【3/10日本市場の確認ポイント】
日経平均 25690.40(+3.94%)[25,099~25,720]
TOPIX   1830.03(+4.04%)[1,786~1,831]
東証2部  6960.69(+2.05%)[6892~6,960]
JASDAQ  3498.65(+1.28%)[3,473~3,503]
マザーズ. 696.51(+4.01%)[683~704]

値上がりセクターTOP5
1.海運(+6.31%)
2.空運(+6.02%)
3.その他金融(+5.91%)
4.ガラス・土石(+5.88%)
5.化学(+5.62%)

値下がりセクターTOP5
1.なし
2.なし
3.なし
4.なし
5.なし

 10日の日本市場は欧米株の大幅上昇を受けて連れ高となり、日経平均の上げ幅は一時1,000円超となるなど文句なしの全面高商状でした。東証1部の騰落銘柄数は値上がり2140/値下がり30と圧倒的買い優勢で、33業種全てが値上がりしました。足元で乱高下の目立っていた原油高が一服し、ロシアによるウクライナ侵攻でセンチメント悪化が顕著だった欧米株に持ち直しの動きが見られたことから局面が一気に転換する動きとなりました。

 個別株の動向では米長期金利が上昇する中でもナスダックが上昇した動きを好感したグロース株の急反発が印象的で、信越化学(4063)、ソニー(6758)、リクルート(6098)など主要どころが大幅高、直近で大きく売られたところ程その分の反動が大きくなった形です。他に自動車株や半導体株など景気敏感株もグロース系・バリュー系問わず軒並み上昇、空運株・海運株も足元での急落から一気に戻りを試す動きを見せています。

 市場全体のボラティリティが大きくなっている為、大型株といえども小型株並みに乱高下する今の相場では方向感以上にポジション管理の重要性が増しています。売買代金も連日で大商いとなっていることから、値幅を伴った急騰急落は収益期待率も上昇する一方でリズムが合わなくなった途端に大きく資金を溶かすことにもつながりかねない相場です。昨日は日経平均・TOPIXともに新興市場のマザーズ並みに上昇して本日の3月メジャーSQを迎えることとなりましたが、このSQ通過後も高ボラティリティ環境が続くのかどうかに細心の注意を払うべきでしょう。

【米国株概況】
ウクライナ危機で加速したインフレ高進、金融政策の手段を極端に狭められたECBが緩和策終了の出口をより加速させた一方、事情が異なる欧米経済から3月FOMC後は一時反転期待も

NYダウ 33174.07(▲0.34%)[32,819~33,236]
S&P500  4259.52(▲0.43%)[4,209~4,268]
NASDAQ 13129.96(▲0.95%)[12,946~13,163]
ダウ輸送株 15322.05(+1.18%)[14,912~15,344]
半導体SOX 3211.07(▲2.17%)[3,151~3,223]
日経平均先物(CME) 25,305(▲0.77%)[25,195~25,745]
ドル/円 115.83~116.19
米10年債利回り 1.995%(高値2.062%:2/11、安値1.683%:3/1)
WTI原油 105.86(高値130.33:3/6、安値105.18:3/2)
金先物 1995.00(高値2077:3/7)
銅先物 4.6330
恐怖指数(VIX)35.13(37.79:2/24)
Fear&Greed指数 15
High Yield Bond (HYG)81.52(2020年6月来安値更新)

 10日の米国市場は前日のウクライナ情勢における緊張が和らいで大幅高したところから、ロシアとウクライナとの間で行われた停戦協議が外相同士の次回トップ会合につなげるための調整の内容に留め置かれたことを受けて、期待先行した分が剥落した形で反落となりました。地政学リスクを意識した原油高一服が引き続き下支えする一方、経済指標の2月消費者物価指数(CPI)発表が前月に続いて強い内容だったことを受けてインフレ高進への懸念が再燃、債券金利が再び上昇して利益確定売りを誘発しました。

 ロシアとウクライナの外相会談の中ではウクライナの友好的非武装化への期待を寄せるとしながらも、ロシアのプーチン大統領及びウクライナのゼレンスキー大統領の直接会合については更なる準備が求められるとして具体的な日程については明らかにされることはありませんでした。一方、11日にベラルーシのルカシェンコ大統領がモスクワでプーチン大統領と会談を行うとされ、制裁下での経済協力について話し合いが持たれることから、両国はウクライナ危機後もNATOによる東方拡大阻止、東欧における統治体制の在り方について詳細を詰めているものとみられます。

 足元での原油高基調には一服の兆しがみられる一方で、米経済指標はなおもインフレ高進の影響が避けられないとの見方が今回のCPI発表における変動の大きい食品・エネルギーを除くコアCPIの伸びが加速していることからも明らかとなりました。
 米長期金利は再び2.0%に達してきた中で、中央銀行はウクライナ情勢を言い訳としながら来週の3月FOMCは0.25%利上げに留め置くとしても、今後の利上げペースについてはやはり今年中に政策金利2.0%までを視野に入れざるを得なくなってくるものと思われます。その最たる例が昨日のECBによる量的緩和縮小で、この度のウクライナ有事影響からの物価高対応を優先せざるを得なかっただけでなく、今後の緩和策縮小についても加速させる方針を打ち出したことにも表れていると言えます。

 米株市場においては懸案事項の優先度合いはウクライナ問題よりも金融政策の行方に移行しつつあると言える中、現在は金融当局メンバーがFOMC前のブラックアウト期間で発言が控えられており、先日のショートカバーによる大幅上昇で戻りを試した後は当局スタンスを確認する必要からFOMC待ちと言えるでしょう。来週のFOMC通過後に改めて上値を試す動きが出てくる可能性がある一方で、金利上昇が一段と加速するような場合には上値も限定的とならざるを得ないでしょう。

【日本株投資戦略】
急騰急落の下値波乱はウクライナ危機を乗り越えた先の大幅反発の前触れ、本格的な金融危機はその後に持ち越される見込み

 11日の日本市場は欧米市場の軟化を受けて利益確定売りが強まりやすい中、朝方に3月メジャーSQ算出を控えており、これを通過した後に一段と来週以降の日米金融政策の行方に神経を尖らせる相場になると思われます。足元でECBが欧州経済のインフレ抑制に金融引き締めのタカ派姿勢を崩すことができなかった事情を抱える中で、債券購入縮小を急ぐ方針が示されたことで市場は金融緩和策の出口が近づいている現実を受け止めざるを得なくなりました。

 コロナパンデミックを理由に異次元の金融緩和策と財政の大盤振る舞いで発現した政策効果がまもなく期限切れとなる中、副作用として生じたインフレ環境に物流・生産混乱の供給制約とウクライナ危機がより一層の拍車をかけたことにより、中央銀行は事実上打つ手が無くなって追い込まれている状況が浮き彫りとなった形です。

 金融緩和策のボーナスステージで実力以上に評価された株式は期待上昇分が剥落するだけでなく、中央銀行による金融政策が引き締め方向に転換することにより、その実力部分に関しても業績面でのピークアウトおよびその先の景気後退懸念を織り込む必要が出てきてしまいます。まもなく四季報最新刊の(春号)が発刊されますが、足元におけるロシア関連事業の停止などから企業の業績下方修正が相次ぐ事態も鑑みますと、内容も大幅に食い違ってくる可能性があるかもしれません。

 とはいえ、そうしたネガティブ材料をある程度意識せざるを得ない状況はひとまずウクライナ危機の収束をもって織り込みが完了してくるとみられ、西側諸国のマスコミが発信する情報をプロパガンダ的側面が強いノイズとして排除すれば、残りあと10日程の辛抱で決着をみることになるものと思われます。
 足元で軟化が目立っている株式市場は今のところはまだ金融危機的事態には至っていないことから、このまま真っ逆さまに下落していくというよりも再び反発の時期を迎えると考えられます。ウクライナ危機後は一旦の上昇で10日の市場棒上げのような吊り上げ商状をはさんだ後に、改めて本格的な金融危機が警戒される局面が訪れることになるのかもしれません。

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