【7/21日本市場の確認ポイント】
日経平均 27803.00(+0.44%)[27,549~27,803]
TOPIX   1950.59(+0.21%)[1,935~1,951]
マザーズ  714.67(+2.79%)[698~716]

値上がりセクターTOP5
1.農林・水産(+1.27%)
2.海運(+1.17%)
3.精密機器(+1.12%)
4.紙・パルプ(+1.05%)
5.金属製品(+0.87%)

値下がりセクターTOP5
1.鉄鋼(▲2.04%)
2.電気・ガス(▲0.78%)
3.空運(▲0.75%)
4.証券・商品先物(▲0.62%)
5.ゴム(▲0.55%)

 7/21の日本市場は日銀金融政策決定会合および欧州ECB理事会を前に様子見ムードが強い中、昼過ぎに日銀による政策現状維持の公算が伝わると、徐々に買い安心感が広がり上値を試しました。引けにかけては日経平均が3ケタの上昇となり27,800円に到達して6/10~11のマド埋めを完了しました。

 米国ナスダック続伸からグロース株中心にしっかりの展開で、半導体株こそ前日に大幅高した反動から伸び悩みでしたが、値がさ株のファナック(6954)やダイキン工業(6367)、)寄与率は低いものの富士通(6702)なども買われています。決算発表で注目の日本電産(6594)は反落、ほかに個別では川崎汽船(9107)など海運大手が続伸、石炭株の三井松島(1518)が大幅高で年初来高値を更新しました。

 中銀イベントで様子見ムードでも序盤から良い値動きを見せたのが新興・小型株でマザーズは+2.8%の大幅高で700ポイントの節目および6/9高値を更新、戻りに勢いがついてきました。グロース市場では地合い改善とともにテクノロジー株が乱舞し、+5%超えの上昇銘柄が多く輩出されました。この日上昇した銘柄はとくに今後も注目に値しますので要チェックでしょう。

【米国株概況】
経済指標悪化でも戻りを強める欧米株、その背景にある金融政策の支援材料がカギ

NYダウ 32036.90(+0.51%)[31,534~32,040]
S&P500 3998.95(+0.99%)[3,927~3,999]
NASDAQ 12059.61(+1.36%)[11,812~12,060]
ダウ輸送株 13865.4(▲0.39%)[13,769~13,896]
半導体SOX 2916.8(+1.53%)[2,845~2,918]
日経平均先物(CME) 27,865(+0.31%)[27,510~27,885]
ドル/円 137.29~138.86
米10年債利回り 2.882%(高値3.498%:6/14、安値1.668%:3/7)
WTI原油 96.58(高値123.68:6/14、安値88.53:3/15)
金先物 1717.50(高値2,085:3/8、安値1,695:7/14)
銅先物 3.3090(高値5.0395:3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)23.11(高値37.79:2/24)
Fear&Greed指数 41(FEAR:恐怖)
High Yield Bond (HYG)76.99(安値72.92:6/13)

 7/21の米国市場は決算発表後のテスラが+10%近く上昇したのをはじめ、売上高が市場予想を下回ったネットフリックスも+3%超の上昇で続伸し、テック企業の成長鈍化に対する警戒感も薄らいで、ナスダックを中心に反発の動きを強めました。

 企業決算真っ最中の米国では金融大手のボロ決算でも買われている様子を見れば、地合いの改善に依拠しているところは大きいものの、先週から半導体SOX指数の戻りが勢いを増していることやリスク指標がそれぞれ大きく改善していることからもリスク選好ムードが強まっています。

 ただし、ファンダメンタルは更なる悪化傾向を示しており、昨日最も衝撃的だったのは7月フィラデルフィア連銀製造業景況指数が市場予想を大きく下回り、総合で▲12.3%となり、前月の▲3.3%から一段と低下でマイナスは4カ月連続。とくに新規受注の落ち込みが▲24.8%(前回は▲12.4%)、6カ月見通しが▲18.6%(前回は▲6.8%)とすこぶる悪化しています。良い点に目を向ければ出荷の改善や在庫の減少などもありますが、これを見ると半導体SOX指数の足下の反発は本当に織り込み済みで反転しているのか疑わしくなります。おそらくはこれが底で、悪材料出尽くしになるとの市場解釈なのかもしれません。

 加えて、直近では住宅関連指標や雇用関連指標も悪化しており、本来ならば悪材料視されそうなところを市場はこれを無視して戻りを強めています。おそらく違和感を感じている方も多いかもしれませんが、足元の反発は金融市場における需給面での改善影響が大きいことを認識しておかねばなりません。

 前回の【米国株概況】でも7/14で一旦底入れとなった可能性について述べましたが、これを裏付けるものとして米FRBのバランスシートに着目すると直近で増加が確認されます。つまり、6月から開始されたはずのQT政策(量的緩和縮小)がストップして米FRBによる隠れQE(量的緩和)が再発動しており、市場に流動性が供給された影響が大きいと考えられます。

 昨日の欧州ECB理事会では11年ぶりの利上げに踏み切ったとニュースになっていますが、欧州ECBは0.5%の大幅利上げとともに分断化阻止ツールとして「トランスミッション・プロテクション・インスツルメント(TPI)」を導入するとして、債券購入に含みを持たせる形を取りました。先週の7/14以降での欧州株の反発は、これによって財政が脆弱な南欧諸国のクレジットリスクを和らげることができるとの見方から反転したものと推察されます。

 目先で米FRBが7月FOMCに臨みますが、0.75%および1.00%利上げもあり得るとの憶測も飛び交う中、金融引き締めに対する警戒感が和らいで市場はリスクオンになっています。市場がいくら利上げ幅を織り込み済みとしてもこのような大幅利上げの影響は避けられず、いずれ逆風になって返ってくるのは明らかです。現段階において市場経済に利上げ耐性がついてきたと考えるのは早計で、足元の金融市場は日米欧の実質的な量的緩和によって下支えされているものとの認識が必要でしょう。

【日本株投資戦略】
好地合いで決算シーズン入りする珍しい相場環境、短期間のサマーラリーとの割り切り必要

 欧米市場の反転を好感して日本株は日経平均27,800円台までを回復、27,000円の節目を突破した後の値軽さも加わって3月・6月につけた28,000円台を窺う動きを見せています。昨日の日銀金融政策決定会合では黒田日銀総裁が世界のインフレ圧力、金利上昇圧力が強まる中でも政策の現状維持、いやむしろ国債買いオペで金融緩和政策を強力に推進していることから日本株の底堅さを浮き彫りにしています。

 欧米株と比較しても下押しの浅かった日本株について、ここからは企業決算シーズン入りで日経平均などの指数よりも個別株によっての明暗が分かれるところとなってきます。昨日の日本電産(6594)の株価反応を見る限りでは、1Q(4-6月)の6月末為替水準がドル円で135円付近、ユーロ円で142円付近であったことから輸出企業は軒並みこの好影響が反映されるはずです。

 足元では特にユーロ売りが強まっていましたし、欧州ECBが大幅利上げを決定した以上、欧州圏でのビジネスが多い企業は次回2Q以降での見通し悪化が懸念されるところです。北米中心にビジネスしている企業は米バイデン政権の米ドル高政策が続けられている間は好調かもしれませんが、これが転換してくると一気に環境が悪化しかねないことを頭の片隅に置いておいた方がよいでしょう。

 現状では決算を通過した企業が次々と値上がりする状況が目につきますので、好地合いのおかげもあって、決算を無難に通過したというその事実だけで投資家の触手が伸びやすくなっています。つまり、今回の決算シーズンでは株価の一次反応が実体よりも高く評価されて上昇しやすい環境ということです。ただし、そこから数日後の二次反応や1週間、10日経って買いの手が止まった後の動きでは逆の動きが生じやすいことも留意しながら短期物色するようにしましょう。

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