【7/28日本市場の確認ポイント】
日経平均 27815.48(+0.36%)[27,651~28,015]
TOPIX 1948.85(+0.16%)[1,939~1,956]
マザーズ 708.98(+0.50%)[705~718]
値上がりセクターTOP5
1.電気・ガス(+3.67%)
2.鉱業(+3.43%)
3.サービス(+2.05%)
4.石油・石炭(+1.26%)
5.海運(+1.15%)
値下がりセクターTOP5
1.輸送用機器(▲1.03%)
2.保険(▲0.66%)
3.空運(▲0.42%)
4.機械(▲0.36%)
5.食料品(▲0.25%)
7/28の日本市場は7月米FOMCでの0.75%利上げ決定をうけた不透明感緩和で米国株が力強い反発を見せたことを好感して、大幅高でスタート。日経平均は朝方早々に節目の28,000円に到達した後、達成感からの利益確定売りに押されて一時マイナス転換する場面もありながら徐々に押し目買いが入るなどし、最後は+100円高で取引を終えました。
米国のナスダックや半導体SOX指数が大幅高したことを好感したグロース株が買われやすく、決算材料のあったエムスリー(2413)が+14%と2ケタ上昇、信越化学(4063)も好決算で+4.2%、さらにファナック(6954)も+3.7%と続いて日経平均を押し上げました。米国SOX指数の急伸から半導体株も大幅高スタートでしたが、東京エレクトロン(8035)、アドバンテスト(6857)などは戻り売りに遭い、やや大きめの陰線を形成しています。
米10年債利回りは米FOMC利上げ決定後も低下傾向にあり、グロース株にとってはそれだけで支援材料となりやすい。ただし、この日新規上場(IPO)のウネリ―(5034)HOUSEI(5035)はともに高い初値形成後は売りに押されて陰線を形成。セクター別騰落では電気・ガスがトップに躍り出て、決算発表した中部電力(9502)が急伸。原油高を好感したINPEX(1605)なども大幅高でバリュー株にも中間反騰の芽が出てきました。
【米国株概況】
バイデン政権の米国景気楽観論はインフレ抑制を妨げる、目先の株価上昇と引き換えに次の下落リスクを増幅
NYダウ 32529.63(+1.03%)[31,982~32,609]
S&P500 4072.43(+1.21%)[3,992~4,078]
NASDAQ 12162.59(+1.08%)[11,886~12,179]
ダウ輸送株 14275.3(+3.09%)[13,884~14,281]
半導体SOX 2944.5(+1.15%)[2,853~2,950]
日経平均先物(CME) 27,850(+0.14%)[27,595~28,010]
ドル/円 134.20~136.69
米10年債利回り 2.676%(高値3.498%:6/14、安値1.668%:3/7)
WTI原油 97.32(高値123.68:6/14、安値88.53:3/15)
金先物 1754.40(高値2,085:3/8、安値1,695:7/14)
銅先物 3.4938(高値5.0395:3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)22.33(高値37.79:2/24)
Fear&Greed指数 39(FEAR:恐怖)
High Yield Bond (HYG)77.96(安値72.92:6/13)
米国市場は7/27に7月米FOMCでの0.75%利上げが事前予想通りの結果となったことをうけて、積極的な金融引き締めや景気後退への過度な懸念が和らぎ、ハイテクグロース株が大幅反発。パウエル米FRB議長の会見では、今後の利上げ幅についてデータ次第と曖昧さを示したことで、タカ・ハトどちらとも取れる表現から良いところ取り相場となりました。
この日のナスダック、半導体SOX指数はともに4%超の大幅高となり、ハイテク大手銘柄が軒並み上昇、決算発表後のグーグルは+7.7%、マイクロソフトも+6.7%とナスダック急伸の立役者となりました。さらに半導体株においても米議会上院が成立の難航も予想されていた支援法案を可決し、内製化が進むとの見方から大きく買われるきっかけとなりました。
続く7/28の米国市場では寄り前に4-6月米GDPが発表され、2四半期連続でのマイナス成長でテクニカル・リセッション(景気後退)を確認し、売りに押される場面がありながらも上記の米FRBの金融政策見通しについては経済指標悪化により引き締めペースが鈍化するのではないかとの憶測が飛び交い、急反発に転じました。まさしくパウエル米FRB議長の「データ次第」という言葉が市場解釈では都合良くも悪くも取れる発言であったことを表した相場になりました。
さらに、この日はバイデン米大統領およびイエレン米財務長官が米国景気について会見を行いました。バイデン米大統領は「マイナスGDPについてインフレを抑制しようとしているのだから景気減速は仕方ない」と釈明、さらにイエレン米財務長官も「米国は経済回復の新段階」と発言し、マイナスGDPも1%程度なら景気後退はマイルドなものと楽観的かつマイナス成長を正当化する見方が広がり、株式市場は主要3指数ともに続伸しました。
ただし、債券市場ではマイナスGDPを重く受け止めているとみられ、米国債が短期・長期の各年限で大きく買われて金利が一段と低下しました。パウエル米FRB議長会見後から積極利上げが行われないならと抑制されてきた期待インフレ率が上昇、長短金利の逆イールドはスプレッドが縮まっています。
短期的には米議会上院で4300億ドルの財政出動に合意し、金融政策も金利は引き上げながら裏では金融緩和しているのが現状で、これは株価にとっての支援材料です。米国株に対する弱気ポジションの極端な偏りが、市場センチメント次第でショートカバー(売り方の買戻し)に拍車がかかることでグロース株買いが起こりやすくなっていますが、債券市場での逆イールドが解消して長期金利が上昇し始めるようだと、今度はむしろバリュー株選好が強まっていくことになるでしょう。
【日本株投資戦略】
米FOMC通過で不透明感解消、金融緩和相場の継続でグロース株が足元の堅調さを誇示
日本株は7月米FOMCで極端な波乱展開を回避した米国市場の動きを好感し、一段高で日経平均28,000円の大台回復を目指しています。昨日は一時的にこれを上回ったものの定着は阻まれて売り物に押されましたが、高寄り後に値を下げた半導体株が息を吹き返してくると再び28,000円突破も現実味を帯びてくることになります。
今回は上記の米金融政策についての理解を深めておく必要がありますので、いつもは【先読みの近未来】(スタンダード会員以上の方対象)で解説しているような内容になりますが、ここでの紙幅を割いて詳しく述べることにします。
足元では米国および世界景気の悪化が経済指標悪化、さらにIMFが成長予測を前回からさらに下方修正したようにファンダメンタル悪化が鮮明であるにもかかわらず株価上昇がみられています。この点に関しては先週から指摘してきたとおり、本質的には「米FRBが金融引き締めではなく、金融緩和を行っている」事実に起因するものです。
今回の米FOMCのポイントは0.75%利上げ決定と今後の金融政策見通しについて「データ次第」と曖昧な表現に市場における事前観測を妨げる当局の意図が隠されています。このデータ次第というところで言いますと、米国の金融政策は3月より利上げ開始、6月からQT(量的引き締め)開始だったはずですが、実際には6月に量的緩和を中断して確かにバランスシートを縮小させましたが、現状ではまた買入を行ってバランスシートが拡大しています。
つまり、米FRBはたしかに大幅利上げを断行し、政策金利を2.25%まで引き上げるに至りましたが、7月第3週からは隠れてQE(量的緩和)を行っていたこともあり、米国債の金利低下を促していたわけです。これによって株式市場では金融緩和相場の特徴めいた動きになるのも当然で、グロース株復活を演出されているのが現状です。
ただし、これには当然副作用があり、米FRBに対する信認低下といった抽象的なものもそうですが、何よりもインフレ抑制ではなくインフレを助長するものとなりかねない点です。【米国株概況】で解説のとおり、バイデン米大統領は米国景気について言い訳をしていますが、最終的にはこの責任を米FRBのものにしてしまえば現政権の面目は保てると考えているフシがあります。
日本株は決算シーズンですので、この間には今の金融市場環境をふまえると業績相場が継続することが期待できますが、米FRBが再び隠れQE政策を取り止めて質的(金利)・量的(債券買い入れ)引き締めを同時に行えば市場に波乱を巻き起こすことになります。借金の返済を中断して新たに借入を増やせばそのツケは後になってより大きく払わされることになりますよね。金利が上昇すればなおさらです。家計と一緒です。
そして当然のロジックですが、事実上の金融緩和によって、すでにピークアウトしたとしきりに報道されているインフレ懸念が再燃してくれば、より大幅な利上げが必要になってしまうことを肝に銘じておかなくてはなりません。それは近い将来で米FRBが利下げに転じてくると今の市場が期待している希望的観測を打ち消すものに他なりません。つまり、市場の先行きはインフレか景気後退かの二者択一の現状から逃れることはできず、それは名実ともに「データ次第」ということです。解説者にとってしてみればなんとも都合の良い言葉です(笑)。実際の先行きについては、金融政策の分析だけでは足りませんので、【先読みの近未来】(スタンダード会員以上の方対象)で国際情勢も交えながらより深掘りしていきます。
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