【2/10日本市場の確認ポイント】
日経平均 27670.98(+0.31%)[27,609~27,814]
TOPIX 1986.96(+0.10%)[1,980~1,999]
マザーズ 780.79(▲1.71%)[779~789]
値上がりセクターTOP5
1.鉄鋼(+3.40%)
2.保険(+1.58%)
3.その他製品(+1.44%)
4.銀行(+1.22%)
5.機械(+1.02%)
値下がりセクターTOP5
1.石油・石炭(▲2.26%)
2.不動産(▲1.54%)
3.空運(▲1.25%)
4.鉱業(▲0.95%)
5.サービス(▲0.82%)
日本株は朝方に2月限オプションSQ算出があり27,779円で清算されました。その後も上値を試す動きで27,800円台に乗せて年初来高値を窺いましたが、為替円安も伸びきれずTOPIXも2,000ptにあと一歩のところまで迫りながら失速しました。
東証プライムの騰落銘柄数は値上がり808/値下がり946と、取引中盤以降の失速が響きました。東京エレクトロン(8035)が業績上方修正と増配、株式分割といった材料好感で大幅高し、単独で日経平均を70円近く押し上げましたが、日経平均は86円高と冴えず。日本製鉄(5401)や神戸製鋼所(5406)など鉄鋼株の躍進も目立ちましたが寄与度が小さく、その一方でグロース株の一角や石油株、不動産株などの下落が足を引っ張りました。
前日に年初来高値を更新したマザーズ銘柄も売りに押され、下値切り上げ継続も週足では陰転と今ひとつの状況。決算ミスが目立った銘柄の2ケタ下落や直近上昇が際立っていたテーマ株の一角が大きく値崩れするなど投資家心理に水を差すような動きが週末の手仕舞い売りを加速させたと言えそうです。
【米国株概況】
インフレ懸念の再燃で米金利上昇か!?株売り・債券売りの連動は市場のリスク分散機能マヒにつながる注意シグナル
NYダウ 33869.27(+0.50%)[33,591~33,897]
S&P500 4090.46(+0.22%)[4,060~4,094]
NASDAQ 11718.12(▲0.61%)[11,630~11,775]
ダウ輸送株 15042.9(▲0.17%)[14,945~15,087]
半導体SOX 3011.2(▲1.58%)[2,979~3,033]
日経平均先物(CME) 27,585(▲0.24%)[27,385~27,785]
ドル/円 129.82~131.88(高値151.93:10/21、安値127.46:1/3)
日10年債利回り 0.496%(高値0.600%:1/12、安値0.131%:3/6)
米10年債利回り 3.743%(高値4.338%:10/21、安値1.668%:3/7)
WTI原油 79.76(高値123.68:6/14、安値70.25:12/12)
金先物 1876.50(高値2,085:3/8、安値1,622:9/28)
銅先物 4.0152(高値5.0395:3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)20.53(高値37.79:2/24)
SKEW指数 120.88(安値110.34:11/3)
Fear&Greed指数 70(GREED:貪欲)
High Yield Bond (HYG)74.78(安値70.30:10/13)
米国市場は米金利上昇が重しとなってハイテクグロース株の一角が急落、足元で強く買われてきたテスラやエヌビディアの▲5%近い下落をはじめネットフリックスや中国株のアリババやバイドゥなども厳しい売り浴びせに遭いました。
米経済指標の2月ミシガン大1年先期待インフレ率速報値が前月の3.9%から4.2%に上昇したことで、パウエル米FRB議長が講演で繰り返し強調していたディスインフレ期待が後退、市場が楽観視する利上げ政策の早期停止期待にも暗雲が立ち込めてきました。
株売り・債券売りでややリスク回避姿勢が強まりましたが、株式市場では原油高を好感した石油株のほか公益、ヘルスケア、生活必需品などのディフェンシブ株が買われるなど資金シフトの動きで対処。NYダウやS&P500は反発し、必要以上に警戒感が高まることはありませんでした。
ただし、週間では主要株式3指数がそろって反落、ナスダックは年初の快進撃から大きめの下落となったことで、前のめりだった投資家心理も落ち着きを取り戻した格好。米雇用統計の発表以来少しずつ上昇してきたVIX指数は20pt台に到達、F&G指数も明らかにまだ楽観状態ですが70ptまで低下しています。
先週まで急ピッチな上昇を続けてきましたので、しばらくは価格と時間で調整をはさむ必要があるものと思われますが、焦点はF&G指数でEXTREME GREED(極端な貪欲)まで達した投資家の楽観姿勢が、今度は反対に極端に悲観し過ぎる状況にまで振れ幅が大きくなるかどうかでしょう。
比較的冷静に調整してくれれば、今後の米CPI(消費者物価指数)や米小売売上高、米PCE価格指数といったインフレ指標や米個人消費関連の指標も無難に消化してくれるものと期待できますが、これらも過度に敏感な反応を示してしまうようだとインフレ懸念の再燃や米経済のリセッションだと大騒ぎする光景が広がります。
こんな時に債券市場は冷静に受け止めて右往左往しないのが通常の相場ですが、今では株式市場よりも債券市場の方がパニックに陥る場面が散見され、2つの市場でリスクオン時とリスクオフ時の動きが連動する機会が明らかに増えています。こうなってしまうとリスク分散の市場機能が働かず、いざという時の資金退避場所が無くなってしまいますので、パニック売りが連鎖的に起こりやすくなるため注意が必要です。
しばらくの間は過度に行き過ぎた楽観の修正に値幅で調整するか、時間で調整するかといったプロセスが必要になるかと思われますので、市場が落ち着いてマクロ経済指標の続報や地政学リスクなどを消化してくれるかリスク指標などを常時監視しておくようにしましょう。
【日本株投資戦略】
日銀サプライズ人事も事前リーク報道により混乱回避、リスクイベント前に自律調整も
日本株は前週末の引け後にサプライズニュースが流れ、黒田日銀総裁の後任として元日銀審議委員の植田和男氏の起用が決定したと一斉に報じられました。事前観測では有力な候補者リストには全く入っていなかったサプライズ人事で、これとあわせて副総裁に内田真一理事、氷見野良三前金融庁長官が選ばれたと詳細に伝えられています。
◆植田和男氏、日銀新総裁へ(2023/2/11)
◆チーム植田はバランス重視の手堅い布陣、日銀緩和修正は漸進的か(2023/2/11)
これに真っ先に反応を見せたのはやはり為替市場で、速報が流れた時点では一時円高方向に大きく振れてドル円は130円割れ、ユーロ円は140円割れの場面がありましたが、現在では発表前の水準に戻して推移しています。これは日銀の政策修正路線に対する警戒感を示すものであると同時に、ただそうはいっても拙速に進むわけではなく時間をかけて軌道修正が図られるといった安心感も広がっての動きと推察されます。
日銀人事に関しては、今週のスケジュールで多くのイベントが重なることと相まってリスク要因でありましたが、事前のリーク報道のおかげで市場関係者が植田新日銀総裁の誕生を週末に時間をかけて調べられる余裕が持て、大きな混乱につながらずに済んだというポジティブな面があります。
これで市場は引き続きリスクイベント前の様子見ムードが継続、過度な動揺は抑えられるものと思われる一方で、企業決算も一巡してきますので材料不足の手詰まり感が広がりやすくなるでしょう。日銀新人事への期待をうけて銀行株などが素直に上昇、指数は海外株式などと一緒に自律調整の局面に入ってくると推察されますので、しばらくは下値買いができる水準まで降りてくるのを待ち構えておく相場でしょう。
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