【3/7日本市場の確認ポイント】
日経平均 28309.16(+0.25%)[28,202~28,398]
TOPIX 2044.98(+0.42%)[2,034~2,046]
マザーズ 773.24(+0.95%)[763~774]
値上がりセクターTOP5
1.鉱業(+2.83%)
2.鉄鋼(+2.00%)
3.銀行(+1.40%)
4.石油・石炭(+1.33%)
5.非鉄金属(+1.17%)
値下がりセクターTOP5
1.海運(▲0.60%)
2.紙・パルプ(▲0.52%)
3.不動産(▲0.22%)
4.食料品(▲0.07%)
5.電気機器(▲0.01%)
日本株はバリュー株物色を中心に続伸、TOPIXは2021年以来の高値をつけたほか新高値銘柄は200超えとなり、東証プライムの騰落銘柄数は値上がり1248/値下がり493でした。原油高を受けてエネルギー関連が大幅高、証券会社レポートで神戸製鋼所(5406)が急続伸したほか、米金利高を手がかりに銀行株などもTOPIXの押し上げ役となりました。
日経平均はファーストリテイリング(9983)が昨年8月以来の一時29,000円台をつけるなど上昇を牽引、米国ナスダック下落を受けて東京エレクトロン(8035)はじめ半導体関連が売りに押された面々をカバーしながら28,400円近くに迫りました。やや冴えなかったのは海運株、また話題性では期待されていたH3ロケット発射の失敗により三菱重工(7011)が急反落するなど宇宙関連株が逆行安となる場面も見られました。
新興市場ではマザーズが2月末の反転から戻りを試す動きが継続、多彩な材料物色でAIやChatGPT関連など人気テーマ株が入れ替わりながら物色され、商いも増加基調を辿っています。780pt付近は戻り売り待ちも控えるところで、今後日本の金利高観測も浮上してきやすい場面で主力どころが騰勢を強められるかがポイントになってきます。
【米国株概況】
パウエル米FRB議長のタカ派発言で米株大幅安、短期債が急上昇で逆イールドが一段と深まる
NYダウ 32856.46(▲1.71%)[32,838~33,453]
S&P500 3986.37(▲1.53%)[3,980~4,050]
NASDAQ 11530.33(▲1.24%)[11,512~11,705]
ダウ輸送株 14853.1(▲0.81%)[14,835~14,961]
半導体SOX 2962.4(▲1.07%)[2,950~3,011]
日経平均先物(CME) 28,205(▲0.41%)[28,170~28,455]
ドル/円 135.56~137.20(高値151.93:10/21、安値127.46:1/3)
日10年債利回り 0.498%(高値0.600%:1/12、安値0.131%:3/6)
米10年債利回り 3.970%(高値4.338%:10/21、安値1.668%:3/7)
WTI原油 77.21(高値123.68:6/14、安値70.25:12/12)
金先物 1817.60(高値2,085:3/8、安値1,622:9/28)
銅先物 3.9665(高値5.0395:3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)19.59(高値37.79:2/24)
SKEW指数 120.56(安値110.34:11/3)
Fear&Greed指数 48(NEUTRAL:中立)
High Yield Bond (HYG)74.19(安値70.30:10/13)
米国市場ではパウエル米FRB議長が米上院議会証言に臨み、政策金利を従来の想定より高い水準に引き上げる公算が大きいとしたほか、必要であれば利上げペースを加速させる用意があると言及。これを受けて短期債利回りが急上昇し、株式が下落、米ドルは上値を伸ばしてドル円は137円台をつけました。
パウエル米FRB議長のタカ派姿勢を受けて、FF金利先物は3月FOMCの0.50%利上げ確率が60%超に高まるとの見方を反映し、債券市場では長短金利差がさらに急拡大して2年債と10年債の逆イールドが100bpを超えて約40年超ぶりの水準に達しました。足元の利上げ加速に加えてピーク金利予想も引き上げられるとの懸念が強まりました。
◆今月FOMCの0.50%利上げ確率66%に、FRB議長議会証言受け(2023/3/8)
株式市場も大幅安となりましたが足元でボスティック米アトランタ連銀総裁の発言により上昇していましたから、次回0.25%利上げで期待先行していた部分が剥落したと言え、前回指摘しましたように資金が逆回転した形でしょう。それでもまだ3月FOMCまではまだ時間があり、その間に経済データの発表があるために市場はそれを手がかりとしながらインフレや景気動向を見極めようとするでしょう。
それと並行して米国債の逆イールド深化は実体経済を蝕む動きを加速させ、今週末に控える米雇用統計で労働市場が仮に堅調であったとしても米企業や家計の資金繰り環境は悪化します。米国内でもCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)上昇がみられており、経営が行き詰まった企業倒産への懸念が高まっていることが窺えます。
金融市場では米経済の底堅い面と脆弱な面のどちらかだけを評価して強気・弱気に揺れるだけですが、実体経済の弱い部分に焦点が当てられると景気後退懸念が再浮上してくるリスクは残っています。ゴールドマン・サックスは米経済のソフトランディングを訴える一方、商品市場では米ドル高を受けて原油や金、その他金属類などが一斉に急反落しています。
◆ゴールドマンCEO、米経済ソフトランディングの可能性高まる(2023/3/8)
現在は米金利動向に注目が集まっていますが、もし今後金利低下となる場面で長期金利下落に反して短期金利上昇という構図になれば逆イールドがさらに深まると同時に、景気後退懸念をより反映した市場動向となりやすくなるかもしれません。それはつまり、長期金利が低下しても株式市場にとって追い風となりにくい昨夏のような相場展開も想定しておく必要があるということです。いずれにしても3月FOMCの利上げ決定を見極める必要があるものの、その先は単純に金利低下=グロース株の追い風とならない他に金利低下=バリュー株の逆風として意識されやすくなることも想定しておいた方がよいでしょう。
【日本株投資戦略】
無風予想の日銀金融政策決定会合が目前に迫る、黒田総裁最後の会合は日本株に試練を与えるか?
日本株も昨晩の米国株安を受けて連れ安が避けられないものとみられますが、ここでも為替のドル高円安が一種の緩衝材となって相対的に底堅い面を見せるかもしれません。ただし日本としては明日から日銀金融政策決定会合が開かれますので、前回指摘しましたように大きなサプライズを繰り出すようなことは無いかとは思いますが、それでもやはり心の準備だけはしておいた方がよいでしょう。
◆黒田日銀の「最後のサプライズ」あるか、チャートにみる市場の臆測(2023/3/8)
もしここで金融政策を変更することが決定される場合、おそらくは12月日銀会合と同じようにまずはYCC(イールドカーブコントロール)政策の上限引き上げという措置が考えられるかと思いますが、12月はこれで日本株が急反落する事態が引き起こされました。仮に今回サプライズがあったとしても12月ほどのインパクトは無いと考えられますが、これもどのくらい引き上げるかによっても変わってくるかと思います。
12月は上限0.25%→0.50%への拡大でしたが、0.50%→1.00%までの拡大となった場合には拡大幅が倍増することになります。市場が前回とは異なり多少身構えている部分があるとはいえ、上限が一気に引き上げられれば日本の債券市場は大きく動揺してしまうことでしょう。
黒田日銀総裁に代わって新たに就任する植田日銀総裁は2月の所信聴取で現行政策を当面維持するとの見方を提示して市場の安心を誘いましたが、それを前提に捉えている市場から混乱を遠ざけるために就任後もしばらくは金融政策に縛り付けられることになります。債券市場の機能低下が叫ばれている中、それはある意味、日銀の政策の柔軟性を欠くことでもあることから、黒田日銀総裁が悪者役を買って出ても金融政策をここで修正しておく方が得策だとサプライズ発表があっても不思議ではないでしょう。
ただ、サプライズでもなんでも日本株は現在高値圏にあって、買い方は押し目待ちしている状態な訳ですから、多少の調整をはさんでくれた方が、3月末の配当取りしたい投資家にとっても配当利回りが高くなってむしろ喜ばしい展開と言えるかもしれません。サプライズなしで日銀会合を無風通過するようであれば、市場の目線は海外市場にらみとなりますので後から続く欧米の金融政策に注視していく展開となるのでしょう。
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