【12/30日本市場の確認ポイント】
日経平均 39,894.54(▲0.96%)[39,864~40,325]
TOPIX 2,784.92(▲0.60%)[2,779~2,811]
マザーズ 644.18(▲0.10%)[643~650]
値上がりセクターTOP5
1.海運(+1.57%)
2.鉄鋼(+0.83%)
3.鉱業(+0.41%)
4.ゴム(+0.24%)
5.水産・農林(+0.22%)
値下がりセクターTOP5
1.サービス(▲1.58%)
2.非鉄金属(▲0.96%)
3.電気機器(▲0.93%)
4.精密機器(▲0.91%)
5.輸送用機器(▲0.89%)
2024年を通して日本株は日経平均40,000円の突破、TOPIXも史上最高値を更新するなど華々しい上昇を見せた一方、長年に亘り続けられてきた日銀の金融緩和政策が転換し出口戦略に踏み出した矢先のところで「令和版ブラックマンデー」とも揶揄される8.5ショックに見舞われ、まさに高値波乱の一年となりました。
日経平均は33,000円台スタートから12/30の大納会では40,000円の大台こそ割り込んだものの、最終的には約2割上昇と前年に続き大幅上昇を記録しました。前半戦は半導体・AIブームに沸き立ちハイテク株が先導する強気相場を演じた一方、そこから急転直下となる「令和版ブラックマンデー」をはさんだことでこの時の日経平均高安値幅は11,000円超に及びました。後半戦はショック安からの立ち直り後も高水準のボラティリティが継続し投資家は慎重姿勢を余儀なくされるも、年間を通してみれば激しい値動きとともに過去最高の売買代金を記録しました。
半導体・AIブームによる熱狂と為替円安を背景とした日本株の上昇はハイテク相場に彩られたもので、年後半は先導株の半導体株を中心に景気敏感株が総じて米中景気懸念で敬遠され、日経平均の上値を抑える重しとなりました。代わりに台頭が目立ったのが金利上昇を背景に銀行株はじめ金融株でした。米大統領選と前後して本格化したトランプラリーの中でもとりわけ熱狂を巻き起こした仮想通貨市場の盛り上がりを受け、金融株というより仮想通貨関連・フィンテック関連株がブームとなって金融市場の新たな時代到来を予感させるものとなりました。
【米国株概況】
米利下げ期待の後退で米金利上昇が重し、米株高持続を占う米企業決算と米金利のゆくえ
NYダウ 42,732.13(+0.80%)[42,436~42,782]
S&P500 5,942.47(+1.26%)[5,888~5,949]
NASDAQ 19,621.68(+1.77%)[19,379~19,638]
ダウ輸送株 16,007.0(+1.16%)[15,732~16,031]
半導体SOX 5,163.6(+2.83%)[5,059~5,173]
日経平均先物(CME) 39,595(▲0.99%)[39,185~39,685]
ドル/円 156.90~157.57(高値161.99:7/3、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 1.070%(高値1.11%:12/27、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 4.601%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 73.96(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2654.70(高値2,801:10/31、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 4.073(高値5.199:5/20、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)16.13(高値65.73:2024/8/5)
SKEW指数 157.32(安値110.34:2022/11/3、高値180.09:12/24)
Fear&Greed指数 32(FEAR:恐怖)
High Yield Bond (HYG)78.96(安値70.30:2022/10/13)
米国市場は12月FOMCにおいて今後の利下げ見通し変更が示され、継続的な利下げサイクルへの期待が後退、米金利も上昇基調を辿ることから主要株式指数はいずれも調整模様での推移となっています。2025年の幕開け2日の新年相場は株式3指数がそろって下落となり昨年末以来の高値警戒から利益確定売りが先行した形となりましたが、翌3日の取引ではAI向け大規模投資を発表したマイクロソフトをはじめ半導体、AI向け電力株などが急伸をみせるとともに株式3指数はいずれも反発に転じました。
◆ウォール街の不安を反映、新年初週の取引ではリスク回避が鮮明に(2025/1/5)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-05/SPJHS3DWLU6800?srnd=cojp-v2
◆◆マイクロソフト、今年度に800億ドル投じAIデータセンター建設(2025/1/4)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-03/SPJ290T0G1KW00?srnd=cojp-v2
新年の出足こそ不安定ながらもハイテク株周りのAI期待は根強く、折しもテクノロジー見本市イベントCES開催も相まって象徴的なEV代表株のテスラやAI代表株のエヌビディアなどがそれぞれ大幅高で反発を主導しました。その他にも投資家の注目が高い、AI・半導体関連ではスーパー・マイクロやアームといったところからパランティア、仮想通貨関連のマイクロストラテジー、AI電力関連のコンステレーション・エナジーなど昨年も話題を振りまいたミーム株が集中して買われるなど個別株の物色が活発でした。
◆2025年の米国株、時価総額1京円も AI相場の期待継続(2025/1/3)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN022IP0S5A100C2000000/
◆米CES開幕へ、主役は家電からEV・AIに 技術の変遷映す(2025/1/6)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2347R0T21C24A2000000/
新年のご祝儀相場で指数全体が買われるというよりも昨年後半のトランプラリーと類似するかのようにテーマとして選別物色される様子が鮮明です。トランプ新政権への移行を控えて政策面における先行き不透明感も強く意識される中、新年相場には慎重姿勢で臨んだ投資家が多かったものと推察されますが、米経済指標において一際弱含みが目立っていた米国の製造業が2か月連続で回復をみせたことは米国経済の強さに自信を深めるきっかけになったものと思われます。
◆米ISM製造業景況指数は上昇、2カ月連続で持ち直す-受注改善(2025/1/4)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-03/SPIPXAT0AFB400
米国経済のソフトランディング実現に最も貢献したのは力強い米労働市場であったことは間違いありませんが、トランプ新政権への移行に伴い移民政策が厳格化される可能性をふまえれば労働市場の軟化が再び注目せざるをえない日がくるでしょう。そんな折、歴史的インフレによる需要減とバイデン政権による米ドル高政策に苦しんだ米国内の製造業がここにきて持ち直す兆しを確認できたことは朗報と言えるでしょう。市場では年末年始の長期休暇も明けて最初に注目するのは週末の米雇用統計になるかと思いますが、12月FOMCで追加利下げを行った上で次回の利下げ時期については1月はスキップされる可能性が高いこともある程度織り込んでいる様子から波乱の展開は避けられるでしょう。バイデン政権も米大統領選を終えて移民政策を見直した影響が多少出てくるにしてもせいぜい横ばい程度で通過できれば、トランプ政権移行前に自律反発をみせる余力は十分かと思います。
◆米経済、2024年は緩やかだが健全な雇用拡大の年-10日に12月雇用統計(2025/1/5)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-05/SPL6KJDWX2PS00?srnd=cojp-v2
1月下旬のトランプ政権移行前で注目はやはり米長期金利が4.6%と高水準にある中でまもなく米企業の決算シーズン入りすることでしょう。株式がバリュエーションの観点から優位性をもって上昇相場に乗る上では、米10年債利回りが4.3%、せめて4.4%以下であることが望ましく、4.5%を上回っている現状からしますと株式の益回りと債券の利回りを比べたらリスク・リターンで見劣りしてしまうと考えるのがファンドマネージャーの思考です。できれば決算シーズンが本格化する前に米長期金利が低下し、米ドル高も多少なりともピークアウトしてトランプ政権への移行が完了するというのが米株高における理想の相場展開と言えるでしょう。
【日本株投資戦略】
日本株の上値突破のカギを握る海外勢の動向、世界の政治混乱を後目にハイテク分野の技術革新が加速、AI実装から日本は近未来国家の道を拓く
日本市場も類稀な6連休という長い年末年始休暇をはさんで2025年の新年相場を迎えましたが、休暇中の海外市場では米国株や中国株が波乱の展開となっていたこともあり厳しい船出だったかもしれません。とはいえ昨年の年始は能登半島地震に見舞われもはやマーケットどころではない状況から始まったのが日本株で、さらには夏場に「令和版ブラックマンデー」ともよばれる金融ショックで自壊した日本株に関しては海外勢などは新興国株と同等扱いですからもはや怖いものなしと言ってもよいでしょう。
◆2024年の日経平均は19%上昇、初の4万円乗せも 高値波乱の一年(2024/12/30)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/DI2JFWVVXBJRLJXUXQXZTQBN7A-2024-12-30/
利下げ期待を背景にバリュエーションの割高感を跳ねのけて上昇してきた米国株や空前の大規模景気刺激策を講じようと必死こいてる中国株が波乱含みとなっている中、日本株は昨年末の日経平均40,000円水準での攻防で始まってきたことは投資家の2025年に期待する強気の表れとみてもよいでしょう。
ただ、トランプ新政権への移行を目前にして、昨年後半とくに売り越し姿勢が続いた国内機関投資家、さらに海外勢もいま一度日本株に積極的になるには材料が必要とみられます。とくに日経平均やTOPIXの最高値更新を期待する以上は上値を買い上がり、幾重にも降り注いでくる戻り売りを吸収するだけの大口資金の流入がなければ、昨年前半の半導体・AIブームで出来高が積み上がった高値のしこり玉を消化しきれない需給のカベが存在しています。つまり、これらを受け止めながら米株高に追随するような日本株買いを本格化させる投資主体は海外勢以外に無いと言っても過言ではありません。
◆株高イヤーの日本、「脱デフレ・東証改革・新NISA」が3本柱(2024/12/31)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB233BV0T21C24A2000000/
◆2025年日本株、トランプリスク乗り越え最高値更新も-ストラテジスト(2025/1/6)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-06/SPADHST0G1KW00?srnd=cojp-v2
しかし、8.5ショックをきっかけに日本株を敬遠してきた海外勢が新年明けから早々に日本株買いを加速させる可能性は低く、日本株を見直すきっかけとなり得るものは上記の記事でも指摘があるように日本経済が復活の狼煙をあげられるかを左右する脱デフレの実現であったり、東証改革への期待、あるいは昨年末にも注目された世界トップクラスの年金ファンドGPIFの運用規則変更などが上昇カタリストになってくるはずです。
正直、材料は既出でも後付けでもかまわないので手口面から海外勢の動静を探っておくことが肝心かと思います。ちなみに12/20週の東証発表における投資主体別売買動向では海外勢は2週連続での大幅売り越しで日本株の年末ラリーに立ちはだかりましたので、新年最初に大幅買い越しで食指を伸ばしてくるタイミングを見計りたいところです。日本経済のファンダメンタルをベースにすると政府の月例経済報告や日銀短観、そして日銀の金融政策判断に用いられる需給ギャップの推移などが注目される一方、場合によっては昨年7月のサプライズ利上げのように日銀の利上げ材料ともなるため必ずしも株価上昇材料とは言い切れず、むしろ市場がヒステリックな動きをみせる可能性をも含んでいることに注意が必要かもしれません。
◆25年の日本株に3つの追い風 高値更新、海外勢回帰カギ ー日本株ラウンドアップー(2024/12/26)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB247ZE0U4A221C2000000/
◆◆景気判断据え置き、「企業収益」は21カ月ぶり下方修正=12月月例経済報告(2024/12/20)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/ZXJYFJWEFJM5VCGJE23XKYZCDA-2024-12-20/
◆◆25年度GDPギャップ+0.4%、7年ぶりプラス 労働需給が逼迫=内閣府試算(2024/12/26)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/W4WYFWSCBJLKLGDKFLU6T6YOYQ-2024-12-26/
◆東証の「悪例集」公表、欧州マネー呼ぶ 経営変革の契機に(2025/1/6)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR17E600X11C24A2000000/
◆GPIFの利回り0.2%上げ案 日本株比率に上昇観測(2024/12/2)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA29B0O0Z21C24A1000000/
米大統領選を機に上述のとおり米国株が無双してきた現状において、海外勢が日本株買いを本格再開してくるに足る材料というのは一見難しそうです。以前にも指摘したように日本株が上昇する条件として為替円安が前提に置かれてきたアベノミクス相場、つまり日銀の異次元金融緩和を背景に外需産業頼みにした株高ではどうしても限界があるように思います。
また、海外勢の日本株買いを誘発するためには日本で米国株投資ブームが起きているのと同様に、投資対象国の株価と通貨が両方とも上昇するのが望ましいと言え、株式と為替のリターンを一挙両得できる環境すなわち日本株高と日本円高、さらに脱デフレ実現であれば金利高となるのは当然の流れで、その金利上昇をものともせずに株価上昇が起きてくるように仕向けてはじめて米国株並みの投資魅力が醸成されることとなります。
ここまできてようやく日本の通貨政策は矛盾を是正する段階にきたように思いますが、今なお道半ばであることから大企業および経団連は政府・日銀の庇護(円安政策)から抜け出しても十分な収益力を備える必要があります。その上で市場もまた日銀の金融緩和依存から円キャリートレード前提でのカネ余り相場に浸っており、過剰なレバレッジの下で価格形成が歪められた状態だと頻繁に8.5ショックのようなことが引き起こされるリスクを孕んでしまいます。今年はそのようなことが起きないような政策運営を期待するとともに、日本が将来的に運用立国を実現させようとするのであればなおさら政治、経済の安定性と合理性、予見性を高めていく必要があるのだと思います。超高齢社会の下で人口減少が避けられない人口動態の日本でもし運用立国が実現される未来があるとすれば、高度にAIそして量子コンピュータで運用されるデジタル世界での話で、10年後には仮想通貨ならぬ中央銀行デジタル通貨(CBDC)が流通し、それが当たり前になっていくと考えると足元の仮想通貨相場やその関連株のブームがその踏み台となっていくであろうことも納得です。
そして世界的にも政治権力の混迷や強権化が目立つようになってきた今、米国追従で矛盾を抱えた国々の政治基盤はドイツ、フランスはじめイギリス、カナダ、そしてオーストリアや韓国といった国々に至るまで次々と政権崩壊が起きています。こうした混乱を奇禍としてグローバルマネーの流れが変化したり政治変革の機運を高めたりといったことにつながってくるのだと思われます。海外勢による日本株買いが本格化するにあたり、欧州からのキャピタルフライト(資本逃避)に加え、足元の市場ではAIそして量子コンピュータの実用化期待で相場が大きく育っている様子も窺えます。これまでの人間的な営みの結果として生じるしがらみや利権まみれの政治システムでは限界に近づきつつある現実を直視すればするほど、人間による不合理・不公平な意思決定を排除していく必要に迫られているのでしょう。米国覇権主義に基づく戦争経済は不合理やダブルスタンダードの典型でもあり、トランプ新政権に移行すれば戦争は終結に向かう一方で新たな貿易戦争のはじまりとなる可能性は否定できません。結局のところ、人間による意思決定において不確実性極まる世界で常にマネーは優位性を求める以上、日本株が海外マネーを惹きつけるには再びAI・半導体ブーム復活の狼煙をあげて米国集中の状況を打開していくと同時に、社会的なAI実装を推進する過程では既得権益の破壊や必要な規制緩和を積極的に行っていく自己矛盾を克服する必要があるでしょう。ヒト・モノ・カネが日本に流入し大規模な投資と社会変革を成し遂げた先にはSF世界のような機械的・超効率的な意思決定に基づいた政治・経済の枠組みが求められ、移民と共生する新生日本へと生まれ変わっていくのが近未来像になるかと思います。
◆◆日本株から海外勢遠ざける円安、ドル建てリターン目減り-米株に劣後(2024/12/24)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-24/SOXMJMT0AFB400?srnd=cojp-v2
◆25年「辰巳天井」破れるか リスクは円安、最適温は130円(2024/12/30)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB300T80Q4A231C2000000/
◆政府系ファンド運用額2000兆円 投資額首位はアブダビ系(2025/1/4)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR022EE0S5A100C2000000/
◆◆Googleなど、量子計算の性能向上 エラー訂正効果実証(2024/12/10)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOSG067UA0W4A201C2000000/
◆◆産総研、量子・AI開発を後押し 大手20社と連携(2024/12/17)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOSG183RO0Y4A111C2000000/
◆夢の大型化へブレイクスルー!量子コンピューターの本命「中性冷却原子型」で困難だった「誤り訂正」の弱点克服 京大研究グループ(2024/12/17)
https://www.fnn.jp/articles/-/802915
◆◆◆量子回路をAIが生成する「GQE」、前人未到の計算能力を実現へ(2024/11/15)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02985/103100004/?P=2