して取引終盤にかけて下げ幅を拡大させる動きとなりました。前日の全面高商状とは打って変わって全面安商状となり、中でも米銀暴落による信用不安への発展を警戒した金融株が軒並み大幅安となりました。

 昼過ぎに日銀会合の金融緩和策現状維持が伝わったことで銀行株は下げ足を速める展開となったほか、ベンチャーおよびスタートアップ企業の関わりが深い米銀の財務悪化が最も警戒されたのはソフトバンクG(9984)で▲6%超と象徴的な動きがみられました。また、同時間帯で日本郵船(9101)が中期経営計画を発表し、今後の見通しで現在のような高配当環境は長く続かないことを示唆する内容から急反落。同業の商船三井(9104)などにも連想売りが波及しました。

 米株大幅安という外部環境の悪化をうけて海外投資家の強気スタンスは急転回し、前日に空売り比率は久々の40%割れを見た後に52.7%と昨年10月末以来の高水準を記録、メジャーSQ通過も相まって需給に変化がみられたと言えます。他方で、リスクオフ商状とはいえマザーズ指数など中小型株の下落率は相対的に低くなっており、海外市場ほどパニックな状況には至っていないという見方もできるでしょう。

【米国株概況】
市場が懸念する信用不安の連鎖拡大は当局が阻止、より重要な米SVB問題で揺れる3月FOMCの利上げ確率

NYダウ 31909.64(▲1.07%)[31,783~32,422]
S&P500 3861.59(▲1.45%)[3,846~3,934]
NASDAQ 11138.89(▲1.76%)[11,093~11,373]
ダウ輸送株 14209.0(▲2.47%)[14,135~14,583]
半導体SOX 2923.9(▲1.89%)[2,909~3,003]
日経平均先物(CME) 27,525(▲1.20%)[27,490~28,200]
ドル/円 134.14~136.99(高値151.93:10/21、安値127.46:1/3)
日10年債利回り 0.412%(高値0.600%:1/12、安値0.131%:3/6)
米10年債利回り 3.907%(高値4.338%:10/21、安値1.668%:3/7)
WTI原油 76.68(高値123.68:6/14、安値70.25:12/12)
金先物 1872.70(高値2,085:3/8、安値1,622:9/28)
銅先物 4.0070(高値5.0395:3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)24.80(高値37.79:2/24)
SKEW指数 130.27(安値110.34:11/3)
Fear&Greed指数 24(EXTREME FEAR:極端な恐怖)
High Yield Bond (HYG)73.44(安値70.30:10/13)

 米国市場では3月FOMCを迎えるにあたり重要視されている2月米雇用統計が発表され、雇用者数、失業率はともに市場予想を上回った一方で賃金の伸びは鈍化が確認されたことで3月FOMCにおける大幅利上げ観測は後退。ただそれ以上に市場ではシリコンバレーバンクの破綻騒動が話題を集めて、金融株を中心に大幅安となる銘柄が続出しました。

 主要株式3指数はそろって続落しNYダウは昨年11月以来の32,000ドル割れ、ナスダックでも金融株のとりわけフィンテック関連などに暴落する銘柄が目立ち下値警戒が強まる動きとなりました。シリコンバレーバンク問題に関しては、前回の【先読みの近未来-3/10号-(スタンダード会員以上の方対象)】でも解説しましたが、その後の破綻という結果を経て今後の展開可能性で考えられるシナリオがいくつかあります。ただし、これ単発の問題だけで済まされるものであれば、金融システム全体を揺るがすような状況は回避され、フラッシュ・ショック的な一過性の下落に収まるものと考えられます。

 今回の【先読みの近未来-3/13号-(スタンダード会員以上の方対象)】で詳しい解説を付け加えることにしますが、問題それ自体よりも株価の行方として注目されるのは、これが米金融政策の判断に影響を及ぼすものとなるかどうかがポイントになります。米国の高金利環境が引き金となっているこの問題の本質を考えれば、今後の金利動向に大きく関わるのが3月FOMCであり、それを左右しうる米経済指標として今週は14日に米CPIがあり、その後小売売上高やPPIなどが続きます。

 市場が懸念する信用不安の拡大という観点では、米FRBや米連邦預金保険公社(FDIC)が必死に食い止めを図ることと思われますが、彼らの言動を鵜呑みにするのはキケンです。この手の問題が起きた際には、過去にリーマン・ショックなどで騒がれた時と同様に当局は大丈夫と市場動揺を抑えるメッセージを出すのとは裏腹に、金融システムに深刻な影響が無ければ簡単に見捨てます。

 シリコンバレーバンクに関しては他の金融機関やヘッジファンドなども受け皿に名乗りを上げているため、早期に事態収拾が図られる可能性もありますが、市場が懸念するのは似た様な金融機関が他にも存在することや、今後の利上げ拡大によって金利水準がさらに引き上げられていくことで生じ得る米国経済への悪影響です。

 インフレがまだ退治できていない中でそれが景気敏感株をはじめ米国全体の景気後退懸念を呼び覚ますものとなれば、スタグフレーションに陥るとの警戒感が強まり、昨秋の相場起点まで往って来いとなるシナリオが意識されるようになります。くしくも今回のシリコンバレーバンク問題も重なり、3月FOMCの利上げ幅をめぐっては0.50%確率が低下して0.25%確率が上昇しました。米FRBがこの問題を加味するかどうかは甚だ疑問が残るところですが、それまでに市場の不透明感も解消に向かっていくことで反転のきっかけを掴めるものとなるかもしれません。

【日本株投資戦略】
米国発の信用不安拡大は複合リスクに要注意、金利敏感株の下値を見極めた上でのバーゲンハンティングが投資好機に

 日本株は米国発の信用不安や株安連鎖からはある程度切り離されるものと考えられ、日銀が金融緩和策の現状維持を決定したことにより為替が比較的安定を保たれていることも下支え要因になるでしょう。ただ、米国信用不安が世界的に波及するようなリスクオフへと発展していくような場合には為替円高が日本株にとっての重しと意識されやすくなるため、下値が拡大する余地を残していると言えます。

 米国シリコンバレーバンク問題を発端として他行にも取り付け騒ぎが波及して信用危機となるリスクの他に、この解決を図るために金融当局が公的資金注入を余儀なくされた場合、懸案となっている米財政問題に飛び火する可能性もあります。これらの問題の根底にあるのは、米金利上昇に伴い金融機関のポートフォリオがやられて健全な資本運営ができなくなってしまう恐れがあることで、かつて日本でも生じたVaRショックに類似する信用不安の拡大や、同じく米金利上昇でドル高が加速した結果として新興国のドル建て債務に深刻な悪影響を及ぼすことなどが懸念されます。

 一方、問題が早期に収拾されるようであれば、積み上がっている空売り勢の買戻しが株価の下値を支えるほか、押し目待ちの投資家が抜け目なく買い出動してくることが予想でき、3月末の配当取りを狙ってポジションを拡大させる投資家も多いことと思われます。

 重要なのは押し目買いのタイミングを適切に見極められるかであり、上述しましたように今週の米経済指標や来週の米FOMCをふまえて米国の金利環境が落ち着くタイミングと同期してくるものと考えられます。株価の底値当てゲームに成功すれば、魅力的な日本株をバーゲンセール価格で取得できる絶好の機会とあって、国内の個人投資家、機関投資家だけでなく海外勢も米国などに集中したリスクポートフォリオの分散から日本株買いを加速させる動きを強めるものと推察できます。

 すでに日本株と米国株の間でのデカップリングが鮮明なことは前回もふれましたが、相対的に日本株の底堅さが際立つ展開となることも十分に考えられ、危機収束に苦戦する米国株を後目に先行して反発してくる期待も持てることでしょう。大事なのは焦り過ぎないことで、絶対に避けなければならないことは下値波乱に動揺しながら飛びつき買いしてはやっぱりダメだと損切りをして、結局資産を目減りさせてしまうことです。

 波乱の好機を生かすためにもリスク管理を徹底し、買い向かうにしても細かく買うタイミングや価格を分散して、途中での弾切れにならないことを心がけることが今後のパフォーマンスを大きく左右することでしょう。

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