【2/28日本市場の確認ポイント】
日経平均 27445.56(+0.08%)[27,400~27,585]
TOPIX 1993.28(+0.03%)[1,990~2,001]
マザーズ 748.68(+1.69%)[739~752]
値上がりセクターTOP5
1.不動産(+1.19%)
2.サービス(+0.99%)
3.精密機器(+0.65%)
4.情報・通信(+0.40%)
5.小売(+0.38%)
値下がりセクターTOP5
1.海運(▲2.74%)
2.鉄鋼(▲2.34%)
3.鉱業(▲0.94%)
4.証券・商品先物(▲0.88%)
5.非鉄金属(▲0.87%)
日本株は月末の指数リバランスに伴う特殊要因もあり、最近のトレンドであった低PBR銘柄の多くに売り圧力がかかり指数の上値を抑えました。日経平均はじめ株式3指数はプラスを確保したものの、海運株や鉄鋼株に売りが強まり、利益確定の動きが加速しました。同じく証券株や建設株なども売られてバリュー株の調整ムードが色濃くなっています。
ただ、米金利上昇の一服からグロース株やマザーズ銘柄などには押し目買いの動きも見られた他、不動産や情報・通信、サービスなど内需系がその分奮起するなどして投資家の物色意欲が怯んだ様子はありません。もっとも、ここ1ヶ月超にわたり強保合いを続けてきた中での循環物色では変わる代わる強気セクターが掘り起こされていますので、短中期スパンでは投資家の資金も回転が効いている状況と言えます。
日経平均が27,000円の節目を死守しながらTOPIXは2,000ptの厚い壁が立ちはだかっている状況です。海外勢による日経売りのTOPIX買いが相場膠着感を演出する一方、個別株では新高値銘柄が連日で3ケタを記録して昨年11月末以来の堅調さも窺えます。値がさのファーストリテイリング(9983)などが崩れて指数の均衡が破られた場合、それまで値持ちが良かった銘柄にまで波及してくるかどうかがポイントになってきそうです。
【米国株概況】
調整進む中でリスクマネーは株式・債券の伝統的資産を敬遠、逃避場所ではなく投機対象に選ばれる安全資産
NYダウ 32656.70(▲0.71%)[32,636~32,873]
S&P500 3970.15(▲0.30%)[3,968~3,997]
NASDAQ 11455.54(▲0.10%)[11,435~11,548]
ダウ輸送株 14722.7(▲0.69%)[14,715~14,895]
半導体SOX 2958.4(+0.24%)[2,937~2,998]
日経平均先物(CME) 27,425(▲0.16%)[27,375~27,580]
ドル/円 135.74~136.93(高値151.93:10/21、安値127.46:1/3)
日10年債利回り 0.497%(高値0.600%:1/12、安値0.131%:3/6)
米10年債利回り 3.940%(高値4.338%:10/21、安値1.668%:3/7)
WTI原油 76.69(高値123.68:6/14、安値70.25:12/12)
金先物 1833.00(高値2,085:3/8、安値1,622:9/28)
銅先物 4.0125(高値5.0395:3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)20.70(高値37.79:2/24)
SKEW指数 120.01(安値110.34:11/3)
Fear&Greed指数 59(GREED:貪欲)
High Yield Bond (HYG)74.53(安値70.30:10/13)
米国市場は前回着目したのと同様に米金利上昇が重しとなり主要株式3指数はそろって反落、欧州で仏CPIを確認して再びインフレ高進懸念が高まったことや米消費者信頼感指数の予想外の低下を受けて売り圧力が強まりました。米債券市場では年内の米FRB利下げ期待が後退し金利上昇、株式市場でも再び売りポジションが増加しています。
やや難しい話になりますが、ただ最も注目すべきはキャッシュ及び短期債などの資金需要が急増している点です。前回着目した米2年債利回りがさらに一段高となってきたことで、リスクマネーが株式・債券市場それぞれからノーリスクかつ高利回りの短期証券にこぞって群がっています。米FRBの利上げ見通しが一段と引き上げられる観測が広がる中で、短期債に資金集中が起これば結局はボラティリティが高まり安全資産では無くなってしまうわけですが、伝統的なリスク資産をヘッジして対応といった動きになっています。
◆米短期証券ETFへの資金流入膨らむ-安全性とリターン兼備で需要(2023/2/28)
◆「キャッシュ」の利回り、60/40戦略を上回る-2001年以来初(2023/3/1)
他方で、金利上昇は欧米共通のトレンドになっているものの、米10年債利回りが4.0%に度々接近しながらこれを上回って一気に急上昇といったパニックにはなる気配はなく、VIXなどのボラ売りも続いて米市場は比較的落ち着いているとの見方もできます。株式、債券市場から資金流出すれば流動性がその分失われますが、金融当局がリバースレポで資金供給しながらこれを補完する形となっています。
こうした緊急事対応が続けられている間は市場に大きな混乱が生じることにはなりづらいと言えますが、裏を返せばこれが機能しなくなると市場を無理矢理下支えすることが難しくなります。短期金利の上昇傾向が今後も続くようですと、米FRBの準備預金に対する金利だけでなくリバースレポの金利も上昇し、いずれは逆ザヤとなって資金の巻き戻しを誘発するリスクを抱えていることになります。
中央銀行が短期資金供給をむしろ好条件で行う措置は、なにも米国市場に限った話ではなく日本や欧州などでも行われています。金融当局が投機抑制を訴える一方で、自ら行っている緊急事対応が投資家を短期取引中心の投機ポジションに傾倒しやすくなるように追い込んでいるとも言えます。ある意味、投資家の運用先を狭めてチキンレースに参加させているのは中央銀行自身と言えますが、結局ツケを払わされるのは投資家ですので、自身のリスク許容度に合わせたポジションに調整して取り組む必要があると言えるでしょう。
【日本株投資戦略】
日本市場特有の調整要因を抱えつつも下値は底堅い予想、値がさ株が振り回す動きに惑わされないことが重要に
日本株は月末月初のファンドリバランスをこなしながら上昇期待が高まってくるかが注目です。かれこれ1か月超にわたり上値は抑制的ながらも下値も底堅い、いわゆる保ち合い相場を続けた日経平均ですが、調整として大きな値幅を伴った下げは無く、その分を日柄で調整できるのであれば需給面も整理されてきます。
米国株はS&P500やナスダックが200日移動平均線まで調整したところで下げ渋っていますので、ここから切り返してくるのか、そのまま割り込んで下値模索に向かうのかを見極めたいところでしょう。その点、日本株はとくに日経平均が直近で一度この200日線を割っていますので、3月末に向けて日経平均採用銘柄の入れ替えに伴う特殊な需給要因が発生するのとあわせて注意を要する場面です。
◆日経平均の採用銘柄に異変?春は消費セクターから抜擢か -株価指数の入れ替えに要注意-(2022/12/30)
◆春の日経平均入れ替え:国内大手証券はOLC、JAL、ルネサスの新規採用を予想(2023/2/2)
今春から日経平均採用銘柄の定期見直しの機会が増えるとあってやはり新規採用候補、除外候補銘柄の動向にも注目ですが、それによって各銘柄の構成割合がどの程度変化してくるかがポイントになります。とくにバリュー株は日経平均のみなし値が小さい銘柄が多くを占めており、指数インパクトに乏しい面があります。それがTOPIXとのパフォーマンスに大きな開きが生じることとなっています。
日経平均と比較するとTOPIXは、この200日移動平均線に対するプラス乖離である程度貯金がありますので、調整地合いとなった場合でもこれがサポートとして機能すれば下値は限定的で済むと言えるかと思います。よって、仮に市場の需給に変化をもたらす要因として騒がれている日本郵政のゆうちょ銀行株大量売出しにより市場資金が吸い上げられた時の調整圧力が生じた際、日経平均よりもTOPIXのテクニカルサポートラインが機能するかがポイントになってくるものと考えます。
年度末の配当狙いの買いも権利付き最終売買日を前に再度盛り上がってくることと思いますので、3月中旬過ぎまでを我慢できればバリュー株の調整も一巡して、高配当利回り株などでも良い押し目買いの機会に恵まれるかもしれません。ひとまず代表的な海運株の調整がどこまで進むかを見守りつつ、グロース株ではファーストリテイリング(9983)やレーザーテック(6920)など値がさ株の動向にも目配せしておくとよいでしょう。
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