【3/3日本市場の確認ポイント】
日経平均 27927.47(+1.56%)[27,655~27,961]
TOPIX   2019.52(+1.25%)[2,001~2,021]
マザーズ 758.64(+1.29%)[751~759]

値上がりセクターTOP5
1.精密機器(+2.55%)
2.卸売(+2.40%)
3.鉱業(+2.03%)
4.医薬品(+1.90%)
5.化学(+1.83%)

値下がりセクターTOP5
1.保険(▲0.32%)
2.紙・パルプ(▲0.02%)
3.空運(▲0.01%)
4.なし
5.なし

 日本株はもみ合いを上放れて大幅高、日経平均は27,500円、TOPIXは2,000ptの攻防を制して年初来高値を更新しました。東証プライムの騰落銘柄数は値上がり1479/値下がり279でしたが、ほぼ全面高商状で特に大型株の値動きが大きく出ました。月次発表を好材料視したファーストリテイリング(9983)が4%近く上昇し単独で日経平均を+107円押し上げたほか、第一三共(4568)、信越化学(4063)、HOYA(7741)などが続きました。

 個別株では三井物産(8031)、丸紅(8002)など商社株のほか、オークマ(6103)や日立建機(6305)など機械株にも資金流入が顕著で、景気敏感株が総じて確りの動きでした。一方、保険セクターが生損保問わず売られ、ソフトバンクG(9984)も金利上昇が重しとなったか冴えない動きとなりました。

 ソフトバンクG(9984)に代表されるグロース株は金利上昇が逆風として意識されやすいものの、この日はマザーズも確りの展開で下値もみ合いを脱する反発を見せました。その中で昨年末IPOのELEMENTS(5246)が高値更新後に上ヒゲ陰線形成、他にpluszero(5132)が大商いを伴ってストップ高まで買われる急騰を見せました。米AIソフト開発を手がける関連会社が時間外取引で急騰した思惑が日本市場にも波及しています。

【米国株概況】
米株ショートカバー続き3月相場が好発進、現金逃避の資金が株・債券へ巻き戻しの動き

NYダウ 33390.97(+1.17%)[33,008~33,405]
S&P500 4045.64(+1.61%)[3,995~4,048]
NASDAQ 11689.01(+1.97%)[11,514~11,699]
ダウ輸送株 15113.3(+0.48%)[14,971~15,137]
半導体SOX 3028.3(+1.48%)[2,961~3,031]
日経平均先物(CME) 28,205(+1.09%)[27,640~28,230]
ドル/円 135.75~136.76(高値151.93:10/21、安値127.46:1/3)
日10年債利回り 0.500%(高値0.600%:1/12、安値0.131%:3/6)
米10年債利回り 3.958%(高値4.338%:10/21、安値1.668%:3/7)
WTI原油 79.85(高値123.68:6/14、安値70.25:12/12)
金先物 1862.80(高値2,085:3/8、安値1,622:9/28)
銅先物 4.0710(高値5.0395:3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)18.49(高値37.79:2/24)
SKEW指数 118.14(安値110.34:11/3)
Fear&Greed指数 55(NEUTRAL:中立)
High Yield Bond (HYG)74.72(安値70.30:10/13)

 米国市場は米FRBメンバーによる3月FOMCの0.25%利上げ支持発言が引き続き意識されており、株式市場ではショートカバー(売り方の買い戻し)の流れが続いた一方、債券市場では米長期金利が前日の4%超えからこれを割り込む動きに転じ、結果として米金利低下が米株一段高を後押ししました。

 足元では米国市場で株売り・債券売りから現金・短期証券への資金シフトが進んでいたこともあり、上記の米FRBメンバーによる次回利上げ幅に対して具体的な言及をしたことがポジションの巻き戻しにつながったと言えるでしょう。ただし、前回の解説でも触れましたがボスティック米アトランタ連銀総裁は元来、率直な物言いを行う傾向にあり、他のFRBメンバーが次回利上げ幅に関して事前段階での明言を避けるために、ボスティック氏の0.25%利上げ支持ばかりが独り歩きしてしまっている感が否めません。
キャッシュに再び脚光、株式・債券の同時下落で逃避先に-BofA(2023/3/4)

 また、そもそもボスティック氏自身は今年の米FOMCにおける金融政策決定に係る投票権を持たないメンバーですから、ある意味では気楽に発言できる立場にあります。実際に次回会合で0.25%利上げで決定されれば市場は織り込み済みとなりますが、これが0.5%利上げということになれば逆回転のリスクを孕んでいるという見方が必要かと思われます。

 いずれにしても、今週末の11日(土)から米FRBメンバーはブラックアウト期間入りするため、金融政策に関する発言は控えられることになります。その上で、7日(火)にはパウエル米FRB議長が米上院で議会証言があり、8日(水)には米下院で発言する機会があります。ここでパウエル米FRB議長がわざわざ市場の欲しがっているFOMC手がかりを提供するようなことは無いでしょうが、その代わりにまたまた米FOMCの投票権を持たない外野の金融界重鎮から0.5%利上げを促すようなメッセージが繰り出されています。
パウエル氏は3月の50bp利上げに門戸開くべきだ-サマーズ氏が促す(2023/3/4)

 市場は週央のパウエル米FRB議長発言や今週末の2月米雇用統計などから次回の0.25%利上げか0.50%利上げかの手探りを探ろうとする中で、さまざまな思惑が交錯して一喜一憂する展開となりそうです。ただ、要人発言のみでは物色の手がかり材料として心許ない現状から、一時的なショートカバーは入っても肝心の現金・短期証券シフトが止まなければ短期ラリーで終わってしまう可能性が高いと言えます。見方によっては、3月FOMCに向かって2週間ほどは思惑相場に乗り、2月調整分を埋め戻す動きなど期待できるかもしれません。

【日本株投資戦略】
上値試す日本株に援護射撃は期待できるか、昨年同様に政策期待の踏み上げ相場を演出する虎の子の財政出動

 日本株は前週末の大幅高に加え米国市場でも株高の流れが続きましたので、週初は上値を試す動きからスタートできそうです。前回は惜しくも日経平均28,000円には届きませんでしたが、後場も一切ダレることなく高値圏で推移し続けました。その後の海外市場でも欧米だけでなく、何気なくアジアでも中国株、インド株など2月に調整を強いられたところが出直りで買われています。

 今週は9〜10日にかけて日銀金融政策決定会合が予定されていますが、現行の金融緩和策が維持されるとの公算が高くサプライズ無し想定であれば米国の金融政策にらみの展開が今後も続きそうです。黒田日銀総裁が事実上最後の日銀会合に臨む上でサプライズを用意していないとも言い切れないですが、さすがに次回の米FOMCに視線が集まっている中で横から奇襲攻撃を仕掛けるようなことは考えにくいかと思われます。もしあったなら、それはそれで「さすが、サプライズ好きの黒田日銀総裁」となりますが、ここでYCC政策撤廃を発表しようものなら市場は大きく動揺することでしょう。

 しかし足元では、日本株のレンジ相場をブレイクさせるきっかけを作ったのは米要人発言であり、これで米金利が動いたことも確かにありますが、大きくはやはり均衡を保ってきた日本株の需給関係が一気に買い方向に振れてきたことがポイントです。さらに信用需給の面では、上値を抑えてきた信用売り(空売り)の残高が1兆円超まで膨らみ、信用倍率は昨年8月以来の3.0倍水準となっています。

 相場が一段高へと向かう上では、この売り方が苦しくなり更なる買戻しを迫られることで、ショートスクイーズ(売り方の買戻し)が誘発されるかどうかが展開を大きく左右すると言っても過言ではありません。金融政策絡みで上放れした動きを継続させたいのは、4月に統一地方選挙を控える政権与党にとっても重要視されるはずです。国民に支持を訴える上で政府与党は物価高対策として5兆円規模での財政出動を講じると報じられています。
自民世耕氏、物価高対策で17日までに与党案-最大5兆円規模(2023/3/5)

 政策期待で株価を押し上げようとするのは昨年の同時期と全く同じ構図で、昨年は日経平均25,000円付近から28,000円台に急浮上させることに成功しましたが、今回は果たしてどうなることでしょうか。信用需給の水準からみても昨年8月の29,000円レベルまで踏み上げ相場を演出することは十分可能かと思われますが、一方でバリュエーションはEPS(1株当たり利益)が切り下がっているためにPERの割高感が上値を抑える要因となります。

 日経平均が上値を試すにはグロース株の好不調が鍵を握るのは言わずもがなですが、ファンダメンタルの観点で割高感を払拭するためにはむしろ、値上げの価格転嫁で収益力向上が期待されるバリュー株の躍進こそが重要になってくると言えるでしょう。

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