【2/12日本市場の確認ポイント】
日経平均 38,963.70(+0.42%)[38,794~39,102] 
TOPIX   2,733.33(+0.01%)[2,720~2,740] 
グロース250 692.66(+1.38%)[682~693] 

値上がりセクターTOP5
1.非鉄金属(+3.69%)
2.鉱業(+2.10%)
3.海運(+1.92%)
4.ガラス・土石(+1.72%)
5.水産・農林(+1.39%)

値下がりセクターTOP5
1.繊維製品(▲6.32%)
2.証券・商品先物(▲2.09%)
3.医薬品(▲1.89%)
4.その他金融(▲1.59%)
5.金属製品(▲1.17%)

 日本株は2月初日の大幅安から続いたトランプ関税警戒売りが外需株の重しとなるも日経平均は38,000円下限のレンジを堅持、その後の日米首脳会談に対する懸念も緩和して買い戻しムードが高まっています。日本の長期金利上昇が続く中、為替ドル円も一時150円台突入の場面があるも株価反応は限られ、足元は企業決算に視線が集まっています。

 トランプ関税警戒や企業決算シーズンでボラティリティが高い状況が続く中、市場物色は明暗が分かれる個別株の選別が際立っています。決算プレイ以外ではトランプトレード等のテーマ物色のほか、企業の自社株買いをはじめ株主還元策やMBO、TOBなどの材料物色、さらに大型株より中小型株を選好する度合いが強まっています。

 マクロや外部環境の懸念材料が先行き不透明感を意識させる中、主力株は方向感を見出しにくい展開となる一方で小資金でも動きが軽快な新興・小型株に食指が伸びやすい状況となっています。中小型株の中には決算悪材料や日本の金利上昇など懸念点も多いですが、日経平均やTOPIXの足踏みとは対照的にグロース250指数は上値志向を強めて昨夏以来の戻り高値に達しました。

【米国株概況】
トランプ関税発動と利下げ圧力の再開が強弱感の対立を演出、ウクライナ戦争終結で復興ビジネス開始のゴング

NYダウ 44,368.56(▲0.50%)[44,104~44,467]
S&P500 6,051.97(▲0.27%)[6,003~6,063]
NASDAQ 19,649.95(+0.03%)[19,415~19,682]
ダウ輸送株 16,317.3(▲0.36%)[16,144~16,390]
半導体SOX 5,090.8(+0.21%)[4,992~5,093]
日経平均先物(CME) 39,165(+0.42%)[38,755〜39,230] 
ドル/円 152.38~154.80(高値161.99:7/3、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 1.337%(高値1.345%:2/12、安値0.131%:2022/3/6)【高値更新】
米10年債利回り 4.627%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 71.37(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2929.00(高値2,968:2/11、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 4.692(高値5.199:5/20、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)15.89(高値65.73:2024/8/5)
SKEW指数 166.10(安値110.34:2022/11/3、高値180.09:12/24)
Fear&Greed指数 44(FEAR:恐怖)
High Yield Bond (HYG)79.31(安値70.30:2022/10/13)

 米国市場は企業決算による一喜一憂とともに売り買いが交錯する一方、マクロ経済指標は1月の米雇用統計や米CPI(消費者物価指数)が発表され米FRBの金融政策は当面にわたり現状維持が続く公算が高まりました。市場ではトランプ関税をめぐる影響注視や欧州の政治混乱、ウクライナ問題や中東地域の地政学リスクといった不確実性も高まる中、米国経済の安定化のために金利環境とインフレの動向を見極めようとしています。

◆【米雇用統計】強弱が混在、3月は据え置きの公算-市場関係者の見方(2025/2/8)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-02-07/SRBHYET0AFB400?srnd=cojp-v2
◆遠ざかる追加利下げ、米CPIは予想上回る-住居費や食品上昇が影響(2025/2/12)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-02-12/SRKOBTDWRGG000?srnd=cojp-v2
 
 パウエル米FRB議長は議会証言の中で米国経済の堅調を確認するとともに利下げサイクルを急がない方針を改めて表明。これに対しトランプ米大統領が米金利を下げるべきと言及し、2月初旬とは異なる見解を示し始めました。この間にトランプ米大統領は対中追加関税や鉄鋼・アルミ関税を発表しており、関税政策による輸入インフレと景気悪化のネガティブ影響を米財政再建と利下げによる米景気刺激で相殺しようとする思惑があるとみられます。また、傍若無人な振る舞いで左派メディアに敵視されやすいトランプ米大統領ですが、関税政策においては無秩序な関税競争でなく一定の配慮も覗かせて医薬品や自動車などの相互関税については免除も検討しているとのことで市場の買戻しを誘っています。

◆FRB「当面は制約的政策を維持」、物価目標未達 議長が議会証言(2025/2/13)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/CROAV4PVS5PXLMLT5T56IFKGGA-2025-02-12/
◆金利引き下げるべき、低金利は関税と「連動」=トランプ大統領(2025/2/13)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/KHVQPRX4EJPXXEC4Q6RHAMIFII-2025-02-12/
◆トランプ米大統領、利下げ一時停止は正しい判断-従来姿勢から転換(2025/2/3)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-02-03/SR34V2T1UM0W00?srnd=cojp-v2
◆トランプ氏、鉄鋼・アルミ輸入に25%関税賦課-貿易戦争激化へ(2025/2/11)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-02-10/SRHODWT0AFB400?srnd=cojp-v2
◆米政権、相互関税の免除を検討 自動車や製薬など=米下院議長(2025/2/13)
https://jp.reuters.com/markets/commodities/LGFI5T2F6FJ7XMHWQYZBZ45XOQ-2025-02-12/

 今後もトランプ政策と米経済指標を注視しなければならないですが、トランプ政権発足前に叫ばれた不確実性は政策の全体像が徐々に明らかになるにつれて薄らいできていると思います。トランプ政権下で最も重要なのは米ドル覇権をめぐる通貨戦略にあるとみており、当面の間は関税政策とともにインフレ継続対応から米ドル高政策も継続とみられ、これにより関税を賦課される諸外国は自国通貨安で輸出産業の打撃が軽減されるものと考えられ、意外にも貿易システムは均衡を保つことでしょう。この間に米国は財政赤字と貿易赤字という双子の赤字について米財政の立て直しに着手、貿易赤字は日本や欧州などへ戦略的増産で余剰になるLNG輸出や防衛費増額に伴う兵器輸出などで埋めていくことになるのではないでしょうか。この点はバイデン政権でもトランプ政権でも軍産複合体や医産複合体の市場支配力を最大限に活かそうとする姿勢は変わらなそうです。つまり、米産業振興の観点から米ドル安政策への転換を見計らいつつも米ドル覇権の堅持という点をより重要視しているものとみられ、トランプ米大統領の利下げ発言やドル安発言などはポーズでしかない可能性もありそうです。

◆円が対ドルで大幅安、関税巡る警戒感と米CPI-155円試すとの見方(2025/2/12)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-02-12/SRKP1ZDWLU6800
◆◆ベッセント米財務長官、強いドル政策はトランプ政権下でも堅持(2025/2/7)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-02-06/SR9XJXDWRGG000?srnd=cojp-v2
◆トランプ米政権、ドルの伝統的戦略放棄か-貿易赤字と口先介入に力点(2025/2/12)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-02-12/SRJNW6T1UM0W00?srnd=cojp-v2

 米国が米ドル優位性の維持を最重要とするのは裏を返せば国際金融上で米ドルの信認が揺らいでいることの表れでもあり、足元の金価格上昇や仮想通貨ビットコインの上昇などにはそうした背景も含まれます。それもこれもコロナパンデミックやウクライナ戦争を口実に米ドルを無尽蔵に刷りまくった副作用で、とくにバイデン政権下における財政出動や各種補助金などムダ遣いが決定的な引き金となりました。現在、トランプ政権下ではイーロン・マスク氏のDOGEが米政府のムダ遣いや海外援助を通じてリベ―トを受け取った政府職員などの一掃、国家あるいは準ずる下部組織ぐるみでのマネーロンダリング実態の解明などに取り組んでいます。これで米国一強のメッキが剥がれてしまうことにもなりかねない話ですが、不正を粛正して立て直すこともまたトランプ米政権に課せられた役割といってもよいかと思います。

◆◆◆トランプ大統領、米債務水準に疑問符 「不正の可能性」指摘(2025/2/10)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/S2CYYF7XCRIBHB5XLW2TYA5HSE-2025-02-09/
◆トランプ氏の米財務省「問題」発言、債務ではない-ハセット氏が説明(2025/2/11)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-02-10/SRHCBPT0G1KW00?srnd=cojp-v2
◆◆マスク氏のDOGE、連邦中央会計報告システムにアクセスへ-関係者(2025/2/9)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-02-09/SRE0ITDWX2PS00?srnd=cojp-v2

 また、トランプ政権が担う最大の役割はバイデン政権あるいは米民主党が仕掛けた地政学リスクなる戦争経済を終焉に導くことで、とりわけウクライナ問題の解決が期待されます。トランプ米大統領はかねてよりウクライナ戦争を終結させると公約に掲げ、政権発足と同時に終わらせることは現実的に叶わなったもののプーチン露大統領との協議を実現しました。今年前半のうちに少なくとも停戦協議を実現し、ウクライナのゼレンスキー政権の存続を容認するか次第ですがウクライナ復興へ向けた道筋も示されることと思われます。足元でトランプ米大統領はゼレンスキー政権とも協議してウクライナ産鉱物資源の取引などを通じたウクライナ支援の継続なども表明していますが、最終的にはウクライナ勢の理想的要求は退けて現実的な問題解決を突きつけるものと思われます。

◆◆◆ウクライナ停戦交渉開始、米ロ首脳が合意-米政策は大きな転換点に(2025/2/13)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-02-12/SRKY0ADWLU6800?srnd=cojp-v2
◆米閣僚、ウクライナ停戦へ欧州に続々 財務長官現地入り(2025/2/12)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN114RF0R10C25A2000000/
◆◆米国との鉱物資源協定は「安保の盾」、財務長官がウクライナ訪問(2025/2/13)
https://jp.reuters.com/markets/commodities/PVTZZB3F35PLNLK6KSNRSXLWDI-2025-02-12/

 世界中を巻き込んだウクライナ戦争が終結に向かうことでリスクマネーはより活性化することが見込まれ、とくにウクライナ復興をめぐる利権獲得競争は欧米中心に日本や中国、中東なども参加して待機マネーが一気に噴出するきっかけとなる可能性があります。このウクライナ復興の基金立ち上げに携わったブラックロックやJPモルガンなどはもとより多くの政府系ファンドが復興ビジネスに関わろうと資金を拠出するはずです。同時に、破壊と再生のプロセスでは常に時代の最先端技術が駆使され、未完成な技術には実証実験の場も必要となることから、おそらく覇権競争の中心になるであろうAIの社会実装はウクライナ復興とともに進められていくのではないかと思います。米企業はその中で中心的役割を担うものと考えられますが、同時にディープシークなどをはじめ中国勢との競争も過熱していくとみられ、地政学リスクの舞台は東アジアに移ってくることになるのでしょう。

◆◆パリでAIサミット開幕 開発推進や規制、欧州の役割強調(2025/2/10)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR0905Y0Z00C25A2000000/
◆◆フランスのAIプロジェクトに企業が17兆円投資へ-マクロン氏発表(2025/2/11)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-02-11/SRI0P2T0AFB400?srnd=cojp-v2
◆◆米英、「包括的で持続可能な」AI目指す宣言に署名せず サミット(2025/2/12)
https://jp.reuters.com/world/us/OYMDLCWBRZOPFJDCYEONZ3WXBM-2025-02-11/
◆◆米政権「最強のAI構築」、過度な規制に警鐘 バンス副大統領演説(2025/2/12)
https://jp.reuters.com/business/technology/QI7Z3RSEXJMJBGKCK6YQI2QYDM-2025-02-11/
◆◆「人類運命共同体」構築に向け協力=AIサミットで中国副首相(2025/2/12)
https://jp.reuters.com/world/china/RIUKKWYW6NOFPGXSO3VWPSWO6E-2025-02-11/

【日本株投資戦略】
日米首脳会談で投資センチメント改善、日本株の再評価およびグロース株の出直りに期待

 日本市場は引き続き日銀利上げ観測を背景とした金利上昇が意識される中、株価は企業決算で悲喜こもごもの個別株物色が中心の展開です。トランプ関税政策に対する警戒感が漂う中、日米首脳会談が無難に終えたことで日本株は買い戻しが優勢となりました。

 日米首脳会談ではトランプ米大統領の圧力をうまくかわすことができたと言ってよいか分かりませんが、ひとまず対米投資の拡大とLNG購入で貿易不均衡の是正に努める形で合意したとみられます。トランプ政権は日本を槍玉に挙げて対日関税を賦課することはありませんでしたが一律関税の一環として鉄鋼・アルミ関税を発動のほか幅広い分野での相互関税も検討と発表し、市場では対米輸出の規模に応じて警戒感を誘いましたが、一方で自動車や製薬などの分野は免除も検討されていると伝わり投資家センチメントの改善につながりました。

◆◆日米首脳「USスチールは買収でなく投資」、米産LNG輸入拡大で合意(2025/2/8)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/7EXUXP7435NXNL4OSNQNLN7RP4-2025-02-07/
◆◆石破首相、対米投資「1兆ドル」表明 関税回避へ貢献強調(2025/2/8)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA07CFL0X00C25A2000000/
◆「相互関税」米が11日にも詳細 低税率日本は直撃回避?(2025/2/10)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA0653W0W5A200C2000000/
◆米国の鉄鋼・アルミ関税、日本政府が適用除外申し入れ(2025/2/12)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA1216X0S5A210C2000000/
◆米政権、相互関税の免除を検討 自動車や製薬など=米下院議長(2025/2/13)
https://jp.reuters.com/markets/commodities/LGFI5T2F6FJ7XMHWQYZBZ45XOQ-2025-02-12/

 日本株は日米首脳会談を通過したことで下値警戒が和らぎ、足元では為替も米雇用統計や米CPIの結果を受けて米ドルが再び買い戻されてドル円も155円が視野に入ってきました。ここのところ株価と為替の感応度がやや鈍くなっておりましたが、主力企業の決算も一巡してきたところで円安を追い風に日経平均やTOPIXも25日移動平均線を上抜けてきました。

◆円は1ドル=151円台半ばに上昇、日銀利上げ観測-日米首脳会談警戒(2025/2/7)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-02-06/SR8IQ0T0G1KW00?srnd=cojp-v2
◆円、対主要国通貨で独歩高 トランプ関税が買い材料(2025/2/7)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB315JH0R30C25A1000000/
◆円が対ドルで大幅安、関税巡る警戒感と米CPI-155円試すとの見方(2025/2/12)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-02-12/SRKP1ZDWLU6800

 やはり日銀のタカ派姿勢から長期金利の先高観を醸成し、国内金利の上昇に歯止めがかかっていないことで株価の重しとなっている面は否めません。それでもなお新興市場のグロース250指数の躍進や半導体株などクオリティグロースの出直りも期待される状況で、要は日銀のターミナルレート(金利の最終到達点)はどこかを探りたい一方で金利上昇を理由に株売りという圧力も減退してきたように思われます。どうやら日銀や中央銀行のお目付役であるIMF(国際通貨基金)では1.5%前後で中立金利に近づくとの見立てで、時間軸は2027年頃としていることから残る2年間で政策金利を1%引き上げるとすれば0.25%ずつ4回に分けて、年2回ペースが妥当との見方になります。日銀は先日の1月会合で追加利上げを実施したことから次回は半年後の7月会合まで利上げ停止となる公算で、この間に日本株は上値を試しておく必要があると言えます。

◆債券15時 長期金利、1.340%に上昇 5年は1%に到達(2025/2/12)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFL126490S5A210C2000000/
◆政策金利の調整幅、その時々の経済・物価・金融情勢次第=日銀総裁(2025/2/12)
https://jp.reuters.com/economy/bank-of-japan/A6OYIYPS4FJBPN6AZ65P2KLFDY-2025-02-12/
◆◆日銀は年内に追加利上げへ、27年末までに中立金利に=IMF(2025/2/7)
https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/UNJ7AEAXEFJ4RIM2EVCBZGCJCI-2025-02-07/

 日経平均が今年前半のうちに昨年来の史上最高値を更新するとの前提に立った場合、金利上昇に歯止めがかかったタイミングで指数寄与度の大きいクオリティグロース株を狙い打ち、そこから出直り本格化してくるタイミングはいつかを逆算して考えるとまさに今ということになります。トランプ関税の不確実性や欧州の政治混乱から債券が買われて金利低下しやすい2月後半は決算売りも一巡して出直り前の仕込み場とみることができます。

 ただ、日本の金利上昇を警戒する上で日銀の政策判断も重要ながら、インフレを背景に金利上昇ペースが日銀のコントロール下から外れてしまう可能性もあり、とくに日本財政の利払いや日本国債の格付けに影響が及ぶような事態も考慮しなければならない日がやってくるかもしれません。その場合、日本国債の機械的デフォルトもあり得ない話ではないことから今年あるいは来年の予算編成は重要と言え、また、補正予算ありきで気軽に財政出動を行う今までのようなやり方は非常に危険で日本株の暴落を引き起こしてしまう可能性もあるでしょう。そこで石破政権および財務省は財政出動に代わり財政投融資の財源なしに借金して産業投資できる仕組みを整えようとしており、それを特別会計の下で可能にする法改正に動いています。これはつまり簿外資産を通じて成長投資に結びつけようとする方策とみられ、今国会で承認されれば日本は米中に引けを取らない産業振興策を講じることも可能になるかもしれません。

◆◆IMFが日本財政に警鐘、「明確な健全化計画を」-補正予算に苦言も(2025/2/7)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-02-07/SR3EDFT0G1KW00?srnd=cojp-v2
◆◆国の産業投資、「借金」活用可能に 脱炭素など後押し(2025/2/10)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA1075D0Q5A210C2000000/

 日本企業は今回の決算シーズンで業績悪化懸念はある程度払拭されたようにみられますが、一方で今後の持続的成長という点ではやや不安を残します。また、政策保有株の売却などで潤沢な内部留保があっても有効な成長投資に回されず結局ROEが低いままなのは要改善点で、アクティビストなどからの圧力も強まっているのに応じて株主還元で株価を浮揚させることが出来てもそれは一時的なものに過ぎません。
 なにも成長投資に振り向けたり事業投資でなくともCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を通じて新興ベンチャー投資を積極下させたりするのも一手でしょう。資本の潤沢な大手企業がグロース市場や未上場の新興企業と積極的に手を組む動きが活発化して日本市場を活性化させれば海外勢も重い腰を上げてくるに違いありません。実のところ、そうした動きは数年前から兆しは出始めており、トランプ関税で半ば強制的に外部環境に変化が生じることがわかっている以上、改めて内需創出とそこで培った成長モデルの輸出が日本企業の勝ち筋になるのではないかとみられます。製造業の国内回帰も進みやすい中で今後はやはりAI活用と人的資源が決定的な差になるとみられ、為替差益でなんとか増益確保するのがやっとの企業は次第にこぼれ落ちていってしまうでしょう。

◆TOPIX採用企業の今期純利益予想6.7%増、4年連続最高益ペース=SMBC日興集計(2025/2/7)
https://jp.reuters.com/markets/japan/NNU4SVZ5QBPCRHBWN6UKJF2WXY-2025-02-07/
◆製造業が増益に転換 4〜12月8%増、AI・インフラ好調(2025/2/7)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOTG059OS0V00C25A2000000/
◆◆コラム:「トランプ関税」に一喜一憂は不要、為替変動が影響緩和(2025/2/10)
https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/6SH636VO2BOBNK7F2LGILXTR5M-2025-02-10/