【5/10日本市場の確認ポイント】
日経平均 26167.10(▲0.58%)[25,773~26,246]
TOPIX   1862.38(▲0.85%)[1,840~1,867]
マザーズ 654.52(+0.31%)[634~655]

値上がりセクターTOP5
1.金属製品(+1.54%)
2.電気・ガス(+1.11%)
3.ガラス・土石(+0.60%)
4.紙・パルプ(+0.59%)
5.小売(+0.59%)

値下がりセクターTOP5
1.鉱業(▲7.58%)
2.卸売(▲3.96%)
3.海運(▲3.03%)
4.石油・石炭(▲2.63%)
5.非鉄金属(▲2.57)

10日の日本市場は前日の米国株大幅安をうけて日経平均は一時26,000円を割り込んで3/16以来の安値をつけましたが、午前中に売り物が一巡して11時過ぎには大きく持ち直す動きとなりました。前週末の終値27,003円からわずか2日間で1,000円近い値幅を伴った急落を見せたことから下値不安が拡大しており、日経VIも1/27以来の30ポイント台をつけました(高値33は今年最高)。

 投資家心理の悪化が鮮明となる中、値下がり上位は原油市場の大幅反落をうけた石油資源株、商社、海運などが占めており、これまでのリスクオフ時に資金の退避場所となっていたエネルギー株やバリュー株も撃沈してややリスクオフ商状となっています。かろうじて公益・ディフェンシブ系の銘柄が唯一資金の退避場所として残されておりますが、それまで資金を集めていた石油資源や金属資源の一角は大幅反落となったことで全体に売り圧力が波及した形となっています。

 また、米国市場における金利高止まりでナスダックの安値更新が目立つ中、グロース系は容赦ない売り圧力に晒されています。マザーズ市場はもとより、日経平均構成銘柄の中でもソニー(6758)や任天堂(7974)、バンダイナムコ(7832)、リクルート(6098)などが次々に新安値をつけており、投資家の下値不安を増長させる動きとなっています。相対的に見てバリュー株優位の状況が継続していますが、これもあくまで消去法的にといったところで、決算発表が相次ぐ中で撃沈しているものも多く見受けられます。

【米国株概況】
S&P500の4000ポイント付近で米株売りは踊り場を形成、次に明確なサポート割れが生じた時は暴落商状を警戒

NYダウ 32160.74(▲0.26%)[31,887~32,752]【安値更新】
S&P500 4001.05(+0.25%)[3,958~4,068]【安値更新】
NASDAQ 11737.67(+0.98%)[11,566~11,944]【安値更新】
ダウ輸送株 14462.3(▲0.06%)[14,247~14,746]【安値更新】
半導体SOX 2900.1(+2.51%)[2,835~2,948]【安値更新】
日経平均先物(CME) 26,110(▲0.61%)[25,770~26,330]
ドル/円 129.80~130.56
米10年債利回り 2.989%(高値3.203%:5/9、安値1.668%:3/7)【高値更新】
WTI原油 99.40(高値130.50:3/7、安値93.53:3/15)
金先物 1837.60(高値2,078:3/8)
銅先物 4.1598(高値5.0395:3/7、安値4.1245:5/9)【安値更新】
恐怖指数(VIX)32.99(高値37.79:2/24)
Fear&Greed指数 22(EXTREME FEAR:極めて強い恐怖)
High Yield Bond (HYG)77.21(安値76.73:5/9)【安値更新】

 10日の米国市場は足元のドル相場に上昇一服感が出始めた中で、株式市場でも11日の米消費者物価指数(CPI)を注視しようと様子見ムードが台頭し、直近における下落基調にも一定の歯止めがかかって踊り場を形成しました。とくに米国の物価動向は米FRBの金融政策運営の手がかりとして重要との見方が強まる中、連銀の当局メンバー発言では引き続きインフレ抑制、利上げペース加速(75bp利上げ)の観測も浮上しており、かつ、ある時期からモーゲージ証券の売却も検討議題にあがり始めています。

 すでに弱気相場入りした米国株に対しては足元の急落をうけて買い場とするゴールドマン・サックスやJPモルガンが投資家に押し目買いを促すなどしていますが、市場内では上記CPI結果をうけて一時的なショートカバー(売り方の買い戻し)を誘発したとしても、反発ラリーはあくまでも一時的なもので長続きしないだろうとの見方が大勢を占めています。

◆1430兆円失った株式市場、買いの好機-ゴールドマンやJPモルガン
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-05-10/RBNVQTDWX2PS01?srnd=cojp-v2

 事実、足元での株価急落は投資家の一部で投げ売りを誘発しかねないレベルに達しており、リスク指標はFear&Greed指数がEXTREME FEAR:極めて強い恐怖を示すなど、過去の傾向からはこの水準で押し目買いしたポジションは報われやすい状況にあるとみることができます。ただし、金融当局の引き締め姿勢が強まる中では目先の反発もあくまで空売りの買い戻しが中心と考えると戻り幅も限定的とみるほかないと言えます。

 バイデン米大統領は株式市場の急落はプーチン露大統領の責任と言うばかりで具体的な施策は何ら講じる気配なく、米FRBに対して以前のトランプ大統領のように圧力をかけることもないことから、2018年の金融引き締め時期とは様相がだいぶ異なります。そればかりか、インフレ加速の要因ともされるウクライナ支援・対ロ制裁強化に前のめりな姿勢を示しながら第二次世界大戦中の武器貸与法を成立、復活させてウクライナの紛争をさらにエスカレートさせようと腐心しています。

 その一方、東アジアにおける対中包囲網で中国を締め上げる方針を示しながら、トランプ政権時代の対中関税の引き下げを検討してインフレ抑制に乗り出すとしており、軍事面・外交面で明らかに矛盾した政策を続けながら戦争経済を回すことに躍起になっています。よって米国経済は根本的な解決を棚上げされた状態となっており、今後も物価高と労働市場の悪化によるスタグフレーション懸念が横たわっている状況が続くとみられ、米国売り(米株安、米債安、米ドル安)は一旦落ち着きを見せたとしても次回6月FOMCが近づく頃には再開するものと考えられるでしょう。

【日本株投資戦略】
米国株売りが一旦収束して中間反騰入りの可能性、短期的な自律反発に妙味あり

 日本株は続落商状で市場全体の地盤沈下が懸念される中においてディフェンシブ株やごく一部の新興銘柄に見直し買いが入るなど、局所的な反発がみられました。米国株安に連れ安したグロース系銘柄も昨日は安値をつけたところから一旦持ち直すなどしており、短期間で売られ過ぎた分の揺り戻しが生じやすい状況になってきたと言えます。前回の【日本株投資戦略】でも述べたとおり、ここから反騰ラリーが起こっても不思議ではないですが、あくまで中長期の下落トレンドは健在で一時的な反発と割り切る姿勢が大事です。

 注意したいのは年初から度々警戒を促してきている中で保有株のポジションを減らしてこなかった投資家は足元での含み損が徐々に拡大しているであろうことで、こうした反騰ラリーが訪れた際に損失を穴埋めしようと余計にポジションを膨らませてしまいがちになることです。これまでの急反発の際に高値で売り捌いたり、逃げ遅れたりしたポジションに対して下手にナンピン買いをしても期待する水準まで戻りがみられなかった場合にはリスク量、つまり株数がより増えた状況で次の下落局面を体感することとなります。

 とくに2020年3月のコロナ・ショック以降に投資を始めたばかりの初心者であれば大規模な金融緩和によるボーナスステージの相場しか経験していないため、急落時の押し目買いが結果的に報われるという成功体験が上記のような投資行動に走らせがちです。上昇相場と下落相場で同じ投資スタンスを続けてしまうと、最終的にはこれまでの獲得利益を全て吹き飛ばしてしまうといったことが相場の世界では日常茶飯事です。したがって、昨年9月までに獲得した利益と直近までの半年強の損益を見比べて、超過利益が得られているのであれば目先の反発ラリーに参加し、反対に損失が膨らんでいるようであればポジションをできるだけ縮小することを検討するのが良いでしょう。

 また、今年に入ってからのインフレ相場で利益貢献してくれた戦争銘柄や資源関連株などは足元で利益確定売り、すなわち機関投資家の高値売り抜けが鮮明になっています。こうした銘柄の急落を見てようやく値ごろ感が出てきたと思って手を出す投資家が後を絶ちませんが、数ヶ月続いた相場の変調はチャンスではなく相場の潮目が変わっている証拠です。安易に押し目買いするのではなく、突発的な反発が生じた際には順張りで空売りを狙った方が理に敵っていると言えるでしょう。

 最後に、企業決算がピークを迎えています。昨晩の米国市場がCPI公表を前に様子見ムードが強まったことから、個別材料を中心に決算プレイが活発になりやすいと言えます。ただし、決算発表前後の値動きに関しては以前にも指摘したとおり、発表直後の1次反応と2次反応では異なる場合が多々あります。材料物色は3日〜7日で織り込まれることを認識した上で、短期的な値動きにだけ気を取られないように注意しましょう。

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