【12/1日本市場の確認ポイント】
日経平均 28226.08(+0.92%)[28,226~28,423]
TOPIX 1986.46(+0.04%)[1,986~2,001]
マザーズ 806.44(+1.63%)[804~813]
値上がりセクターTOP5
1.電気機器(+1.35%)
2.化学(+0.98%)
3.精密機器(+0.79%)
4.医薬品(+0.58%)
5.金属製品(+0.54%)
値下がりセクターTOP5
1.不動産(▲2.15%)
2.保険(▲1.95%)
3.電気・ガス(▲1.63%)
4.銀行(▲1.59%)
5.陸運(▲1.21%)
1日の日本株は前日の米国株が急反発したことをうけて、とくに半導体SOX指数の急騰から半導体関連株が大幅高し、東京エレクトロン(8035)やアドバンテスト(6857)、レーザーテック(6920)などが+4%~5%の急反発を演じたほか、ファーストリテイリング(9983)などグロース株の上昇が日経平均を押し上げました。日経平均は28,000円の大台を回復、TOPIXも2000pt台を一時奪回、マザーズ指数も新高値を更新しました。
ただし、朝方一気に買われた後は小康状態となり、全体には為替の円高が重しとなって徐々に利益確定に押され、値を消していく銘柄が多くなりました。東証プライムの騰落銘柄数は値上がり620/値下がり1150と値下がり銘柄が優勢となり、米長期金利低下をうけた銀行や保険、不動産などの金利敏感業種や為替の円高で自動車株などが冴えず、TOPIXがアンダーパフォームしやすい構成となりました。
半導体関連や電子部品、精密機器といったグロース株が強含んだのはもちろんですが、バリュー株では海運、鉄鋼、化学などの景気敏感株は朝方こそ反応が鈍かったものの徐々に強含む動きで、同じ上昇でもグロース株の朝高後に失速する動きとは対照的でした。新興市場でもやはり朝方が最も強い勢いを見せて上昇ののち、やや利益確定に押される動き。
米国株同様にグロース株中心の反発はショートカバー(売り方の買戻し)による部分が多い印象で、むしろ朝方の反応薄だった銘柄の方にしっかりとした買いの手が入っていたとみられます。
【米国株概況】
前日の大幅上昇後で一進一退、米金利低下を背景に米ドル安、米ドル建ての商品市況が高騰
NYダウ 34395.01(▲0.56%)[34,129~34,595]
S&P500 4076.57(▲0.09%)[4,050~4,100]
NASDAQ 11482.45(+0.13%)[11,378~11,546]
ダウ輸送株 14540.7(▲0.74%)[14,457~14,688]
半導体SOX 2804.7(▲0.78%)[2,771~2,841]
日経平均先物(CME) 28,010(▲0.85%)[27,935~28,490]
ドル/円 135.21~138.12(高値151.93:10/21、安値113.48:1/14)
日10年債利回り 0.248%(高値0.268%:6/17、安値0.131%:3/6)【※一時0.265%】
米10年債利回り 3.508%(高値4.338%:10/21、安値1.668%:3/7)
WTI原油 81.42(高値123.68:6/14、安値76.25:9/26)
金先物 1817.50(高値2,085:3/8、安値1,622:9/28)
銅先物 3.7960(高値5.0395:3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)19.84(高値37.79:2/24)
SKEW指数 118.47(安値110.34:11/3)
Fear&Greed指数 69(GREED:貪欲)
High Yield Bond (HYG)75.62(安値70.30:10/13)
1日の米国市場は米経済指標の10月PCE(米個人消費支出)発表でPCE価格指数が前年同月比6.0%上昇と伸びが鈍化したことをうけてインフレ圧力緩和が意識されています。米FRBの利上げピーク鈍化を反映し幅広い年限での米金利低下が鮮明となり、米10年債利回りは3.50%まで急低下したほか為替は米ドル安となりました。
米国株は前日のパウエル米FRB議長講演から大幅高した水準でもみ合い。直近の米金利低下も相まってグロース株にショートカバー(売り方の買戻し)が入りやすく堅調な動きがみられる中で、セールスフォースが3Q(8-10月)実績で市場予想を上回たものの、4Q(11-1月)見通しが冴えないガイダンスを発表して▲8.3%の急落と指数の上値を圧迫。
NYダウはこのセールスフォースとユナイテッドヘルスの▲2.0安が響いたほか、米金利低下で売られた金融株やボーイングなどの下落により▲194ドル安になりました。ナスダック、S&Pはセールスフォースやアマゾンといった銘柄以外が下支えし、とくに中堅どころが大きく買われるなどして水準を維持しました。
この日の注目は株式というより債券、為替であり、米経済指標や米金融政策だけでは説明しきれない動きとも言え、それによって米ドル建ての商品は原油、金、貴金属類などが相対的に上昇するといった現象を引き起こしています。商品市場に投機マネーが流入するといった構図は今年3月~5月のインフレ圧力を生み出すことにつながりかねませんので、むしろこれらが米景気に悪影響を及ぼすことにならないかが懸念されるところです。
足元ではリスク指標の低下基調が継続しており、VIX指数はとうとう20pt割れまで低下、F&G指数は「GREED(貪欲)」を示しており、相場は過熱感が意識されるところまできています。パウエル米FRB議長の発言は市場をあえて冷やすようなことはせずにマーケットフレンドリーと受け止められましたが、今週末からは米FRBメンバーがブラックアウト期間入りで米金融政策に関する発言は控えられますので、実質的には12月13・14日の米FOMCまでの間はどこまで直近のパウエル発言をあてにしながら上昇基調を続けられるのか、チキンレースの領域に入ってきたと言えるでしょう。
【日本株投資戦略】
為替円高が重しで米国株上昇に見劣り、外部環境への懸念と日本国内の独自要因で綱引き
日本株は昨日の相場で米国株の急上昇を円高で打ち消されて物足りない印象の上げ幅となりましたが、上昇銘柄を俯瞰しますとショートポジションが溜まっていそうな銘柄が中心となっています。逆にそうでない銘柄群はパウエル米FRB議長講演の内容を冷静に受け止めつつ、押し目買いの姿勢を継続しているとみられ堅実な物色を続けているとみられます。
昨日明らかになった11月第4週における投資主体別売買動向では海外勢が大幅買い越しとなっており、足元の円高要因をふまえるとドル建て日経平均では上値を買い進んできていることが鮮明です。海外勢にとっては為替差益が日本株と米国株の単純な比較よりも好パフォーマンスを享受しやすい状況といえ、強気の姿勢を崩していないことが窺えます。
ただし、上述したように足元の為替円高の要因を読み解く必要があるものと考えており、これまで言われてきた日米金利差というところでみた場合、米金利低下の一方で日本の金利も日銀のYCC(イールドカーブコントロール)の上限金利0.25%を超えて日本の10年国債が売られているところをみれば、海外勢は日本株買いと日本国債売りを同時に行っていると推察されます。
もし、それだけではないということになりますと、米ドル安の要因を他に求める必要があり、考えられるのは米景気後退ならびに商品高というスタグフレーショントレードか、地政学リスクへの警戒ということになってきます。地政学リスクをめぐっては米ロ間での協議が果たしてあるのか、ないのか可能性を探っている段階ということですが、このあたりは国際情勢が深く関わってきます。
米景気という観点ではまず今週末の米雇用統計発表、スタグフレーションという観点ではOPEC+会合および欧米の対ロ制裁における石油価格の上限設定が決定される5日を経た後の原油価格の動向ということになり、地政学リスクに関しては再来週のパリ国際会議が焦点となってきます。
外部環境の影響が今後は強くなってきがちなところで、日本国内の独自要因としては政府の大型経済対策の成立がそれら懸念要因を打ち消して市場が好感する動きにつながるかが見どころとなります。
いずれにしても、足元ではリスク選好の動きが続いており、日本株においても日経VIは20pt割れで株高期待が衰える気配はありません。こうした年末ラリー期待を背景に上値拡大期待と突発的な下振れリスクとの間での綱引きがこの12月相場の特徴ということになりそうで、単純に日経平均やTOPIXの指数だけを見れば乱高下しやすくなってくることを念頭に置いておく必要があるでしょう。
個別株ではやはりショートカバーが終わった後のグロース株には注意を要するとみられ、一方のバリュー株に関しては為替の円高進行で売られやすい銘柄が敬遠されやすいと考えられます。外部環境の影響を受けやすい外需株というよりも足元で軟化してきた内需株の押し目を拾う動きが物色の中心になるものと考えます。
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