【8/2日本市場の確認ポイント】
日経平均 27594.73(▲1.42%)[27,530~27,830]
TOPIX   1925.49(▲1.77%)[1,923~1,948]
マザーズ  716.46(▲1.12%)[714~725]

値上がりセクターTOP5
1.海運(+0.29%)
2.なし
3.なし
4.なし
5.なし

値下がりセクターTOP5
1.医薬品(▲3.51%)
2.機械(▲2.96%)
3.精密機器(▲2.80%)
4.卸売(▲2.48%)
5.石油・石炭(▲2.41%)

 8/2の日本市場は米長期金利の一段の低下、為替円高と景気後退懸念を織り込みつつ、米民主党のペロシ下院議長が台湾を訪問して中国を刺激するとの懸念を理由に幅広く売られました。東証プライムの騰落銘柄数は値上がり190/値下がり1620となり、過熱気味だった騰落レシオは119ポイント台へと低下しました。

 日経平均は決算が好感されたTDK(6762)が+13.5%の急伸で逆行高を見せた反面、構成割合の大きい東京エレクトロン(8035)やダイキン工業(6367)などが売られたほか、中外製薬(4519)や第一三共(4568)など医薬品株が大きく値を崩しました。

 他方、全面安商状に思われた中で値を保ったのが海運セクターであったほか、リスクオフ地合いでは本来なら主力株以上に値崩れが激しくなりやすいマザーズ、新興・小型株が相対的に下げ渋ったものとみられ、直近の戻り歩調が転換したとは見なしづらい状況。内需グロース株にとっては目先に控える企業決算や投資家センチメントを揺るがす金融システムリスクの方が強く意識されやすいといえます。

【米国株概況】
ペロシ米下院議長の訪台に揺さぶられる金融市場、地政学的緊張よりも重大な米中資本関係の解消に向けた動き

NYダウ 32396.17(▲1.23%)[32,387~32,772]
S&P500 4091.19(▲0.67%)[4,079~4,140]
NASDAQ 12348.76(▲0.16%)[12,260~12,503]
ダウ輸送株 14283.9(▲2.39%)[14,170~14,668]
半導体SOX 2974.7(▲0.12%)[2,936~3,021]
日経平均先物(CME) 27,745(+0.27%)[27,515~27,910]
ドル/円 130.39~133.21
米10年債利回り 2.748%(高値3.498%:6/14、安値1.668%:3/7)
WTI原油 93.80(高値123.68:6/14、安値88.53:3/15)
金先物 1775.50(高値2,085:3/8、安値1,695:7/14)
銅先物 3.4743(高値5.0395:3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)23.93(高値37.79:2/24)
Fear&Greed指数 41(FEAR:恐怖)
High Yield Bond (HYG)77.55(安値72.92:6/13)

 8/2の米国市場はペロシ下院議長の台湾訪問をめぐって米中間の緊張が高まるとの地政学リスクを意識しつつも、市場動向では米FRBメンバーによる市場の楽観姿勢傾斜を牽制するタカ派発言がより注目を集めたとみてよいでしょう。

 いちおう米民主党を代表するペロシ下院議長の台湾訪問について解説しますと、事前の段階から不用意に中国を刺激する材料になると警鐘が鳴らされていました。そんな中でアジア歴訪を強硬し、台湾近海には米軍艦4隻が配備されて厳戒態勢が取られるまでに緊迫した状況が演出された背景には何があるのか?果たして米国の経済、財政を考えた時に、今このタイミングで必要な訪問だとは誰も思わないはずですが、当然ながらそれには深い理由が隠されていると考えるべきでしょう。

 中国側の動向を伝える過激なメディア報道の中には、南シナ海の領空を閉鎖し、ペロシ氏の乗った機体を撃ち落とす観測記事まで飛び出しました。それでペロシ氏が無事に台湾に到着できるかを世界中が神経質になって見守り、機体着陸をリアルタイム中継したり、フライトレーダーを監視したりと関心を集めました。実際に帰国の途につけるまでどうなるか分かりませんが、様々に懸念する憶測が飛び交っており、いずれにしても米中首脳会談前に両国を引っ掻き回したことだけは事実です。

 ただこの台湾問題はマスコミが報じるような地政学リスク、いわゆる軍事衝突リスクよりも米中にとっての資本関係、貿易関係に生じ得るリスクの方が問題として大きく、昨晩の米国市場ではこれまで低下基調だった米金利が一斉に噴き上がりました。同じタイミングで米FRBメンバーがそろってインフレ抑制、更なる大幅利上げ継続を支持する発言で株式市場の楽観姿勢に釘を刺し、債券市場では年内および来年の金融政策では利下げもあり得るとの観測を打ち消す動きが広がりました。

 おそらく一般的な市場コメントでは債券売りで金利高騰の動きを米金融政策見通しにからめて解説がなされるはずです。しかし、最近の為替市場における急激な変動に代表されるように債券市場でもメインプレーヤーがファンドレベルではなく、国家レベルでの積極参入が鮮明になっていると考えた方がよいでしょう。とくに米国債を日本に次ぐ規模で抱える中国勢が外貨準備として米国債の保有を減少させてきた昨今の流れから、米中間の関係は薄氷の上に成り立っているものと言えます(表向きの話)。よって、目先は米中における地政学的緊張を演出する裏で起こっている国際的な資金移動により注意深く目を向ける必要があるということです。

 米株市場ではNYダウが▲400ドルとボーイング▲3.4%安、キャタピラー▲5.8%安が目立った下げである一方、ナスダックは米金利上昇にもかかわらず小幅安にとどまり、尚且つ終日にわたりほぼプラス圏を推移していました。リスクオフの前兆ともとれるシグナルはみられつつも、投資家センチメントがまだ堅固ですので、売り方と買い方のせめぎ合いはいましばらくの間続く可能性があると言えるでしょう。

【日本株投資戦略】
米中の地政学的緊張は買い材料!?、まずは定石どおりの対応と今後の金融システムリスクへの変化に注意

 株式市場では戻り一服感も意識されやすい水準で売り買い拮抗となっていたところに、今回のペロシ米下院議長が訪台スケジュールを強硬しました。これにちなんで米中高官による互いの牽制発言がエスカレートしました。利食い売りのきっかけ待ちだった市場にとっては、格好の悪材料が持ち込まれた形でしょう。

 そもそも最近の株価上昇においては、景気実態を半ば無視する形で楽観姿勢が強まっていただけに、過熱感を冷ましたという方が適切な表現かもしれません。いずれにしても足元の株価水準は、先月の安値圏から仕込んだポジションを利食いする短期トレード組、コロナバブル時からのポジションを整理している中長期投資家組が段階的に売り捌いている過程では、ちょうど良い頃合いだったと言えるかもしれません。

 ただし、ここで注目すべきは上記の【米国株概況】でも述べたとおり、単なる地政学材料であれば先のロシア-ウクライナ問題と同じく「戦争は買い」の論理で押し目買いが有効とされる場面です。しかし、本当に地政学的緊張かの見極めが必要でしょう。昨日の三菱重工業(7011)の株価は市場と連れ安し、軍需関連では単なる思惑で物色しやすい中小型株だけが上昇していました。

 その一方、今回の米中対立が激化する方向性が、直接的な軍事衝突につながるかどうかよりも金融システムの根幹にかかわってくる話となると話はガラリと変わってきます。金融システムの根幹というのは、現在の基軸通貨である米ドルおよび米国債に対する信用にかかわる話です。これも今すぐ問題化するものではありませんが、そこに多少なりとも綻びが生じただけで金融市場というのは懸念を膨らませ、金融危機を騒ぎ立てるようになります。上述したような中国と米国債に関係するニュースは最重要ポイントになります。

 現代人が生きている今の世界では、戦後の米ドル基軸通貨体制が『お金の常識』とされてきましたので、これが揺らぐということは常識が崩れるという話に直結してくるのです。これは米中間だけの問題ではなく、ロシアの動きとも深く関わっている国際情勢への理解が欠かせません。詳しくは【先読みの近未来】(スタンダード会員以上の方が対象)をご購読いただければ、今の金融市場への理解が深まるかと思います。

 市場の動きに話を戻しますと、株式市場は新たに米中対立激化という地政学リスクを孕みながらもしばらくの間は何度か上値を試す動きをみせることと思います。ただし、高値圏での押し目買いを繰り返して高値波乱の相場に慣れてきた頃に、市場の誘い込みであったことが徐々に明らかになることでしょう。とくに米中問題をめぐっては為替相場の動向に目を向けながら、今の相場から降りるタイミングを考えておくべきでしょう。

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