【11/28日本市場の確認ポイント】
日経平均 38,349.06(+0.56%)[37,801~38,478] 
TOPIX   2,687.28(+0.82%)[2,652~2,691] 
マザーズ   634.38(+0.06%)[632~638] 

値上がりセクターTOP5
1.その他製品(+1.96%)
2.水産・農林(+1.87%)
3.食料品(+1.44%)
4.鉱業(+1.32%)
5.その他金融(+1.31%)

値下がりセクターTOP5
1.なし
2.なし
3.なし
4.なし
5.なし

 日本市場は米感謝祭前の売買手控えムードの中、米国による対中半導体規制強化にあたってのリスト公表を前に事前の想定より厳しい圧力は回避されるとの報道から過度な警戒感が後退、先物主導での買戻しを誘発し半導体株の一角が大幅高となりました。主力の東京エレクトロン(8035)はじめSCREEN(7735)などが急騰、コクサイエレクトリック(6525)にいたっては一時ストップ高まで買い進まれる場面もみられました。

 日経平均は節目の38,000円割れで約1カ月ぶりの安値スタートだったものの、半導体株の切り返しを機に全セクターが上昇に転じ投資家の押し目買い意欲を刺激しました。日中の値幅が大きかった割には全体の売買代金は4兆円そこそこでまだ安心はできないものの底打ち期待につながった面はあるかと思われます。引き続き心理的節目である38,000円をはさんだ攻防と言える中、これまで足を引っ張ることの大きかった半導体株に安値圏で出来高が膨らんだことは株主の手替わりが一気に進んだ表れでもあり、残る重しは日銀の追加利上げ警戒と言えます。

 日銀による追加利上げ観測から日本でも金利上昇と銀行・保険株買いが優勢でしたが、足元では上昇一服からやや小康状態に入ってきています。他方で、金利上昇が嫌気されやすい中小型のグロース株は主力株と比べても意外な底堅さをみせています。日銀利上げ観測の下で為替に円高圧力が高まる中、投資家は外需株を敬遠し内需株への比重を高めているとみられ、内需系の中小型株が健闘しています。

【米国株概況】
感謝祭で休場前に調整売りで連騰ストップ、年末ラリーと12月中央銀行のゆくえ

NYダウ 44,722.06(▲0.30%)[44,690~45,003] 【高値更新】
S&P500 5,998.74(▲0.38%)[5,984~6,020]
NASDAQ 19,060.48(▲0.60%)[18,937~19,133]  
ダウ輸送株 17,609.1(▲0.50%)[17,588~17,803]
半導体SOX 4,852.7(▲1.52%)[4,770~4,899]
日経平均先物(CME) 38,300(▲0.76%)[37,805~38,490] 
ドル/円 150.95~151.93(高値161.99:7/3、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 1.047%(高値1.104%:7/3、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 4.242%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 68.88(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2661.70(高値2,801:10/31、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 4.131(高値5.199:5/20、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)13.90(高値65.73:2024/8/5)
SKEW指数 167.94(安値110.34:2022/11/3、高値170.52:2/13)
Fear&Greed指数 64(GREED:貪欲)
High Yield Bond (HYG)79.88(安値70.30:2022/10/13)

 米国市場は感謝祭で休場の上、翌29日が短縮取引となる中、祝日前のポジション調整売りで上昇一服。連騰で最高値更新中だったNYダウも反落し、実質的に11月相場の幕を下ろしたと言えますが主要3指数はいずれも週間ベースでの大幅高を記録。トランプラリーの象徴ともされる小型株指数のラッセル2000も11/11以来の最高値を更新し、米国株一強とも揶揄される強さをまざまざと見せつけました。

 さらに、もう一つのトランプラリーの象徴的存在である仮想通貨市場では10万ドル大台間近に迫ったビットコインに上昇一服感が漂う場面もありつつも、足元の踊り場を抜けた先に再浮上するとの観測も広がるなど金融市場の中でもひと際話題の的となっています。金融市場ではトランプラリーの特徴として米金利上昇を背景とした米ドル高の基調が続くとの見方がある一方、日本円ショートに偏り過ぎた円キャリートレードの巻き戻しとみられる動きも確認され、為替市場では米FRBの次の一手のほかに日銀の12月会合のゆくえにも注目が集まっています。

ビットコインが上昇再開、10万ドルの大台乗せへの楽観論再燃(2024/11/28)
円キャリートレーダー、ストレスたまる感謝祭休暇か-荒い値動き警戒(2024/11/28)

 12月の各国中央銀行における金融政策決定会合のスケジュールはまず大幅利下げ観測も見込まれる欧州からECBが12/12、次いで通常通り0.25%利下げが見込まれる米FOMCが12/17~18、そして従来の1月追加利上げ実施が前倒しされるとの観測が浮上してきている日銀が12/18~19という日程で控えています。利下げ観測からユーロ売りドル買いに拍車をかけた欧州ECB、直近でリバースレポ取引の金利引き下げに向けた議論も囁かれ始めた米FRBの出方も含めていずれも注目度の高い会合になりますが、金融市場にとって重大な影響を及ぼす可能性があるのが日銀会合で、7月のサプライズ利上げで円キャリートレードの巻き戻しが金融市場を混乱に陥れた前科があるだけに為替市場のゆくえがリスク資産市場全体にとっての重点監視対象ともなっています。

ECB、12月に大幅な利下げの可能性残すべき=仏中銀総裁(2024/11/29)
ドイツ、11月のCPI速報値は2.4%上昇-市場予想を下回る(2024/11/28)
◆◆FRB、翌日物リバースレポ金利引き下げを近く検討か(2024/11/27)
今年も「12月の日銀リスク」 外為市場、欧州通貨カギ(2024/11/25)

 米国市場においてはトランプラリーに一部息切れ感が出始めるも、結局のところ米株市場での最高値更新を続けています。さらに年末に向かって米ドル需給が引き締まっていくことが例年のアノマリーでもある中、バイデン米政権は米ドル供給をいっそう増やすことで市場の流動性確保に努めるでしょうから、米株市場はトランプラリーからそのままクリスマス・年末ラリーに結びつけようとする政権意図をそのまま恩恵として得られる可能性が高そうです。

 したがって、米国市場においては米金利上昇の警戒が薄らいだほか、リバースレポ金利の引き下げに至れば市中の短期債市場にその分のマネー流入となり金利上昇を抑え込むことになるでしょうから、米金利は自然と順イールドでスティープ化しやすくなると考えられます。つまり、次の米FOMCを通過すれば来年はトランプ政権下でのインフレ再燃警戒とあわせて米FRBは利下げ停止、あるいは利上げ反転の議論がベースとなっていく可能性もあります。それはいわば米経済のノーランディング実現でさらなる株価上昇を想起させるものとなるかもしれませんし、まずはこの年末ラリーの持続性こそが焦点となるでしょう。

【日本株投資戦略】
日銀追加利上げ観測で円高・株安、半導体規制・日銀の動向よりも重要な世界の大局

 日本市場はトランプラリーに沸く米国株高に反し米中貿易戦争の激化懸念から外需株売りが鮮明となる中、為替による円高影響の少ない内需株シフトの流れと相まって日経平均は38,000円をはさんだ攻防が続いています。トランプトレードを象徴した米金利上昇一服を機に為替市場では米ドル安へと変化した流れと同時に日銀の追加利上げ観測が高まったことも加わり、国内要因としての円高圧力が生じたことで主力株を中心に円高=株安が重しとなっています。

 今夏の日銀サプライズ利上げ以降、この円高=株安警戒は円キャリートレードに左右される先物市場において日本株売りの裏付けともなってきただけに日銀政策をめぐる市場の警戒圧力は未だ無視できないものとして存在しています。そうした中で、昨日は前回26日の取り上げた米国の対中半導体規制をめぐる記事に対しての続報として、バイデン米政権内での方針変更が内容的に以前の想定よりも厳しい措置には至らないとの観測報道が出されたことで過度な警戒感が後退することにつながりました。

◆◆米、対中半導体規制強化へ 最大200社制限リストに追加=商工会議所(2024/11/25)
◆◆米政府が対中半導体規制の強化準備、従来ほど踏み込まず-関係者(2024/11/28)

 この追加措置をめぐっては記事内で早ければ来週にも全体像が明らかにされるとのことで、まだ予断を許さない状況ではあるものの日本やオランダの半導体企業にとっては少なからず朗報と言えるものでしょう。日本株においては世界の半導体産業を担うサプライヤー企業が多く、その影響も多大なものであることから昨今の株価低迷を脱するきっかけにもなり得る材料と言えます。実際には半導体産業における実需の低迷や在庫整理といった現実的な課題解決が必要であることはもちろん、持続的な反転上昇を期待する上での重要な一歩になることは間違いありません。

 世界中で引き合いの強い先端AI向けチップの需要激増は明らかながら、その主軸とされる米エヌビディアおよび台湾TSMCでもってもこの12月に出荷予定のブラックウェルでさえ技術的な障害を克服するのに苦戦してきた経緯があります。日本の半導体企業における需要立ち上がりが来年前半のうちにでも見込めるようになってくると半導体株の本格復活が見込めるようになってくると思われます。いわばそれまでの間は期待と失望に株価が振り回される展開が続き、ここ12月を起点にトレンド転換の芽が出てくれば幸いと言え、おそらく次の2月決算シーズンにて疑心を確信に変えていけるかが焦点となりそうです。

 日本株は半導体株が牽引役として欠かせない存在であることに疑う余地はありませんが、ハイテク分野以外でも外需頼みの製造業を中心とする産業構造から米国の対外政策の煽りをどうしても受けてしまいます。今週発表されたトランプ次期米大統領による対外強硬策の一環として追加関税の影響が日本株の動揺につながり、これまた産業の裾野が大きい日本の自動車業界を揺るがしています。これはトランプ米大統領というよりもバイデン政権下においても中国との経済戦争をめぐる政策の一部として米議会が推し進める戦略であり、米中デカップリングはイエレン米財務長官もずっと訴えてきたようにグローバルなサプライチェーン再構築の一環として不可逆的に進められているものと認識すべきでしょう。

◆◆トランプ次期大統領、中国に10%関税賦課へ-メキシコとカナダは25%(2024/11/26)
米国の次期USTR代表は対中強硬派、「戦略的デカップリング」主張(2024/11/28)

 ゆえに日本の外需企業は対米、対中いずれにおいても過度な依存を是正するとともに、新たな販路開拓とともに利益率を高めなくてはならない環境に置かれていると言えます。コロナ禍以降、日本の製造業における国内回帰が多少なりとも進んだ一方で国内需要が低迷したままでは設備投資も一時の盛り上がりがペースダウンして攻めあぐんでいる様子が窺えます。この有様では日本の景気改善も限定的で、とても日銀が追加利上げできるような状況では無いと言わざるをえない気もしますが、足元での市場織り込み不足もそれらを反映してのものかと思います。それでもなお日銀が12月追加利上げを強行しようとすれば、またしても日本株にとっては今夏のショック安のようなトラウマをぶり返してしまうリスクが絶対無いとは言い切れません。

 その一方、本日発表された東京CPIにおけるインフレ進展をもって日銀の追加利上げを市場は織り込む必要に迫られ、日本市場は債券市場で長期金利が上昇、さらに為替市場では円高が進み、株式市場では株安で反応して昨日の急上昇の反動もあって再び日経平均38,000円割れとなる場面がありました。本日は11月の最終取引で月末リバランスにちなんだポジション調整も含めて値動きが大きくなることを考える必要があるものの、やはりレンジにおける下値波乱の真っ最中であることは肝に銘じておかなくてはなりません。

日銀12月利上げで金利急騰リスク、「次」の織り込み不足が災いに(2024/11/25)
東京消費者物価3カ月ぶり伸び拡大、エネルギー補助縮小-利上げ後押し(2024/11/29)

 日銀警戒が燻る中で利上げサイクルの初期段階はどうしても市場が不安定になることは避けられないもので、開き直って考えれば日銀が12月に利上げしようと来年1月に利上げしようとリスク炸裂の時期が前後するだけです。もう少し大局に目を向けますと、トランプ氏が次期米大統領に選出が決まって以降はその政策をめぐり米国以外の諸外国にとってリスクがまき散らされているかの論調が目立ちます。ただ、トランプ政策に限ったことでなく政策というのは常に万人受けするものはなく、リスクもリターンも置かれる立場によっての違いがあるだけでゼロサムゲームの世界です。ここでトランプ政権に移行した後の話として、大前提が米国ファーストであったとしても貿易戦争の副産物として下記事のようなエネルギーコストの低下がもたらされたり、あるいはウクライナ戦争を終結させた上で地政学リスク緩和によってもエネルギーコストの低下につながるのであれば世界経済は多大な恩恵を受けることになります。

◆◆加・メキシコ産原油、トランプ関税導入なら値下げへ アジアに恩恵(2024/11/27)

 トランプ氏に限らず米国覇権の現代においてはバイデン・米民主党政権が推進してきた戦争経済も米国ファーストの最たるものであり、これによって各国が防衛費を大幅に増額させるに至ったのも米国の軍需産業を潤し、米財政および米ドル覇権を強力に下支えすることにつながりました。良くも悪くも米国が倒れたら終わりの世界経済の脆弱さを露呈したわけで、既存の枠組みではとても持続可能な社会の実現はとうてい不可能であるとともに、世界は中ロあるいはBRICSの台頭をもって多極主義世界への移行が加速したという矛盾の中で秩序を再構築する流れに翻弄されていると言っても過言ではありません。

 一見すると、こうした流れは日本株にはあまり関係のないような話に思えるかもしれませんが世界の金融システムおよびエネルギーシステムがかつてないほど密接に連携している現代では、この地政学的なリスクのコントロールこそが金融市場の安定にとって非常に重要なものとなっていることを認識する必要があります。ウクライナ戦争は単なる地域紛争、あるいは米ロ間の代理戦争といった位置づけで語られることが多く目に付きますが、これまでの過程で多くの国々が関与し、さらに復興への道筋につながっていく中でさらにNATOだけでなく国連やG7といった多国間連携の在り方が見直される契機となるでしょう。その時、日本は惜しみない技術、資金提供の協力を行う復興計画に積極参加するとともに、日本企業は外需中心というならばいよいよ真価が問われることになるでしょう。6月に肩透かしで終わったウクライナ和平サミットがいよいよ当事国であるロシア参加、そしてトランプ外交で米ロ間における和平交渉が実現する時、日本企業の役割も復興利権の中で大きく様変わりしていく可能性を秘めていると言えます。そう考えますと、もはや半導体規制や日銀の利上げ動向について議論を気にしてばかりいる段階ではなくなってきたのではないかと思う部分もあります。

◆◆ウクライナ戦争担当特使にケロッグ元陸軍中将、米次期政権が新設(2024/11/28)
◆◆◆平和サミット、「近い将来」第2回開催の用意=ウクライナ高官(2024/11/29)
◆◆NATO高官、企業に「戦時シナリオ」への備え要請 中ロ念頭に(2024/11/26)
◆◆24年度財投計画、ウクライナ支援などで1兆1222億円追加へ=政府筋(2024/11/29)