【11/18日本市場の確認ポイント】
日経平均 27899.77(▲0.11%)[27,877~28,045]
TOPIX 1967.03(+0.04%)[1,966~1,976]
マザーズ 782.56(▲0.99%)[780~788]
値上がりセクターTOP5
1.保険(+1.74%)
2.医薬品(+1.26%)
3.電気・ガス(+1.15%)
4.繊維(+1.09%)
5.食料品(+0.92%)
値下がりセクターTOP5
1.海運(▲2.62%)
2.サービス(▲1.46%)
3.精密機器(▲0.96%)
4.空運(▲0.77%)
5.陸運(▲0.64%)
前週の日本株は週初にどんと下げてあとはほぼ横ばい、日経平均は28,000円をはさんでのもみ合いに終始。むしろTOPIXの方がじりじりと押し目買い優勢で、週初の水準まで迫る戻りの強さが印象的です。売買代金は高水準を維持していますが、高値を取るにはもう一段階上乗せがほしいところです。マザーズ指数は週末こそ▲1%の反落でしたが、週間では+2.9%と躍進が目立っています。
指数は膠着状態ですが個別株の物色はそれなりで、週末も東証プライムの騰落銘柄数は値上がり986/値下がり753と相場の地合いは悪くない状況です。ただ、決算発表後のソフトバンクG(9984)急落に始まり、それまで一緒に相場を牽引してきたレーザーテック(6920)にも怒涛の売り浴びせで高値29,645円からわずか3日で▲18%の急落。幸いにも市場全体にまではそれほど波及しなかったと言えますが、週末は他のグロース株も冴えずリクルート(6098)やエムスリー(2413)といった代表株がそろって▲3%超の下げとなりました。
大型株のリバウンドに一巡感が目立つ中で、グロース株がダメならバリュー株となるところ、先導役の海運大手3社がそろって反落。週末の手仕舞い売りに押された側面も感じられつつ、反対に上昇したのは保険株、医薬品、電力・ガス、食料品といった典型的なディフェンシブ株で、景気後退懸念を意識した物色に変化がみられます。日本の7-9月GDPがマイナスに沈んだことや10月CPI(消費者物価指数)が大幅上昇したことなどがその背景にあると言えるでしょう。10月から食料品が一斉に値上げされたことも含め、日本にも周回遅れで世界的インフレの波が本格到来といったところです。
【米国株概況】
米FRBメンバーがなんだかんだ言ってもパウエルFRB議長の見方次第、足元で急速に浮上したリセッション懸念は週末から始まるブラックフライデーの活況が焦点
NYダウ 33745.69(+0.59%)[33,540~33,827]
S&P500 3965.34(+0.48%)[3,935~3,979]
NASDAQ 11146.06(+0.01%)[11,059~11,259]
ダウ輸送株 14254.8(+0.67%)[14,115~14,355]
半導体SOX 2724.0(+0.18%)[2,693~2,760]
日経平均先物(CME) 27,965(+0.31%)[27,860~28,045]
ドル/円 139.64~140.49(高値151.93:10/21、安値113.48:1/14)
日10年債利回り 0.243%(高値0.268%:6/17、安値0.131%:3/6)
米10年債利回り 3.829%(高値4.338%:10/21、安値1.668%:3/7)
WTI原油 80.11(高値123.68:6/14、安値76.25:9/26)
金先物 1752.00(高値2,085:3/8、安値1,622:9/28)
銅先物 3.6380(高値5.0395:3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)23.12(高値37.79:2/24)
Fear&Greed指数 62(GREED:貪欲)
High Yield Bond (HYG)74.23(安値70.30:10/13)
18日の米国株は主要株式3指数がそろって反発しましたが、ハイテク株主体のナスダックは終盤に辛うじてプラス圏に浮上して面目を保ったものの、苦戦が明らかでした。先週半ば、ポーランドのミサイル着弾騒動による利食い売りに米FRBメンバーのタカ派発言が意識されたことも重なり、上値期待が急速に萎んだ状況となっています。
また、先週末にかけての米国市場では米金利低下で一時政策金利3.75%-4.00%を割り込む動きがみられました。つまり、米国債の需要が高まったと言えるこの動きの背景には、直近の米経済データ悪化などをむしろ好感して株高とみる向きが一巡し、売り方のショートカバー(買戻し)も米金利の低下余地が限られてきたことが挙げられます。株高によって利食いした資金を一旦債券市場に退避させたとみるのが妥当でしょう。
こうした動きを促したのは足元での経済指標悪化に伴うグローバルリセッション懸念の高まりで、低下傾向にあったBEI(期待インフレ率)が10月初旬以来の水準に沈んでいることが挙げられます。とくに週末の米原油先物WTIは安値77.24ドルをつけており、定点観測データからも分かるように9/26以来の低水準に迫りました。インフレ緩和期待よりも今度は景気悪化懸念に焦点が移ったとみられる動きです。
これによって、米株市場ではリセッション(景気後退)トレードが復活し、戻りを試していた景気敏感株の利益確定と同時にディフェンシブ株の見直し買いが起きています。S&P500の値上がりセクターは公益・不動産・ヘルスケア・生活必需品が上位を占め、物色にわかりやすい変化がみられます。
象徴的なのは、半導体大手のアプライド・マテリアルズが決算好感で一時+5%超の値上がりをしていたところから利益確定に押され+0.2%まで上げ幅を縮小、NYダウがNASDAQをアウトパフォームしたのにはユナイテッドヘルスが+2.9%と100ドル近く押し上げた要因が大きいと言えます。
米金利水準は3.8%台前半に止まっているにもかかわらずハイテク株が冴えないということは、一足飛びに買い進めてきた勢いに陰りがみえ、息切れ感を表した相場とみてよいかと思われます。だからといって直ちにトレンドが下降転換するわけではないと思いますが、再度上値を試しにいく上では上記のリセッション懸念を払拭する材料が欲しいところです。
今週注目すべきは前回もふれた11月の米FOMC議事録公表(11/23)で、直近の米FRBメンバーが思い思いに発言した内容よりも実際の討議で肝心のパウエル米FRB議長がどういうスタンスでいるかの方がよほど大事と言えます。翌24日は感謝祭で米国休場ということもあり、この23日の市場動向(株・債券・原油)が今後の手がかりになるという点と、11/25から始まるブラックフライデーで米個人消費の力強さを確かめる必要があるという点です。
前回、米国の小売業界では年末の需要を先食いしている状況について述べるとともに、11月末から12月上旬にかけての短期ラリーの可能性があることを指摘しましたが、それを補足しますと、それでもなお米国民の消費意欲が衰えていないというのが重要です。それが足元のリセッション懸念をはねのける材料となれば、いま一度上値を試しにいく動きは期待できるかもしれないということです。それにはやはり、弱気筋の売り方が諦めざるを得ないほどに米国景気の底力を見せつける必要があると言えるでしょう。
【日本株投資戦略】
◎国際会議日程の一巡で経済対策の前進に期待、日本にもインフレの波が押し寄せる中でキーワードは成長につながる「内需振興」
日本株は決算材料の消化も一巡してくるところで今週は週央に勤労感謝の日で祝日休場をはさむ日程となっていることから、積極的な売買は手控えられやすいとみられます。休場の前後で散発的な仕掛け売りなどがあるかもしれませんが、まねまね読者の方であればこれまでにある程度利食いするものはして、ポジション調整も済んでいるかと思いますので、突発的な市場下振れ場面はむしろ買い場として待ち構えているところでしょう。
実際には米国でも24日が休場となるため手がけづらさと材料難が意識されやすいところで、やはり個別株ごとに動きのある銘柄に売買が集中しやすくなるものと思われます。上記【11/18日本市場の確認ポイント】で述べたように、景気悪化懸念からディフェンシブ株買いにシフトする動きが強まる可能性も考えられますが、どちらかというと景気敏感株やハイテク株を利食いした後で小休止、あるいは日柄調整といった側面にすぎないとみており、株価が調整すれば押し目買いを狙っている投資家は多いと推察します。
話題性のあったソフトバンクG(9984)やレーザーテック(6920)の相場が腰折れしたことにより、相場の牽引役が不在となる中で他の候補銘柄が台頭してくるかが注目されます。主立ったところでは三井住友FG(8316)や地銀など銀行株や日清食品HD(2897)、ニチレイ(2871)といった食品株が新高値の銘柄として浮上しており、やはりディフェンシブ色が強いという印象です。これは米金融政策を意識したバリューVSグロースといった構図ではなくて、外需株から内需株という括りでの資金シフトという線も考えられます。
先週後半には休養をはさんだ旅行・レジャー関連株が買い直されるという場面もみられており、年末にかけて国内の個人消費が活性化されてくる期待は大きいものと考えられます。インバウンドだけでなく内需株全体としてが強含むのであれば、上記のほかにDX(デジタルトランスフォーメーション)、AI(人工知能)、サイバーセキュリティ、ゲームや人材といったテーマ性を兼ね備えた中小型株の物色がより強まる可能性は十分です。中小企業を支援し経済全体を強化、個人消費を活性化させる独自の技術やサービスを展開している企業などが注目を集めやすいでしょう。
さらには日本のインフレ高進も欧米と比べて穏やかとあぐらをかいている場合では無くなってきています。食品やエネルギーだけでなくサービス価格の上昇も含め、日本企業全体がインフレ環境に適応した経済主体となってくることを見越したトレード戦略が有効になってくるかと思います。引き続き価格交渉力のある大企業が注目されるのはもちろんなのですが、社会が受容すれば中小企業もこれに追随する動きが広がり、業績向上を図ってくるはずです。むしろそれが出来ない企業は取り残され、業績低迷どころか苦境に陥っていくことは避けられないでしょう。
国際会議が相次いで開催されている中で岸田首相の不在により混乱に拍車がかかっている内政の立て直し、さらに審議が遅れてしまうこととなった経済対策の補正予算成立に向けた動きが再開してくることで、日本株の一段高期待を高めることにもつながると思われます。これにはどうしても財源の議論から増税もセットでという論調に水を差されてしまいがちですが、日本経済の成長を促進する上では従来よりもスピード感が求められている場面ですので、国と企業、そして個人も含めて将来への投資を加速、奮起しなくてはならないところだと言えるでしょう。
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