【9/21日本市場の確認ポイント】
日経平均 27313.13(▲1.36%)[27,297~27,467]
TOPIX   1920.80(▲1.36%)[1,920~1,934]
マザーズ 710.26(▲2.43%)[703~721]

値上がりセクターTOP5
1.海運(+1.52%)
2.保険(+0.65%)
3.石油・石炭(+0.29%)
4.鉄鋼(+0.06%)
5.なし

値下がりセクターTOP5
1.輸送用機器(▲2.28%)
2.ガラス・土石(▲2.21%)
3.空運(▲1.90%)
4.医薬品(▲1.89%)
5.卸売(▲1.75%)

 米FOMC発表を控えながら日本市場は大幅反落、朝方の下げ一巡後はほぼ横ばい圏で下げ渋ったと言ってもよいでしょう。日経平均もTOPIXも9/7安値は死守できた一方、マザーズ指数は厳しい下落となり直近安値割れ、節目の700ポイントに押し戻されてきました。

 注目は反発した海運大手の逆行高ですが、同様に高くなったのが保険株や銀行株などです。結局、銀行株は売られましたが、米FOMCイベントで金利上昇観測から買いが向かいやすいといった特徴があります。その一方、金融株というのは通常の市場サイクルにおいては最後にようやく物色対象となる業種であり、金利上昇が一服した段階では市場全体が低迷を余儀なくされます。

 マザーズなどの高リスク資産に対する売り圧力が本格化したことやちょうど米FOMC前に市場サイクルが一巡したということをふまえますと、しばらくは調整地合いが続くと考えられます。変に値ごろ感だけで期待したりせず、まずは冷静に足元の状況と株価の下値を見定めてリスク回避のスタンスで臨むべきでしょう。

【米国株概況】
米FOMCは0.75%利上げ決定、米金利見通し・インフレ見通しはともに大幅上方修正でリスク資産売り

NYダウ 30183.78(▲1.70%)[30,181~31,020]
S&P500 3789.93(▲1.71%)[3,789~3,907]
NASDAQ 11220.19(▲1.79%)[11,219~11,613]
ダウ輸送株 12650.2(▲1.01%)[12,648~13,009]【安値更新】
半導体SOX 2515.0(▲0.97%)[2,514~2,625]
日経平均先物(CME) 27,010(▲0.41%)[26,850~27,445]
ドル/円 143.34~144.68(高値145.00:9/7、安値113.48:1/14)
日10年債利回り 0.253%(高値0.268%:6/17、安値0.131%:3/6)
米10年債利回り 3.534%(高値3.609%:9/21、安値1.668%:3/7)【高値更新】
WTI原油 82.78(高値123.68:6/14、安値81.20:9/8)
金先物 1674.90(高値2,085:3/8、安値1,695:7/14)
銅先物 3.4233(高値5.0395:3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)27.99(高値37.79:2/24)
Fear&Greed指数 31(FEAR:恐怖)
High Yield Bond (HYG)73.50(安値72.92:6/13)

 非常に注目度の高かった昨晩の9月米FOMCでは、事前予想どおりに0.75%大幅利上げが決定されたほか、米FRBは淡々と金融引き締め路線を進んでいくことが確認されました。今回の9月FOMC結果に加えて年内のあと2回控えるFOMCでも積極的な利上げが断行される可能性が高まり、主要株式指数は軒並み下落しました。

 今回の利上げ自体に大きなサプライズは無かったものの、市場が注目したのはむしろ今後の利上げ見通しです。前回6月の時点では2022年末における政策金利見通しは3.4%でしたが、これが4.4%にまで引き上げられました。これでつまり、3.00-3.25%まで引き上げられた政策金利は残る11月・12月で計1.25%利上げが必要とされるほか、次回11月でも0.75%利上げとなる確率が高いことが明らかになりました。

▼米FRB、0.75%利上げ継続 22年末見通し4%超に(2022/9/22)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2009R0Q2A920C2000000/
 
 昨晩の9月FOMC直後の反応はNYダウが▲400ドル超の急落をみせた後、一旦は500ドル近く切り返し、他の主要株式指数も含めてプラス圏に浮上しましたが、結局打ち返されて安値引けとなりました。特筆すべきは高安の値幅で850ドル程の落差が生じていますので、この反発局面で誘い込まれた投資家はかなり裏目に出た結果と言えるでしょう。

 それよりも注目しておきたいのは、やはり米金利の動向の方で米2年債利回りはとうとう4.0%突破で4.12%をつけたほか、米10年債利回りも前日に続いて3.64%まで高値更新し、今後も長期化予想の利上げシナリオを早速織り込み始めました。しかし、ここから注目したいことは米2年債、米10年債がそれぞれの高値形成後、逆に動いていて米2年債は上昇継続、米10年債は下降転換となったことで、長短金利差がさらに拡大する結果になりました。

 この逆イールド現象がさらに深まったというだけでなく、金利市場では今後の更なる利上げシナリオから短期債は売られ、反対に長期債はそれによって不可避となる経済的ダメージ、すなわち景気後退シナリオを重視して買われ始めた可能性を考えなければならなくなりました。

 以前は景気後退懸念が浮上すると金融当局が引き締めを躊躇ったり、引き締めペースを緩和させるのではないかという憶測、希望的観測から株式市場は反転しましたが、結局その後はFRBメンバーから早期利下げ期待を牽制する発言が相次ぎ、楽観シナリオの期待は萎んでしまうこととなりました。

 今回も同じようなプロセスで展開していく可能性も否定できませんが、焦点はどの時点で景気後退シナリオの織り込みが完了するかという点です。また、米経済のハードランディングとなるシナリオか、一時的なテクニカル・リセッションというシナリオかによっても株式市場に与えられる試練の大きさが違ってきます。おそらくはそれぞれのシナリオで指数の下振れ具合が少なくとも10%程度は変わってくると思いますので、NYダウであれば3000ドル下値が深くなると考えると相当大きなインパクトと言えるでしょう。

【日本株投資戦略】
米FOMCに続き日銀・英中銀・スイス中銀が金融政策決定会合、株価の下値見極めと今後のインフレ投資

 今後の日本株においても上記の【米国株概況】の内容をふまえますと、実はちょうど昨日の【先読みの近未来(スタンダード会員以上の方対象)】で詳しく解説した内容と重複しますが、今後の米長期金利と株価の関係性が逆相関から順相関へと変わっていく可能性、つまり同じ方向を向いていくかもしれないということが大事になってきます。

 さらに、下値不安が拡大している株式市場の底値を判定する方法にもいろいろあるかとは思いますが、その中で金利水準によっておよその株価の下値が割り出せるということになります。このあたりの市場の特殊な論理については、また【先読みの近未来(スタンダード会員以上の方対象)】で現状を掘り下げながら解説いたします。

 すでにこれまでも再三述べてきましたとおり、今はとても重要なスケジュールを迎えているところです。金融政策日程では本日の日銀、英BOE(イングランド銀行)、スイス中銀の金融政策決定があるほか、もし市場の論理が変わったとすれば、少なくとも次回の米4-6月GDP改定値発表で2四半期連続マイナスのテクニカル・リセッションを改めて認識することになります。

 それでもなお、米経済は個人消費の堅調さを背景に持ち堪えられるとの見方であれば株価反転のきっかけを掴めるでしょうし、そこで自信を取り戻せないようであればソフトランディング期待は取り除かれ、今後は雇用の悪化などで悪材料が出始めますので、ハードランディングシナリオという可能性が高まることとなるでしょう。

 また、そうした景気実態とはかけ離れたレベルでのインフレ高進が続く可能性から、今回示された来年以降のFRB金利見通しも大変重要です。米FRBは今回の会合で第4四半期(10-12月)の物価上昇率予測も同時に引き上げましたから、インフレ高進の出口もまだ見えていない状態です。それをふまえた上で現状の予想中央値では22年末:4.375%、23年末:4.625%、24年末が3.875%、25年末が2.875%です。米FRBが正常化を宣言できるのは少なくともこれ以降ということです。

 くどいようですが、これはあくまでも現時点予想であり、インフレ高進が止まらなければ金利見通しもさらに引き上げられて金利ピークは4%台では済まなくなる可能性もあるということです。前回のパウエル米FRB議長が討論会に参加した時には1970年代・80年代のスタグフレーション時に対応したポール・ボルカ―元FRB議長について言及していました。もしその当時を意識しているのであれば政策金利の誘導目標は4%台ではなく、5%、6%台も念頭に置いている可能性があるでしょう。

 ただし、そこで思い返してほしいのが上記の金利と株価の関係性です。もちろん実体経済はインフレでありとあらゆるモノの値段が上昇し、一方で金利上昇は借金の返済負担が増える住宅ローンなどは家計を圧迫し、一般人の生活は困窮していきますので望ましいものではありません。しかし、単純に株価のことだけを考えるのであれば、やがて金利上昇と株価上昇が同居することになり、インフレは株価水準を押し上げます。つまりインフレが進めば進むほどお金の価値が毀損して、代わりに株価が上昇していくという構図になるわけです。

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