【2/2日本市場の確認ポイント】
日経平均 27402.05(+0.20%)[27,338~27,472]
TOPIX   1965.17(▲0.36%)[1,961~1,975]
マザーズ 785.27(+0.27%)[783~792]

値上がりセクターTOP5
1.電気機器(+1.17%)
2.証券・商品先物(+0.57%)
3.精密機器(+0.31%)
4.機械(+0.13%)
5.情報・通信(+0.09%)

値下がりセクターTOP5
1.保険(▲2.23%)
2.石油・石炭(▲1.66%)
3.鉱業(▲1.66%)
4.空運(▲1.58%)
5.卸売(▲1.51%)

 日本株は米FOMC通過し米国株高となった流れも影響は限定的で一進一退の動きを継続。というよりむしろ東証プライムの騰落銘柄数は値上がり524/値下がり1242で値下がり銘柄が優勢となり、米国のナスダックや半導体SOXの大幅高に連動した東京エレクトロン(8035)やアドバンテスト(6857)などの大幅高に支えられました。

 米FOMC声明をうけて米長期金利が低下、これを嫌気したメガバンク株が軟調、また為替がやはり円高に振れたことが重しとなり自動車株が軒並み売られる展開。時価総額の大きいこれらの反落が痛手となりTOPIXは下落。その他にも為替差益の恩恵が剥落した決算銘柄が弱く、住友化学(4005)が業績下方修正を発表で急落、近親の銘柄にも連想売りが波及する格好となりました。さらには好決算を発表しながらも双日(2768)が急落しており、商社株全般にも連想売りが広がりました。

 米国のグロース株が一段高となったことで期待されたマザーズほか、中小型のグロース株においても好影響は限定的で反応の鈍さが気になります。材料物色で局所的には大きく買われる銘柄も散見されるものの、新興市場全体の盛り上がりには欠けており、決算前ということもありポジション整理で上値が重くなっている様子も感じられます。

【米国株概況】
米FOMC通過でリスクオンが一段と強まる展開、リスク指標がさらなる楽観水準

NYダウ 34053.94(▲0.11%)[33,814~34,145]
S&P500 4179.76(+1.47%)[4,141~4,195]
NASDAQ 12200.82(+3.25%)[12,024~12,269]
ダウ輸送株 15640.7(+2.91%)[15,162~15,888]
半導体SOX 3141.8(+2.22%)[3,088~3,168]
日経平均先物(CME) 27,530(+0.51%)[27,320~27,595]
ドル/円 128.09~129.11(高値151.93:10/21、安値127.46:1/3)
日10年債利回り 0.492%(高値0.600%:1/12、安値0.131%:3/6)
米10年債利回り 3.402%(高値4.338%:10/21、安値1.668%:3/7)
WTI原油 75.91(高値123.68:6/14、安値70.25:12/12)
金先物 1926.50(高値2,085:3/8、安値1,622:9/28)
銅先物 4.0875(高値5.0395:3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)17.87(高値37.79:2/24)
SKEW指数 123.88(安値110.34:11/3)
Fear&Greed指数 72(GREED:貪欲)
High Yield Bond (HYG)77.20(安値70.30:10/13)

 米国株は米FOMC前に上昇一服感が出ていましたがイベント通過で再動意。パウエル米FRB議長は継続的な利上げについて言及したものの、市場を諫めるようなタカ派発言は抑えられたことで、市場はインフレ鈍化=利上げ停止が近いとの期待を強めてリスクオンとなりました。

 とくに足元の決算発表と相まってハイテク株に大きく上昇するものが続出、ナスダックは1日に+2%、2日にも+3%超の急反発となっており、また、前回も取り上げた先行指標とされるダウ輸送株も1日に+3.7%、2日に+2.9%と急伸、半導体SOXは1日に+5.2%、2日に+2.2%とそれぞれ大きく上値を伸ばしています。

 他方でNYダウは反応が鈍い状況が続き34,000ドル付近からなかなか上放れすることができないでいます。ざっくり言いますと、直近の米製造業の指標で景況感悪化が鮮明となる中、決算発表でも見通し悪化で好感されないオールドエコノミー株に対し、メガテックをはじめとする大手ITは大規模な人員整理を断行しており、これが市場にとっては好感材料となっています。

 とはいえ、昨晩の決算発表が相次いだメガテックに象徴されるようにアップル、アルファベット、アマゾンなどいずれも売上高の伸びが鈍化、利益水準も市場予想を下回る結果となっています。今期は人員整理に伴う利益率向上を見込む形で株価は上昇していると言え、その一方で成長期待としては萎んでしまうため市場としては2021年以前のような高PERを容認できなくなってきます。企業成長ステージから言えば成長期から成熟期に移行したとみてよいでしょう。

 昨年の米FRBによる積極的な金融引き締めでバリュエーション調整が一巡した米国ハイテク株を中心にみますと、足元の金融政策で年内の利下げもあり得ると期待する市場の楽観により株価がどこまで上値を伸ばせるかは非常に重要です。これが2023年相場における凡その天井圏を定め、今後の米FRBが利下げを否定する局面で下値を探り、それらを基準に往来を繰り返す可能性が高いからです。いわばディスインフレ環境を前提にした場合の相場はデフレ下での日本株のようなの軌道を描くイメージに近いかもしれません。

 直近でリスク指標はVIX指数がとうとう18ptを割り込み2021年末の米国株が史上最高値を記録した水準まで低下、Fear&Greed指数も72とかなりの楽観姿勢を示しています。また主流メディアでも報じられているのがハイ・イールド債が強く買われている現象ですが、これらは米金融政策が引き締めから次の緩和に向かっていることをすでに織り込み始めたというくらい勇み足と言えます。つまり「不況期の株高」を象徴する動きなわけですが、ただ米FRBは声明でも金融引き締めを継続する姿勢を変えるつもりは無さそうですので、これで市場が強気転換したという見方よりあくまでも期待先行の範囲とみるべきでしょう。

【日本株投資戦略】
目先の企業決算と残り10日ほどに迫ってきた日銀総裁後任人事、欧米株の過度な楽観を軽視できない日本株の独自要因

 米国株のリスクオンに追従できない日本株ですが、昨年からといいますか昨秋から一段と米国株や中国株とは切り離されての動きが鮮明になっていますので当然といえば当然です。足元の米FOMC通過で為替が再び円高に振れてきましたので上値の重さが意識されるのは仕方ないと言えるでしょう。

 以前より円高環境を前提にした銘柄選別の重要性について述べてきましたが、やはりソニー(6758)などはそれ以降も順調に戻りを試す動きが継続できています。他にも想定為替レートを110円台あるいは130円台以下で据え置きしてきた機械株や素材株なども為替動向関係なく見直し買いが断続的に入ってきています。

 足元では日銀の黒田総裁後任人事に対して注目が高まっていますので、日本株はそれで大きく動く可能性があると言えるでしょう。ただ、その際にも日銀の金融政策は出口戦略の議論になりますので、どちらかと言えば為替を円高深耕させる要因になり、日本株の重しとして立ちはだかることになります。

 ただ昨日のニュースでは、黒田総裁の後任候補の有力者である中曽氏がAPECビジネス諮問委員会の議長に就任したとされ、彼は同じく有力者の一人である雨宮氏と比べてタカ派スタンスで知られていますので、中曽氏は総裁候補から外れているのではないかとの憶測も飛び交っている状況です。
中曽前日銀副総裁、APEC諮問委で金融作業部会議長を担う(2023/2/2)

 もしこれで雨宮氏が有力候補筆頭として浮上するのであれば、為替は一旦円安方向に振れて日本株の一段高がみられる可能性を残しつつ、そうは言っても日銀政策の大きな方向性はやはり変わらないために上昇は一時的なものに止まるでしょう。

 また、記事内では中曽氏が日銀総裁に指名を受けた場合でも兼任が可能との見方も書かれており、次期日銀総裁人事をめぐってはまだ流動的と言えます。ただいずれにせよ2月半ばにはこれが決定してくるスケジュールであるほか、このタイミングでこうした記事が出てくることは今の市場の流れが変化することを示唆するものと言えるかと思います。

 直近は企業決算の反応で個別株ごとの明暗が分かれる状況にあり、世界景気の中国経済再開に伴う悪化懸念後退と為替の円高深耕による期末業績見通しの下方修正圧力とで綱引きしていると言えますが、そこで世界同時株高の恩恵が少ない以上、相場の楽観ムードが剥落してきた場合の貯金が足りないことも事実です。

 仮に欧米株がリスクオフに転じてきた場合、いかに日本株が米国株とは切り離されているとは言え、それなりの調整圧力がかかることは避けられませんのでやはり注意を要する場面でしょう。日銀総裁後任人事まであと10日ほど残されているようですが、日程が近づくにしたがって警戒感を強めておくべきかと思われます。

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