【2/5日本市場の確認ポイント】
日経平均 38,831.48(+0.09%)[38,682~39,118] 
TOPIX   2,745.41(+0.27%)[2,734~2,768] 
グロース250 654.88(+1.09%)[648~654] 

値上がりセクターTOP5
1.海運(+2.94%)
2.その他製品(+2.82%)
3.輸送用機器(+2.60%)
4.情報・通信(+1.27%)
5.倉庫・運輸(+1.20%)

値下がりセクターTOP5
1.空運(▲1.34%)
2.水産・農林(▲1.17%)
3.石油・石炭(▲0.99%)
4.精密機器(▲0.87%)
5.陸運(▲0.63%)

 日本株は引き続き中国AI企業ディープシークの脅威に揺れた半導体株やデータセンター関連などハイテク株の乱高下に振り回される展開のほか、トランプ米政権による関税政策においても動揺する場面があり不安定な状態が続いています。ただ、リスクオフ時の為替には円高圧力がかかりつつも日銀会合前後の下値は維持され、日経平均もまたこれまでの38,000〜40,000円レンジを概ね継続した動きとなっています。

 トランプ関税を巡る警戒感が株価の重しとなる中、足元でトランプ米大統領と協議のメキシコ・カナダは譲歩する姿勢を示し2/4に予定されていた25%関税賦課の時期が延期され市場には安堵感が広がりました。一方、中国には従来どおり10%追加関税が発動されるなど警戒再燃、米株先物に引っ張られて日本株も上げ幅を急激に縮小するなど翻弄される場面もみられました。

 日銀イベント通過やトランプ関税を巡る警戒感もやや後退から全体の方向感としては買い戻しが優勢、ただ、個別株はちょうど決算シーズンとも重なる中で業績次第の物色が強まっている様子も窺えます。大きくは一進一退で日々の値動きが激しくなっている点に注意が必要も、トヨタ(7203)はじめ主力株の決算開示から日本企業の業績懸念も和らぎ次第に下値を切り上げていく展開とみられます。

【米国株概況】
トランプ政策の不透明感と米企業決算の調整ムードに一服感、米金利低下でハイテク株選好が復活へ

NYダウ 44,556.04(+0.30%)[44,328~44,597]
S&P500 6,037.88(+0.72%)[5,990~6,042]
NASDAQ 19,654.02(+1.35%)[19,408~19,666]
ダウ輸送株 16,137.3(+0.20%)[16,096~16,207]
半導体SOX 5,091.5(+2.31%)[4,945~5,102]
日経平均先物(CME) 39,110(+0.88%)[38,580~39,305] 
ドル/円 154.17~155.53(高値161.99:7/3、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 1.280%(高値1.29%:2/5、安値0.131%:2022/3/6)【高値更新】
米10年債利回り 4.422%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 71.21(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2883.69(高値2,905:2/5、安値1,618:2022/11/3)【高値更新】
銅先物 4.439(高値5.199:5/20、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)15.77(高値65.73:2024/8/5)
SKEW指数 159.44(安値110.34:2022/11/3、高値180.09:12/24)
Fear&Greed指数 40(FEAR:恐怖)
High Yield Bond (HYG)79.72(安値70.30:2022/10/13)

 米国市場は米FRBが1月FOMCで追加利下げ見送りを決定しトランプ政策の影響を見極めようとする中、トランプ米政権による対外関税政策ではまずカナダ・メキシコ・中国が標的となり、世界経済が再び貿易戦争によるサプライチェーン混乱に見舞われるのではとの懸念から米国株は高値圏から急落となりました。

 足元では米企業の決算シーズンが本格化を迎えてかねてよりの米株割高感も意識されやすい中で、先日の中国AI企業ディープシーク・ショックに続きトランプ関税政策をめぐる警戒感も利益確定売りの口実として都合よく使われている印象です。米FOMCにおける利下げ見送りが市場波乱になることなく米金利も落ち着きをみせていることから、米株の上昇トレンドにおいてトランプ関税はノイズ効果で押し目買い好機を演出しただけといってもよく、次第に市場も慣れていけば本格的なリスクオフにつながるものではないとみられます。

 トランプ米政権による関税政策を巡っては従来メキシコ・カナダへの25%関税が警戒されましたが、トランプ米大統領と両国の大統領における協議を通じてそれぞれ発動延期をとりつけ、市場の安心感を誘いました。元は一律関税や2.5%刻みで段階的な関税賦課との観測もあったところから二転三転する形で、結果的にはトランプ米大統領にとっての交渉材料としての位置づけでメキシコ、続いてカナダへの関税は見送りとなりました。その中で最も強調されたのは不法移民問題や麻薬密売問題であり、米国の貿易赤字削減とあわせてトランプ米政権の優先順位が垣間見えるものでもありました。他方、中国に対しては第1次トランプ政権期の関税に上乗せする形で10%の追加関税を賦課することとなり、今後の対応は米中首脳会談次第といった情勢でゆくえが注目されます。

 市場はカナダ、メキシコへの柔軟な対応を好感したように中国に対しても米中首脳会談の結果次第では追加関税の取り下げも期待する部分などもふまえて買戻しの動きも強まっています。ただ、米国としての国家戦略上からは対中外交で軟化する可能性は薄いと言わざるをえません。しかし実のところ、トランプ米大統領は1期目の米中貿易戦争の時点から中国の習近平国家主席とは一定の合意形成があったとみられ、いわば米中関係の緊張を演出しながら管理貿易の中で内政の立て直しを図ってきた実績があります。
 米国による対中追加関税への対抗策として中国もただちに報復関税および重要資源の輸出規制なども相次ぎ発表しましたが、今回は対米貿易の規模が小さいものに限定されていたり、これまでの対中敵視政策を通じて米国以外への供給先を模索してきた中国にとっては代替輸出先を広げるきっかけとなる話だったりします。仮に米国産エネルギーが高関税により魅力が薄れても対ロ協調で石油やLNGも確保できる算段がついているとみられ、極端な混乱に至るような事態にはならないとみられます。つまり、これら一連の措置はコロナパンデミックやウクライナ戦争を通じたサプライチェーンの混乱における対応の延長線上にあるものと考えられると同時に、米中双方でデカップリング、デリスキングを推進してきた経緯をふまえるといよいよその成果が試される時がきたと言ってもよいかもしれません。

トランプ氏、対メキシコ関税の発動を1カ月延期-土壇場で方向転換(2025/2/4)
米国の10%対中追加関税、予定通り発動-中国は即座に対抗措置発表(2025/2/4)
中国、米に最大15%の報復関税 グーグル独禁法調査や輸出規制も(2025/2/4)
中国の報復関税、米国産エネルギー輸入への影響は限定的(2025/2/4)
中国、タングステンなど金属5品目に輸出規制 米関税に対抗措置か(2025/2/4)
中国が米国産LNGに関税、他国に供給流れる公算-「切り離し」進む(2025/2/4)
中国が対米関税で見せた慎重さ、苦しい事情反映-10日までの合意焦点(2025/2/5)
アングル:トランプ関税、「抜け穴」封じで合成麻薬の流入止める狙いも(2025/2/3)
トランプ氏はフェンタニル問題での中国の協力無視-中国が関税で非難(2025/2/5)

 では市場がこうした流れを冷静に受け止めるかというのは案外難しく、とりわけ流動性に不安がよぎる2月・3月のこの時期は薄商いとともに激しい乱高下に見舞われやすいことを想定しておかなくてはなりません。いわば鉄火場のようなマーケットに面食らってしまいフリーズしてしまう投資家も続出してしまいそうです。この状況下、ボラティリティをむしろ利用しようとするヘッジファンドなどの暗躍や企業の自社株買いなどによって相場は下支えされ、トランプ関税の副産物として懸念されたインフレ再燃はむしろリスク回避の債券買いで金利低下を促し、結果的に相場を押し上げる要因になるものと思われます。

◆◆トランプ関税、石油・ガス価格への影響は限定的=ゴールドマン(2025/2/3)
◆◆中国の報復関税、エネルギー価格への影響限定的=ゴールドマン(2025/2/5)
焦点:トランプ関税で守りに入る投資家、全面貿易戦争突入には懐疑的(2025/2/5)

 トランプ関税に翻弄されて市場は地合い悪化の懸念が燻る一方、米経済をとりまくマクロ経済指標は堅調な推移が続いており米FRBの利下げ見送り判断を後押しすることにもなりました。そんな中で米製造業は回復の兆しをみせトランプ米大統領の志向する米国次回の利下げ時期は6月ごろとの見方ですが、トランプ政策では関税のほかにも市場に影響を及ぼしそうな問題が不法移民の取り締まり強化による雇用者数減と政府職員の大量解雇です。バイデン米政権下では米労働市場が堅調と喧伝されてきましたが、現実は移民促進と政府職員の一時雇用などで雇用統計を嵩増ししてきた面も少なからずあり、今後の米労働指標が急激に落ち込むようであれば米FRBも利下げを前倒しすることも検討するでしょう。

米ISM製造業景気指数、1月50.9に上昇 22年9月以来の高水準(2025/2/4)
米求人件数、760万件と9月以来の低水準-減少傾向に戻る(2025/2/5)
米雇用者数の堅調な伸び見込まれる-年次基準改定にも注目(2025/2/2)
◆◆トランプ政権の早期退職制度、2万人が意向示す-連邦職員の1%(2025/2/5)

 一連のトランプ政策を通じて株価だけでなく金利や為替、商品市況への影響などが及ぶのはこれからですが、株価にとって最重要な米金利と米財政に深刻な混乱が生じないかぎりは強気相場が展開されそうです。足元でマクロ経済指標とあわせて注目されたのが米財務省トップが交代して定例入札の規模感変更があるかでしたが、向こう数四半期にわたり安定的な入札金額となることが示されたことは安心材料でしょう。ほかに金融市場の流動性が維持される上で重要視されてきたリバースレポ・ファシリティの残高があり、こちらはほぼ尽きかけてきました。つまり、コロナ禍を通じて供給された過剰流動性バブルは終わりが近づいてきています。

 とはいえ、市場の待機マネーは膨大に膨らんだままですので、いざという時にはある程度のクッション性を担保するとみられます。さらにはトランプ政権には奥の手というわけではないですが、仮想通貨の準備金構想とあわせて米ドルを裏付けとしたステーブルコインのデジタルドル化や米国債の保有先拡充を画策する新たな動きもみられております。願わくば伝統的手段を講じて暴落回避のために米FRBは先手を打ってQT(量的引き締め)停止の議論を本格化させた方が現実的かもしれません。上記の追加利下げを前倒し議論と合わせて考えれば、6月までのFOMCではそのどちらかを選択肢として匂わせつつ、市場期待をつなぎ止める算段ではないかと思われます。言い換えれば、米株市場には一段の流動性支援策が残されているともみられ、トランプ米政権下における株高期待を実現する手段はいくつかあるということです。

◆◆FRB、量的引き締めの先行き語らず-ウォール街は相次ぎ予測修正(2025/1/29)
◆◆米四半期入札、注目はガイダンス-新財務長官が修正するかを市場警戒(2025/2/4)
米四半期入札、中長期債発行のガイダンス維持-規模も据え置き(2025/2/5)
◆◆トランプ政権、ステーブルコインの国内回帰を推進へ – ホワイトハウスの仮想通貨責任者が明言(2025/2/5)

【日本株投資戦略】
日銀利上げ観測による金利上昇・円高でも下げ渋る日本株を再評価、日米首脳会談を機に海外勢の本格参戦を期待

 日本市場はトランプ関税をめぐる世界経済下押し警戒や日銀利上げ継続を背景とした為替円高が重しとなって上値の重い展開が続きます。ただ、足元ではマクロ動向の不透明感よりも日米ともに企業決算が本格化している中で個別株の物色が中心となっており、内容的には及第点でも高い市場期待に届かず売り浴びせで急落する銘柄も見受けられます。

 日銀会合を通過して追加利上げに対して市場は冷静に消化したとみられる一方、トランプ関税をめぐる思惑から米ドル中心に荒い値動きとなっており、直近ではカナダ・メキシコへの関税延期により米ドル高が巻き戻されて日本円やユーロが戻りを試す展開となっています。他方、中国へは麻薬フェンタニル対策はさておき問答無用で10%追加関税を賦課してカナダ・メキシコと異なる対応をみせて反発を受けたトランプ米政権ですが、中国との首脳会談は急がない考えを表明しました。トランプ関税で米ドル高シナリオは改めてカナダ・メキシコの関税発動および中国との協議を注視していくこととなり、あとはこれに加えてユーロ勢との協議のゆくえを見守ることになりそうです。

ドル上値重い、米関税の報復で株安ならリスクオフか=今週の外為市場(2025/2/3)
円は154円台前半に上昇、米指標受けドル売り-米中関税の交渉注視(2025/2/5)

 これまで為替円安で下支えされていた面もあった日本株において、足元では日銀会合後のドル円下値153円台後半を割り込んできたことで株価への下押し圧力も警戒されそうな場面です。しかし意外にも(?)為替円高がリスクオフ要因ではないためか日本株への影響は限定的で、株価と為替の円安=株高、円高=株安となってきた相関関係にも変化がみられます。ただ、指数先物への影響がなくとも個別株および企業業績には作用してくるのは当然ですから、円高メリット株や内需株を選好する向きは強まるかもしれません。外需株はただでさえトランプ関税の影響がどのように及ぶことになるのか不透明感が覆うことになるため敬遠する見方は2月中もしくは3月にかけてのところまで続く可能性を考慮しておく必要があるかと思います。

債券は下落へ、日銀利上げ継続姿勢を警戒-米金利低下は下支え(2025/2/5)
長期金利が14年ぶり高水準、毎月勤労統計上振れ-日銀利上げ継続警戒(2025/2/5)

 しかし、それでは日本株の特性上、主力を占める外需産業が本領発揮してくれないと指数の上値が重くなかなかレンジ上方ブレイクが期待しづらいように思ってしまいます。ただ、外需主導でなくとも内需の金融、不動産、情報・通信、サービス、小売りなどでも半導体株のようなド派手な動きとはならずとも下記の日銀が追加利上げに踏み切った最大の根拠とも言える個人消費に復活の兆しがみられるのであれば業績改善の期待が高まっていくことが十分に考えられます。上記の日本の長期金利が上昇していることはグロース期待の重しではあるものの、投資家の意識が金利上昇にある程度慣れてくると米国の利上げサイクル時でも株高が実現した状況をなぞる展開も見込めることでしょう。

名目賃金は28年ぶり高水準、所得環境の改善続き日銀正常化を後押し(2025/2/5)

 あとは需給面の問題で日本株の動向を左右する海外勢をいかに呼び込めるかが重要で、現実問題として海外勢は日本株に弱気ということはないですが昨夏の8.5ショックと前後して一貫性をもって買い越してくることがありません。日銀の金融政策正常化をある程度評価しつつもまだ様子見模様が続いているというのが実態で、現物・先物ともに売買ボリュームがなかなか膨らんできません。日本株売買の過半を占める彼らが本腰を入れてくるのはいつ頃かの見極めが最重要で、岸田政権下のバフェット買いのような明確なシグナルでもあればよいところです。目下、石破首相がトランプ政権発足後の満を持して日米首脳会談に臨むところですので、日米関係の健全な発展と日本の強みをうまくアピールして海外勢の刺激材料にでもなってくれればと期待したいところです。おそらく石破首相であれば心配せずとも外交成果は挙げてくれると信じていますが、会談の内容が多岐にわたることと思いますので、これをきっかけに株式市場でどのテーマが選好されやすいのか、石破トレード・トランプトレードそれぞれの関連銘柄探しも改めて復習することも大事でしょう。

【特集】石破首相が初訪米へ 対トランプ交渉の備え 7日に日米首脳会談へ(2025/2/4)
◆◆トランプ氏の年内来日、日米首脳会談で要請へ 石破首相 ー防衛力強化を説明 LNG輸入拡大に前向きー(2025/2/2)