【1/27日本市場の確認ポイント】
日経平均 27382.56(+0.07%)[27,326~27,452]
TOPIX 1982.66(+0.22%)[1,976~1,985]
マザーズ 770.96(▲0.81%)[770~782]
値上がりセクターTOP5
1.銀行(+2.51%)
2.鉄鋼(+1.08%)
3.電気・ガス(+0.89%)
4.保険(+0.83%)
5.化学(+0.82%)
値下がりセクターTOP5
1.海運(▲3.62%)
2.精密機器(▲1.33%)
3.医薬品(▲0.99%)
4.鉱業(▲0.76%)
5.食料品(▲0.33%)
日本株は決算絡みの材料物色で高安まちまち、東証プライムの騰落銘柄数は値上がり916/値下がり822とほぼ拮抗しつつ、好決算の信越化学(4063)やすでに決算発表済みの安川電機(6506)、日本電産(6594)などがしっかり買われたのが好印象でした。
決算銘柄の物色とは別に、総務省が発表した1月東京都区部の消費者物価指数が4.3%上昇するなどインフレ高進をうけた国内金利の先高観を背景に銀行株が上昇、メガバンクはじめ地銀株にも買い資金が向かいました。一方で、証券会社による投資判断引き下げにより海運大手が大幅安、さらに東邦チタニウム(5727)、大阪チタニウム(5726)がそろって大幅安と強い売りに押されています。
決算ラリーに対する期待感から鉄鋼株なども上昇しましたが、東邦チタニウムが大きく売られたところをみますと本業の営業利益が好調でも株価に直接影響が大きい経常利益が凹むと嫌気売りが出やすい側面も垣間見えました。全体では方向感を見出しにくいものの個別株での値幅は上下ともに大きく出ており、それなりに決算プレイに対する警戒感を持って臨む必要があると言えるでしょう。
【米国株概況】
テスラ株のショートスクイーズがナスダック押し上げて昨年末高値を更新、注目の米FOMCと今後の実質金利が左右する株価のゆくえ
NYダウ 33978.08(+0.08%)[33,830~34,164]
S&P500 4070.56(+0.25%)[4,048~4,094]
NASDAQ 11621.71(+0.95%)[11,470~11,691]
ダウ輸送株 14483.3(+1.34%)[14,265~14,583]
半導体SOX 2945.3(▲0.72%)[2,905~2,971]
日経平均先物(CME) 27,415(+0.20%)[27,285~27,475]
ドル/円 129.51~130.28(高値151.93:10/21、安値127.46:1/3)
日10年債利回り 0.480%(高値0.600%:1/12、安値0.131%:3/6)
米10年債利回り 3.507%(高値4.338%:10/21、安値1.668%:3/7)
WTI原油 79.38(高値123.68:6/14、安値70.25:12/12)
金先物 1928.00(高値2,085:3/8、安値1,622:9/28)
銅先物 4.2300(高値5.0395:3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)18.51(高値37.79:2/24)
SKEW指数 121.97(安値110.34:11/3)
Fear&Greed指数 69(GREED:貪欲)
High Yield Bond (HYG)76.16(安値70.30:10/13)
米国市場も企業決算によって明暗が大きく分かれており、テスラが+11%と大幅続伸したのに対して半導体株の主力どころであるインテルが▲6.4%、石油株の主力シェブロンも▲4.4%と大幅安になりました。米FRBが注目するインフレ指標の12月米PCE価格指数が市場予想通りに鈍化したことが支援材料となったものの、今週も米FOMCはじめ米雇用統計や製造業、非製造業景気指数などの経済指標発表が相次ぎ、取引終盤にはまとまった売り物が出ました。
NYダウは小幅ながらに6日続伸、ナスダックはテスラ大幅高やアマゾン、メタも+3%超上昇するなど上値を伸ばしましたが、主力ハイテク株の決算は今週がヤマ場を迎えます。ナスダックは昨年12月の高値を更新して米国本来のハイテク株を中心とした株高期待が高まっていますが、テスラは先週だけで3割近くもの上昇を見せています。決算で素直に買われたというよりもこれまで売られてきた分、売り方の買戻しによるショートスクイーズが発生しての急伸という見方をすべきでしょう。
米国市場は米FRBの利上げ鈍化期待がそのまま株価の上昇トレンド転換期待を想起させるものとなっています。今週の米FOMCでは前回よりさらに利上げ幅が縮小されるとの見方に加えて3月FOMCでの利上げを最後に打ち止めとなる観測も株高を支援しています。これらは全てパウエル米FRB議長のガイダンス次第と言え、もし市場が期待する通りの内容であれば、米国株はテスラのショートスクイーズに象徴されるように売り方が買戻しを迫られることによって一段高もあり得るでしょう。
しかし、パウエル米FRB議長が市場を牽制してタカ派スタンスを堅持、3月の利上げ方針に対する言及を避ければ市場観測は期待先行し過ぎたという面が強調されて、上値を阻まれることに留意しておく必要があります。
足元で米国の長期金利は3.5%付近でなお政策金利を下回る水準で推移しており、市場では表面金利から将来の期待インフレ率を差し引いた実質金利の低下が意識されれば株高につながりやすくなる一方、期待インフレ率が鈍化する以上、今度は実質金利の上昇が株価の重しとなりやすくなってきます。
つまり、これまではインフレ懸念に対し長期金利が低下する局面でハイテク株中心の買戻し相場となりやすかった面がありますが、政策金利が一定の水準で高止まりした場合では、今後の期待インフレ率が萎んでいくにしたがって株高にも一定の上限が設けられるということにもあわせて留意しておく必要が出てきます。
その辺りは米FRBが市場に配慮しながら米国株の軌道を出来るだけ安定させながら持続的な上昇を実現できるように腐心していくはずですが、まだ政策金利のピークがどこに設定されるか、つまり利上げ打ち止め時期が明確にならない間は米国株の本格的な上昇トレンド転換は期待しづらいでしょう。したがって、米国株は前回指摘した為替におけるドル安政策への転換および米FRBの利上げ政策を見通せるようになった上での株高というまでにはまだ時間を要すると言えるかと思います。
【日本株投資戦略】
日本株の上昇一服感で必要とされる追加材料とは?、まさにここから問われる真のインフレ対応力
日本株は先週初めに大幅高した後は一進一退の膠着を続け、日経平均は27,500円付近での上値の重さが意識されています。ヘッジファンドなどのショートカバー(売り方の買戻し)が一巡したことにより、積極果敢に上値を買っていく投資主体が出てこないともう一段高というのは期待しづらいでしょう。
先週の解説でみてきましたように上値追いには慎重な日本株ですが、日経27,000円で足場を固めている間にヘッジファンドのような短期筋ではなく買い主体のファンド勢なども利益確定売りを行っている状況とみられます。今後はこの利益確定売りが一巡した後に、改めて長期目線のファンドや個人投資家などの買い主体である投資家が先行きに対する強気な見方を示し、上値を買い始めてくるようになることが重要です。
その点で株価を評価するポイントになるのは企業の1株あたり利益の向上と、配当の増配や自社株買いなどの資本政策、さらには来期の利益成長を期待できるだけの追加材料が必要となります。日本株全体でみた場合、日経平均のPERは16倍弱ですでに過去平均での上値メドとなってきた水準にありますし、ドル建て日経平均ではすでに昨年12月高値の水準を上回っていますので、割安かと言われれば海外勢にとってそれほど魅力的なわけではありません。
ですからバリュエーションでの優位性はすでに薄れている以上、日本株を実質的に動かすとされる海外勢が積極的に買い上がれるだけの理由を見出すには、将来の成長性を評価してもらうだけの材料を提供することが求められていることになります。
分かりやすいのが利益成長で、誰も文句のつけようがない程に業績の上方修正を発表したり、積極的に自社株買いなどを行い1株あたりの希少価値を高めることによって、将来の株価上昇を期待できるきっかけを示せば株価も素直に上昇します。今回の信越化学(4063)などはまさに上方修正、増配、自社株買いに株式分割まで投資主体の属性を問わず、多くの投資家が納得して投資できるだけの材料を揃えた100点満点の回答を提供したと言えるでしょう。
ただ、全ての日本企業がこうした満額回答を提出するのは至難の業と言えますが、業績向上につなげる大きなポイントが製品、サービス問わずインフレ経済を背景に価格転嫁できるかどうかにかかっています。日本企業にはただでさえ昨年の円安による輸入物価高騰をはじめエネルギー価格、人件費、金利上昇圧力など今期だけでなく来期以降もコスト面での上昇圧力が一段と鮮明になる中で、これらが業績圧迫要因になることは目に見えています。
しかし、それ以上に製品やサービスの付加価値を向上させて、それを最終消費者に価格転嫁させて力強い日本経済を回していく姿勢を示すことで、結果的には賃金上昇や人材の流動化、業界再編などを促進して極端なデフレ経済からの脱却とインフレ順応型の経済構造への転換が図られる流れを生み出します。
回りくどいようですが、海外勢を日本株に回帰する上では経済の正常化、そして日本企業が健全に成長できる環境であることが絶対的な条件と言えます。その点で、多くの企業の足枷となっているのはデフレマインド脱却とともに価格転嫁による売上アップ、そして政治が足止めしてきたコロナ規制や原発規制の解放、さらには円安誘導政策の転換によって輸入コストを引き下げる取り組みなどをすることによって、日本企業は稼げる企業へと変貌していきます。
つまり、日本企業にとって現在は利益構造転換の過渡期にあり、投資家の間で燻る企業業績への懸念を払拭して期待に変えるのは積極的な値上げを推進できる企業かどうか、価格上昇しても数量が落ちずに消費者に受け入れてもらえるだけの付加価値を提供できている企業家どうかというところが問われているのです。そうした観点から昨年にもインフレ初期の頃より値上げを発表している企業を狙うべきと指摘してまいりましたが、足元においてもすでに来年度の値上げを発表するような企業を選別していくことが必要最低限の投資条件となってくると言えるでしょう。
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