【8/26日本市場の確認ポイント】
日経平均 28641.38(+0.57%)[28,608~28,792]
TOPIX 1979.59(+0.15%)[1,978~1,989]
マザーズ 743.72(+0.01%)[743~751]
値上がりセクターTOP5
1.繊維(+1.21%)
2.機械(+1.03%)
3.鉄鋼(+0.96%)
4.非鉄金属(+0.96%)
5.空運(+0.88%)
値下がりセクターTOP5
1.石油・石炭(▲0.80%)
2.サービス(▲0.79%)
3.鉱業(▲0.75%)
4.医薬品(▲0.61%)
5.証券・商品先物(▲0.53%)
日本市場は米国株の反発を背景に東京エレクトロン(8035)に代表される主力値がさ株、半導体関連株が上昇、三井化学(4183)やコマツ(6301)など景気敏感株にもやや強めの上昇がみられました。ただし、日経平均の上値は28,800円付近に抑えられ、後場からは米ジャクソンホール会議でのパウエル米FRB議長講演を控えてポジション調整の売りに押され、上げ幅を半減しました。
東証プライムの騰落銘柄数は値上がり864/値下がり867で、TOPIXやマザーズ指数は上げ幅を消失して前日比ほぼ変わらずまで往って来いの展開。直近で賑わいを見せていた材料株の多くにも利益確定売りの波が波及しました。原発関連や旅行関連などテーマ株の物色人気は継続、セクター別には繊維、機械、鉄鋼、非鉄金属、空運、ゴム、商社、建設などが高値圏にあります。
米ジャクソンホール会議のイベント通過後に物色傾向に変化がみられるかが焦点となりますが、相場全体の動向よりも個別株ごとの強弱感の二極化が進みそうです。別の側面からはこれまでのグロース株中心の戻り相場は一巡し、バリュー株優位の展開に舞い戻る地合いの変化を想定します。
【米国株概況】
パウエル米FRB発言でユーフォリアを強制退去させられた米国株、債券市場は動揺せずで無難にイベント通過、肝心なのはむしろこれからの米経済指標と米FRBバランスシート
NYダウ 32283.40(▲3.03%)[32,278~33,364]
S&P500 4057.66(▲3.37%)[4,057~4,203]
NASDAQ 12141.71(▲3.94%)[12,141~12,655]
ダウ輸送株 14380.2(▲3.86%)[14,379~14,974]
半導体SOX 2798.4(▲5.81%)[2,797~2,966]
日経平均先物(CME) 28,220(▲1.36%)[28,115~28,785]
ドル/円 136.41~137.53
米10年債利回り 3.030%(高値3.498%:6/14、安値1.668%:3/7)
WTI原油 92.97(高値123.68:6/14、安値85.73:8/16)
金先物 1750.80(高値2,085:3/8、安値1,695:7/14)
銅先物 3.6955(高値5.0395:3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)25.56(高値37.79:2/24)
Fear&Greed指数 44(FEAR:恐怖)
High Yield Bond (HYG)75.81(安値72.92:6/13)
米国市場はジャクソンホール会議のメインイベントであるパウエル米FRB議長講演をうけて、来年にも早期利下げ転換への期待が打ち砕かれ、米国株は取引終盤にかけて下げ幅を拡大させました。NYダウは1,000ドル安で▲3%超、ナスダックは▲4%近い大幅安、半導体SOX指数にいたっては▲5.8%安の暴落商状となりました。
もっともパウエル米FRB議長の講演前からすでに下落推移しておりましたが、講演が進むとともに一本調子に下落し続けて安値引けとなりました。発言内容自体には米FRBの金融政策姿勢に変化はみられませんでしたが、米国株においては早期利下げ期待の希望的観測から楽観視し過ぎていた分が剥落した形で、債券市場ではさも当然といった具合にほぼ無風通過の様相でした。
米FRBがインフレ抑制・物価安定化に向けた利上げ政策を長期化させる覚悟があることを示したことが焦点でしたが、同時に政策金利上限見通しも引き上げられるとの観測も強まり、為替市場ではドル高が進行しやすくなっています。米FRBと並んで欧州ECBも高官が9月の大幅利上げ見通しに言及し、ユーロ/ドルは1.000ドル近辺でもみ合いの一方、ドル円では日米金利差拡大を後押しするものとしてドル高円安の動きが強まりました。
欧米株の中では米国株の急落が▲3%超と抜きん出る一方、独DAXやユーロ・ストックスも▲2%の下落がみられています。これらは米国株と比べて戻りが鈍かったこともあり、目先の調整見極めには欧州株の動向がカギを握ります。6月・7月の安値水準へと下値テストに向かえば下落基調に拍車がかかることになります。米国株ではNYダウの安値水準30,000ドルから34,000ドルまで駆け上がった後の半値押ししたところで、今週32,000ドルをこのままの勢いで割り込んでしまうと明確に需給転換が起こってきますので注意が必要です。
ただし、大騒ぎになっているのは株式市場だけで米金利がこのまま動かなければ売り物を消化して、市場動揺が長引く心配はありません。ところが、9月米FOMCまでに米経済指標の追加データでスタグフレーション懸念につながるものであったり、9月よりQT政策加速が予定どおり行われて米FRBのバランスシートが急速に縮小へと向かう事実確認ができた場合には再び暴落商状につながりやすくなります。
8月の米ミシガン消費者信頼感指数は7月より改善した一方、米商務省の7月PCE(個人消費支出)物価指数は伸びが鈍化して、インフレ懸念やスタグフレーション懸念は緩和してきたとの期待が下支え要因として作用してきます。9月は欧米の金融引き締め政策が強化される以上、これまでのように楽観的な見方は通用せずに波乱を覚悟しておく必要がある一方、経済指標で2カ月連続での改善がみられてくると波乱はチャンスへと変わっていきます。9月の経済指標発表、金融政策会合のスケジュールを今一度確認しておくとよいでしょう。
【日本株投資戦略】
米ジャクソンホール会議でも見せつけた日本株の優位性、欧米の金融引き締めに付き合う間は要警戒
米国株は久々にNYダウ1000ドル級の急落に見舞われて主流メディア記事でも取り上げられていますが、日経先物では28,120円と▲490円(▲1.7%)の下落で、米国株と比べると約半分程度の下落で済みました。
日銀のブレない金融緩和維持政策とそれに準拠した為替ドル円の円安基調が日本の輸出産業メインの主力株を援護射撃しているおかげで、日本株は欧米と比べて異様な底堅さを発揮しています。以前であれば米国株の倍以上も下げるのが通例だったことを思い返せば、先週末の米国株▲3%安は日本株の▲5~6%安に相当しても不思議ではないはずで、現在の金融市場ではそれだけパラダイムシフトが起こっているということが言えます。
このような市場ロジックが成り立つとすれば、米NYダウが再びリスクオフを背景に節目の30,000ドルを目指すような展開となった場合、▲6%強の下落余地が見込まれることとなりますが、日本の日経平均は▲3%下落しても27,000円付近の水準で踏み止まるとの仮説が成り立ちます。
中央銀行の政策スタンスの違いはこれほどに影響が大きいわけですが、裏を返せば日銀の政策修正が行われてしまう時には相応に注意しなければならないということも言えます。黒田日銀総裁のジャクソンホール会議での発言は政策維持を言明しており、9月の欧米当局が金融引き締めを強化して市場に波乱を呼び込むにしても、日本株の相対的な優位性は担保されるとの見方もできるものです。
◆黒田総裁、日銀は金融緩和策を維持する以外ない-ジャクソンホール(2022/8/28)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-08-27/RHAL50DWLU6801
ただし、市場がリスクオフに直面した際、これまで通りに安全資産としての米国債買い、有事の米ドル買いが続く保証はどこにもなく、また、リスクオフ時の日本円買いが復活しても不思議ではありません。奇しくも今の金融市場を下支えしているのは、これだけ景気悪化懸念と騒がれている中でも日銀が単独で金融緩和政策維持を続けていることから、円キャリートレードを活発化させ、市場に流動性をもたらしていることに他なりません。
したがって、為替相場が次に変調をきたす場合に、国際マクロのグローバルファンドがリバランスの必要性に迫られ、大きくポジションを動かすときに本格的な米国資産(株・債券・為替)売りとなり、それらの資金が日本に還流してくる流れにつながってくることと思われます。
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